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それから先は一方的だった。
宵越くんが自慢の回避能力を活かして高谷さんに接近して超近距離戦を仕掛けるも高谷さんの
気付いていないと思われた高谷さんだったが先程と同様宵越くんがチャージに来るのを分かっているように回避し
3対6
納得がいかない宵越くんだったが慶さんの説明を受けてなんとか納得した様子。が、高谷さんに「長い手足はこうも使える。3点で満足しちゃ…ダーメ♪」と煽られて顔に青筋がたっていた。
その後は初めての試合に緊張する畦道を気遣って慣れない
コートに1人残った畦道対高谷さんのタイマン勝負は慶さんとの居残り練習で磨いてきた「低い姿勢からの脚キャッチ」を成功させたものの、それを予測していた高谷さんに1枚上回られて帰陣される。
伊達先輩の
3対10
能京チーム初めての
図らずも伊達先輩の
宵越くんの出来すぎともいう序盤で作った『流れ』は完全に消え、メンバーの精神は深く沈められた。
その後能京メンバーは高谷さんを最警戒するようになり、宵越くんの
5対15
徐々に点差は広がっていった。
しかし真に問題なのは点差ではなく人数差だ。
カバディという競技では相手の得点=守備人数減であるため、相手が得点を重ねる裏でこちらが得点できない状況が続くとこちらの守備人数が揃わないまま相手の
このことを宵越くんに伝える慶さん。
「…まず、態勢を整えよう。宵越、高谷との勝負は――…」
「…わかってる。試合に負けたら意味がねぇ。行ってくる」
そう伝える慶さんの表情は苦い。後輩に個人の勝負よりもチーム事情を優先するようにとの指示はチームの司令塔である以上避けられない。でも仕方ないと簡単に開き直れない甘さというか優しさがある慶さんは嫌いじゃない。こんなこと本人に言ったらどうなるかなんて目に見えてるから言わないけど。
先程までと動揺に高谷さんを狙う宵越くん。しかし本当の狙いはカバーのために後方へ回り込んできた
「逃げ道はねーぞ!!」
「いや、
これで2人アウト。作戦通りに行ったことに安堵してもう一度コートを見ると
「あいつは…」
あ~……やられた……
「早く戻れ宵越!!」
「お前が帰った時点で…
司令塔の慶さんが叫ぶもその甲斐無く高谷さんが追撃を行う。
追撃。相手が自陣に帰った瞬間、ノータイムで攻めて来る攻撃。攻撃手が倒れて帰った場合以外はルール上認められている。帰り際の
宵越くんも慶さんと高谷さんによる
更に
7対18
「…やられたね、宵越くん達に教えてなかった隙を突かれた」
「いや、教えましたよボク宵越くんに」
『おい!今の
『どうしたのさそんな大声出して…。あぁ、あれは追撃と言ってね。
ボクの部屋で夕ご飯の準備をしている間に見ていたビデオで気になる箇所があったらよく質問してくる宵越くん。その時にしっかり説明して気をつけるようにとも言っていたのにそれが反映されていないことに少しため息をつきそうになる。
「まぁ情報で知ってるのと実際に体感するのとじゃ違いますからね。宵越くんも今すごく反省してるみたいですし、説教はしないでおきます」
「そうだったんだね…。わぁ、すごい悔しがってる」
今になって以前に教えてもらった『追撃』と実際にやられた『追撃』が同じモノだと認識できた宵越くんがコート外でなにやら叫んでる。まぁこれで次以降は失敗しないでしょ。もし次があったらその時はどうしようかな。
さて、宵越くんはさておいて。状況は以前悪くなる一方だ。今コートにいるのは水澄先輩と畦道。タッチしたのは攻撃型の宵越くんと慶さん、それと1度
水澄先輩が
「捕まらないだけでいい!!2人で守っていけ!!」
「う…うす!!」
慶さんの指示が飛ぶ。水澄先輩の選択を間接的に肯定する指示。確かに今中にいる2人は守備型の人間だ。人数に目がくらんで慣れない
「…俺らの領分は守備だ!!
「おす!!」
コートにいる2人が声を出して士気を上げる。しかし、2人の予想に反して
「カバディ…」
六弦さんだった。
「この人、攻撃もできんの!?」
「高谷さんは…温存…?」
「…お互い様になっちまったな…」
予想外の人が
「相手パワーあんぞ!!畦道!!」
水澄先輩が檄を飛ばすのと同時に六弦さんが
「カバディ…」
「くそっ…脚…脚…!!」
ガタイの良さに反して畦道のチャージをことごとく避ける六弦さん。キャントも動きも安定している。
ゴッ
コート上で響く鈍い音。再三のチャージに反応が遅れた六弦さんが対応しようとするもその際に膝が畦道の顎にぶつかる。その衝撃により畦道の頭にあったガーゼが勢いよく剥がれた。
「畦道…!!」
不意の事故に声を出す宵越くん。カバディをやってたらこれくらいの接触は日常茶飯事。でも宵越くんはそうではない。
畦道が六弦さんの脚を掴むことに成功した。
「なんべん避けられようが関係ねぇ!!脚止める!!そんだけだ!!」
そう声を絞り出す畦道。その執念によって届きそうになかった
「らあああ!!」
隙を置かずに水澄先輩も突っ込む。2人の守備としては考えられる限り最上の結果。もしこれが宵越くんやマーくん、高谷さんの
だが、相手は世界組4番六弦歩。
彼は2人を引き連れながら悠々と自陣に向け帰還しようと
見方によっては泥臭い、見方によっては残酷なほど圧倒的な差を痛感させる。
本当に羨ましい…
「奏和攻撃成功!!2点獲得-!!!能京ローナ!!奏和追加2点です!!」
7対22
2回目の
あれかな、マーくんみたいにクリーンタッチ、掴まれないまま帰陣できなかったから自分は未熟者だとでも思ってるのかな?自分はマーくんやボクに無い
ピピピピ
「時計止めてください!」
思考の海に沈みそうな所を笛に止められる。なにか問題が…!!?
「
「え…あ!?」
畦道の頭から出血が止まらない。あそこは位置的にガーゼを貼っていた所だ。そういえば六弦さんに引きずられた際に頭が床に擦られていたのを思い出す。ガーゼが剥がれていたこともあって居残り練のケガが開いたのか!
「へ…平気っす!まだやれます!!」
「いや、ダメです!!一年!!医務室へ!!顧問の先生も!!」
自分は大丈夫だと抗議する畦道。だがそれに頷くわけもなく、審判によって指示が飛ぶ。
「す…すぐ止まんべこんなん!!おらまだ…」
「
依然認めない畦道。宵越くんとは違いチームに何も貢献できていないと考える畦道は必死だ。そんな彼を止めるのは唯一彼を名前で呼ぶマーくんだった。
「怪我は敗北と同じくらい怖いものだ。ちゃんと治療してくる事」
部長としての言葉に畦道は何も返せない。泣きそうになりながらも先程の様子からは一転わめくのを止めた。
「審判。タイムアウト。交代します」
「メンバーチェンジ能京!!」
そう言いながらジャージを脱ぎストレッチを始めるマーくん。あ、マーくんが出るんだね。
じゃあボクの仕事はこっちだ。
「畦道、こっち来て。…今居る場所は?」
「…?奏和高校体育館だべ?」
「対戦相手は?」
「そ…奏和だべ!いきなり何聞くんだヒメサワ…?」
簡単な質問を畦道へ。畦道は一体何を聞くんだと訝しげだ。
ボクは審判に向き直って淡々と告げる。
「審判、救急箱はこちらで用意できてます。彼のケガについてはこちらで処理しますので医務室の用意は大丈夫です」
畦道を椅子に座らせて応急処置をする。救急箱用意しててよかった。ボクがバス酔いしたのもあって実際に持ったのがマーくんなのは秘密だ。
「し、しかし…」
「見た所傷が開いただけのようですし、消毒して止血、後は包帯で巻くだけで大丈夫でしょう。頭を擦った訳でのケガで頭を強く打ったわけではありません。受け答えもしっかりしていますし、脳震盪の心配もありません。」
「わ…分かりました」
審判はボクの言うことに納得したのか引き下がってくれた。畦道はボクが述べた文言の内容が分からないのかポカンとしていた。
「中学の時に勉強がんばってね。
「そ…そっか。頭良いんだべなヒメサワ…」
「ちょっと
そう言うのと同時にボクは包帯を巻き終える。後は時間をおいて止血できてるか確認できたら完了だ。畦道はボクの言うことにいまいち理解しきれていないようだったけど、最後だけは分かったようで力強く頷いていた。
「では能京攻撃で再開します!!」
「よろしく…お願いします…」
「お、試合再開だべな。早速部長が
畦道のケガで少し時間は空いたがようやく試合再開。こちらの
「…畦道。ボクが保健室に行かせずにここに居させたのはこれからの試合展開を直に見てもらうため。集中して、絶対見落とさないで」
「ヒメサワ…?」
畦道がボクの言うことに疑問があるようだが無視する。そんなことよりマーくんの
マーくんの
「……の…能京…よ…4点獲得…」
「あれ?ボーナス越えてませんでした?」
「あっあ…越えてました!!」
「…ですよね。4点くらいで僕は
主審の判決に疑問のマーくんが副審に確認するとすぐに答えが返ってきた。この反応も久しぶりだな。中学の頃の1軍と2軍の練習試合で丁度同じようなものだったなと思い出す。
それと同じなら今から起こるのは…
「ご…5点…しかも…高谷を追い出したァ!!??」
奮い立つ歓声。あの時は観客はおらず2軍メンバーが反応しただけだったから歓声の大きさに少しビックリする。そんな歓声には反応せずにマーくんは淡々と仲間に告げる。
「…さ…守備やろうか」
12対22
ここまで長かったがようやく、能京の獣が反撃の狼煙を上げた。
「ごッ…5得点…!?」
「煉クンが…」
「高谷さんが…!!!」
「「「初めてコートの外に…!!!」」」
これまで能京の
「きゅ…急に現われたような…」
「お…お前もそう思った!?」
「…おもしれー技だね…」
高谷さん以外の奏和メンバーは何がなにやらといった様子。唯一高谷さんが勘づきかけているのは流石としか言えない。
「「「部ちょ…」」」
コートにいる
「まだ点差はある。喜ぶのは早いよ」
「六弦を潰してローナを頂こう」
「「「「おお!!」」」」
唯一マーくんの
「まずいな…5対1か…」
「すぐコート戻れるようにしとけ高谷!!」
「アウトにされて動揺すんのはわかるけど集中…」
コート外の奏和メンバーがそれぞれ声を掛け合うが、唯一高谷さんのみ返さないままリズムを取りながらなにやら確認している…?
「…高谷…」
「やべーリズム…そりゃ上がっちゃうよね…六弦さんも」
「ヒ…ヒメサワ…?」
「…!ごめん畦道。ちょっと集中しすぎたね」
畦道が怯えたような声を向けてきたので慌てて
「カバディ…」
そうこうしている内に六弦さんの
六弦さんの初回の攻撃は先程の2人に向けてのものとは違った。ボクやマーくんが使う読みづらい攻撃。宵越くんがたまたま避けられたのもボクやマーくんのを受けて経験があったのと彼自身の反射神経の賜だろう。本当に
瞬間、六弦さんがボーナスを踏む為奥に行くのと同時にマーくんが六弦さんの後ろへ回り込む。察知した六弦さんが後方へ振り返りマーくんを狙って腕を振り回す。
「変わったね。力だけの選手じゃなくなった」
それを躱しさらに声をかける余裕を見せつけるマーくん。
「部長ォ!!この技…」
「僕が引きつける!!」
「3人…いや4人で同時に行かないと倒すのは危険だ!!」
「やっぱそれだけの選手かよ!!世界組…!!」
宵越くんの問いは半ば無視して指示を出すマーくん。先程の
マーくんの指示を受けて能京メンバーは気を張り直す。だが、その緊張状態は意外な形で終わった。
六弦さんが誰にも
…え?なんで帰陣したの?どう考えても六弦さん有利の状況だったのに。
「か…帰った…!?」
「ストラグル…入ってねー…よな?」
声に出た宵越くんと水澄先輩以外のメンバーも六弦さんの行動を理解しきれず呆然とする。審判からボーナスの1点が入っていたことを聞いてもそれはほぼ変わらない。
「…ってアレ…ボーナスだけの時って…」
「1点入るだけだ。こっちは誰もアウトにならないし、向こうも復活はない」
「5対1のままじゃねーか…攻めあぐねて帰ったのか…?」
いや、それはない。マーくんはともかく、他のメンバーはあの
…は?いやいやまさか…え?まさか本当に
頭の中に浮かんだ妄想と言われても仕方ない荒唐無稽な考えだがなんでだろうか、「六弦さんなら」と考えたらどんどん根拠が出てくる気がしないでもない。
「六弦…『部長』として良くないな」
「そんなに僕と1対1がやりたいのかい」
ボクと同じ回答に至ったマーくんが問いかける。六弦さんが振り返ってマーくんと見つめ合い、視線が合って先に外したのは六弦さん。視線は斜め上。それはこれまでの過去を振り返って何年にもわたって出来なかった『忘れ物』を取りに来たみたいだった。
「……ここしかないのだ」
「コート外の選手はアウトになった順に復活する。俺が1人でもタッチ、アウトにしたならば…最初に触られた高谷が復活する」
「もう奴は油断しない。必ず点を取る。…つまり…1対1の機会は消える」
「約3年だ。
ボクが最後に六弦さんと対面したのは六弦さんが中学3年生の引退の挨拶の時だ。あの時隣にマーくんもいたけど2人の性格上連絡して遊びに行くなんてことはやっていないだろう。しかもあの時理由は分からないけど世界戦の後だったのもあって皆ピリピリしていた。あれから3年、マーくんを捕えて倒すことが1番の目標だとボクに教えてくれた六弦さんは奏和の部長になっても変わらないようだった。
「俺は
「
部長というしがらみを脱ぎ捨てた
「……カバディ…」
対するマーくんは何も答えないまま
「…学べ。俺の知る限り、個人では最強の
「
慶さんが宵越くんに話しかける。そう言う慶さんの姿は能京の司令塔というよりは中学時代マーくんの隣にいた頃の『王城の友人』に見えた。
「部長の方が強いんだよな…」
そう聞く宵越くんだが顔は不安を隠せないようだ。戦績だけならマーくんの勝率が8割だというのは本人から聞いていたみたいだけど宵越くんも分かってるんだろう。過去の戦績は今の勝負には全く関係無いということを。
「……」
ボクも隣の畦道に言おうとしたが杞憂だったみたいだ。畦道もこの勝負がとても有意義なものだという事を言葉だけじゃなくて感覚でも理解したのだろう。この勝負、マーくんが勝っても六弦さんが勝っても畦道は進化する。確信はないがそんな気がした。
六弦さんの息が『止まる』。その瞬間をマーくんは逃がさず胸元へ向けてタッチに挑む。
中学時代の1対1で最初のタッチで勝敗が喫することも少なくなかった。そのたびに六弦さんは悔しそうにしてたっけ。
その悔しさが残っていたからか、六弦さんは悠々とタッチを躱す。そして前に残っていた左足首へ向けてチャージする。その
掴んだと思った瞬間、マーくんが寸前の所で上に飛ぶことで事なきを得る。多分だけどマーくん六弦さんを
「まだ
「隙がねぇんだ…」
「……」
「オイ
宵越くんと水澄先輩が2人の勝負を見て感嘆を漏らす。慶さんも声こそ出さないものの2人と同じかそれ以上にこの勝負に集中していた。
宵越くんの言う通り
「いいぞ…六弦部長
「いや、向こうもハンパじゃないぞ…脚ケガしてたんだろ、あの人…」
「…そもそも…なんでケガなんてしてたんだ……?」
奏和サイドでも声が上がる。勝負から目を離さないまま耳を立てていると高谷さんが興味深いことを言い出した。
「あ?カバディやってればケガくらい…」
「ケガなんてさせてくれる人じゃないっしょ。倒されたとは思えねー…」
……
思い出したくないことを高谷さんに指摘されるのを聞いて問題から目をそらしたくなる。
高谷さんの指摘が聞こえていたのか、六弦さんがハッとしてマーくんに聞き出した。
「…王城…!!この3年…どれだけ練習した…!?」
もちろんマーくんがそれに答えることはなく、ただ「カバディ…」とキャントを続けながら笑みを浮かべるだけだ。乾燥した唇の端から出血している姿は血気迫るものを感じる。
その姿を見て六弦さんが思わず息を『呑む』のを感じた。そしてこの時六弦さんが考えていることが分かった。
『お前…まさかその脚…
そんな動揺から生まれた隙をマーくんが見逃すわけがなかった。
右腕一閃。普段なら事も無く避けられただろうタッチは
しかしそこは六弦さん、瞬間復活する。無呼吸でマーくんの脚へ向かう。手による直線のタッチは、脚が前に来るという事を知っていた。
着地時の右足を狩る!!…その六弦さんの狙いが叶うことはなかった。
キュキュキュ!
右足が着地するやいなや一箇所にとどまらずに動き続けた。一陣目のチャージを躱された六弦さんが慌ててもう片方の腕を振り抜くも時既に遅し。マーくんは既に自陣近くまで帰還していた。
マーくんの右足を掴めなかった理由は至極単純。マーくんが足の回転数を鍛えてきたからだ。これは中学時代からずっと習慣として続けていたラダートレーニングによって鍛えられたもの。ボクもマーくんに倣って狂ったように練習しまくったっけ。
『大事なのは動きを読まれないようにすること…自然で安定した動きは地道な『基礎』から作られる。ラダーとかで足の回転数増やしたりバランスを身につけたり…。
…技を使うのはその後かな…』
ボクもマーくんと同様身体に恵まれなかった。タメの人は全員ボクより
「誰よりも自分を
「カバディへの愛の違いだ」
「僕を追ってるようじゃ…まだまだ…」
「帰った…!!」
「奏和…
15対23
水澄先輩の歓喜の声に合わせて観客からも声が上がる。水澄先輩がマーくんと手を合わせる反対側で伊達先輩もマーくんの手を握って健闘を称える。慶さんも3人が盛り上がるのを嬉しそうに見つめていた。
宵越くんは…なんかぬーんとしてる。喜んでいないわけではないのだろう。だけど、自分の活躍外の所で
「す…すげぇ…なんかフクザツだけど…」
そう驚愕しながらつぶやく畦道。そりゃ自分が交代した直後に念願の
「そりゃそうだよ、マーくんだもん。畦道が勝とうなんて100年早いよ」
突き放すように答える。変に落ち込む暇は畦道にはない。時間は限られているんだ。少しでも前を向いてもらわないとボクも困る。
「ド…ドンマイです六弦さん…」
「何が…何が『部長として良くない』だ。オーバーワークで脚を壊すような奴がよく言う…!」
そうため息とともに零す六弦さん。内容の割には顔に憂いはなく、晴れやかだった。
「ははっ、やっぱ
「…すまない」
「オレも好きっすよ。
「それを沈めんのはもっと好きっすね」
「ボーっとすんな宵越!!向こう全員復活だ!!高谷来るぞ!!」
「いや、心配要らない。ちゃんと調整してもらったからな」
「調整?」
しかし慶さんは必要ないという。ボクも何がなにやらと周りを確認すると慶さんが言わんとすることが分かった。
ビーーーッ
「前半終了!!ハーフタイム!!」
「ええ~…今!?」
高谷さんが丁度キャントを開始しようとしたのと同時にタイムアップ。前半終了を告げる笛が鳴り響いたのを聞いて図らずも梯子を外された形になった高谷さんが悲鳴を上げた。
成る程ね。最後の
「前半で8点差…だいぶ点とられたイメージあるけどな」
「今みたくボーナスとって、ローナ決めれば同点だね」
「いけそうな気がしてきたでしょ?」
「「おお…!!」」
慶さんとマーくんによる点差の事実と希望的観測による檄は普段なら簡単に受け入れられるものではないはずが、前半をいいタイミングで終わらせたことによりチームの雰囲気が良い今は有効に効いた。成る程、こういうやり方もあるんだね。
「こういう『流れ』の作り方もある」
「さぁベンチに行こう。あ。
「楽勝ってカオでね」
マーくんに言われたとおりに悪そうな顔を浮かべる能京メンバー(伊達先輩がやり慣れてないのかすごくぎこちない)。これマーくんが言ってるけど発案者は絶対慶さんでしょ。意地が悪いもん。奏和メンバーも負けているはずなのに余裕そうな能京メンバーを見て釈然としない表情のままベンチに下がっていく。
さて、何はともあれこれで前半終了だ。疲れたはずの皆を労るのは当然として、ボクも準備しないとね。
現実はともかく、灼熱カバディ界では姫沢家の両親の力によってオリ主が免許を取得することができました。
原作と違って畦道が部長の活躍を見逃すことはなくなりましたが、これがこれからどう作用するのかは私にも分かりません。
ちなみに疲労箇所が分かるはずのオリ主がなぜ部長がオーバーワークでケガするまで放置したのかについては第1.5話にある通りハシャギすぎた結果です