※ようやくこの話からVS英峰戦開始です。微妙に原作と展開が違ってきます。予めご了承ください。
「へー、いっくん明日の練習試合出るんだ。情報収集がメインって言ってたから最後まで混ざらないものだとばかり」
「ん、神畑さんが何を考えての判断かは分からないけど俺としては大助かり。おかげで何の苦もなくベンチを温められる」
「試合に出るのすら面倒くさがってんじゃねぇよお前…。何のためにカバディ部入ったんだ」
「…何当たり前みてーに
薫の上に乗ってマッサージついでに雑談をしていると宵越くんが突然大声を上げるのでビクッと震えた。突然の大きな音って回避しようにも出来ないから困る。
「ちゃんと神畑さんとそっちの王城さんから許可取ってる。宵越心狭すぎ」
「うっせー!毎日俺らの部屋に来やがるから言ってんだ!!お前英峰に友達いねーのかよ!!」
「皆とは明日からも会えるけど叶とは合宿がある明日までしか会えない。だから来た」
「はいはい。来てくれてありがとねー。ボクも嬉しいよ」
「惚気てんじゃねぇ!!」
宵越くんがキレ散らかしているけれど薫はどこ吹く風とでも言わんばかりに相手にしていない。まぁ、負けず嫌いな宵越くんと面倒臭がりの薫がそもそも噛み合うとはとても思えなかったから別にいいんだけど。
能京に割り当てられた部屋に薫と若菜さんが遊びに来ていた。英峰のミーティングが終わって暇になったからというのは薫の言い分。若菜さんはその見張り役らしかった。
今マーくんと慶さんが別室でミーティング用のデータ整理をしている。待機中のボクや宵越くん以外の能京メンバーも当然この部屋にいた訳だから軽く雑談をすることになった。
「にしても1年とはいえその体格で元世界組だっつーのにスタメンになれねーなんて、英峰のレベル半端ねえな」
「叶と幼馴染みなら小さい頃からやっていたのだろう?それでもスタメンではないなんて英峰の選手層はすごいな」
水澄先輩と伊達先輩が薫がスタメンではないことに驚きを隠せないでいる傍らボクは伊達先輩の言葉に違和感を覚えたため修正することにした。
「伊達先輩、薫がカバディを始めたのは中学からですよ。確かに小学校で初めて会った時に勧誘はしましたけれど『サッカーやるから無理』って断わられちゃいましたし」
「む、そうだったのか」
「おいまて姫沢。コイツがサッカーやってたって本当か?」
「ここでウソ吐く必要ある?ついでに言うならボクも小学生の頃薫と一緒にサッカーやっていたから間違いないよ」
「お前もやってたのかよ!!?」
あれ、言ってなかったっけ?伴には随分前に話してたからてっきり宵越くんも知っているとばかり。
でもまぁ、正直今の宵越くんにサッカーの話題を振って良いのか分からないから。伴もそう判断して言わないでいてくれたのかな。
「やってたって言っても小学生の時までだよ。最後の大会も県大会準優勝だし。全国でベスト4の宵越くんと比べたら全然」
「宵越君と比べるのもアレだけど、姫沢君たちも結構良いところまで行ってるね!!?」
「ゴール前叶からドフリーでパスもらったヘタクソがポカしなかったら全国行けてた。外したアイツ今でも許さん」
「辛辣だなー薫。まだ根に持ってたんだ」
「外したそいつが『ヘタクソ』なのは否定しないんだなヒメサワ」
「ヘタクソじゃなきゃただ前に蹴り込むだけで良い場面で外さないよ。流石に本人の前では言葉を選んだけどね」
あれ?いつの間にかカバディからサッカーに話題が移っている。宵越くんの前でサッカーについて口に出したボクが悪いのかなこれ?
ま、別にいいかとスルーしているとある程度落ち着いた頃に若菜さんが切り出した。
「あー、コイツがスタメンじゃねーのはな。コイツのスタミナがからっきしだからだ」
「はぁ!!?ンだよそれ!!?」
「若菜さん、それ僕たちに話しても大丈夫なんですか?」
「今更だろ人見。合宿中コイツがガス欠になってるところはほぼ全員に見られてただろうし。それに、来家については俺等以上に詳しいヤツがそっちにはいるんだからな」
「……まぁ、ここのメンバー内でも下から数えた方が早い方なのは事実ですね」
若菜さんに振られたのでとりあえず肯定しておいた。
「言われてみれば来家君が地面に突っ伏している所よく見かけてたけど本当なの?姫沢君」
「うん。薫はよく食べる割に筋肉が付きづらい体質みたいでね、体力は小さい頃から少ない方だったよ。
それに、身長もここ最近で急に伸びたのもあるだろうね」
「身長だぁ?」
若菜さんが思いっきり顔をしかめながら問い返してきた。 立場としてはボクも若菜さん側だから若菜さんが嫌な顔を浮かべるのも理解できる。でも、身長がありすぎるのもこれまた問題なんだよね。
「去年の今頃の薫の身長は約180cm。大体今の宵越くんと同じくらいだったんですよ。それから3月までほぼ一緒でしたけど成長痛がヒドくてあんまり運動もできなくて。元来の面倒くさがりも合わさって体力も落ちちゃったみたいです」
中学校の頃を思い出す。時々薫がボクの家に泊まりに来た時にも『身体の節々が痛い』ってよくボクのベッドに横になっていた。眠い目をこすりながら痛がる患部を擦っているといつの間にか同じベッドで朝を迎えたことがあったなー。
「今が200mなんだっけか?たしか入部してきた時よりも伸びてたよな。お前、神畑さんの身長(203cm)抜くのもそう遠くねぇんじゃねぇか?」
「抜いても抜けなくてもどっちでも良いです。でもこれ以上身体が痛むのは御免被ります」
「んー、デカイヤツはデカイヤツなりの悩みがあるんだな~。ヨイゴシもあったのか?」
「はん!こんなナヨナヨしてるヤツと俺を一緒にすんじゃねぇよ!!」
「手厳しいなぁ宵越くん」
その後、マーくん達が戻ってきたのと入れ替わりに英峰の部屋へ帰って行った2人。帰りたがらない薫のケツを思いっきり蹴っている若菜さんを見ていると英峰での薫の立ち居振る舞いが見えてきそうで少しだけ不安になる。まぁ、仲良くやっているのならいいのかな?
それから明日の3校練習試合についてのミーディングが始まった。
フォーメーションは合宿前に発表されていた通り。スタメンから外れた3人、特に関と人見は少し顔を下に向けていた。けれど、『ベンチでもやる事は多い。頼むぞ』と慶さんが3人に向けて言うと大きな声を張って返事をしていた。うん、大丈夫そうだね。
それから守備組の水澄先輩や伊達先輩、畦道には格上だが身体では負けていないことを頭に入れて恐れず捕らえに行くように伝えられた。唯一身体で劣るボクには『
いいね、やる気が漲ってきた。
そして問題の攻撃。普通ならエースのマーくんが1番槍を務める所だけど、マーくんを良く知る人間(いっくん、ミスミン先輩etc…)がそれぞれの高校にいるということで、マーくんは囮役ということになった。
その代わりに、合宿中に身につけた
本当にすごい。いくつか諸事情が絡んでいるとはいえ、カバディを初めて数ヶ月の初心者がここまで成長したということに驚きを隠せないでいる。
宵越くんと会ってからご飯を用意したり、カバディのプレーを集めたビデオを一緒に観賞したり、疲れた身体をマッサージしたり色々お世話を焼いていたけれどもその甲斐があったなと感慨深くなった。
身体能力は元々ボクやマーくんより秀でていたけれど、カバディの知識や技術においてはまだマーくんは愚かボクにも劣る宵越くん。けれど短期間におけるこの成長ペースを鑑みるともしかしたら夏の大会中にでもボク以上に成長する可能性を秘めている。
『ダメだったらすぐ僕が攻撃出るから』とうずうずを隠しきれないでいるマーくんを相手に返答に窮している宵越くんを見ながらボクはそんな事を考えていた。
ミーティングを終えて就寝の時間。抱き枕を抱えて眠りにつこうとするボクの頭にあるのはスタメン起用されないことに正反対の反応を見せる薫と関、人見の表情だった。
薫は例外だから置いておくとして、2人が険しい顔をしていたことに正直ホッとする自分がいた。明日の試合はともかく、大会はベンチも含めた総力戦だ。疲労と緊張の為いつもと同じプレイができないメンバーのフォローに回る他、そのメンバーが落ち着く為にベンチに下がった代わりに
だから頭では分かっている。分かっているんだけれども。
1年生ながら規格外のフィジカルを擁する薫でさえスタメンから外れた事実に対して、
ボクも英峰に行っていたらスタメンじゃなかったんだろうなぁ…
と、どうでもいいことを考えてしまう愚かなボクを頭から消したくて仕方なかった。
合宿最終日・午前8時
体育館に3校のメンバー全員が揃った。昨日まで同じように集まっていたはずなのに明らかに空気が違う。
「今回の練習試合は公式戦の半分、10分ハーフ!!7対7の総当たり形式になります!!
ボーナスは
「初戦!
「「しゃす!!」」
英峰高校 能京高校
ヒロちゃん先輩の号令に合わせて互いに礼をする。
チラッと英峰のスタートメンバーを見やると昨日薫が言っていた通りいっくんがいた。他にも八代さんやたっくん、若菜さん等々主力メンバーを出し惜しみなく選出してきた印象だ。向こう側のベンチで薫がのほほんとしているのが見えた。
ボク達も当然そう。…つまり…この試合の結果がそのまま大会の結果に直結する可能性が高い。絶対に負けられないね。
「先行・英峰!!」
「い…いきなり…!!?」
ベンチの関が思わず声を上げたようだ。英峰の
「カバディ…」
こうして実際に試合で対面するのはボクが中学1年生の夏頃か。あの時は1軍と2軍を行き来するばかりだったのもあって数えるぐらいしか対決していないけれど、あの時よりも動きの読みにくさや迫力は桁違いだ。当たり前だけどセンバツの頃からいっくんも成長している。
大きい上に腕が長い為コートのどこにいても倒れれば自陣に届きそうだと錯覚してしまいそうになる。思わず伊達先輩と繋ぐ
と、思ったのも束の間。左側でラインを下げる動きが
「「「下がるな(らないで)!!!」」」
ボクと同じタイミングでマーくんと慶さんも声を上げるが間に合わない。
いっくんは今の位置から大きく動くこともないまま、思わずラインを下げた水澄先輩と畦道の間へ向けてただ長い脚をこちらへ伸ばしただけで、ボーナスラインを楽々と侵略することに成功。更にこちらがボーナスを取られたことを認識する間もなく即座に帰陣。
まさにあっという間の出来事だった。
「英峰ボーナス1点獲得!」
「7人相手は安全に稼いでいこう。大量得点も派手さもいらない」
うーん、
だけど、ボーナスのみではメンバーがコート外に行く事はない。試合が始まったばかりのたかが1点。1度の攻撃で簡単に取り返せる数字なのもたしかだ。
しかしそれは…
「さぁ、守るぞ」
相手が英峰でなければ、だけど。
オリ主(姫沢叶)
中学でカバディを主に取り組むつもりだった為元々サッカーは小学校までと決めていた。サッカー以外にも色々な習い事に取り組んでいた。
4年生から6年生までサッカーに取り組む。5年生からAチームでスタメンに。
ポジションは
最後の試合はラストでパスを出した結果負けてしまったが、もし次同じ場面があってもパスを出すつもりである非エゴイスト。
来家薫
小学校の頃から身長が高かったこともあってヘタクソにしつこく勧誘された。
3年生から6年生までサッカーに取り組み、4年生の頃からAチームでスタメンに。
ポジションは
最後の試合は好セーブを連発するも味方
色々あった結果サッカーをやる気が失せたのもカバディを始める切っ掛けになった。