ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※体育祭編の後日談とつなぎのお話。オリジナル展開があと数話続きます




第27話 1年2組

「じゃとりあえず。1学期お疲れ様、カンパーイ!」

 

「カ…カンパーイ…」 「フン……」

 

ボクの乾杯の音頭に各々が反応…いや、宵越くんコップすら掲げてないんだけど。

ま、別に構わないけど。

 

「おい…なんでここに委員長がいんだよ。聞いてねぇぞ」

 

「ヒッ!!」

 

「言ってないからね。ちょっと乃子さんに相談したいことがあったんだけど、1対1じゃあれだから宵越くんも誘ったって理由(ワケ)

 

「んだよ。ただチキっただけか」

 

「ヒドい言い草だね。ここのお金代わりに出してあげないよ?」

 

「ゴ、ゴメンね…。私が前ここに来てみたいって言っちゃったばかりに…。

それに姫沢くんの相談なんて私なんかに応えられる気がしないんだけど…」

 

「頼んでるのはボクの方なんだからこれくらい当然だよ。それに相談って言ってもそんな深刻なモノでもないから安心して。ちょっと女の子の意見が欲しかっただけだから」

 

ボクらがいるのは以前宵越くんと畦道と来た駅近のバイキング。ボクの部屋に乃子さんを呼ぶ訳にもいかないから、以前宵越くんたちと来た時の写真を見せた時に行ってみたいって言っていたことを思い出したのが切っ掛け。

 

終業式の為学校はお昼までだった。部活もいつもより早く終わるから丁度良いと思って2人を誘った。以前来た時よりも人が多いけれどまぁ大丈夫だろう。

 

「姫沢くんが最近困ってる事って言ったら…体育祭のこと?」

 

「うん。まさか初めて喋った相手が急に()を名乗ってくるなんて思いもしなかったよ」

 

 

 

 

 

『あの……柔道部の部長さん?』

 

『お兄ちゃんと呼んでくれ!妹よ!!』

 

『いや、ボクは1人っ子ですし。それにこんな格好(チア服)していますけど男ですから…』

 

『何故だ!何故呼んでくれないのだ!!』

 

『…………』

 

騎馬戦が終わった後、すぐにボク等の方へ走ってきた柔道部部長(凶人)を相手に話が通じないと分かった時は正直ぶん殴ってやろうかと思った。だけど、先に頼み込んだのはこっちだし、部長の後ろの他部員を見てもおろおろしていて何が何やらといった様子。

何故『お兄ちゃん』と呼ばれたがるのか、妹と勘違いされているのか全く心当たりはないけれども。このままだと話が進まない。

 

……ま、呼ぶだけタダか。

 

『おに…『後輩女子相手に迫ってんじゃないよ!この変態!!』…』

 

とりあえず相手の要求を飲もうと口を開くよりも先に、目の前の相手に拳骨を落とす女子生徒が現れた。柔道部部長は少しだけ衝撃でつんのめるがすぐにその女子生徒に向き直って何やら口論を始める。

 

誰だろって思ったけど結構有名な人だった。柔道部の部長さんの幼馴染み兼()()。マーくんたちと同じクラスなんだけど、結構な頻度で休み時間の度に隣のクラスの彼に絡みに行くほどの熱々のカップル。周りからそうはやし立てられる度に両者から即否定されていたらしいから実際どうなのかは分からないけど、この仲の良さを見る限り本当みたいだ。

何が何やら分からなかったが、とりあえず一難去ったみたいでホッと一息ついた。

 

 

 

 

 

「ま、その先輩に男ってのがバレた後はボクも変態扱いされたけども」

 

「そ…そうだったんだ…。大変だったね…?」

 

「あの時はやっと話が通じる人が来てくれたことがただただ嬉しかったから、変態扱いも甘んじて受け入れたけどね」

 

ボクの格好が格好だったのもあってか、その先輩も他の柔道部の方々もボクが男だってことが信じられないみたいだったけど。その『変態』呼びされた後も呆然としながら信じられないって言われたけれども。

 

「じゃ、じゃあその先輩のおかげで柔道部の部長さんも落ち着いたのかな?」

 

「いやまぁ、落ち着いたといえば落ち着いたんだけどね」

 

その先輩が来て意識がボクから先輩に移ったからか、ボクからの話もようやく耳に入るようになったらしい。その為先輩を挟んで3人で会話をする中で彼がボクを妹扱いするようなエピソードが出てきた。

 

そのエピソードは一見荒唐無稽で、客観的に考えれば作り話だと捉える人の方が大半だろう。だけど…

 

「柔道部部長の話を聞いているとね…、なんだか妙に否定しきれないというか…そんなことが実際あったような気がしないでもないというかね…」

 

「え?」 「ハ?」

 

「結論から言おうか、その時彼のことを『お兄ちゃん』呼びした記憶が微かにだけど残ってたんだ。だから、彼の言う通り彼はボクの『お兄ちゃん』なんだろうね」

 

妹じゃなく弟だっていうのはすぐ訂正したけれど。

 

「…え?柔道部の部長さん本当に姫沢くんのお兄さんなの?でも、姫沢くんは1人っ子って…え?」

 

「落ち着け委員長、コイツはたしかに1人っ子だ間違いねぇ。お前…アイツに洗脳でもされたんじゃねぇか?」

 

「ごめん2人とも、端的に言いすぎたね。ボクに兄弟はいないよ。

『お兄ちゃん』呼びはただのあだ名だろうね。当時のボクから言い出したのか、あちらからそう希望されたのかはもう覚えてないけど」

 

「サラッと『お兄ちゃん』呼びに直してんじゃねぇよ…」

 

 

そう報告すると乃子さんは混乱したみたいだ。会話に参加せず食べるだけだった宵越くんは分かりづらいけどボクのことを心配してくれているらしい。とりあえず誤解は解いておこう。

 

まぁ、仮に2人が今のボクみたいなことを言ったら似たような反応はするだろうから、この反応に驚きはしないけども。

 

 

 

「お兄ちゃんが小学校3年生の時って言ってたからボクが1年生の時だろうね。その時のボクはスカートとかワンピースとか、女の子っぽい格好で登校していたから誤解されても仕方ないと思う」

 

「お前な…、小せぇ時からそんなバカみてーなことしてやがったのか…」

 

「バカみたいとはヒドいな。周りからは可愛いとか似合ってるとか結構褒められてたんだよ?」

 

それに可愛い服着てたら用意してくれたお母さんが嬉しそうだったからねー。ボクとしてはそれを断わる理由なんてまずなかった。

 

って、話がそれちゃったね。

 

「とりあえずお兄ちゃんの話を聞いて、ボクも部長のことを『お兄ちゃん』と呼ぶことに決まって解決!……って思ってたんだけど。乱入してきてくれた先輩がなんでかモジモジしながら『私のこともお姉ちゃんって呼んでくれないかな?』って訊いてきたんだよね」

 

「……なんだろうな。もうツッコむ気すら失せちまったよ……。その女子の先輩もアイツと同類だったんだな……」

 

「……姫沢くんはその…、OK出したの?お姉ちゃん呼びについて」

 

それなりの衝撃発言をしたんだからもう少し驚いてくれるのかと思ったけど宵越くんはもう疲れた様子でもう驚いてくれないらしい。乃子さんは乃子さんで先輩のおかしな提案(お姉ちゃん呼び)よりもボクがそれを受けたかどうかが気になっているみたいだし。

 

ままならないなー。

 

「受けたよ。まあ片方だけ受けるっていうのもおかしな話だからね。『お姉ちゃん♪』って可愛く言ってみたらなんか胸を抑えて膝付いてたのは面白かったね」

 

お兄ちゃんからもやってくれって言われたからやってみたら、撃たれたかのようにその後ピクリとも動かなくなったのは本当にお笑いだった。お兄ちゃん案外俳優としても上手くやっていけるかもね。

 

まあそんなわけで2人とは仲良くなって、カバディ部に協力してくれたことを近くで待機してくれていた剣道部の方々も含めてお礼を言った。

ちょっと予想以上にうるさくなったけど丁度よかったかもしれない。野球部とカバディ部の間のトラブルを掻き消すぐらいの()()()が必要だったし、黒服さんたちと一緒に鎮火しようと思っていたけどその必要もなさそうなのは幸いだったね。

 

で、ようやくここからが本題なんだけども。

 

「お姉ちゃんから、お兄ちゃんの最後の大会の応援の為になにかプレゼントを贈りたいけれど何がいいだろうかって相談されたんだよね」

 

「あ?なんでそんなことお前に訊くんだよソイツは」

 

「この間の体育祭のお礼ってことで柔道部と剣道部に手作りのお菓子をプレゼントしたらお兄ちゃんが泣いて喜んだのを訊いたみたいでね」

 

「お前はお前で何やってんだよ」

 

こういうのって結構大事なんだよ宵越くん。付き合いっていうか礼節っていうか。こういうのを怠ってると気付けば周りから孤立したりするんだから。

 

でもなー。

 

「ボク部活動に入るのは今年が初めてでそういうの詳しく詳しくないし、最後の大会の応援の為にこの間みたいなお菓子をプレゼントするのもなにか違うと思うから…。2人の意見も訊いてみたいなって」

 

「わ、私なんかよりも、他の子の方が良いアイディア思いつきそうだけど…」

 

「2人に訊いてもダメだったらクラスの子にも尋ねる予定だけど、正直な所あんまり他の人に訊いて回りたくないんだよね」

 

いや、経緯を話しても別に問題はないんだけど、『ボクがプレゼント何が良いか訊いて回っている』ことで生じるかもしれないウワサとかが面倒だ。夏休みに入っている訳だから気にしすぎなのかもしれないけれど。ボクに関するウワサだけなら大丈夫だけど、カバディ部や柔道部にまでウワサが伝播する可能性を考えたら自意識過剰すぎるかもだけど下手なことはできない。

 

……そこまで考えるんだったらチアの衣装を着たりしなければよかったんだろうけど。まぁあれはボクの楽しみ以外にも人見の悩み?解決の為にも必要なことだったから。まぁ、もしもの時は黒服の方にも助けを求めればいいか。あんまり頼りすぎるのは良くないんだけどなぁ。

 

「うーん、お菓子以外でってなったら…。食べ物とかの生物 (なまもの)はダメだよね…だったら…」

 

「別になんでもいいだろ。プレゼントがなんだったからって結果に響くことなんてねーんだからよ」

 

「言いたいことは分かるけどぶっちゃけすぎだよ宵越くん。こういうのは気持ちの問題なんだから」

 

うんうんと唸りながら考えてくれる乃子さんとは対照的に自分の食事に戻る宵越くん。こういう時性格が出るよね。まぁ、こういう時に乃子さんみたいに考えてくれる宵越くんなんて解釈違いが生じそうだからまあいいんだけど。

 

「……そうだ、お守りとかはどうかな!!」

 

「あぁ、『健康祈願』とかそんなやつか?ま、いいんじゃねーの?そこらへんの神社で買えばすぐに用意できんだろ」

 

「お守りかぁ…いいね。大会前に渡す理由としても十分だし、たしか手作りできるやつもあるんだっけ。

乃子さんありがとう。今度お礼に何かしらの形で返させてもらうね」

 

ウェっ!!?そ、そんな…わざわざそんなことしてもらわなくても…。

今日とか、こんなお店でご馳走してもらったんだし…」

 

「もらっとけよ委員長。コイツのことだ。テメーが満足するまでお礼を()()()()()くるんだから大人しくもらっておいた方が楽だぞ。

ま、大量に欲しいってんなら、粘ってみるのも手っちゃ手だが」

 

「い、いや!!私はそんなつもりは……」

 

「宵越くんが思うボクについて少し話したいことはあるけれど…、乃子さんはそう慌てなくていいよ。ボクがしたくてそうしているんだから。遠慮しないで、ね?」

 

「そ、そう?……じゃあありがたく……ちょうだいします…?」

 

思ったよりも早く解決して胸をなで下ろす。やっぱり自分で分からないことは周りに聞いてみるものだね。それで出てきた答えが『お守り』なのもなにかの因果を感じそうだけども。とりあえず、お姉ちゃんには後で連絡しておこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく!せっかく俺のおかげで野球部に勝ったっていうのに野球部と旧体育館(スペース)を共有しやがって!!勝ったんだからもっと強気に出てもいいだろうが!!」

 

「もう、マーくんが言ってたでしょ?カバディ部(ボクたち)だけで独占する必要はないって。それに野球部のトレーニングの機材も使って良いって話でボク等もトクしてるんだから文句なんてないでしょ?」

 

「よ、宵越くんの言いたい気持ちは分かるよ?でも姫沢くんの言う通りだって私も思うかな?」

 

「だぁぁ!!俺に味方はいねぇのかよ!?」

 

「ヒィッ!!」

 

「落ち着きなって宵越くん。乃子さんに当たるのもそうだしここお店の中。OK?」

 

「……クソッ。悪かったよ委員長」

 

「う、うん。気にしないでいいよ、宵越くん」

 

「ボクに対してはないのかなー宵越くん?」

 

「うっせー、お前は黙ってろ」

 

ボクの相談も終わって雑談タイムに移った訳だけれども、最初ご飯の方にしか興味が無かった宵越くんもある程度満足したのかボク等の会話に入ってくるようになった。最初はあまり話慣れていない宵越くん相手に少し緊張気味だった乃子さんも今ではある程度落ち着いて会話できるようになって、ボクとしても嬉しい限りだ。

 

コーヒーカップを持ちながら前方にいる2人を見やる。

 

1人は以前からボクが推している宵越くん。偶然同じ高校の同じ部活に入った縁を利用して彼の食事事情の面倒を見れるようにして、クラスメイトであること以上にほぼ毎日顔を合わせる生活を送る。さらに、カバディについても素直に全て言うことを訊いてくれる訳ではないけど、ボクの経験と技術を受けてどんどんカバディ選手として成長していくその姿は見ていてとても感慨深いものを感じさせてくれた。

 

もう1人はヘマして入学が遅れたボクに対して真摯な態度で助けてくれた乃子さん。クラスの男子はともかく大半の女子にすらも身長で負けているボクとしては貴重な同じ目線で話せる存在。彼女に助けられながら、時には委員長業務等の助力を申し出て感謝されるクラスでの毎日はそれまでの学校生活では得られないものだった。

 

そんな付き合いがある2人に対して、ボクは隠し事をしている。

 

マーくんと慶さんには既に話しているこの隠し事は別に誰かを害している訳ではない。だから、最初は終わるまで誰にも話すつもりはなかった。仮にバレたとしても特に問題はないし、もし気分を害してしまったならその時に対応すればいいとさえ思っていた。

 

でも、こうして2人の目の前にいると隠し事をしていること自体に最近少し申し訳なさを感じ始めたんだ。

 

七夕(誕生日)にボクの過去をカバディ部の皆に知ってもらったからか、体育祭数日前にマーくんの大切なカバディを害されて怒ったからか、体育祭当日宵越くんにカバディ部の危機を救ってもらったからか。

 

何が切っ掛けかは分からないけれど、こんな他人を巻き込んだ大がかりなワガママをしてしまったからかボクは内心とても落ち着かないでいる。吐き出したからって別になにかが変わる訳でもないのに、ボクはこの隠し事を2人に吐きだしてしまいたいと思っている。

 

話すなら今しかない。

 

「宵越くん、乃子さん。ちょっといいかな?話したいことがあるんだ」

 

コーヒーカップを音も立てずに置いた。特に大きな音は発していないはずなんだけど、それまで会話していた2人が何事かと驚いたかのような表情でボクの方を見てくる。

 

なんだ、宵越くんも驚くぐらいの体力残ってるんじゃん。

 

そう内心でククッと笑いながらボクは2人にこれまで隠してきたことを打ち明けることにした。

 




軽くモブ?の紹介

※お兄ちゃん(柔道部部長)
原作数コマのみの登場から抜擢。BSSしてオリ主に都合良く使い捨てられる予定が、気付けば兄を名乗る狂人になった。未だ幼馴染みには彼氏がいるものだと思いこんでいる。
実際にオリ主と過去関わったことがあるかは神のみそしる。

※お姉ちゃん(幼馴染み)
オリキャラ。外見は茶髪のポニーテールで活発な感じ。年が離れた兄と姉がいる。小さい頃から姉に憧れていたこともあって、ことあるごとに柔道部部長の姉を自称することがあった。それの影響でお兄ちゃんが張り合った為、ある意味狂人を生み出した切っ掛け。彼氏について勘違いされていることには気付いていない。
ちなみに女子テニス部部長。

※剣道部部長
原作数コマのみの登場から抜擢。侍言葉なのかオタク言葉なのか判断がつかない言葉遣いをする。これから出番があるかについては神のみそしる。
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