※これが年内最後の投稿になります。皆さんよいお年を。お正月期間にもう1話上げたい所存()
※少しだけ原作の展開が変わります。ご了承ください。
『そういえば姫沢、ちょっと聞きてぇことがあるんだけどよ…』
『どうしました水澄先輩?伊達先輩も一緒なんですね』
『いや、奏和との試合の時お前なんか
『あぁ、アレですか。アレはですね…』
▽▽▽▽▽
【伊達side】
「くそ…ゴメン…やられたよ…少し考えが甘かった」
守備成功に歓声が上がる英峰とは正反対と言わんばかりに
「少し考えが甘かった。1点ずつ慎重に行くべきだったね」
「…ああ。作戦ミスだ」
コート外で部長と井浦さんが先程のプレイの反省点を上げている。俺はそれを見るだけでそこから何も感情が生まれずただ呆然とするだけだった。
「完全にやられた訳じゃない。まだ2点差だ。切り替えてくぞ!」
「「「…おう!!」」」
井浦さんが手を打ちながら俺たちを鼓舞するので声に出して反応する。
そうだ、今は部長の攻撃失敗についてどうこう考える場合じゃない。井浦さんの言う通り
「伊達先輩場所変わりましょ。
「…………」
「伊達先輩?」
「っ!あぁそうだな、姫沢の言う通りだ」
隣の姫沢に言われるままに場所を変わる。顔を上げないまま姫沢の横を通り過ぎようとすると俺の右腕に何かがピトッと触れる感触があった。
姫沢の両手だった。
「っ!!?いきなりどうした!!?」
突然の出来事に目を見開いて(当社比)驚く。そんな俺の大声に驚くそぶりを見せないまま俺の腕にペタペタ触りながら姫沢は何やら感心したかのように呟いた。
「やっぱり、伊達先輩の腕って大きいですよね。ほら、ボクの両手でも全部覆いきれないですもん」
「そっ、そうか…」
人っていうのは信じられないことが起きたら全く反応できないっていうことを痛感した。俺が聞きたいのは急に俺の腕に触れた理由なのに姫沢の返答はそれに全く触れていない。けれどもこれ以上俺の方から聞き返してはいけないような雰囲気を感じた。
ある程度して満足したのか姫沢が「ありがとうございます!」と礼を言いながら俺の腕から手を離した。それまで感じていた姫沢の柔らかい手の感触が無くなったことに少しだけ寂しさを感じ…いやいやいやいや、姫沢はたしかに男とは思えないぐらい可憐で愛らしいがそれでも男だろう。それなのに何を考えているんだ俺は!!?
「伊達先輩が
頭の中でグヌヌと唸っていると姫沢が俺を見上げながら告げる。軽く微笑んだその表情からは俺をからかう意志は一切見られなかった。
「たった3人で
でも、そうしなければ英峰に大差をつけられるのは必至。ここが
そこまで言うと姫沢は俺に背を向けて自身のポジションに着いた。俺に背を向けたまま最後に姫沢は言った。
「ボクが全身全霊で隙を作りますから、あとは頼みます」
その時俺の身体に無意識に宿っていた無気力感は跡形も無くなった。
▽▽▽▽▽
【若菜side】
「…まだ詰みとまではいかないか…相手の守備は3人…
「…いいんすか。手柄、横取りみたいすけど…」
「構わん。終わらせてこい」
王城さんを倒した喜びから一転しっかりと
メイン攻撃手が居なくなった能京は守備で取り返しにくるハズ…だが、今は
「カバディ…」
ダッシュで狙うは真ん中の伊達。3人の中で1番トロそうだということと
ジリジリとエンドラインまで後退しながらもドッシリと構える伊達からどうやって得点を取ろうかと考えていると左側から急接近してくる姫沢を確認し回避する。
姫沢か…。
最初の
こいつのこの反応の良さはなんなんだ…。まるで俺の動きが前もって分かっているみてーだ。
姫沢1人なら掴まれた所で強引に帰陣できただろうが
なら始めに狙うべきは残り2人。
最初はどっしり構えていたけれど徐々に前のめりになってきている伊達と対角で待ち構えている畦道。
伊達もそうだが畦道も露骨だ。掴もうとする左手が前に出ている。ここをタッチしてくれと言ってるようなもんだ。
それまで標的にしていた姫沢から伊達に標準を移動する。伊達は慌てて回避しようとするが俺の
まず1人タッチ。視界の両端から2人がほぼ同時に援護に来た。姫沢が俺の左足首へ、畦道が俺の胴体へ伸ばして来た手を払う!!
ガガッ
は?
左足で姫沢の手を、右手で畦道の手は払えたつもりだった。
が、実際払えたのは左足だけ。右手は払ったはずの畦道に逆に掴まれ、更に払い終わった左足に姫沢の逆の手で掴まされる始末。
なんだ!!?姫沢も畦道も何をやりやがった!!?
いまだに状況を掴めないでいる俺は左足をパッと放されたことに疑問を覚えるよりも先にぐわっと身体全身を持ち上げられてしまう。
…畦道の技は身に覚えがあった。畦道に片手で持ち上げられながらどこか他人事のように思いながら考える。
そうだ、この技は
八代さんの…
▽▽▽▽▽
【伊達side】
「英峰攻撃失敗!!能京1点獲得ー!!!」
7対6
畦道が若菜を倒した。
すごい奴だとは思っていたが、英峰のスタメン
いや、単独ではなかったか。姫沢も足首掴んでいたからな。掴んですぐ放したのは何故なのかとも思ったが結果を見れば明らかだ。あのまま掴んだままだと姫沢も若菜と一緒に床に叩きつけられていただろうから。
「あ…畦道…!!」
大活躍した畦道に声をかける。が、畦道はこちらを振り向くことなく大きく息を吸い込むと、
「能京!!!こっからだァ!!!」
そう叫んだ。その咆哮によって能京に流れていた嫌な流れが完全に払拭されたのを肌で感じた。
先程姫沢に声をかけられた時肩が軽くなったのを感じたが、良いプレーによってそれまで流れていた嫌な空気が変わることもあったなと思い出す。
…まぁ、俺の場合はいくら『落ち着け』と言われても切り替えることすらできずそのままズルズルと落ちに落ちていったことが圧倒的に多いが。
いや、今そんなことはどうでもいいか。
「畦道のヤロー半端ねえな、単独で倒しやがった」
「…あぁ、そうだな」
気付けば水澄がコートに戻ってきていた。水澄にそう返して残りの2人は何をしているだろうかと顔を向けてみると、
「ナイスアンティ畦道!!これでコート内は4人!しかも1点差!!ここから立て直すよ!!」
「次…」
姫沢が畦道を褒め称えているがそれを受けている畦道は未だ真剣な表情を崩していない。それにどこか違和感を覚えていると、
「え?」
「次の攻撃おらに行かせてくれねーか?いけるから」
そう畦道が言った次の瞬間、
「へぇ…」
姫沢からプレッシャーがあふれ出す…!
そうだった、部長や宵越がいるから忘れかけていたけれど姫沢も2人同じくらい負けず嫌いだということを…!
「英峰タイムアウト!」
そんな流れを断ち切るように英峰がタイムアウトを宣告する。
正直助かった。俺だけだと2人の仲介なんてどう考えても無理だったからコート外にいる部長や井浦さんの助けを素直に頼れるタイムに我ながら情けないが頼ることにする。
が、部長が畦道たちに何か言うよりも先に姫沢の方が早かった。姫沢は部長たちの方をチラッと見ると微かに息を吐いた後に畦道の方へ向き直った。
「
「おう」
思いの他、姫沢は落ち着いていた。が、身体からあふれ出すプレッシャーがそのままであることに少し身震いした。
「
「……」
畦道は何も言わない。だが表情は真剣なまま崩していない。何を言われても自らの意志は曲げないとでも言わんばかりだ。
話は平行線のまま、互いに意見を譲らないままただ時間が流れていく。耐えきれなくなって部長達の方を見るが2人は慌てる様子も無くただ2人を見つめるだけ。
俺が何かするべきなのか?何か言うべきなのか?
だが、俺には正解が分からない。経験に勝る姫沢の肩を持つべきか、先程の好プレーからして勢いに乗っている畦道の肩を持つべきか。攻撃のことについてはからっきしである俺は何も出来なかった。
「畦道がここまで攻撃に意欲を見せるなんてね。チームとしては嬉しい限りだけど」
その時フッと場の空気が急に和らいだ。バッといつの間にか下がっていた顔を上げてみると姫沢が肩をすくめて表情を柔らかくしている。
「ここまで言ったクセにって思うかもだけど、畦道が攻撃にやる気を出してくれて嬉しいんだよ。
そう言う姫沢の顔は笑顔のまま。ウソを言っているようには見えなかった。
「ま、攻撃失敗しても大丈夫大丈夫!!さっきみたいに頑張って取り返すから、…先輩2人が」
「お前も頑張れや!!」
水澄がそうツッコむのとほぼ同時にタイムを終える笛が鳴った。畦道はタイムでそれまであった勢いと集中を切らすことなく
「いや-、 『子の心親知らず』とはこういう事を言うんですね。嬉しい限りですけど」
「お前畦道の親じゃねーだろうが」
「たしかに親ではないですけどこう見えて畦道から結構相談受けているんですよ?カバディのこともカバディ以外のことも。その時おかずをおすそわけしたら嬉しそうにしていましたし」
「お前等は近所のママさんか」
「ずっと自炊してたら無性に他の人のメシ食べたくなる時はある。俺もそうだ」
「いや、それもあるんだろうけどよ。ちょっとズレてねーか?」
畦道が
宵越のファンだからということで夕食をほぼ毎日用意する甲斐性と行動力の高さは言わずもがなだが、井浦さんによる盗撮?でも隣の女の子とよく一緒にご飯を食べていることに茶化したりしたが、普段から困っている子の手助けをよくしている映像が残っていた。
井浦さんも校内では優等生で有名だが姫沢も最近他学年である俺たちの所にまで話題が上がるほど有名になってきている。やれ困っている時に助けてもらっただの、やれ人形みたいにかわいらしいだの、男女を問わず姫沢に告白チャレンジする奴が後を絶たないだの、チアガールの衣装を着ていた時の盗撮写真が高値で取引されているだの(何故か井浦さんの財布が厚くなった後パッタリ聞かなくなったが)、やれ男の娘?だの。
入学してまだ半年も経っていないというのに全国レベルの宵越と同じくらい話題に上がるのは優れた容姿もそうだが姫沢本人の人の良さも多大に影響しているというのは言うまでも無い。
だからこそ、時々分からなくなる。
『アレはですね、六弦さんのマネをしていたんですよ。無表情で寡黙で、ただプレーにだけ集中する修道者。せっかく奏和と戦う訳だから試しにやってみた次第でした』
『ふーん。六弦さんのことはよく知らねーけどよ姫沢と正反対すぎね?』
『だからこそですよ。外見が違くても表情や動作、立ち居振る舞いでまるで本物のように振る舞うのがモノマネの真骨頂ですから』
『モノマネってお前な…』
『モノマネだからってバカにできないですよ伊達先輩。カバディはコンマ数秒の変化次第で攻撃が成功したり失敗したりするんです。モノマネでその数秒を手に入れられるのなら儲けじゃないですか』
考えすぎなのかもしれない。
さっき姫沢は畦道の攻撃志願に最初嫌悪を示していた。その後自分の意見を提示していたが最後には『チームの為』を理由に畦道の攻撃にGOサインを出した。部長達が何も言わなかった所を見るに昔からそういったことをよくしているのかもしれない。
正直俺はこういう感情の機微については得意ではない。そんなことを考えるよりも筋トレをしている方が有意義で身になるからだ。それについて俺より詳しいはずの井浦さんがスルーしているのであれば俺自身が何かする必要はないのかもしれない。
だが、奏和との練習試合でも新しいフォーメーションでも1番姫沢と
姫沢は井浦さんみたいに俺が持っていない物を持っている。経験や頭脳、技術に至っては到底太刀打ちできない。が、その反対に体格や
俺に出来ることは無いのかもしれない。だが、もしも姫沢から助けを求められることがあれば先輩として助けになりたい。こんな不器用な先輩だから器用な姫沢に答えられることはないかもしれないが、それでも目を離さないぐらいは俺でも出来ないことはないはずだから。
英峰コートでは畦道が
俺たちはそんな畦道を見てハラハラしている。が、畦道がコートに手を突くや否や畦道を掴む3人に動揺が走った。
畦道が3人を引き連れながら前進したんだ。
四肢で捕らえられているのは左脚のみ。両手でもがくことこそできているが自らよりも体格に優れた3人を引きずるには幾ら体格の割りに優れた
だが、畦道が
それによってこの勝負の軍配は畦道に上がった。
「能京タッチ3点獲得―――!!!!」
「逆転だあァ!!!」
7対9
ゼェゼェと息を荒げる畦道の元へ姫沢が向かう。姫沢は畦道の手を取って立たせると笑顔で畦道を迎えた。畦道もキツそうにしながらもそれに笑顔で返す。2人の仲で心配するようなことはなさそうで一安心だ。姫沢の方はよく見ておくようにするが。
歓声を上げる俺たちとは反対に他の英峰と紅葉の面々は畦道が守備も含めて4点連取したことに対して驚きの声が上がり続ける。
そうだ畦道は攻撃で3点も取った。であれば、
「…………」
「助かった!」 「うす!!」
「ナイスレイド。僕も負けてられないな…」
コート外にいた
一時は
先程まで流れていた嫌な流れはどこにも見当たらない。それどころか押せ押せと言わんばかりに流れがこちらに向いてきている。もう何も怖くなかった。
「………………そうか…お前か…」
「まず潰すべきだったのは…」
※オリ主介入によって伊達救済?です。オリ主なりに嫌な流れを断ち切る為に行動した結果です。それでやることがボディータッチとかどこのインキュバスかって話ですが。