ボクがキミを王にする   作:モーン21

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第45話 VS紅葉 合同合宿最終試合

「それでは…能京(のうきん)紅葉(こうよう)始めます!!」

 

 

 

「しゃす!!!」

 

能京高校           紅葉高校

 

宵越竜哉⑥          木戸(きど)(りょう)

 

畦道相馬⑤          石田(いしだ)彰成(あきなり)

 

水澄京平③          花井(はない)(はる)

 

姫沢叶⑦           右藤(うとう)大元(ひろもと)

 

伊達真司④          三村(みむら)貴之(たかゆき)

 

井浦慶②           加治(かじ)国和(くにかず)

 

王城正人①          佐倉(さくら)(まなぶ)

 

 

 

 英峰高校の八代さんの号令に合わせて礼をする。勝とうが負けようがこれが最後。気を引き締めていると右の方で動きがあった。

 

「佐倉」

 

井浦(いうら)さん…どうしました?」

 

「や、世間話。宵越がこの合宿で何度も使ってたあの技が正人(まさと)がやろうとしてもできなかった技ってのはもう聞いてるだろ?

凄いよなぁ~目指す相手を越えちゃって。あ、でも早く正人に教わってた佐倉はもっと凄いのか…」

 

 わざとらしく煽るような口調でサクラン先輩を揺さぶる慶さん。性格悪いなぁ。でも、もう試合は始まっている。メンタルが不安定なサクラン先輩を相手するには有効な手なのも事実なんだよなぁ。

 

「やめてくださいよ慶さん!!こいつ、メンタル絹ごし豆腐なんですからぁ!!」

 

 慌ててフォローに入るヒロちゃん先輩。いや、これフォローになってる?逆に追い打ちかけてない?

 

「…いいんです」

 

 が、この諍いを止めたのは意外な人物。張本人のサクラン先輩だった。

 

「もういいんです」

 

「「……」」

 

 揺さぶりをかけられてもまったく意に介していない。以前までなら困ったように笑いながら対応していただろうに。英峰戦を経て先輩は変わった。

 いや、変わりつつあるのか?そうであるとしたら、変わった後のサクラン先輩はいったいどれほどまでに成るというのか、まったく見当がつかない。

 

 意外な反応に言葉を詰まらせる2人。そんな2人に背を向けてポジションに着くサクラン先輩。

 さて、ボクも切り替えないと。英峰戦と同じく今回()能京(ウチ)は後攻、守備からだ。

 

「先行、紅葉!!」

 

「カバディ…」

 

 試合が始まった。(チェーン)を繋いで構えているとコート外から声が聞こえた。英峰サイドから、若菜さんと君嶋くん(たっくん)だった。

 

「始まった!」

 

攻撃手(レイダー)は当然佐倉か。両チーム共に一級品の攻撃手がいる。んでもって守備が未熟だ。攻撃で点を取り合う事になりそうだな…」

 

 …………

 

 コート外の声が耳に入ってくるのは未だ集中しきれていない証拠。

今の相手はサクラン先輩だ。それ以外の声は雑音(ノイズ)。聞き流せ。

 

 そう自分に言い聞かせて今度こそ集中する。何やら視界外で神畑くん(いっくん)と薫が2人に言っているのが()()()けれど、なんて言っているのかは分からなかった。

 

 サクラン先輩は最初こそコートの中央にいたがジリジリとコート右端に寄って行った。どうやらマーくんを照準に入れたらしい。それに合わせて水澄先輩、伊達先輩を連れて動こうとすると、

 

「カバディ!!」

 

「……!?」 「足…!?」

 

「カバディ!!」

 

「おおっ!!?」

 

 動きの粗い右足の大振り。合宿の練習の時や英峰戦の時とは違う。強いて言えば中学の選抜の時に時折やっていた、身体スペックに物を言わせた大型攻撃手(レイダー)らしい攻撃だ。

 

 あれだけ大きく動くと隙が生じるのは明らか。が、その隙を突いた畦道に対して右足の大振りによる回転の遠心力を用いた左手による牽制で後退させた。

 

 

 過去のデータはある。けれど、中学時代と今のサクラン先輩とでは身体能力が違いすぎる。前もって動きを()()ことはできてもそのズレの為に対処が数秒遅れてしまう。

 

 であれば…

 

 (チェーン)を作る腕に力が入る。パワーで劣るボクでは到底太刀打ちできない。ならば周りを頼ればいいだけだ。

 

 サクラン先輩が2度牽制を放る。その先は中央のボクと左中の畦道だった。ボクは紙一重の所で躱せたが畦道は回避の為に大きく距離を取った。

 

 大丈夫。さっきみたいに大振りが来ても()()対処できる。耐えていればいつか反撃できるタイミングができる……!?

 

 

 

ガッ

 

 

 

 そのタイミングは、思いの外すぐに来た。

 

「掴んだ!!」 「両足!!?」 「おー」

 

「カバディ!!」

 

 慶さんが不意を突いて正面タックルに成功。両足の膝を抑えた。

 サクラン先輩に隙らしい隙は無かったはず。なのになんで!?と味方ながら不思議に思うが今はそんなことどうでもいい。

 

 どちらにせよ、このままじゃ…

 

 

 

バッ

 

 サクラン先輩がコートを思いっきり蹴った。慶さんはそれを止めることができなかった。

 そうだ。慶さん1人じゃパワーで負けてしまう。サクラン先輩のパワーであれば慶さんの体重(ウェイト)ぐらい抱えたまま自陣に帰ることぐらい容易いだろうから。

 

 であれば……とボクが思うよりも先に()()は動いていた。

 

 水澄先輩がボクとの(チェーン)を外してフォローに入った。左足を掴んでこれ以上進ませないようにする。水澄先輩とサクラン先輩のパワーはほぼ同格。それに慶さんも加わった2対1の状況であればパワーで抑えるのは不可能ではなかった。

 

 が、パワー差を覆す方法は昔から言い伝えられている。技術だ。

 

 サクラン先輩の駆使した回転は2人を薙ぎ払った。咄嗟(とっさ)のプレーで完璧に掴まれていなかったとはいえ、守備のキャッチを振り払うだけのパワーと回転後すぐ動ける体勢を作るという超高等技術。

 

 

 

 

 

 だけど、どれほど優れた技術であろうと()()()()には敵わない。

 

 回転の途中仰向けになったサクラン先輩に対して、伊達先輩右膝をボクが右肩を抑えることで回転を途中で止めた。

 能京(ウチ)1番の力自慢である伊達先輩はこの合宿中1番の力自慢でもあった。正直ボクの援護はいらなかったかもと思えるぐらい。

 

 が、2対1の状況なのは先程と変わらない。再度回転されてしまえばさっきの2人みたいに薙ぎ払われるのは必至。もう一度回転をしようとするサクラン先輩だけど。

 

 単純な話だ。

 2対1じゃダメなら、4対1で防げば良い。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【佐倉side】

 

 勘が良くて素早い相手が厄介だと思った。

 

 そう思って叶と5番(畦道君)を遠ざけようとした。正直叶に紙一重で躱された時点で意味あったのか分からなかったけれど、5番を遠ざけられたからよしとする。

 

 が、この後が問題だった。

 

 井浦さんに何故か動きを読まれたこと。

 

 3番(水澄君)のフォローが早かったこと。

 

 4番(伊達君)と叶に回転を途中で止められたこと。

 

 そして……

 

 再度回転しようとした時に分かった。3番と4番の目を見てようやく分かった。

 

 守備で怖いのは5番と叶だけ…違う…、この2人の目は…

 

 ()んできた人間の…!!!

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

【姫沢side】

 

 

 

ドォッ

 

 

 

「こ…紅葉攻撃失敗…!!」

 

 1対0

 

「「うおおし!!」」

 

「しょっぱな止めたぁぁぁ!!!?」

 

 水澄先輩と伊達先輩が雄叫びを上げながらハイタッチをきめたのとほぼ同時に周りも歓声を上げた。

英峰戦であれだけ猛追を震ったサクラン先輩を1回目の守備で止める。これがどれだけ難しいことかというのはつい先程の試合を見ている者であれば誰でも分かることだと思う。

 

 正直な所、ボクもまさか倒せるとは思っていなかったから。

 いや、倒すつもりはあったけどさ。こういうのは気持ちで叶うものじゃないでしょ?

 

「……」

 

「畦道と叶を怖がって遠ざけたのはいい判断だった。だが、他を侮ったのは失敗だなぁ」

 

「…そこまで読まれてましたか…」

 

 あ、慶さんがサクラン先輩に手を伸ばして起こしてる。サクラン先輩が初心者の時はよくあったらしいけど、ボクが入った時にはもう慶さんよりも上手かったからこういう場面を見るのは初めてだったから新鮮だ。

 

「スポーツはムカつく相手ほどデータを取りたくなるからな。知ってんだろ?

 俺がムカつくのは約束を守らない人間と、天才だ」

 

「……」

 

 2人をただ見ているのもあれだからと立ち上がって水澄先輩、伊達先輩と軽くハイタッチをしていると慶さんが話しかけてきた。

 

「伊達!水澄!!叶!!ナイスアンティ!!」

 

「「う…うす!!」」 「はい!」

 

 慶さんに褒められた。実質先輩2人のおかげだけど一緒に褒められて嬉しくなる。

 

「お前らの力で倒したんだぞ。アレ行け!」

 

「…アレって?ハイタッチ?」

 

 水澄先輩(それ)に賛成だ!アレってなんでしたっけ?

 

「違う。今このし合いは攻撃手同士の戦いだと思われてんだ。ナメられてんだよ」

 

 指でクイッと指された先にいたのはたっくんだった。そういえばそんなこと言われてたね。

 

 それからニコッと笑顔を浮かべた慶さんが出したのはグッパッ(煽れ)のハンドサイン。

 ……懐かしいな。選抜の時もよくこんなサイン出されていたっけ。

 

 隣を伺うとボクと同じく理解できたのか先輩2人がポンと手を打った。

 

 そして、…ちょっと待ってボク2人が何を言うのか知らないんだけど。合わせられな…

 

「これじゃカカシと勝負したほうがマシだね」 「筋肉不足!!」

 

「た…大した事なかったね」

 

 ……噛んだ。それに台詞がめちゃくちゃ小物っぽい。いや、慶さんの無茶振りによく対応できたと褒められてもいいぐらいだと思う。

 ……次、次の機会があればその時はばっちり決めようと心に決めた。

 

 

 

 

 

 「最初の攻撃で佐倉がアウト…!!」 「これは本人もキツイな…」

 

 「切り替えよう!まだ序盤も序盤!」 「お、おう…」

 

 まさかの展開に驚きを隠せない周りと、部長として部員の皆に檄を飛ばすヒロちゃん先輩。この展開は流石の先輩も予想だにしていなかったはず。このうちに点を稼ぎたいところだね。

 

部長(キャプ)…」

 

 そんなことを考えていると慶さんがマーくんに呼びかけていたのでチラッと見てみると、何やら気まずそうにしながら顎に手を置いていた。

 なんでだろ?と思って慶さんと一緒にマーくんの視線を追うと

 

 

 

「…………」

 

 

 

 これでもかと顔を顰めている宵越くんがいた。

 あぁ~、うん。マーくんと宵越くんがそれぞれあんな顔をしている理由が分かったよ。

 

 宵越くん、攻撃に出たいんだね。でもま、宵越くん自身もマーくんが出たほうがいいってわかっているって所かな。

 

「攻撃が失敗したら佐倉(さくら)くん戻ってきちゃうんだよ?」

 

「…ダメか」

 

「……」

 

 マーくんが宵越くんに確認する。それに対して宵越くんは気落ちしたように返事をするだけだった。

 

 ……英峰戦ラストの攻撃失敗がまだ尾を引いているのかな。いつもなら引き下がるのにしないところを見ると結構重傷かもしれない。それでも自分から攻撃に出たいとまず思える所は流石宵越くんだね。

 

 そんな宵越くんを見て少し間を置いた後マーくんがボク等の方へ手を振って言った。

 

「この1点…佐倉君を追い出したのは僕じゃない」

 

「「「「……」」」」

 

 つまり、サクラン先輩を倒したボク等が選べってこと?

マーくんと宵越くん、どちらに攻撃出てもらうか。

 

 …そんなの、考えるまでもない。

 

 ニコッと笑顔を浮かべて右手を紅葉コートへ手のひらを上に向けて伸ばす。ボクが向く方向は当然、宵越くんだ。

 

「やられても取り返してやるよ」

 

 水澄先輩が宵越くんにそう言う。先輩達もボクと同じ考えらしい。皆も『…悪かった』って試合後に謝るほど憔悴(しょうすい)していた宵越くんのことを気にしていたのかな。

 

「……ハッ…」

 

 そんなボク等の気持ちが伝わったのか、宵越くんは不敵に笑った。その後攻撃に出る宵越くんがこちらを振り向くことはなかった。

 

「カバディ…」

 

「来るぞ!!」

 

 サクラン先輩不在の6人守備。1番に狙うべきの攻撃手(エース)がいない以上誰を選んでもいい訳だけれど、宵越くんが狙ったのはサクラン先輩がいた右側の布陣。

 

 

 ボク等が出来るのはここまで。後は宵越くん自身の問題だ。加治さん(⑤左中)三村さん(⑥中央左)の間を狙ったタッチは2人ともに避けられた。

 そのカバーに動くヒロちゃん先輩。が、それが見えていた宵越くんが軽く手を振る牽制で先輩を止める。

 

 が、

 

「カバディ!!」

 

 花井さん(④中央右)のカバーがヒロちゃん先輩より遅れて来たことで宵越くんの動きが少しバラついた。

 キャッチのタイミングがバラバラ。これはこれで波状攻撃みたいでパワー型ではない宵越くんとしてはやりづらいのかもしれない。紅葉側としては連携の練習不足なのを開き直った形での守備な訳だから狙ってのことではないんだろうけれど。

 なまじ、前の試合が連携が完璧な英峰だったのもあってその違いは大きかった。

 

 でも、それで止まる宵越くんではない。

 

 宵越くんは前提として身体能力(スペック)が満遍なく高い。マーくんとかいっくん若菜さんみたいな突出型の人がいるおかげで目立っていないけど、リーチ、スピード、スタミナで充分及第点のモノを持っている。パワーが少しだけ劣るけれど、それもボクやマーくん、若菜さんよりも上なのはたしかだ。

 

 その上『戻り(バック)』と『曲がり(カット)』という唯一無二のテクニック(技術)も持っている。

 

 カットは(チェーン)を捨てたバラついた紅葉の連携じゃ止めにくい。それはきっと宵越くんも紅葉側も理解している。だから普通に考えればカットを使う。でもそう考えるのを見越して、あえてバックを使うという見方もある。ここから先は心理戦だ。それこそがカバディの醍醐味ともいえる訳だけど。

 

 宵越くんの性格を頭に入れて考える。

 バックは英峰戦で止められたばかり。合宿前から練習してきた技だけど、普通の人なら直前に失敗したイメージがあるバックは使いづらい。

 

 けど、()()宵越くんなら……極度の負けず嫌いでメンタル最強の宵越くんなら…

 

「「「バックだ(ね)」」」

 

 ボクの呟きと同時にマーくんが言ったのが聞こえた。向こうのシッティングブロックで待機しているサクラン先輩も同じタイミングで言ったように見えた。

 2人ともボクと同じ考えなんだ。なんとなく嬉しい。

 

「失敗しっぱなしはねぇべ。バックだ」

 

 少し遅れて畦道も予想する。畦道も同じ答えなことに頬が緩むのを感じる。

 

 ダメダメ、集中集中。今は試合中なんだからしっかり緊張感保っていないと。

 

 それに、もしこの攻撃で失敗したら次はサクラン先輩の攻撃なんだ。気を緩めている暇なんてない。

 

 この宵越くんの攻撃の成功失敗次第で試合の展開も大きく変わってくる。だからか、ボクを含むこの体育館中の視線がほぼ全て1人の攻撃手(宵越くん)に向いているのが分かった。

 

「カバディ…!!」

 

 助走距離を後ろに下がって充分に保った後宵越くんが駆け出した。目指す先は先程と同様右側へ。

 

 これに対し、紅葉側が動いた。ヒロちゃん先輩が横の花井さん(④中央右)を連れて横に出た。カットの進路を塞いできた!ヒロちゃん先輩はどうやらヤマを張ることにしたらしい。最多得点を警戒してのカット予想。宵越くんがカットを選んでいた場合捕まるのはほぼ必至だった。

 

 そして、肝心の宵越くんは……

 

「バック!!」

 

 石田さん(⑦左中)をタッチ後即後ろへとダッシュ、つまりカットではなくバックを使用した。

 

「守備間に合わない!!」

 

 ヒロちゃん先輩のヤマは外れた。バックの技の性質と宵越くんのスピードの前には前もって動いていないと到底間に合わない……

 

 

 

 

 

 と、思われていた。

 

 宵越くんのすぐ横にはヒロちゃん先輩と花井さん、2人がピッタリと張り付いていた。

 

「宵越に追いついた!!?」 「まさか…」

 

「あの時横に来ていたのは助走だったの!?」

 

 やられた…!ここまで読んでいくるとは思って無かった。ヒロちゃん先輩と宵越くんが関わりだしたのはこの合宿が初めてだったからボク等がサクラン先輩にメタ読みしたようなことは出来ないと決めつけていた。

 しかし、実際は違った。そして、ボクとマーくんとほぼ同じタイミングでサクラン先輩も『バック』と予想していたことを思い出す。

 もしかして、宵越くんをサクラン先輩(天才)に当てはめて読んでいたっていうこと!?

 

 ズルッ

 

「カバディ!!」

 

 ここで接地の失敗!?まさかの展開に宵越くん焦っちゃった!?ここで体勢を崩したら2人に捕らえられてしまう。2人も宵越くんの状況に気付いたのかここぞとばかりに動いた。

 

「カバディ…!!!」

 

 その2人に対し凄む宵越くん。だが、ヒロちゃん先輩がそれに怯む訳がなく構わず動いた。

 

 

 

 

 

ドガッ

 

 

 

「「な!!?」」

 

「カバディ…!!」

 

 宵越くんが突っ込んでくる花井さんを自身の身体で吹っ飛ばした。まさかのパワープレイに驚きを隠せないボク等を置いて倒れ込みながら宵越くんが腕を伸ばした。その腕は中央線(ミッドライン)を越えていた。

 

「おおおおお!!?」 「なんだ!!?」

 

「守備ぶっ飛ばして帰った!!!」

 

「能京2点獲得!!」

 

3対0

 

「が―――っ!!ヤマ当たってもこれかよ!?」

 

 上手い!!体制の崩れを利用して身体を当てた。

 

「宵越!やったな!!成功させたじゃねぇか!」

 

「…なんだ、あまり嬉しそうじゃないな?」

 

 水澄先輩が称賛する横で宵越の浮かない顔を見て心配そうに尋ねる伊達先輩。

 

「…今のは失敗だ」

 

「あ!?何言ってんだ帰ってきたじゃねーか…」

 

「……」

 

 まさかの返答に水澄先輩が反応に窮している。それを眺めながらボクはさっきの攻撃を振り返る。

 

 結果的にヒロちゃん先輩のヤマが当たった形になった。慌てていたのもあるだろうけれど、あそこで足を滑らせたのは致命的だ。そこについては後で注意しておくとして。

 

 問題はその後だ。

 

 身体を守備に当てて跳ね返したこと。

 

 これは宵越くんに教えていなかった。正確に言うと想定していなかった事態だから教えることがなかった。

元々バックは縦移動…大量得点を狙う技じゃない。相手が回り込んで来てたらそれを触って帰る程度。

相手とほとんど接触しない事がこの技のメリットであり成功。だから筋力のないボクやマーくんはこの技を身につけようとした。結局身体が持たないっていう結論になってお蔵入りになったけれど。

 

 今回宵越くんが花井さんを跳ね返せたのは、偶然相手にぶつかる体勢ができていたこともあるけど相手を弾くだけの『速さ(スピード)』と『体重(ウェイト)』があったことが大きかったんだろう。そればかりは今からボク等ががんばった所でどうしようもできない箇所だった。

 

 まさか、ボク等が考えたバックにその先があるとは思っていなかった。そして、今のでそれに宵越くんも気付いたんだろう。浮かない顔だった先程までと違ってその顔は希望に満ちあふれていた。

 

 もしかしたら宵越くんのこの技(バック)がマーくんを越えることになるかもしれないと、可能性が低いけれど0ではない未来を幻想しながらボクは宵越くんを称賛することにした。

 

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