2024/03/13
視線誘導にルビを振りました。
【side 帝光】
(一体何が起きた…?オフェンスファールってことは俺より先に進路にいたってことだろ?あり得るのかそんなことが…?)
何が起きたのか分からないのは青峰本人だけであり、周りから見ていたフィールドプレイヤーとベンチでみていた選手・監督には何が起こったのか分かっていた。
オフェンスファール、つまりオフェンスがディフェンスに対して突進をしたり手で押した際に起こるのがオフェンスチャージングである。
今回の場合は青峰が藍野に対して突進をしたことで審判からオフェンスファールをとられたのである。
青峰のノーフェイクでの速攻ドリブル。本来ならオフェンスファールは愚か、反応すらできないはずであるがなぜ藍野は青峰の動きを察知できたのか。
そうそれは、
「...研究ですか?」
ベンチで記録をとっていた桃井は白銀監督に自身の中で出した答えをぶつける。
「うむ。そうだろうな。恐らく今までの青峰のプレーのビデオを見て本人ですら気が付いていないレベルでの癖を研究しつくしているのだろうな。」
「青峰君交代させますか?」
ディフェンスではあっさりと剥がされ、その直後のオフェンスではファールをもらい流れを持っていかれるかもしれない場面。
青峰の心情としても冷静ではいられないだろうタイミング。ここで落ち着かせるために交代をするというのはごく自然な発想だろう。
事実、マネージャーである桃井が青峰の交代を進言しているのだから。
しかし、この提案に対して白銀は
「いや、その必要はない。」
青峰の交代をせず続投する判断をしたのだ。
(このような場面は今後くるかもしれない、その時に青峰が自力で立ち直ることが出来るのか否か。それを監督として見極めなければならない。が、しかし…。)
「虹村、いつでも出れる準備をしておけ。青峰がダメそうなら交代をする。」
「了解です。」
虹村に準備をするよう指示した意図としては、このまま青峰が立ち直れずにプレーを続けファール連発してしまった場合だ。
いくら全国優勝候補同士の試合とはいえ、練習試合である。
試し過ぎて試合を壊してしまう事態だけは避けたいのである。それに青峰がここでイップスにでもなって本当に立ち直れなくなってしまえば本末転倒であるからだ。
そんな思惑がある中、コートの中では赤司が青峰に声を掛けていた。
「青峰、大丈夫か?」
「あぁ…。俺の相手めっちゃつえーぞ、このままやらせてくれ赤司。」
「…わかった。監督が交代もタイムアウトもとらないということはこのままいけというメッセージなのだろう。」
「サンキュー。」
青峰は久し振りに出会えた強者。次に戦えるとしたら全中であたれるかどうかといった状況。
これを楽しまずにはいられないのがバスケ馬鹿である証なのだ。
【side out】
(うっし、うまくいった。)
藍野はというと一連の流れを経て安心していたのである。自身の研究とプレーレベルが帝光、ひいてはキセキの世代に通用したのだから。
(とはいったものの、このまますんなり流れをもらえるわけじゃなさそうだな。)
ファール後の青峰の表情を見るからに、心が折れているよりもやる気満々という顔は藍野にとって前世でも見たことのある顔であった。
「ここ1本とるぞ!」
PGの先輩がそう声をあげながらボールを運んでいく。
相手の攻守を連続で防いだのだ。ここで連続得点することができれば、流れは照栄につくといっても過言ではない。
そして再び相まみえる藍野と青峰。
「さっきはやられたが次は捕らえるぜ。」
青峰は先ほどよりも集中力をあげ、より藍野に注視していた。
しかし、それは藍野にとって思うつぼであり術中にハマっているのである。
(見ようと思えば思うほど誘導にはかかりやすくなる、これはチャンスだ。)
冷静に青峰の表情を見ながら分析をし、そしてPGの先輩が3P付近までボールを運んでくるのを音できいた藍野。
今度は視線を内側、PGの先輩の方に向け再び青峰が同様にそちらに視線を向けたのを確認すると外側から青峰を抜き去り、フリーとなる。
「峰ちん!マーク!」
先ほどあっさりフリーになられた青峰に少し苛立ちを覚えている紫原が咄嗟に青峰に指示をだす。
「...っつ!またかよ!」
青峰はまたも自身がマークマンを見失い、驚くもつかの間
「決めろ!藍野!」
PGの先輩からフリーになった藍野へとパスが送られ…
「うぉらああああ!!!」
ることはなかった。なんと青峰が持ち前の反射神経でパスをカットしたのである。
原作のWCにて今吉がパサーの視線読みをしたように、青峰も今の一瞬で、本能が正解を導き出したのである。
「カウンター!」
赤司がそう叫ぶと全員がキセキ全員が走り出す。
青峰も赤司にパスを出し、走り出す。
パスカットをされると思っていなかった照栄メンバーは帝光よりも一歩遅れて戻り始めるが、追いついたのは一番自陣に近かったPGの先輩とキセキと同じタイミングで走り始めた木吉先輩だけだった。
PGの先輩が赤司に追いつき一瞬足を止めさせるも、赤司はリングより少し高い位置にパスを出す。
そこには赤司を追い抜かしダンクに踏み切った紫原とそれを阻止するべく跳んだ木吉先輩の姿があった。
「絶対止めて見せる!」
「はぁ?止めれるわけないじゃん。」
ボールを空中で押し合う二人だが、勝利したのは紫原だった。
俺は尻餅をついた木吉先輩の手をとりながら
「すみません。俺がカットされない位置取りをしていれば…。」
「気にするな!ドンマイ!ドンマイ!」
木吉先輩は明るくそう返してくれたが、敵陣に向かいながら自身の手のひらをみて悔しそうにしていたのを見逃さなかった。
そしてPGの先輩も先ほどの事に気を使ってなのか、俺を中心というよりも木吉先輩に一度ボールを預けて攻撃を展開する形をとるようになってきた。
帝光はミスマッチである緑間と黄瀬を中心に攻撃を仕掛け、確実にゴールネットを揺らしに来た。
暫くその攻防が続き、スコアは14-24と先ほどよりも点差がついた状態で第1Qが終了した。
「よし、思ったよりも点差を抑えて第1Qを終了することができたな。」
監督は第一声にそう告げるとそのまま俺に声をかけてきた。
「藍野、マークはまだ振り切れそうか?」
「はい。まだ完全には対応されていませんが、いずれは捕まると思います。」
「ふむ…。第2Qは木吉中心に攻撃を組み立てる。が、それだけでは木吉の負担が大きいか…。」
暫く監督が考え込むと
「スクリーン使いながら藍野をフリーにして外を使っていくぞ。場合によっては二人でスクリーンかけにいっていいぞ。」
「「「はい!」」」
「…木吉先輩、中は頼みます。」
「おう、任せろ。」
グータッチをしながらコートの中に戻る。
【side 帝光】
「青峰、彼はどうだい?」
赤司はベンチに座ると青峰に確認した。
「あれは…テツだな。」
「黒子かい?」
「あぁ、目の前で見てるといきなり消えるからマジでテツを彷彿とさせるぜ。」
「でも、こっちからみてると全然消えてないっすよ?」
コート内で青峰がフリーにされるのを何度かみている黄瀬が疑問を口にする。
「これは憶測にすぎないが、黒子とは視線誘導という枝葉は同じだが『影が薄い』という根本の性質が違うんだろうな。さて、外から見ていた黒子はどう感じた?」
「…そうですね。ほとんどは赤司君の意見と同じです。後は多分彼の視線誘導にも時間制限があると思います、特に僕よりも短い時間でしか使えないと思います。」
「ほぅ、それはなんでだい?」
「僕は『影が薄い』という性質と『
「なるほど、青峰。彼の視線誘導にはなれたかい?」
「いや、感覚だけどテツとは違うやり方というかなんか違うんだよな。普段からテツを見慣れてる分、その差がどうしても邪魔してくるんだよ。」
普段の練習試合でも彼らに自由にさせ、必要な時に発言をする白銀は今の様子を静観していたが、ここで方針を伝える。
「青峰、一度交代だ。黒子、入れ。青峰は外から彼を見て突破口を掴め、黒子は逆に中からみて外で見ていた時の差を感じて何かを掴んでほしい。第2Q半分くらいで虹村と交代予定だ。」
「「はい!」」
「そして第2Q以降は紫原を中心に攻撃を組み立てろ、向こうのキャプテンの実力を測るためだ。」
「「はい!」」
「…そういうことだ紫原、ここからは働いてもらうぞ。」
「めんどくさいけどわかった~、捻り潰すよ。」
そうして交代をした帝光メンバーもコートへと戻っていく。
第2Qが開始し、帝光の攻撃で始まる。
赤司はノーフェイクで紫原にパスを出し、木吉先輩と紫原の1on1となるが力押しで木吉先輩が負けあっさりと取られる。
「取り返すぞ!」
PGの先輩がそう鼓舞する。
…あれ?青峰がいない?
そう思い、辺りを見回すと
「君をマークしているのは僕です。」
「うぉっ!?」
目の前に黒子がいた。こんな気持ちなのか…。
10点差で黒子を投入した理由…。更に点差を広げるというのもあるだろうが、俺を直接見に来たのか?
スペック的には振り切れるし、黒子のDFは大したものではないので問題はない。
あるとすればいることを忘れてオフェンスファールを取られてしまう可能性があるということ。
確かにこれは認識しにくい。主人公で影が薄いと自負するだけのことはある。
だが…!
俺はバックステップを挟み、PGの先輩の背中の前に立ちそのままボールを貰い3Pシュートを打つ。
ディフェンス側がオフェンスよりも後ろに立っていることは基本的にない。そのため一度後ろに下がることでオフェンスファールを取られるリスクを下げる。
更にPGの後ろに立つことで目の前に確実に黒子がいないという状況にし、不意のブロックの可能性を潰す。
ボールがゴールネットをくぐるのを確認して自陣に戻る。
最難関はディフェンスだ。どこにいるかわからない相手をマークしなければならないからだ。
対策はある。原作でも今吉が行っていたパサーの視線の先から居場所を特定するという離れ業だ。
ただ、赤司は平気でノールックパスを行うのでそれが100%通用するかはわからない。
視線の先にいたとして、毎秒赤司は黒子のことをみているわけではないので細かな位置がわからない。
...くっそ、本当にどこにいるのか分からない。
黒子のことは諦め、どこにパスが出てもヘルプがいけるポジションをとる方向にシフトした。
そしたら赤司から黄瀬にパスがでたのでカバーできるポジションへ移動しようとしたら
ビュン! とボールが横切り紫原へとボールが渡った。
…これが「ボールが曲がった」というやつか。原理がわかっていても、実際にみると驚きしかない。
体を反転して木吉先輩のヘルプへ向かう。紫原は木吉先輩のディフェンスがいないかのようにどんどんと押し込み、リング付近へと近づいた。
紫原の正面に立ちボールを奪おうとするが両手を上にあげられ、届かない位置にいってしまった。
紫原はそのまま跳びながら回転して両手でポーズハンドダンクをして木吉先輩をふっとばした。
「…やるなぁ。次は止める!」
「はぁ?全然相手になってないのにまだそんな言葉でるのかよ。」
紫原がそう言い放ち、自陣に戻る。
その後は、照栄の攻撃は俺と木吉先輩が、帝光の攻撃は紫原を中心として攻める。
しかし、時間が経つにつれて木吉先輩の攻撃も守備も紫原に対して通用しなくなってくる。
『後出しの権利』も紫原のウイングスパンの長さの前では止められてしまう場面もあり、段々と点差が広がっていく。
第2Qも半分を過ぎたところで監督がタイムアウトを要求する。スコアは21-41と20点差をつけられる。
「木吉、ダブルチームにするか?」
監督は木吉先輩へそう尋ねる。
「大丈夫です、多分ですけど二人にしてもあのパワーは止められないと思います。それなら皆には目の前の相手に集中してほしいので。」
「…わかった、木吉の負担を少しでも減らすために「監督。」…どうした木吉。」
「攻撃も今のまま俺と藍野を中心に攻めさせてください、このまま諦めたら全中本番の時に折れてしまいそうなんです!」
「…わかった。攻撃はそのままいく。守備はこのタイムアウトで15番がさがらなければ藍野はヘルプに出れるポジショニングを、交代するようならマンツーマンでいけ。」
「「「了解!」」」
「木吉先輩。」
「?どうした藍野。」
「こんな時に言う言葉じゃないかもですが、楽しんでこーぜ、です。」
「…そうだな!楽しんで逆転しにいくぞ。」
「はい!」
心なしかベンチでも暗かった木吉先輩、やはりキャプテンであり精神的支柱でもあるこの人が前を向いてくれるだけでこのチームはまだ戦える。
しかし、まさかここから圧倒的な蹂躙が始まるとは誰も思っていなかった。
ストックはあと1話分はあります。
今話5,000文字を超えて、ここまでで最長。
次の話は4,600文字とか。
ヒロインについて
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ヒロイン無し
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桃井 さつき
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相田 リコ
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荒木 雅子
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アレクサンドラ・ガルシア(アレックス)
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土田の姉
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水戸部の妹
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オリキャラ