【右藤side】
「攻守共に成功…だが、1点でも
「このまま全滅まで行くぞ!!」
「「おう!!!!」」
フー……
…………
油断しろよ…!!俺だぞ!!?くっそ…
「カバディ…」
慶さんがチームに注意を促しているのを恨ましく思いながら
もう。長い付き合いの慶さんたちはともかく、他の人に警戒されるようなことした覚えないんだがなぁ…。
埼玉紅葉のエースはムラがあるけど攻守に優れた佐倉くん!
俺はその陰で良い動きをする縁の下の力持ち!
そんくらいの立ち位置…そんくらいが1番働ける!!
「カバディ…!!」
基本に準じて
「カバディ!!」
対角の宵越たちが後ろに回り込んで来た。見えていたから簡単に牽制で追い払えた。
が、おかげで奥に踏み込むのが難しくなったな…。なら、回り込んで来た人間を狙うのがベターだな。
「カバディ…」
右手を前にして
一気に
……躱されたか…。くそ、初心者ならっワンチャンあるかもって思っていたがばっちりセオリーわかってやがる。
「ヒロ…」
…………
心配すんな。すぐ戻してやる。
「カバディ…」
リーディングレッグレイド。丁度英峰戦ラストで佐倉もやっていたな。能京のヤツらも見てたはずだから印象に残ってるはず。
「カバディ…」
と、考えていると対角の宵越が隣の畦道と
俺も教えてもらったなぁ…
『…動いてる人間は想像以上に止めづらいからね。筋力で勝ってても鎖を君で止めた方がいい』
『警戒の薄い上を飛ばれんのも注意だな』
『あー!飛び越えるヤツカッコイイっすよね!アレ練習しよ!』
『今守備の話してんだろうが!』
指導っつーか楽しく話してただけか。一緒に練習したのは正人さんが1軍に入るまでの短い間だけだったけどカバディについての色々なことやそれ以外のことも教えてくれてすげー楽しかったのを覚えている。
正人さん、慶さん以外の神畑さんや六弦さん、冴木さんといった1つ上の先輩達ともよく話していた。昔から誰彼構わず絡むのが好きだった。自分と違う人のハナシは勉強になるし…誰でも何かしらすげー所があって面白かった。
その中でも1番付き合いが長くて、1番すげーと思ってたヤツがいた。佐倉だった。でもあいつは…。
『佐倉、選抜辞めたって?』
『残念だなヒロ…一緒に海外遠征行きたがってたのに』
『それなぁ』
『最後の大会直前での引退。見かけによらず佐倉さん、中々ロックだね』
『薫は相変わらずで安心したよ、ボク』
『…………』
俺たちの世代でも頭1つ抜けていた佐倉の突然の辞退に俺以外の皆も戸惑いを隠せないでいた。…一部は普段通りだが。
『佐倉がいなくなったら繰り上げで俺が
『お…お前なぁ…』
軽く笑い飛ばす。呑気なことを言う俺を周りは呆れたように見てくるが気にしない。だけどその時、ジャージを握る手に思わず力が入ってしまったのはよく覚えていた。
『…たくさん勉強するんだ。いつになるかはわかんねーけど…』
ジャージを羽織る。このジャージは選抜に入ったヤツなら全員持っている物だが、今佐倉は手放している。だというのなら…
『いつか
「カバディ…」
俺がこの攻撃を成功するかどうかで佐倉が戻ってこられるかどうか決まる。佐倉を戻す…その為に俺が出来る事は…!!
ジリジリと正人さんへ向けて前進する。そんな俺に対して正人さんたちは全員大きく動けずにいる。
だがそれも時間の問題だ。もうかなり奥まで進んだ。ここまでくれば俺が動かずとも向こうの方から…
バッ
来た!!動いたのは対角の宵越と畦道!!
くるっと後ろへ振り向く。俺の退路を
「カバディ!!」
「上…!!」
上を向くことで
…よし、かかった!!
「下ァ―――!!!」
「くそっ…!!?」 「止め…」
「カバディ!!」
このプレーは見た事ないだろ!!と思っていたが宵越の股を通過する直後に腰を下げられた。通過するのがあと少しでも遅かったら捕らえられていたかもしれない。腰を下げるのも素早いのかよコイツは…!!
と、後ろ足を誰かに掴まれた。顔は見れねーが場所的に畦道か?
掴まれることは想定外だったが、もし掴まれた時にどう対処するべきかは前もって
掴まれた左足を左へと動かして宵越の足とぶつける。思わぬ衝撃だったんだろう、畦道の手が俺の足からついに離れた。
「やろ…」 「な…なんだ!!?」
「紅葉2点獲得――!!!」
3対2
「あっぶねぇ
「おおお…!」 「倒されずに2人もってった!!」
周りから歓声が上がるが俺にはそんな余裕は無かった。あの技ならもっと余裕を持っていけるだろうと踏んでいたのに想定外すぎる。
「
「どんくさいな!上から潰せたんじゃねーか!?」
「いや…いくら素早い人間でも下には加速できない。
「え…」
「技の名は『ドゥッキ』。
「なるほどなぁ…」
「お前ちっこいから使えんじゃねーか?」
「君嶋さん!子供扱い止めてください!!」
「おぉ~こわっ」
「…君嶋さんの言うことは強ち間違いじゃない。叶も選抜の時よく成功させていたから。マネしてみても大きすぎてまず俺の場合まず潜れなかったからよく覚えてる」
「嫌味か来家ぇ!!」
英峰サイドで神畑さんの解説を耳に入れていると最後の薫の台詞が妙に耳に残った。
あ……
『通訳が必要かなって思って付いてきましたけど要らなかったですかね?』
『いやそんなことねぇって!!俺の身振り手振りだけじゃ細かい所まではどうしても伝わんねーからな。叶のおかげだよ、サンキューな!!』
『お礼は大丈夫ですよ。ヒロちゃん先輩のおかげでボクも主将の方々とお話できましたし。おかげで色々タメになりました』
『やっぱ英語できると便利だよなぁ。こうして叶が他の国のヤツらと話せてる所を見ていると特に思うぜ』
『ちなみにボクだけじゃなくて薫も志場ちゃんも英語しゃべれますよ』
『ウッソだろ!俺の後輩たち、頭良すぎかよ…!!?叶はともかく、2人が英語しゃべってる所全然想像できねーんだが!?』
『出来ないこととしないことは違うってヤツですね。ま、英語ができると色々便利ですからオススメですよ』
『簡単に言ってくれるなぁ…』
…そういや、
「「イエーイ!!」」
ちょうどそこにいた
「…ありがとうヒロ」 「…おう」
「また、助けられた」
「そうだ。
佐倉がニコッと笑いながらお礼を言い出した。仲間なんだからわざわざ感謝しなくてもいいっていうのに律儀なやつだ。だが、その顔を見る限りさっきの攻撃失敗を引きずっていないみたいで安心した。
「わかってるな。手心加えられる相手じゃない」
そう佐倉を小突きながら言うと佐倉は先程までの笑顔を引っ込めた。俺が宵越を追い出した以上能京の攻撃手は必然的に
「…うん。僕が一番わかってる」
「止めるぞ。師匠越えだ」
「…来たぞ王城…!!」
「どうなる…!?」 「どうなるもねぇよ」
「
ま、普通そうだよなぁ…
佐倉に喝を入れてはみたが実際の所周りで言われている通り正人さんを止めるのは難しい。
それに…
チラ…と佐倉の方を覗き見る。俺が
「やめろよ、エースがそんな顔!言ったろ、手加減できる相手じゃねーって…」
「わかってるよ。問題なのは僕の集中力…」
あ?
「さっき…勝負と関係ないモノが視界に入った」
「………お前がいつも首につけてる御守りか?」
「全部コートの外に置いてこないと…いいプレーができないんだ。…まだ浅い…もっと深く…」
まぁ人によって集中の仕方は違ってくるから別に良い。が、問題なのはその集中が正人さんの攻撃がもう始まっている今でも未だできていないことだ。
「…カバディ…」
「
あ…ヤバ…!
理屈じゃなかった。自分の直感を信じて隣の
危ねーッ!!佐倉を注意してる場合じゃねぇ!気を抜いたらすぐやられちまう…!!
「ボーナスは気にすんな!!タッチだけ
今のタッチは正人さんと付き合いのある俺だから躱せた。であれば、佐倉以外のヤツらが狙われたらどうしようもない。ラインを下げることで正人さんが奥に踏み込んでくるのをボーナス覚悟で受けて立つために皆へ指示を飛ばす。
「カバディ…」
正人さんが予測通り奥に踏み込んできた。一応対正人さん用の策はあるんだが今それをしても効果が無い。歯がゆく思いながら俺の右側からボーナスへ侵入しようとする正人さんを見送ろうとしていると、
佐倉が正人さんへと突っ込んできた。ボーナスをエサにしての特攻。守備としてはセオリーとも言える佐倉の動きを正人さんはその場から後退することで対処した。
が、正人さんはそこで終わらなかった。
フェイントかよ!!
一連の攻撃が終了したと思っていた佐倉はこのフェイントにより体勢が崩された。流石に上手ぇな正人さん、ヨシ。
ここだ!
佐倉タッチの為に前に伸ばした右腕と反対に後ろに伸びた左足の足首を掴む。
普通なら正人さんのカウンターによって俺は倒される所だろう。だが大丈夫。まだ仮定の段階だが、カウンターの対抗策なら俺は既に持っている。
「カバディ…!!」
「「部長!?」」 「何をした…!?」
正人さんの顔を見るにカウンターが発動しないことに驚いている様子。よし、俺の考えは間違ってなかったな。
正人さんの『カウンター』…ありゃあ武道に近い…!!
こっちが押したり引いたりする力を利用する技。だから押しも引きもしちゃダメなんだ。
留まる…!!!それがベストな対抗策…!!!
正人さんがカウンターの練習をしている姿はずっと前から見ていたが実際に成功している所を見たのはこの合宿が初めてだ。正人さんがあれだけ練習してようやく習得できた
でも、『カウンター』は強い技であっても最強じゃないはずだ。であれば、こうして止められるのも当たり前の話!けっしてあり得ない話じゃない…!!
浮いた足を着地させようと動く左足を留めるために力を入れる。支援が来るまで…数秒でもいい…!!
「放すか…」
あっ…
気付けば俺は既に倒されていた。その場で留めようと気が
クソッ!頭では分かってたっていうのに…!!
でも…
数秒だけだがカウンター発動を遅らせたおかげで2人のフォローが間に合った。正人さんはカウンターによる滞空の為未だ浮いている状態だ。空中…力の勝負なら経験の差は関係無い…!いける…!
だというのに…浮いていたのに…
「移動した!!?」
正人さんは向かってきた2人を地面代わりに、自分の軽さを利用して動いた。
ウソだろ!さっきの試合で倒されてからそう時間は経ってないだろ!!?この短時間で対カウンターの対抗策を編みだしたっていうのかよ…!
が、それを前もって予測していたヤツがコートに1人いた。
「ですよね」
「佐倉!!」
浮いた正人さんの正面に回った佐倉が立ちはだかった。さっきの
でも今はナイスだ!!止めろ!佐倉!!
「カバディ!!」
「もう着地してる!!」
これも避けるのかよ!!どうやったら止められるんだよ正人さん!!
今更フォローに回っても遅いのは重々分かっていたが動かない訳にはいかない。なんとか立ち上がって行こうとする俺の目にはついさっき躱されたばかりの佐倉が正人さんの右足首を後ろに振り向くのと同時に掴んだ所が映り込んだ。
「なんで
宵越の幾度による叫びが体育館に轟く。本当になんで掴めるんだろうな?佐倉も叶もそうだが、感覚で分かるって言われても困る。言われた相手のことも考えてほしいもんだ。
そんなことを考えながら追うが俺が間に合うことはなかった。
正人さんが伸ばした右手がコートを叩いた直後正人さんをコートに叩きつける音が鳴った。
この1回の攻撃で正人さんと佐倉の対峙は幾度もあった。その決着がどちらに傾いたのかもすぐには分からないぐらい接戦だった。
「も…戻れたか今の…!?」
今の正人さんの位置を見る。正人さんのリーチじゃ届かない位置だ。
なら…この勝負、
「能京攻撃成功!!!タッチ4点獲得!!」
7対2
が、審判の八代さんがコールしたのは、紅葉の…佐倉の負けだった。
「おおおおお!!!戻ってたあああ!!!」
「…届かなかったはずだ…」
「よく…わかってるね…」
「いつもの僕じゃ届かない。でも、ラインを見ないで肩を入れれば少しリーチが伸びる」
「「……」」
「
佐倉の溢した声に返す正人さん。正人さんは小賢しいと言うがこれはそんなコスいものではない。正人さんの長年にわたる攻撃への執念がもたらしたものだ。本当にスゴい人だよな、正人さんは…。
「あ…!?」
「ぶ…部長…!!」 「正人お前…!!」 「マーくん!!」
最初に
コートに落ちる選手の汗とは別に落ちたソレは赤く粘っこい。1試合目以来見なかった
「オフィシャルタイムアウト!!時計止めてください!!」
「す…すげー血が…」 「イス出せ!あと救急箱!」
「もう用意してあります」 「サンキュー辻さん!」
「どう?」
「軽く切ってる。深くないからすぐ塞がるだろうけど…頭は結構血が出やすいからな…」
「カバディじゃよくあるよ」
「オイ…」
「なんにせよ、出血が治まるまで試合には出せません。交代を」
正人さんのケガは大したことないみたいで安心した。肝心の本人があっけらかんとしているのを見て慶さんが少しキレかけているのも平和な証拠だ。
だから問題なのは、正人さんよりもこっちだろうなぁ。
「
「佐倉の攻撃じゃなきゃなんとかなるんじゃないすかね?なんか、太めのが出て来ましたけど…」
「気負わずに行こう」 「う、うす!!」
大丈夫だ。
普通ならまず選ばない択。が、
だから、これが1番の作戦だ。あいつ頼りの作戦だがそれはこれまでと何も変わらない。なぁに、あいつを上手く乗せるのなんてこれまでで何回もやってきた。だからきっとこれが俺の仕事なんだろうな。だというのなら何も問題無い。あいつの為になるなら俺はなんでもやってやる。
「それでは試合再開!攻撃権紅葉…」
「審判審判!!」
「紅葉、
※右藤世代の世界組に姫沢、来家、志場がメンバー入りというオリ設定です。不破たち黄金世代は12人全員3年生でしたが、23巻巻末おまけ『憧れ』で『(不破)仁は中学上がったらすぐ一軍だろ。…』という台詞からして、不破やそれ以外のメンバーが2年生で世界戦メンバー入りしてもおかしくないだろうと解釈しました。
ちなみに背番号は姫沢が12番、来家が11番、志場が10番。
※英語については姫沢と来家は家柄の問題で指導されていて、志場はバレエ留学の為普通の英会話程度ならできるレベルというオリ設定です。