ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※お気に入り登録、感想等ありがとうございます。

※気付けば初投稿から1年がとうに過ぎてました。不定期な投稿間隔にも関わらず読んでくださる皆さんのおかげでここまで続けられることができました。本当にありがとうございます。なるべく早く完結に向けて書いていく所存です。


第48話 VS紅葉 3番特攻

【水澄side】

 

宵越⑥               井浦②

   畦道⑤          関⑨

      水澄③   伊達④

         姫沢⑦

 

 部長がケガで退場した代わりに出て来たのは関だった。伴の時もそうだったが、練習試合とはいえ初の実戦がこんな形で大丈夫か疑問だがそこは井浦サンが何とかするだろう。

 

 が、右藤の全滅(ローナ)宣言により強制的に流れが変わった。点差こそ9点に広がったもののさっきコート外に出たばかりの佐倉が攻撃に出てこられるようになっちまった。

 部長にケガさせたからか最初は動揺していたが、右藤たちによってそれは無くなった。

 

 これで調子が戻ったかと思ったら、違った。それ以上だ。

 

 

ズザッ

 

 

 中央で小さくタッチの動作を見せた。たったそれだけの動作で()()()()()()()()()()()()()()()()。しかも、俺だけじゃねぇ。7人全員にだ。それは全員がほぼ同時に後ずさったことからして間違いねぇ。

 

 だが、問題はそれだけではなかった。

 

 まずフェイントで交代したばかりの関にタッチ。

 

 押し返そうとする関を躱して奥へ踏み込んだ佐倉に対して対応に回った井浦だったが、前へと伸ばした左足でボーナス獲得しながら井浦の腕を払うことで2人目。

 

 退路を塞ぐ関の後ろ(フォロー)に回った伊達に対しても関の体躯を動かして出来た空間の隙間を突いて3人目。

 

 俺と姫沢が(チェーン)を組んで佐倉に立ちはだかったが、対峙する直前で上への視線のフェイントにより2人の意識が逸れた隙に2人の間を強引に力でこじ開けられて、5人目。

 

 もう間に合わないと判断して押し返そうとしたが、近くまで支援に来ていた畦道に足を伸ばしたことで帰陣直前に6人目のタッチに成功。

 

 この攻撃(レイド)が、俺の目の前で起きた出来事だった。

 

 カバディを始めて1年少しだが、ここまでの大量得点をした選手を見たのは初めてだった。

 

11対9

 

 コートには宵越ただ1人。萎縮(いしゅく)することなく攻撃(レイド)に出る宵越をただ眺めることしか出来ない今の自分に腹が立った。

 

 宵越の狙いはずっと佐倉だった。途中回り込んで来るヤツ等に牽制を入れることはあるがそれだけは変わらなかった。宵越の考えていることは分からねーがそれよりも俺の目に止まったのは佐倉の方だった。さっきまでの威圧感が無い。その理由が分かったのは宵越がバックで佐倉に接触(ストラグル)した後だった。

 

 明らかにスイッチが入ったのが分かった。今の佐倉は攻撃(レイド)時と同じくれー集中しているのが見ただけで分かった。だがバックで距離は離れてる。前の試合の神畑サンみてーな足首キャッチもされていないなら帰陣できる…!

 

 が、対角の2人が宵越に『ブロッキング』で時間を稼いだ。それを躱そうとした宵越だったが集中力を取り戻していた佐倉に足首をガッチリ掴まれて倒された。必死に手を前に伸ばして帰ろうとした宵越だったが届かなかった。

 

 11対12

 

 攻撃失敗(1点)全滅(2点)の計3点。佐倉の攻撃(7点)もあってあれだけ離れていた点差はなくなり、遂には逆転されちまった。

 

 開いた口が塞がらなかった。試合開始直後に佐倉を守備で倒して、宵越と部長がそれぞれ攻撃(レイド)で複数得点を挙げて。理想的なスタートを切れていたこともあって目の前の光景を受け入れられないでいた。

 

 が、そんな切り替えが未だ出来ていない俺を待ってくれるはずもなく。全滅(ローナ)によって戻ってきた俺たちに対して佐倉が攻撃(レイド)に出て来た。前回の攻撃(レイド)開始時とは真逆でこれ以上なく集中しているのは見ただけで分かる。

 具体的な対策でが無い今佐倉を倒すことは出来ず、ただ大量得点を防ぐことしか出来なかった。

 

 それは前半終了まで続いて。

 

「前半終了――!!ハーフタイム!!!」

 

 14対18

 

 4点ビハインド。負けている状態で俺たちはベンチへと戻っていった。

 

 

 

 

 

人見(ひとみ)…ドリンクまだあるか?」

 

「あ…うん!待ってて!」

 

「……(スッ)」

 

「うおっ…。急に現れんじゃねぇよ伴!ビビるだろうが!!」

 

「宵越君!せっかく用意してくれたのに失礼だよ!!」

 

「……(フルフルフルフル)!!」

 

 宵越たちの漫才を聞き流しながら流れる汗を拭い続ける。いつもなら混ざりに行く所だがそれは出来そうに無い。1試合目の英峰の時と比べても疲労がヒドい。2試合目っていうのもあるんだろうが…。

 

「…(けい)。今、審判に見てもらった」

 

「!!どうだ?」

 

「完全に血は止まってる。後半からいけるよ」

 

「…ホントですか!!よかった!!」

 

「やったー!!じゃあ、気合い入れなさないとだね!!」

 

「復帰が早くて助かった。ケガした場所(頭と鼻)が違うからか?」

 

 部長の出血は収まったらしい。報告を受けた井浦サンと人見、姫沢が嬉しそうにしているのが分かった。チームとしては嬉しいことであるはずなのに俺は素直に喜べなかった。

 

 当然、エースである部長がコートに戻れることが嬉しくない訳がない。ただ、部長を欠いてすぐ、逆転された不甲斐(ふがい)なさが上回っただけだ。

 

 そんな中、俺の頭の中を埋め尽くすのは前半の間に様子がガラッと一変した相手校のエース、佐倉だった。

 

 ちくしょう…!!なんなんだアイツは…!!どうやったら止められる!!?

 

 やりゃあできるハズだ!!同じ2年だろ!!同じ…

 

 …………

 

 いや…同じじゃねーよな…。中学までケンカに明け暮れていた俺とは…。

 

「よし、みんな。後半からは部長が戻る。攻撃手が増えるだけで相手は狙いが(しぼ)りにくくなるはずだ」

 

 井浦サンが皆の前でミーティングを始めた。

 

「後半、狙うのは佐倉の疲労。爆発的な集中力だからこそ消耗も激しい。宵越の攻撃時に見せた散漫(さんまん)な守備がその証拠だ。部長、宵越。最終的にタッチできなくてもいい。佐倉を狙って疲れさせよう」

 

「おう」

 

「それと…部長と関、伴と畦道でメンバー交代だ。畦道の抜けた所(左中)には叶が入る。いいな?畦道」

 

「な…なんで…!おら、まだいけます!!」

 

「畦道、今のお前はいつも以上に疲れてる。それはお前自身分かってるだろ。大会前の今お前が倒れたら困るんだよ。悪いが拒否権はなしだ」

 

「……うす……」

 

「よろしく、宵越くん」

 

「お前とかよ…。ちゃんと合わせられるんだろうな?」

 

「練習でも何回かやっていたでしょ。任せてよ」

 

 英峰戦で活躍していたからか息が上がっている畦道は不満そうにしながらも最後は首を縦に振った。

 

「守備は俺、伴、水澄(みすみ)、叶がキャッチの振りを続ける。実際(つか)むのは相当な隙がある時だけ。とにかく佐倉を動かし続けるんだ」

 

「…うす!!」

 

 対抗策が「疲労」か…。

 

 ミーティングの為に体育館の外に出て行っていた紅葉のメンツが戻ってくる中にいた佐倉を見つめる。それしかねーってくらいヤバイ相手なんだ…俺がどうこうできる訳ねぇ…

 

「関君。ありがとうね」

 

「…いえ…すみませんでした…」

 

 こっちもミーティングが終わったからか各自自由に動き始めた。部長は自分の代わりに試合に出ていた関にお礼を言っているみたいだが、関の様子がおかしい。

 

「タッチされてばかりで…プレッシャーもかけられた気がしないし…」

 

「初試合だ。気にすることないよ」

 

 顔を上げないまま続ける関。その姿はどこか見覚えがあった。

 

 「でも…何度もコート…出たり入ったり繰り返してると…」

 

 「いない(ほう)がいいん…」

 

 

 

 

 

ガッ

 

 

 

「え…」 「水澄!?」

 

!!

 

「わ…悪い…」

 

 俺は何を…。気付けば関の肩を掴んでいた。なんでこんな行動に出たのか俺自身分かっていなかったが…。

 

 それ以上言わせてはいけない、と。気付けば身体が動いていた。

 

京平(きょうへい)…」

 

「あ…あの…俺1回、佐倉倒したし…勝負したいな~…なんて…」

 

 頭がゴチャゴチャしている中俺の口から出て来たのは作戦なんて立派な物でも何でも無いただのワガママだった。

 

「…あの時とは状況が違う。見たろ7得点の―…」

 

「いやいや部長だって!!タッチ4得点からの全滅(ローナ)深刻4点もらって8得点!!部長のほうがつえーじゃん!!」

 

 井浦サンから冷静な指摘を受けるがこうなりゃヤケだと部長と肩を組みながら言う。

 

「いや、それ全滅申告なかったら4点…」

 

「脳みそまでパーマに…」

 

「るせ――!!!」

 

 宵越と真からのツッコミを黙らせる。分かってんだよ、ただの屁理屈だってのは!!

 

 佐倉がすげー選手なのは見りゃわかる!

 

 何度やられるかわかんねぇ…!だが俺は絶対に認めねぇ…!

 

 …いない方がマシだ、なんて…

 

 ダセぇセリフは口に出さねぇ!!

 

 

 

「俺は3番特攻!能京の守備(アンティ)です!!」

 

「……」 「…オイオイ考えナシか…」

 

 井浦サンの言う通り。佐倉を倒したいと言うだけでその為の作戦は無いという始末。呆れられて当然だった。

 

 でも…

 

「僕は1番特攻攻撃手」 「正人!?」

 

 部長はそんな俺のワガママを認めてくれた。

 

「そうか、後半からは『特攻』じゃなく『支援』になるのか。…ズルいぞ『特攻』は『支援』より良い感じだ」

 

「ボクも『支援』になるのかな?7番支援姫沢叶!!…うーん、伊達先輩の言う通りしっくり来ない…」

 

「いいわそんなモン!!」

 

「宵越くんは『特攻』だから言えるんだよ。この際ポジション交換しない?」

 

「誰が変わるか!!」

 

「ふむ…どうだ、水澄。俺たちもポジション変わらないか?」

 

「はっ、お断りだ」

 

 真たちとそんなことを話していると2人で話が付いたらしい井浦サンが俺の所まで来た。

 

(ざつ)にはなるなよ!!」

 

「うす!!!」

 

「他は作戦通りだ。まずは攻撃!!行くぞ!!」

 

「「おう!!!」」

 

「後半開始!!攻撃権・能京!!」

 

「止めるぞ!このまま突き放す!!!」

 

「おう!!!」

 

 ハーフタイムが終わりコートに戻る。攻撃の為後半から復帰した部長と対峙する紅葉は能京(うち)と同様2戦目だが未だ集中を切らしていなかった。

 

 が、そんなことはお構いなしと言わんばかりの動きを見せたのは部長だった。

 

 音も無く佐倉の下まで忍び寄ったかと思うと、初撃こそ佐倉に躱され掴まれそうになったがすぐに標的を支援に来ていた奴らに変え3人にタッチ後何事も無く帰陣した。

 

「能京ボーナス1点!!タッチ3点4点獲得!!」

 

「うおおお!!ボーナス取ってた!!?」 「つー事は…」

 

「いきなり同点!!?」

 

 18対18

 

 マジか!!3人に触れるだけじゃなくボーナスも取るなんて信じられねぇ!!

 

 …やっぱすげぇ!!この人は…!!

 

 いきなり前半までの点差を無くした部長に対してコート外からも驚きの声が上がる。が、肝心の佐倉は全く動じているようには見えなかった。本当に前半の最初とは別人だな…。

 

「カバディ…」

 

 さて、守備だ。井浦サンに言われた通り雑にならないようにしねーと。

 

宵越⑥               王城①

   姫沢⑦         井浦②

      水澄③    伴⑧

         伊達④

 

 畦道が抜けた所に姫沢が入ったが、中央のこの3人守備は英峰戦でもやっていたから特に問題は無い。それよりも大事なのは守備の第一目標を『倒す』ことから『疲労』にチェンジすることを徹底すること。その為の井浦サンの指示は…。

 

 守備の位置を下げる。回避を重視しているのもあるが、佐倉を奥まで攻め込ませることで前半以上に疲れさせるのが目的だ。

 

 みんなは威嚇(いかく)だけ…

 

 だが俺は勝負に行く!!隙を見せた瞬間に!!

 

 カン…

 

 は…?嘘だろ!!?

 

 部長に対して向かっていたハズの佐倉が威嚇の為に寄ろうとしていた真と伴にいつの間にか標的を変えていた。その速さはさっきの部長の攻撃とほぼ同じ速さに見えた。

 

「紅葉2点獲得――!!」

 

 18対20

 

 勝負に行く事すら…

 

「くそっ…!!あっさり…」

 

「ドンマイ。取り返そう」

 

 真が悪態をつきながら外に出る。簡単に点差を広げられる形になったが部長はいつも通りに落ち着いている。特に慌てることもなく攻撃へと出て行った。

 

 それからはお互い取って取られてのシーソーゲーム。部長も佐倉もお互いを狙いながらも周りのメンバーの接触(ストラグル)を取ることで得点を重ねていく。それ以外の俺たちも能京(俺たち)は部長を、紅葉は佐倉を触らせないようガムシャラに守る時間が続いた。

 

 ただ勝つ為に目の前の佐倉の攻撃を凌ぐ。隙を見つけられればいつでも倒しに行けるように構えていたが残り1分半を過ぎた今もそんな隙は一度も無かった。

 

 35対37

 

 2点差で能京(ウチ)が負けてる…。結局後半最初の守備のようにまだロクに勝負ができてねぇ…。

 

 だがこの時間でハッキリした。佐倉は俺たちが隙を見せるまで部長狙いで来る。師匠への対抗意識か何かしらねーが…それを利用してこのターン勝負をかける…!!

 

「カバディ…」

 

 井浦サン以外の6人で佐倉と対峙する。残り時間を考えても勝負に行くならここしかない。

 

 曲がりなりにもやってきたんだ。探せ…最良のタイミングを…!

 

 俺が(つか)みに行かなかったのも相まって…回避に徹すると刷り込まれてるはずだ。

 

 佐倉は前までと同様部長を狙っている。その光景はこの後半だけでも何回も見てきた。

 

その隙を…

 

 その一瞬を…

 

 全身全霊で!!!

 

 

 

 

 

 パシッ

 

 

 

 いとも簡単に俺のタックルは払われた。

 

 この後半ずっと隙らしい隙は無かった。唯一の隙は今のこのタイミングのみ。この前提が正しいとするならば…。

 

 今の佐倉を相手にして俺が倒せる隙なんて一切なかったってことなのか…?

 

()()()()()んだぞ伴!!部長を…!!」

 

 井浦サンの声が聞こえた。すぐに身体を起こそうとコート奥の方へ顔を向ける。そこにあったのは伸ばされた伴の腕を押さえながらコート角に追い込まれて逃げ場を失った部長が…

 

 佐倉に触れられた瞬間だった。

 

 伴の腕を振り払い帰陣しようとする佐倉。俺の横を通り過ぎようとする佐倉をなんとか止めなければと身体を起こすよりも先に俺も動き出した。腰を掴むことに成功するが俺1人の体重(ウェイト)だけでは佐倉を止めることは出来なかった。

 

 ざけんな!!待てよこの野郎…!!!

 

 俺は部長の…このチームの役に…

 

 

 

 

 

「王城さん…今度は僕の勝ちです」

 

 

 

 

 

「紅葉3点獲得!!!」

 

35対40。

 

 エースを追い出され、点差も広げられた。俺のワガママを全員許してくれたっていうのに結果はこのザマ。皆に申し訳なさすぎて顔を上げることはできなかった。

 




※オリ主は宵越の守備に合わせることこそ出来たが、王城を守る一瞬での守備意識のズレによって原作と同じ点数結果になりました。
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