ボクがキミを王にする   作:モーン21

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第24話 メジャーVSマイナー

「夏休みに合同合宿を組んだ!相手は埼玉の新設チームで部員数がウチと近い。勉強させてもらおう。

事前の準備を(おこた)らず、全力で取り組むぞ!」

 

「「うす!!」」

 

誕生日から数日後、充実した誕生日を過ごせてホクホクなボクと(ボク)の金で食べた焼き肉でモチベを上げた皆が元気に返事する。

 

いやぁ、あの時は大変だったね。他の皆も男子高校生だからか景気よく食べまくってたんだけど、それを悠々に越える量を宵越くんがこれでもかと食べまくってたからね。帰る時店員さんからすごい目で見られてることに宵越くんは気付いてなさそうだったけど。当分あのお店には行けそうにないな。

 

開始早々お腹いっぱいになったボクは途中から宵越くんの肉焼き係に就任した。焼いたそばからどんどん消えていくからとっても焼き甲斐があって結構楽しめた。途中伴もやりたそうにしていたから、慶さんたちから用意されたボク用のご飯を消化する名目で伴と肉焼き係を交代するなどした。宵越くんは変わったことにすらも気付いてなさそうだったけど。

 

まぁ、それはともかくだ。

 

「最近、メンバーのクセに合わせて動きがちだったしな」

 

「知らない相手とやんのは丁度いい」

 

「頑張っぞー!」

 

慶さんの発表で皆の高い士気がさらに跳ね上がった。この間の奏和との練習試合から早1ヶ月ちょい。その間ずっと少ないメンバーで練習してた訳だけどそれじゃ水澄先輩の言うような問題が発生してしまう。人読みは悪いことだけじゃないんだけど、対戦で戦う訳じゃない自チームのメンバーでそれを磨いても仕方ないというのは当然とも言える。

 

その点今回の発表は嬉しいものだ。もちろん、ボク含めても。

 

慶さんは「埼玉の新設チーム」って言ってた。特に調べた訳じゃないけど、今の2年生で中学の頃から仲良くしてくれていた先輩がそこでチームを作って去年の冬大会から始動したというのは聞いている。慶さんの言ったチームがもしかしたら違う可能性もあるけれど、この間の奏和戦が創部して初めての練習試合だというくらい他校との関わりが薄い能京(ウチ)に大会前の大切なこの時期に自チームの情報を明かすようなマネを知り合いだからという理由以外で行うとは思えない。

 

ま、練習後にマーくんたちに直接確認すればいいだけだし、それで答えてもらえなかったとしても相手の方に訊いてみるだけだ。十中八九そこだろうけど。

 

本当はボクと同じように能京(ウチ)に来る予定だった2人。トラブルがあって来れなくなったとは訊いてるけど、()()()()()()()()()()()能京(ココ)に来たボクとどっちがマシかなと頭の中で考える。

 

ま、どっちでもいいか。また会えるのなら嬉しい。初参戦の冬大会ではベスト8に行ったって訊いたし、もし会えたならどれだけ成長してるのかこの目で見てみたいな。

 

「井浦、そういや部長は?」

 

「ああ、部長会議だと。もうすぐ来るだろ…」

 

「お。ちわー……す……?」

 

「あれ?マーくんどうしたの?」

 

丁度マーくんが戻ってきた。でも、見るからに何やら浮かない顔をしている。なにかトラブル発生かな?

 

「困った事になった…

旧体育館(ここ)が使えなくなるかもしれない」

 

「「…ええ!?」」

 

このトラブルは想定していなかったのか、慶さんを含めたボクたち全員がマーくんの報告に驚きの声を上げる。二の句を継げようとしたマーくんだったけど、それを止める声がマーくんの後ろ、先程開いたドアの方から聞こえた。

 

「俺達から説明しよう」

 

「ん?野球部…?」

 

「どうも。部長の錦野(にしきの)です」

 

帽子を取りながら錦野と名乗った男…、いかにも野球男児とわかる風貌の男がゾロゾロと部員を引き連れて旧体育館に乗り込んできた。

 

「よう錦野…どういう事だ?」

 

「おお井浦。実は…」

 

慶さんがボク等を代表して前に出る。知り合いかな?部長って言うくらいだから3年生だろうし、付き合いがあってもおかしくはないか。

 

「野球部は甲子園出場から年々部員が増加しててな…道具の置き場にも困る状況なんだ。

だから部活動会議で旧体育館を使わせて欲しいと申請した」

 

「ここを道具置き場に!?」

 

錦野さんが説明すると宵越くんが早速嫌そうに反応する。ボクも眉をひそめた。

確かに能京(ウチ)の野球部が強いことは知っている。甲子園を狙える実力があることは色々な情報媒体が発信しているからね。確かに部活実績で言うならばヒエラルキーは野球部の方が圧倒的に高いのは確実だ。

 

が、いくらなんでも遅すぎる。部員が増えたというならこんな甲子園予選真っ最中の7月ではなく、5月、遅くても6月には申請すべき問題だ。

仮にこの申請が通って野球部が甲子園に出場して決勝まで残ったとしても8月末まで残り1ヶ月ちょい。「部員が増えた」という理由ならば近いうちに3年生が引退するんだからそれまで待てばいい話だ。そうなんだけど、

 

「大会前にそれは困る。合同合宿も直前だし…

申請ってことはまだ決まりじゃないんだろう?そんなに場所を使うのか?」

 

「いや、それは…」

 

慶さんがこちら側(カバディ部)の意見を述べる。そりゃそうだ。能京の部活動がどのように管理されているか理解しきっているとは言えないけど、もし野球部が言う通りになるのならあまりにも横暴すぎる。

しかし、なまじ甲子園出場という結果がある以上万年1回戦敗退のカバディ部の立場は軽く吹き飛ぶぐらいに弱すぎる。こうしてただの気まぐれで部活の存続が危ぶまれるほどに。

 

「いいから寄こせ。お前ら必要ないだろ?」

 

横暴な口調で横から代表者同士の話し合いに邪魔してきた男がいた。

 

…ふーん、錦野さんとか他の野球部の人たちと比べてもステータスが明らかに高い。

この人が野球部のエースなのかな?まだ名乗ってないけど、もしエースなら確か2年生の安堂(あんどう)さんだっけ。

 

「い…要らない訳ねーだろ!!何だお前は!!

 

宵越くんが明らかにイラついた調子で口を尖らせる。うん、気持ちはわかるよ宵越くん。もっと言ってやって。

 

「100人ちょい…」 「あ?」

 

「野球部の人数。俺はそん中のエース。気安く話しかけてんじゃねーぞマイナー部」

 

「マイナー…」

 

なにやら苦い顔を浮かべて言いよどむ宵越くん。確か宵越くんも似たようなこと最初言ってたんだっけ?ってか100人ちょいってスゴイね。今年も結構入ったんだ野球部。

 

ほえぇと呑気に構えていると聞き捨てならないことを安堂さんが告げた。

 

「あー…違うか。 1…2…

 

 

 

同好会だな。この人数は…」

 

宵越くんが止まったのを見て気を良くしたのか安堂さんはまだ続ける。そう告げる安堂さんの表情は無表情のまま。こちらを煽る意図もなく、ただ事実を示すようなその台詞にボクもイラッときた。

別に人数が多い方が偉いって訳でもないだろうに。

前に出ようとする宵越くんを慶さんが止めている所が見えているけど、ボクは構わず前に出た。

 

 

「失礼ですが安堂センパイ、ボクは野球には詳しくないんですが、野球というのは100人ちょいが試合のベンチに座れるのでしょうか?だとしたらさぞ賑やかで楽しいでしょうね」

 

「あ?誰だお前…女がしゃしゃり出てきてんじゃねぇよ」

 

女じゃないって修正したい所だけどそんな空気じゃないから止めとこう。

 

 

「1年の姫沢です。あぁ、この質問には答えられなくても大丈夫ですよ。確か20人でしたっけベンチ入りできるの。甲子園本戦は多少減るとか訊きましたけど、そこは今関係ないですね。

ボクが安堂センパイに尋ねたいのはベンチ入りメンバー以外の練習についてです」

 

「お…おい!それは…」

 

「失礼ですけど錦野先輩、ボクが尋ねているのは安堂センパイです。

先に人数について言及したのは安堂センパイですから、いいですよね?」

 

「…フンっ」

 

表情を変えないまま、安堂さんが黙ったままボクに視線を向けた状態で止まる。

どうやら、続けてよさそうだね。

 

頭の中で言う内容を考えながら()()()()()ポケットに入れていた手を外に出す。さて、どう答えてくれるかなという期待を抱きながらボクは安堂さんに問いかけた。

 

能京(ウチ)の野球部は結果を出しているからか数ある部活動の中でも結構優遇されていますよね。校舎から徒歩10分の所に専用野球場、雨天でも練習できる屋内野球練習場に専用のスポーツジムもあるという至れり尽くせり具合です。

せっかく用意されているのに、たしか部員の中で休み時間に練習したいからと校内の共用スポーツジムに野球部が押しかけるだけでなく野球部の道具を置いたままにする人がいると訊きましたね。他の部から苦情が入っているともお聞きしましたよ?」

 

「なんでそんなことまでお前が…」

 

錦野先輩が驚愕しているけど大した事ない。病院にいる間教科書を読むだけじゃヒマだったから能京(うち)の施設情報や部活動実績、果てには能京生らしき生徒のSNSを覗いてどんなことに不満を持っているのかを調べていたんだ。

慶さんも既に知っていることだろうから全然ドヤ顔できないけども。

 

「さっき錦野先輩が言ってましたよね?『年々部員が増加して、道具の置き場にも困る状況』って。もしかして、困っているのは道具の置き場だけじゃなくて()()()ベンチ外の部員の練習場所じゃないんですか?だから今回申請したんじゃないですか?」

 

安堂さん以外の野球部の皆さんがピクリと反応する。さっきボクたちのことを人数を見て()()()扱いしたんだ。これぐらいは許容してもらわないと。

 

「…言いがかりだな。途中まではともかく最後はお前の憶測だろうが」

 

「ではなんであれだけの施設を占有しながらも道具の置き場に困っているんでしょうか?

先程の慶さ…、井浦先輩が言うように旧体育館を占領するほどの場所を使う理由は?

野球部の皆さんも今大事な甲子園県予選中だというのはお聞きしています。そんな大切な時期に自分達の練習を切り上げてまで()()()部活動会議を行うにあたった理由をお聞かせいただけますか?」

 

「…………」

 

ボクの質問に黙り込む安堂さん。なんか黒いオーラが安堂さんからどんどん出てきてるんだけど、それと同じくらいに後ろから突き刺さる慶さんの視線。

うん、ちょっとはしゃぎすぎました。反省してます。

 

意地悪するのはここまでかな。後ろの慶さんに目配せをして下がる。選手交代だ。

 

ボクのバトンを受けた慶さんが代わりに前に出てきて話し始めた。

 

「うちの後輩が色々すまん。コイツには後でキツく言い聞かせておくとしてだ。

2年の安堂。お前の事は知ってる。お前を筆頭に野球部が結果を出してる事もな。

弱小のカバディ部が旧体育館を占領しているのが気に食わないのはわかる。」

 

「こっちはコート…練習場所を確保できればいい。練習に使わない場所なら野球部に分けよう」

 

ボクの頭を雑に掴んでお辞儀させる慶さん。いや、ボクに頭下げさせて意見を通しやすくしようとするのはわかるけど痛い痛い!!さっきまで嫌われ役をしてたボクのヘイトを減らす為なのはわかるし助かるけれども。実際野球部の皆さんからの視線が先程までのと比べて大分和らいだのはわかったし。

 

「…共同で使うと…」

 

お、錦野先輩の反応も悪くない…?いや、この声は何かに怯えてる?

あぁ…、ようやくわかった。なんでこんな無茶苦茶な要望を出した部の部長があんな低姿勢だったのか、顔を上げずともわかった。

 

 

 

「ナメてんのか?」

 

 

「さっきまで黙って聞いてればゴチャゴチャと…。

本気でやっとる俺らと、ネタスポーツ遊びのお前らが共同?納得できる訳ねーだろ」

 

 

 

 

 

あぁ……、なんでボクが安堂さんを気にくわないのかがわかった。

 

通常話し合いっていうのはお互いの妥協点を探るものだ。

仮に少し不利な結果になっても、その結果自体を次回の話し合いを有利な形で終わらせる為にいかしたりする。それが話し合いというものだ。

 

だけど、この人は決して話し合いに来たんじゃない。要望を出してそれが100%受理されないことに苛立つ。こちら側の質問に全く答えなかったことからもそれはうかがえた。

 

昔一時期交流のあった()()()()を思い出した。アイツともまったく話が通じなかったな。

アイツも安堂さんも同じだ。当たり前のようにこちらの大事な物を踏み荒らしていく。そしてその事に何にも罪悪感を感じない。同じ人とは思えなかった。

 

「ですよね部長?」

 

「あ…安堂…」

 

あぁ、イライラする。同じ空気すら吸いたくない。

そんなボクの荒れようがわかったのか、それとも慶さんも同じく怒りを耐えているのかボクの頭を掴む力は段々大きくなっていった。

正直助かった。さっきまではまだ落ち着いていられたけれど、今同じように振る舞える自信はなかったから。

 

「オイ。訂正しろ」

 

「あ!」 「バカ…」

 

宵越くんの声が聞こえたと思うと途端頭にかかっていた力がなくなる。

とりあえず顔を上げてみると、そこには安堂さんの胸ぐらを掴む宵越くんの姿が。

 

でも、なんで宵越くんが怒ってるんだろ?宵越くんも確か入って早々の時は似たようなことを言っていたって慶さんたちから訊いてたんだけど。同族嫌悪ってやつかな?

 

「…事実だろ?マイナーなネタスポーツ」

 

胸ぐらを掴まれながらも慌てず無表情のままに言葉を並べる安堂さん。

絶対この人野球以外にもやってるって。この落ち着きよう、絶対どこかでケンカやってたって。今度調べてみようかな…。

 

「そこじゃない

遊びでやってるかどうかを、お前が判断すんな」

 

…へぇ。

ゴメンね宵越くん。同族嫌悪かもって思っちゃって。

 

「…生意気だなお前」

 

ボクや慶さんがいくら呼びかけても無表情を貫いていた安堂さんにようやく変化が起きた。

 

軽く笑みを浮かべながら掴んでくる宵越君の右肘を掴んでそのまま力任せに振り抜いた。

その先には先程までボクの頭を掴んでいた慶さんと水澄先輩が回り込んで待機していた。

 

よかった、宵越くんがケガしないで。

 

「なっ、何を…!」 「あらら…思ったより軽くて」

 

仮にも80kg弱の宵越くんを投げ飛ばすなんてね。流石、ステータスは見えているけど野球部エースなのは伊達じゃないってところかな?

煽られた宵越くんが「上等だコラ…」と青筋を立てるも2人がなんとか抑えている。

 

ボク?流石にフィジカルで敵うとは思えないから大人しくしてますよ。

とりあえず忍び足で今の行動からもう1人()怒る可能性が高い人の傍に近づきながらだけども。

 

「ハハ…吠えてもダセーだけだぞ。

 

競争率の低いマイナースポーツなんざやってる奴は、俺からすりゃ競争から逃げてるようにしか見えねぇ。()(なか)(かわず)だ」

 

「数が多けりゃ偉いってのか?」

 

「少ないよりゃマシだ。『強い人間』が集まる」

 

「ハッ、井の中はどっちだ」

 

「…あ?」

 

「マイナーだろうがメジャーに負けないすげー奴はいるっつってんだよ」

 

…感動物だね。あの宵越くんがこんなに言ってくれるなんて。マーくんとか六弦さん、後は取材の時にいっくんとか星海のメンバー、特にフワちゃんに対面できたのがよほど響いたのかな?

確かに、ステータスじゃこの間見たフワちゃんの方が安堂さんよりも上だからね。指摘したところでしょうがないけど。

 

「口でならなんとでも…」

 

「勝負すりゃわかるぜ」

 

「…勝負?野球じゃねーよな?ネタスポーツなんざやる気ねーぞ」

 

「ああ…!?えーとそりゃアレ…」

 

途中まで良かったのに急に言いよどむ宵越くん。うーん、別に安堂さんが口が回る訳でもないのにこれは良くない。せっかく格好良かったのに。

 

ま、それをフォローするのが周りの役目なんだけど。

 

「週末の『体育祭』。

部活対抗種目で勝負ってのはどうだ?運動能力だけのフェアな勝負になる」

 

「フェア?…ナメてんのか?

どう見ても半分は運動できそうな身体じゃねぇ」

 

「絶対負けないと?」

 

「当然だろ」

 

「じゃあ俺たちが勝ったら、旧体育館(ここ)を諦めると約束しろ。

負けないんだろう?」

 

「……」

 

へぇ、流石慶さん。

共有の提案を蹴られたことで旧体育館を即時明け渡すか申請を待って明け渡すかの2択を、宵越くんが流れを作ったおかげで生まれた『勝負』をエサに五分五分の話まで持ち直した。ここで断わればそれまでだが、野球部の沽券に関わる以上断わられることはまずない。

 

ボクもまだまだとしか言えないなぁ。精進しなきゃ。

 

「俺が勝ったらお前ら即日出て行くっつー条件なら」

 

「…ああ、わかった」

 

よぉし、交渉成立!

 

この場で話し合うことがもうないからか野球部の面々が旧体育館から立ち去っていく。

最後に扉をくぐろうとした安堂さんが振り返ってボクの方を見やった。

 

「お前、途中から急に静かになったな。旧体育館(ここ)が取られるかもって怖じ気付いたか?」

 

「別に?結局ボクからの質問に1つも答えられなかったセンパイを相手にどこを怖がればいいんですかね?

『沈黙は金、多弁は銀』とは言いますが、多用するのはオススメしませんよ。

…将来プロになるのであればこれまで以上に取材の場に立つことは増えます。聞かれたことに答える質疑応答の練習を設けることをお勧めします」

 

個人的に気になっていたことを伝えると安堂さんはフンッと鼻をならして立ち去っていく。

 

ふぅん、全く話を聞かない人だと思っていたけどアドバイスを聞く耳は持っていたか。

だからといって、評価を上げるつもりはないけどね。

 

あの人はどうしても気にくわないや。

 

尚、この後慶さんやマーくんから尋常じゃないほど怒られた。

『校内の立場が違いすぎる野球部に本気で申請されたらマズいのに、何正面からケンカを売ってるんだ』と。

いやぁ~、確かに最初は思うがままにやっちゃいましたけど、多少暴走しても慶さんたちがいるなら大丈夫だと思ってと伝えたら1つだったたんこぶがもう1個増えてしまった。

 

うあぁああああーなんでー()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野球部と衝突して数日後、『体育祭』当日。

夏休み直前の時期でもあるが運動部は地区予選真っ最中の部活が多いこともあり息抜き行事として運営側の先生達は思っているかもしれないけれど、

 

「血中酸素濃度と脈拍(みゃくはく)申告」

 

「「うす」」

 

「低めに出た奴は炭酸(たんさん)。通常値でも糖分を忘れるな」

 

「炭酸抜きです」 「バナナ欲しい人~?」

 

「競技中にピークを持って行く。騎馬戦が始まるまでにアップ挟むぞ」

 

「「うす」」

 

部活の活動がかかっているボク等としては死活問題だ。どんな些細な事にも最善を尽くさねばならない。たとえ、そのやる気に周りがどん引きしようともだ。

 

…それにしても、

 

「あれだけ啖呵切ったのに、ボクは騎馬戦出られないなんて…」

 

「仕方ねぇだろ、お前()()なんだから」

 

「前もって言ってただろうが。1部活からは8人までしか出られないからフィジカルで不利なお前は出さないって」

 

「わかってますよ慶さん。でも、なんか勝負から逃げたみたいに思われそうで…」

 

「そんなこと言う人がもしいたら全員潰してくるから、安心して待っているといいよ、叶」

 

おぉ、マーくんが黒いオーラを出しながら頼りになることを言ってくれる。

皆から受け取った測定器やドリンク、バナナの皮で両手をいっぱいにした状態でアナウンスに従って入場していく皆を人見と一緒に見送る。

 

やっていることはガワだけ見ればマネージャーだね。ボクと人見はただでさえ女子と間違えられることが多いからね。首元まである髪の毛をボクはお団子人見は後ろで1つにくくっているから、こうして選手達を見送る場面とか我ながら結構良い絵になってるんじゃないかと思う。

 

「け…結託(けったく)してカバディ部を?」

 

「あー…協力すんならなにかしら礼はする」

 

んー?何やら野球部の周辺から何か怪しい声が聞こえてきたね。

もしかして、他の部を買収してる?

ホントなりふり構わずくるね野球部。そんなに旧体育館を占領したいんだね。立場の優位さをこれでもかと利用してくるなんて。

 

うーん、正直何もしなくてもマーくんたちなら勝ってくれる気はするけれど、野球部だけ番外戦術をしてカバディ部がただ正面突破するだけってのも癪だからね。ここらで1つボク等も動くとしましょうか。

 

「人見、ちょっとだけ付き合ってくれない?」

 

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