ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※長くなりそうなので1話の半分でカット。GW中にもう1話上げたい所ですね

※お気に入り登録、感想等ありがとうございます。


第18話 早すぎる同窓会

マスコミはニガテだ。

 

いつだってあることないことを掻き立ててボクら家族の安寧を脅かしてくる。

 

でも、その家族は疎ましく思いこそすれ仕方ないと受け入れているのならばボクもそれに倣うのが筋ってものだろう。

 

ボクとしても今回の取材に興味が無い訳じゃないからね。

 

黄金世代とさえ謳われたマーくん世代の先輩たちが、

 

「あなたは何故(なぜ)カバディをやるのですか?」という質問にどう答えるのか。

 

 

 

 

 

――数日前―

 

「取材ィ!?」

 

旧体育館に宵越くんの叫び声がこだまする。宵越くんすっかりうちのリアクション要因になっちゃったよね。ボクの中学までの雑誌に書いてあった通りのかっこいいイメージがすっかり崩壊してるんだけど。

ま、今の飾りっ気がない宵越くんも好きだけどね。

 

「うん。僕らの世代の世界組(せかいぐみ)監督が大会の責任者でね。

少しでも大会を盛り上げたいって事で世界組を集めて取材したいらしいんだ」

 

マーくんが部屋に届いたらしい封筒を手にしながら言う。

 

あの人最近会っていないけどしっかり仕事しているみたいだ。ボクがあの人と知り合ったのは彼がカバディを辞めて裏方に回ってからだけども、引っ越し前後どちらのボクの家にも上がり込んで父さんを含む知り合いとお酒片手に慣れない仕事に愚痴ってたから。

上手くいっているのならなによりだ。

 

「恐ろしい絵ヅラになりそう…」

 

「生きて帰れよ」

 

水澄先輩と宵越くんが何やら怪しい想像でもしているのか、それぞれマーくんに無事生還してくるよう念を押している。

そんな取って食われる訳じゃないだろうに。皆優しい良い人たちだよ?

 

「え?他人事じゃないよ、宵越(よいごし)

 

キミも呼ばれてるから」

 

途端宵越くんの顔に表れる疑念の表情。

「なぜ!!??」とでも言いたげなのがストレッチ中だけどもこれでもかと顔に表れれていた。

…まぁ、宵越くんが呼ばれた理由は大体想像がつくけど、ボクが言うまでもないかな。

 

それに…

 

「そんな悲壮感漂わせないでよ宵越くん。大丈夫、ボクも呼ばれてるから一緒について行くよ。怖くなったらボクに甘えてもいいからね?」

 

「誰が甘えるか!!?…おい待て、お前も呼ばれてるのかよ!?」

 

ボクの突然のカミングアウトに宵越くん以外の皆が驚いている。

特にマーくんと慶さんが顕著だ。2人ともさっきまでのにこやかな表情から一転して何やら苦い顔をしている。

うーん、何やら深読みしているみたいだけど特に問題ないよ?

ちゃんと直接ボク宛じゃなくて確認の為に両親宛に手紙が届くくらいなんだから。

 

「…本当に大丈夫?叶。もしダメそうなら僕の方からも言ってみるから…」

 

「お前の立場上難しいかもだが、断りの理由ぐらい幾らでも俺たちで用意してやる」

 

「もう、マーくんも慶さんも心配しすぎですよ。大丈夫です。ボクもこの取材は結構楽しみなんですから」

 

「おい!なんで姫沢だけそんな過保護なんだよお前等!!?俺の心配もしろ!!」

 

おかしな空気が流れていたけど宵越くんのツッコミによってその空気が流れた。

水澄先輩たちが宵越くんに目線が奪われたのを見て2人に「大丈夫」と目配せをする。

それを見て2人もとりあえず納得してくれたみたいだ。

 

「まぁ冗談はほどほどにして、だ。

宵越の場合ダシにされてるんだろうな。あの監督のやりそうなこった。

叶のもまぁ、似たような理由だろう」

 

「ダシ?」

 

慶さんが意図をくんでくれた。笑顔を浮かべてさっきまでの空気を払拭しようとしている。

 

「まぁ悪い事じゃないよ。強いプレーヤーを知るチャンスだ」

 

最後にマーくんの言葉で締めてストレッチも終了。さて、取材も楽しみだけどまずは今だ。練習がんばらないとね。

 

 

 

 

――取材当日――

 

「緊張するね!」

 

「別に大した事ねーよ取材なんざ」

 

「ボクは取材よりもこの電車が無事時間通りに辿り着けるかってことに緊張してるよ」

 

「さすがだなぁ宵越君も叶も」

 

電車に揺られながら取材会場へ向かうボクたち3人。この3人だけで行動するのっていつぞやマーくんが宵越くんの部屋に肉じゃが持ってきて以来だね。宵越くんとはクラスも一緒なこともあってほぼ毎日一緒だけど、マーくんはそうもいかないから、今日が楽しみだったのはそれもあったりする。

 

「ねぇ叶、宵越君知ってる?」

 

「…世界組の事か?」

 

「いや、うまく(しゃべ)れる方法」

 

「どんだけ緊張してんだ!!」

 

「だってこんなの初めてだもん…」

 

マーくんがキメ顔をしながら情けないことを聞いてきた。いやマーくん、素直なのとボクらに頼ってくるのは良いことだし嬉しいんだけどさ。2つ上としてどうなのそれ。

 

とはいっても仕方ないかもとも思ったりする。カバディ選抜(中学)の時もこんなことはなかったからね。でも高校生なら慣れててくれよとも思うけど、普通じゃないボクが

マーくんを糾弾していいのか分からない。

 

中学で既に有名だった宵越くんや父さんたちの付き合いで挨拶することが多かったボクが異端なだけで一般的な高校3年生はこうなのかもしれない。

何分能京で他に知ってる3年生は慶さんだけだから。こういう場でも卒なくこなすというのは目に見えているから、マーくんが緊張しているのが普通なのかイマイチ判断がつかなかった。

 

「うーん、こればっかりはなんだかんだで経験が1番だからなー。

定番な対処法だとインタビュアーをかぼちゃと思い込むことだけど…」

 

「今日まで慶やクラスメイト相手にそれ試してみたけどダメだったんだよ」

 

「なに今更小学生レベルの話してんだ!!?

 

堂々としてろよ!!ナメられんぞ他の学校の奴らに…」

 

「あ、王城(おうじょう)さんとたっつん、かっちゃんも!」

 

宵越くんの言ったことがフラグにでもなったのか、丁度開いたドアからこの間対戦した奏和高校の六弦さんと高谷さんが乗り込んできた。2人が呼ばれてることも前々からメールでおしゃべりしてたから知ってたけどまさか同じ電車とはね、ビックリした。

 

「久しぶり!同じ電車かぁ」

 

「高谷と六弦…お前も呼ばれたのか?」

 

「うん、よくわかんねーけど」

 

「なるほど。他競技の有名人物も一緒に呼ばれているようだな。

…ん?だがそれだと2人はともかく姫沢が呼ばれた理由にはならないか…」

 

「気にしないでいいですよ六弦さん、ボクが呼ばれたのも大まかに分けたら宵越くんたちと一緒ですから」

 

会って早々適当に雑談を交わすボクら。この間練習試合したけどお互い仲が良いのを確認できて少し安心する。ま、練習試合する間柄は仲良くないとあり得ないっていうのは置いといて。

 

「ホラ、向こう落ち着いてるぞ」

 

「いや、よく見るんだ。

 

六弦も目の下にクマができてる」

 

「こっちもか!!!」

 

余所の様子からマーくんを非難する宵越くんだけれども、今回ばかりはマーくんの方が1枚上手だったみたいだ。いや、あなたもですか六弦さん…。

 

あれだけカバディにおいては敵なしって感じの2人が夜眠れない程の難敵がただの取材だということを知って、この気持ちをどうすればいいのか分からなくなる。

 

「王城こそ目の下にクマが…」

 

「フフ…残念。毎日こうだよ僕は」

 

「いや自慢する所じゃないよマーくん。それ毎日寝不足だってことだからね。

…もう少し自分の身体を労ってよ」

 

…寝不足が原因じゃないっていうのは知っているけどね。医者の息子であるボクがここで何も言わないのもおかしいから口を挟んでおく。

言ったところで解決しない問題は触れないでおくのが吉だ。

もちろん、吉は吉でも大吉じゃないっていうのは分かってるけど。

 

「たっつんとかっちゃんはヘーキなの?」

 

「たっつんはヤメロ。…俺は慣れてる。取材はさんざんやってきたからな」

 

「ボクの場合取材は初めてですけど、家柄で挨拶する機会はそれなりにありましたからね。

それと似たようなものだって思えばそんなに緊張しないです」

 

六弦さんはともかく、高谷さんはボクらと同じく平気そうにしている。まぁ、中学の水泳インタビューで「水泳で1番が当たり前になってつまらないから水泳は中学まで」って大口叩くような人が実は緊張しいだとか、そっちの方が驚くけれども。

 

「へぇ、優勝していないたっつんはともかくかっちゃんは面倒くさそうだねぇ。オレだったら逃げ出しちゃいそう」

 

「確かに高谷さんの言う通り堅苦しい場所なのは否定しませんけど、いつも家族にはワガママ言っている立場ですからボクは。その対価だと思えば逆に気が楽になるってものですよ」

 

「…ふーん、そんなもんか?オレにはわかんねー世界だわ」

 

「おい、何が俺はともかくだ!しかも優勝していないってわざわざカンに触ること言いやがって!!」

 

ボクの返答にあんまり気が乗らなかったのか退屈そうに返してくる高谷さんに宵越くんが突っかかっていく。

この2人、会えばすぐ盛り上がるよね。それ自体は別にいいんだけど、一応ここ電車だからTPOぐらいは弁えてほしい。

 

「お前だってカバディじゃ関東ベスト4程度だろーが!!」

 

「たっつんその学校に勝てなかったの覚えてる?」

 

「それを言うならボクたちは万年1回戦敗退だよ」

 

「うっせー!お前はどっちの味方だ!」

 

気付けばボクと宵越くんと高谷さんの3人とマーくんと六弦さんの2人に別れてそれぞれ会話をし始める。宵越くんはともかく、高谷さんとも電話なりメールなりしてるから、あっちに混ざりたいとも思うけど、2人の邪魔をするのも悪いし、ここは我慢しておくか。

 

「しかし正直甘くねーなぁカバディ」

 

速さ(スピード)筋力(パワー)も両立しなきゃなんねーし。

世界組でも勝ってるのは両方持ってる人が多い気がするね」

 

高谷さんの言葉に思う所があったのか宵越くんがボクをじっと見つめてくる。

…ちょっとムカつくけど、宵越くんの意図は分かる。筋力(パワー)を持っていないボクがなんで当時1番だったのか気になるのだろう。

 

教えてもいいけど、少なくとも今このタイミングでする話じゃないからね。

また別の機会に話すことにしよう。

 

宵越くんはボクが何も話しそうにないことが分かったのか、ボクから高谷さんへ顔を戻す。

 

「お前、他の世界組知ってんのか?」

 

「当たり前じゃん。世界組のスタメンは大体関東ベスト4のチームにいるもん」

 

高谷さんの言葉に驚いたような顔を浮かべる。ようやく今日の取材で集められる人達がどんな人なのかが分かったみたいだ。

 

「じゃ今日集まってんのは関東の…」

 

「あ。神畑(かみはた)もこの電車に乗ってるって」

 

だけどそんな宵越くんの言葉を遮るように、マーくんが呟く。

聞き慣れない名前に思わず宵越くんも「カミハタ?」と聞き返すけど、誰も反応を返さない。仕方ないからボクが答えようと思ったら高谷さんの方が早かった。

 

「去年の大会で奏和(ウチ)に勝った英峰(えいほう)高校のエースだ。

 

オレを初めて倒した人。ね」

 

高谷さんにしては珍しく笑みを消してそう告げる。

 

へぇ、高谷さんからそういう評価もらってるんだね。昔からの知り合いが別の知り合いにそう評価されるって結構嬉しいものがあるよね。

アイツは儂が育てた…みたいな後方師匠面みたいなの。ボク年下だし師匠でもないけど。

 

「…久しぶり高谷君」

 

バサバサッて電車の高いところに設置されている広告をまるで居酒屋の暖簾をくぐるみたいな感じで近づいてくる。

それが意味することは1つ。とってもデカイってこと。203cmって所かな。最後に会った2年前と比べても更にデカくなってるのは脅威の一言。宵越くんも気圧されたみたいだ。

 

「おや、見ない顔だね。よろしく。英峰高校部長、神畑(かみはた)(いつき)だ」

 

デカさから来る威圧感を感じさせない礼儀正しい挨拶。流石だね、身長は伸びても前までの彼であることを確認できてボクも少しホッとした。

 

「お…おう…」 「能京(ウチ)の1年、宵越竜哉くん!」

 

宵越くんはまだ彼のデカさにたじろいでいるみたいだ。片手を目の上に置いてどれくらいの身長なのか目算しているみたいだ。そんなことしないでも、ボクに聞いてくれれば一発なのに。

 

「能京…ということはアイツも…「久しぶり()()()()!!またデカくなっちゃってま~!!羨ましい!!」」

 

いっくんに気付いてもらえるように大げさに手をブンブン振る。ボクが152cmなのに対していっくんが203cmだから脅威の51cm差!ボクの3分の1の身長をプラスって訳分からないよね、羨ましい!!

本当は飛びつきに行って喜びをこれでもかと表現したい所だけど電車の中だから我慢だ。

 

「久しぶりだな叶。最後に会ったのは俺が中3の時か。少し身長伸びたか?」

 

「なにそれイヤミ?どうせいっくんが伸びたのと比べたら雀の涙ですよーだ!」

 

わざといじけた様子を見せるといっくんが表情こそ変えないもののボクの所まで来てくれた上に力を全く感じさせない柔らかいタッチでボクの頭を撫でてくれる。

小学生の時はよく笑ってくれていたのになんでかいっくんは途中から無愛想になっちゃったけど、いっくんがボクの頭を撫でてくる優しさはずっと一緒だ。かけているゴーグルみたいなメガネもデザイン変わってないみたいで安心する。

 

それがなんでか、とても嬉しかった。

 

「…あいつ急にガキみてぇになったな」

 

「神畑はたしか小学3年生からカバディやり始めたから、小学1年生からやり始めた叶とほぼ同じタイミングでカバディを始めたんだ。それもあってか叶は小学生の頃から神畑に懐いてたよ。よく肩車もしてもらってたみたいだし」

 

「やっぱりガキの頃からデカかったのかよあの人…」

 

「たっつん唯一の身長(もちあじ)負けちゃったね。

かっちゃんに乗り換えられるかもって焦っちゃった?」

 

「コロスぞ…」

 

後ろで何やら物騒な言葉が聞こえたが無視しよう。今は久しぶりにいっくんの大きくてゴツゴツしてる手の感覚を忘れないようにしないと。

 

「懐かしいな。王城に六弦。この前試合したそうじゃないか。」

 

ボクの頭を撫でながら後ろを振り向いて2人に話しかけるいっくん。へぇ、やっぱり英峰にも情報いくものなんだね。まぁ、ボクからたっくんに話してたから、伝わってても当然なんだけど。

 

だけど、話しかけられた2人はその話題よりも気になる事があるらしく、

 

「うん。話の前にメガネ外してみてくれない?」

 

「クマとかあるんじゃないか?」

 

「もういいだろクマの話は!!!」

 

よっぽど同士が欲しいみたいだ。2人には残念だけどいっくんには全くクマはないみたいだよ。ただでさえ英峰は進学校で忙しい所だからね。健康には人一倍気を遣っているのは当たり前だ。それがわかった2人は残念そうにしている。

 

…あとで時間があったら2人に目の回りの血行マッサージしてあげようかな…。

 

 

 

 

 

「へぇ、引き分けだったのか」

 

「ああ。高谷に頼りすぎてな。今、他の攻撃手も育ててる」

 

「そういえば奏和、2番の人いなかったよね」

 

「冬大会で見たメガネの6番もいなかったですね。…故障ですか?」

 

「…あぁ、…いろいろあってな…」

 

電車から降りたボクたちは取材会場まで歩いて進んでいく。といってもボクはとても身軽なんだけど。

 

いっくんにダメモトで頼んでみたらまさかのOK!!久しぶりの肩車にボクのテンションはうなぎ登り!!2m半からの視点はいつもの視点と違いすぎていわば1つのアトラクションだ。ボクのバックもマーくんに持ってもらったから何も憂うことはない!

 

「あいつ無茶苦茶やってんな…なんで誰も怒んねぇんだよ」

 

「愛されてんねぇかっちゃん」

 

「それにしてもいいのか姫沢?こっちに混ざって。お前の場合俺たちよりも高谷や宵越との方が話しやすいだろう?」

 

「高谷さんとはほぼ毎日メールや電話してますから大丈夫です。この間も中学時代の六弦さんの話をしたら大分盛り上がりましたし」

 

「…!何を話した!?姫沢!!」

 

「落ち着け六弦。大人げないぞ」

 

「これが落ち着いていられるか!?内容次第によっては…」

 

「大丈夫ですよ六弦さん。中学時代、空き時間があればマーくんにひたすら1対1(タイマン)を仕掛けて負け越したってことぐらいしか話してませんから」

 

「なんだそんなことか。良かったじゃん六弦」

 

「全然良くない!!俺の部長としての立ち位置やイメージが…」

 

「勝負を仕掛けていたのも事実だし、叶が言うなら戦績もウソを言っているわけではあるまい。諦めろ」

 

「そうだよ六弦、僕に負け越している六弦が悪いんだから」

 

「~っ!!確かにその通りだが王城!!お前にそれを言われるのだけは腹が立つ!!」

 

「大丈夫ですよ六弦さん。高谷さんには口外しないよう伝えてますし。流石の高谷さんも六弦さんを貶めるようなことはしないでしょう」

 

適当にワイワイとおしゃべりを楽しみながら歩を進める。いっくんの上で3人の様子を見ても特にギスギスした空気は感じない。ボクも流石にはしゃぎすぎたら下のいっくんに悪いからがんばって大人しくしながらやっぱりあれは本当なんだなって思った。

 

3人とも1番の敵が共通していること。

 

大会発足から7年間、ずっと全国制覇を続けてる学校「星海(せいかい)高校」。

 

関東でも星海(せいかい)一強(いっきょう)。関東ベスト4といっても星海と「その他」という扱いをされていると聞いた。

 

なぜそうなっているのか調べてみるとすぐに分かった。

 

世界組が多いから。確かにボクと同輩(タメ)の多くの世界組も星海を進路に選んで実際入学している。他は英峰だったり奏和だったりだ。もしくは中学でカバディをバッタリ辞めた人もいたけど、その人の話は辞めておこう。

 

最初の大会で全国制覇してから、世界組はそこに行くみたいな流れができたというのもあるが原因はそれだけじゃないだろう。

 

1度の練習で10数コートを同時に展開することができるカバディをやるに当たって理想的な環境に元プロカバディ選手の指導者、それらをエサに集ったライバルたち。

「東京でカバディをやるなら奏和」と言うならば「日本でカバディをやるなら星海」とでも言えるレベルだ。正直言って旧体育館を占用している総部員数10人の能京(うち)が束になっても環境面ではまず敵わない。

 

ボクも星海からはスカウトされていた。が、言外にプレイヤーではない面で評価されてスカウトされたというのは分かった。だからボクはそれを断わって、家族から勧められたレールも断って、約束していたマーくんのいる能京に入った。

それゆえ、レベルが高い星海でスタメンになれそうもないから逃げたと言われても完全には否定しきれない。

 

だけど、ボクは1番になりたいんだ。

 

仮に星海に入ってスタメンを勝ち取ったとしよう。でもそこで3連覇したとしてもボクはそこで1番になったと胸を張れるだろうか?

 

違うだろう。やれ環境のおかげ、指導者のおかげ、他のメンバーのおかげ。

 

別にそれが悪い話とは思わないし言わない。

環境を整えるのにもお金はかかるし、日本で貴重なカバディ指導者の元で成長したいというのも当然の話。ライバルに囲まれて修羅の世界に入るのも自身の成長の為には必要だ。

その環境で得られた糧は事実だし、決して胸を張れないものでもない。それだけはボクにも否定できないし、否定してはいけないものだ。

ボクは自らその環境に飛び込んだ星海に入った仲間全員に敬意を示してもいいと思っているぐらいだ。

 

 

 

けど、ボクの目指すのは同情や贔屓ではない()()()()()を取ることだ。ボクの取りたい1番は星海では得られない。だからボクは能京に入ったんだ。

そしてボクはその怪物である星海を食らってボクの目標を叶えるんだ。

そうすればボクは満足する。目標のその先へ、心置きなく進む事ができるはずだから。

 

 

 

さぁ、覚悟を決めろ。今から訪れるあそこにはその星海の怪物が複数いるだろう。

別に誰々が呼ばれているとは聞いていない。だけど、マーくんといっくん、六弦さんが呼ばれているというのなら、()()()が呼ばれないはずがない。

もしかしたらボクと同輩(タメ)の彼も呼ばれているかもしれない。彼もあの人と同じく怪物なのだから。

そうであるのならば、決してあの人達に気圧されてはならない。萎縮してはならない。

 

ただ対面するのが少し早まっただけなんだから。いつか倒さなければならないのだから、

この早すぎる対面をボクが倒す為の糧に変えろ。

そうでもしなければ、ボクが1番になることはこれから先永劫訪れないだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――オマケ――

 

「皆さん、聞きたいことがあるんですけど…」

 

「ん?どうした叶。そんな改まって」

 

「どうしたの?もしかして具合悪くなった?」

 

「酔い止めの薬は飲んできたので大丈夫ですマーくん、それよりもですね…

 

せっかく席が空いているんですから皆さん座ってくださいよ。ボクしか座ってないじゃないですか」

 

「いや、座るほど疲れてねーし」

 

「この移動時間も立派な鍛錬時間だ。もし周りの目が無いのであれば空気椅子をするのも手だったんだがな」

 

「周りの目がなくてもしないでくださいね六弦さん。いや、先輩たちが立ってるのに1年生のボクだけ座ってるの、流石に気が引けるといいますか…」

 

「気にしすぎじゃねーの?別に六弦さんたちも気にしないってなら大丈夫でしょ。もちろんオレも気にしてねーし」

 

「そういう訳にもいかないでしょ高谷さん…。分かりました。じゃあボクも立ちますから」

 

「いやいや叶は座ってていいから!ね!?」

 

「そうして中学の時も具合を悪くしていただろう、本末転倒も良いところだぞ」

 

「…思い出した。確かにそんな事もあったな。だから大人しく座っておけ姫沢」

 

「…やっぱお前等過保護すぎんだろ」

 

「愛されてんねぇ」

 




※男子高校生って席が空いているのに意固地なのか座りたがりませんよね。私も当時はそうでしたが、今では積極的に座っています。これが時の流れか…

※オリ主はバスや車の乗り物酔いが特にヒドいだけで、他の乗り物の場合は酔い止めさえ飲んで座れれば問題はありません。もちろん、本を読んだりしたらアウトだけども

※オリ主は小学校で知り合った相手には自分を名前で呼ぶようにお願いしています。基本名字呼びの神畑がオリ主を名前で呼んでいるのはそのためです
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