※1月5日(日)はお正月と言えるのか微妙ですが、お正月休みだからセーフということで()
※少し原作の展開が変わります。予めご了承ください。また、軽く流血表現があります。ご注意下さい。
「接戦ですね…この暑い中よく気持ちを切らさず…」
「ええ、本当~に…座ってるだけで汗が噴き出る」
「
「あぁ、ありがとう辻くん。いやぁ、君たちには頭が上がらないよ。生徒だけでなく私達のサポートもしてもらえるだなんて」
「いえ、私達としても学生が青春を謳歌している所を見られるのは嬉しい限りですから」
「そういえば、辻さん以外の3人はどちらへ?」
「あぁ、あの3人はちょっと野暮用でちょっと下の町にまで降りています。最後には戻ってくるでしょうから大丈夫ですよ。気にさせてしまって申し訳ありません、武石先生」
「はは、あの3人も相変わらずですね。…
「いや、さっきから彼1人だけ――…」
▽▽▽▽▽
「
「うん。…飲み込む
慶さんがマーくんに話しかける。いっくんの状態についてボク達全員に周知しようって所かな?
いっくんはこの灼熱の体育館の中にいるというのに汗の一滴も出ていない他さっき慶さんが言った通り唾も出てこない始末。
正直これが試合中じゃなかったらすぐに休むよう言わなきゃいけないだろう。健康面だけが問題なんじゃない。呼吸するだけでも楽じゃない、カラカラに乾いた状態というのはベストコンディションとはほど遠いはず。
だけど、
「長い付き合いだ。神畑の状態はわかってる。パフォーマンスは絶対に落ちない。万全だと思って潰そう」
こればかりは馴れ合いは不要。試合に出ている以上情けは無用だからね。手加減したらそれこそいっくんへの侮辱だから。
「カバディ…」
いっくんの
畦道の活躍もあって今能京は守備7名と万全の状態。それと引き替え、英峰は
7対9と点数でも負けている現状いっくんは人数増減のないボーナスより、タッチを積極的に狙わないハズがない。
いっくんの長い手が伸びた。伸びた先にいたのは宵越くん。が、
宵越くんは回避の天才、天然の
いっくんのリーチを活かした幾度によるブン回しのどれにも掠ることなく避けていく。
「おおお!!」 「避けるの上手いなアイツ!!」
コート外から歓声が上がる。こればっかりは宵越くんの才能だよね。本人は普通に出来るぐらいの認識なんだろうけれど。
当然ボクも黙ってはいられない。両隣の水澄先輩、伊達先輩と
宵越くんを狙ってもらちが明かないとなったのかいっくんが照準を宵越くんから隣のカレ、畦道に向けて左脚を伸ばす。すんでの所で畦道がこれを躱すも浮いてしまった。
ここだ!!
宵越くんを守るのは当然としても畦道をみだりに触らせる訳にはいかない。新参者の伸びしろを守るのは古参としての責務だ。
「カバディ…」
ガードが堅いことを察したいっくんが大きく下がった。
よし、第1陣は凌ぎきった。もちろんここで倒すことが出来れば100点満点だけれども誰にも触られずに帰陣させるだけでも充分合格点だ。いっくんがいるとはいえコートにたった3人しかいないのなら
だけど、いっくんがそれを分かっていないはずが無い。いっくんならここで勝負を仕掛けない訳がない。
「カバディ…」
後ろに下がったいっくんはキャントを止めないが数秒微塵も動かない。ボク等よりも上に視線を向けている。そこから視線を下に下げていって畦道の方を向いた、
瞬間
「カバディ…」
いっくんのオーラが変わった。
「何か…」
視界の端で宵越くんが何か言ったようだがそれどころじゃない。これはさっき3点取った時と同じかそれ以上の集中力…!
よそ見していたらやられる…!
いっくんが動いた。
数歩直進ダッシュを挟んだ後マーくんへ向けて速度を落とさないまま曲がる。
「カバディ…」
と考えていると突如進行を止めたいっくん。右脚を軸にして左脚を回転させようとした。
この技は知っている。というか、これまでで散々見てきた。
ロールキックだ。
畦道が宵越くんのロールキックを止めた時から考えていることがあった。
ロールキックは長い脚を使って手では届かない長い範囲で敵を横に切り裂く技だ。
お世辞にも長身どころか平均身長にも届いていないボクがいくら腕を伸ばしたところで敵わない。リーチという言葉はカバディどころかどのスポーツをやっている時でもボクに縦塞いできた。
だからこそ対策を取らないはずがなかった。
後ろに下がろうとする2人と
いいよ。
けど、ボクが目指すのは
地面スレスレまで体勢を落としたボクの頭上を何かが通り過ぎた風を感じる。
回した左脚の着地が完了した。ボクは未だ右脚に辿り着いていない。が、あと数秒後の未来ではしっかり掴んでいる。ボク1人のパワーでは到底敵わないだろうけどその後はきっと皆がなんとかしてくれるはず…
あ
スカした
突っ込みすぎた。もう止まれない
グチャッ!!
《王城side》
何か、
嫌な音がすると同時に叶の首が跳ねた。
神畑のロールキック時の軸足を狙った叶の低身タックルは、捉えよう伸ばした叶の両腕を擦り抜けて帰陣の為に蹴った脚が顔面に
叶の支援の為に動いていた
神畑も変な音と変な感触があったからだろうか、ちらっと後ろに振り向いて惨状を確認すると途端に細い目をかっぴらいて驚愕の表情を浮かべている。が、すぐに前を向いて帰陣する。
突如発生したハプニングに僕たちは誰も動くことができなかった。
叶の左腕が再度神畑の脚へと伸びる。
掴むことにこそ成功するもキャッチが浅かったこともあり神畑に即座に剥がされる。
が、お代わりだと言わんばかりに今度は右手を逆の足首へと伸ばした。
これ以上ないぐらい完璧なアンクルキャッチだった。
が、相手は世界組の中でも最長である神畑。
そのアンクルキャッチがあと数歩前の段階で、かつ僕を含む他のメンバーも支援に動いていればもしかしたら守備成功していたかもしれなかった。
が、現実は長身を活かしてその場に崩れるように倒れながらも帰陣に成功する神畑の姿が僕等の目の前にあった。
10対9
再度逆転されたがそこに頭が向くことはなかった。
「テクニカルタイムアウト!!時計止めて!!」
▽▽▽▽▽
【姫沢side】
カバディは接触が多い競技。だから選手同士の不意の事故が起こることも少なくない。ボク自身小さい頃から
でもまぁ
「叶坊ちゃんも重々承知しているでしょうが一応説明を。鼻をつまんで下を向いて圧迫することを止めないように。それと決して上を向かないようにしてください」
「…はい。ケガの処置ありがとうございます辻さん」
「いえ、ケガに貴賤が無いのは当然ですけれどそれでも
結論から言うと鼻血でした。いっくんの蹴り出した足は普通なら当たることは無かったんだろうけど、ボクが前傾姿勢かつ全速でタックルをしていたことも重なったことによる事故だった。
出血こそ多くて痛みも多少あるけれど。これぐらいなら辻さんに言われた通りにしていれば血もすぐに止まるだろう。
「でもまぁ血が止まらない以上は試合には出せねーからな」
「分かってますよヒロちゃん先輩。慶さん」
「お前なあ…。はぁ…
処置をする辻さんの後ろからこの試合の主審をしているヒロちゃん先輩から釘を刺された。慶さんに声をかけると慶さんはどこか呆れたように伴にそう告げていた。
「すいません、これからって時に抜けてしまって」
「そんな事気にしなくていいんだよお前は。そこで大人しく見とけ」
ボクの詫びにそう返す慶さんに再度軽く頭を下げた後2人の後ろ、宵越くんたちの方を見やると最初はボクの出血量に肝を冷やしたらしく一悶着あったが、処置が落ち着いた今ではもう落ち着いていた。
だからまぁ気になるとしたら向こうだよね。
「英峰は…いっくんは大丈夫そう?」
「あぁ…まぁあいつは大丈夫だろ。伊達に長くやってねえんだから」
「神畑さんスゴかったですよね。先輩があんな顔してるの初めて見ましたよ」
口を
そうこうしているうちにタイムが終わって慶さん、ヒロちゃん先輩もコートに戻っていった。ボクはベンチの関、人見が片膝立ちで待機している横で悠々と椅子に座ってくつろいでいる。まぁ、血が治まってきたとはいえケガ人だからね。ちょっと居心地が悪いけど気にしないでおこう。
ボクの代わりに伴が入ってフォーメーションが少し変わった。といっても、練習で時々やっていたものに移っただけだけど。
宵越⑥ 王城①
畦道⑤ 井浦②
水澄③ 伴⑧
伊達④
いきなりの出場になった伴が少し不安だったけど、そこは水澄先輩と畦道が間に入って上手く緊張を解いているみたいだ。もっとも伴の小声に反応できるのが畦道だけだから息も絶え絶えの畦道は大分しんどそうにしているけれど。ファイト畦道。
まぁ、今ちょうど3人ともコート外で伴もといボクがいっくんに触ったのも最後だったからコートに戻るのもそれなりに時間がかかる。それまでになんとか試合に入れるようになってほしい。
「それでは試合再開!攻撃権能京!!」
ヒロちゃん先輩の号令がかかる。宵越くんが
だからこそ、誰の目にも止まらなかった。
宵越くんとは反対側、ベンチに近い所から一閃、黒いオーラを溢しながら
「あっ!」
「カバディ…」
宵越くんに集中しきっていた英峰メンバーが慌てて宵越くんからマーくんへ対象を変更する。が、それよりもマーくんがいっくんを捉えるのが先だった。
が、結果は違った。
確実に不意をついたと思われたマーくんの初撃は難なく避けられた。動きに減量の影響は全く見られない。むしろ良くなっているとも言えるぐらい…。
「
そう問いかけるいっくんにキャントをしているマーくんは何も答えない。が、その背中から『2度目は無い』と言っているようにボクには見えた。
「能京の奇襲を凌いだ!」
「さすが神畑さん!」
「同じ世界組でも格が違う!!」
2階のスペースで観戦している英峰部員が口々にそう歓声を上げた。その内容が
「部長の攻撃が格下な訳ねーだろ!どうなってやがる…!!」
「減量…食事や水分を絞った極限状態では…一時的に神経が研ぎ澄まされるって話がある」
あぁ、
「なんだそりゃ!?」
「信じ難いがな…普通、動くにはメシも水も絶対必要だ。ガス欠の車と同じ…
慶さんの言う通りだ。いくらいっくんが減量に慣れていて仮に
それは他の英峰の人達も気付いているようで。
マーくんから狙われているいっくん自身が積極的に倒すためにキャッチを狙う。その隙を突こうとするマーくんだけど、その隙を対角の若菜さんを始めとした他の英峰メンバーがカバーしている。
勇敢といえば聞こえはいいが利口ではない。ただでさえ体力に優れていないいっくんはペース配分に気をつけなくてはいけないはず。だというのに休むこともせず周りもそれを止めないというのでれば、
いっくんの集中力は長く続かないからこそ、続いている今のうちに勝負を決める短期決戦に切り替えたということ。
それに気付かないマーくんではないはず。であれば、このまま燃え尽きるのを待てば…
と考えていると、マーくんが軽く右腕を上げた。ボク等への合図だろうか?
「ん…?」 「なんだ…?」
宵越くんと伊達先輩も疑問が声にでていた。ここにきてようやくボクはマーくんが何を言いたいのか分かった。
マーくんがボク等に言いたいのは謝罪だ。
部長として
だからこれは、1
マーくんが勢いよく踏み込む。それを見て表情こそ変えないけれどいっくんが呟く。
「それでこそだ。王城」
「カバディ…」
最早2人が接触するのは時間の問題。
それはあえて勝負に乗ったはずのマーくんだった。
マーくんはいっくんのキャッチのギリギリ射程外の所で急ブレーキをかけるといっくんの援護の為に後ろに回り込んでいた若菜さんと
「能京タッチ2点獲得!!」
10対11
「おおおお!!すげぇフェイント!」
「やり返した!!!」
先程いっくんとマーくんの格の違いがどうだか言っていた2階の英峰部員が口々にマーくんを褒め称えている。それを聞いた宵越くんが『見たか!』と言わんばかりのドヤ顔をしている。ボクも本当にその通りならドヤ顔をしているところだったけど。
あれはフェイントじゃない、本気で狙ってたからだ。
だからこそ最大のフェイントになったわけだけれども…。マーくんの秀でている所は『カウンター』よりも
結果的にいっくんの体力を削りながら得点を獲得できたのは
そう頭の中で整理していると目の前で信じられない光景が映し出されていた。
「カバディ…」
ウッソでしょ!!?ここで追撃!!?
いや、追撃するのは別に珍しくない。この試合では初だけど奏和戦で高谷さんとマーくん、ボクもやっていたことだから。問題なのはその追撃をしているのが
いっくんだということだ。
「ああ!?追撃!!?」
宵越くんが信じられないと言わんばかりに声を出す。きっといっくん以外の全員が思ったことだろう。なんでわざわざ自ら体力を削るような事を…。
でもこれは
帰陣直後のマーくんのタッチを試みたが失敗。けれど、いっくんはその勢いのままコート奥へと進出する。攻撃直後で隙が多いマーくんが狙いじゃないということは宵越くん狙いか?それを察知した宵越くんがいっくんの伸ばして来た脚を躱すがその脚はボーナスラインを越えた。
その後戻ってきた直後の畦道と水澄先輩は案の定出遅れた。いきなりの出来事に頭が追いついていない伊達先輩が持ち前の力を出すスキもなく触られた。慶さんが素早く回り込んで来ているけれど、いっくん1人を引きずりながらそれでもいっくんの進行は止まらない。せめて水澄先輩と伊達先輩が万全の状態でいれば話が違ったかもしれない…。
慶さんに掴まれながら帰陣しようとするいっくん。それを見たマーくんは
「英峰ボーナス1点!!タッチ2点!!3点獲得―――!!!」
13対11
「くそッ…!どうなってやがる…!!」 「…2点差…」
逆転に次ぐ逆転。だが、問題はそこではなかった。
限界は…超えているはずなんだ…。
「なんでこんなに動ける…!」
慶さんがいっくんに剥がされた自身の腕を見て言う。見てみると汗だくの慶さんであればおかしいぐらいいっくんが触った後の腕には水滴が1つも見当たらない。もしかして、いっくんが吸い込んだの!?そんなに渇いててなんで動けるの!?信じられない!!?
「俺たちには
いっくんはそう言うが目線は英峰の方を向いたまま、こちらへ振り向くことはなかった。おそらくその相手というのは
ボク等を軽視している訳ではないはずだ。宵越くんを脅威と認識したりマーくんの『カウンター』に対抗している所を見てもそれはたしかだ。強豪の
通過点。
マーくんが倒された直前にいっくんが言ったことだ。そのゴールは言うまでもなく全国1位の星海だろう。
『一緒に不破をぶっ潰そう』
このメッセージを受け取ったのは約1年前のことだ。いっくんから英峰に入学しないことを伝えた後に頂いたメッセージ。きっといっくんはこの目標をこれよりも前からずっと掲げていたんだろう。
「たった数十分など、
手強いな。
早くいっくんを追い出さないと…この試合決まってしまうかもしれない。
鼻を圧迫している手に力が入る。まだ血は止まっていない。
頑張ってください、皆…!!
※王城が宵越を囮に不意打ちしたのは独断です。オリ主がケガしたことに動揺しているかについては不明にしておきます。