あの練習試合を経て、大きく何かが変わったかと言われると特にないが、明確に分かる変化は一つあった。
それが木吉先輩の態度だ。
決して練習をさぼったり、手を抜いたりということはしていない。むしろ積極的に声を出し、キャプテンらしく皆を引っ張っている。
しかし、時折気が抜けているかのようなプレーが見られ部員もこの状態に困惑している。
監督もその様子は察しているのか木吉先輩と二人で話す場面も多々見られる。
全中県予選は既に終了しており、優勝で本選進出確定している。
来週、その本選が始まるというこの時期にキャプテンの変化はチームとして大きな出来事であった。
グループ予選の組み合わせも既に発表されており、対策練習もしている中こうもプレーに影響が出るとは…。少し話してみるか。
「木吉先輩。」
「ん?藍野か、どうした。」
「ちょっといいですか。」
そう言って練習後に木吉先輩と二人きりになり、早速本題を話す。
「最近、気の抜けたプレーが目立ちますが大丈夫ですか?」
「…あぁすまん、すまん。もうすぐ本番だってのに悪いな。」
「やっぱりこの前の練習試合の事引きずってますよね?」
「…わかるか?キャプテンとして早く立ち直らなきゃいけないのにな。」
「確かにあの日、俺たちは帝光相手に歯もたたなかったです。でもあれは練習試合、全中本番ではなかったんです。日本一を目指すならどこかで彼らと必ず当たります、その前に実際に相対して色々と知ることができたのは他の出場校と比べても明確なアドバンテージです。その為の対策会議も行ったじゃないですか!なのに何を…。」
「実際にあいつらと試合をしたからだよ、あの練習試合で感じたんだ。『これは何をしても勝てない』って。確かに対策会もした、その為の練習もした。…それでもなんだ。やればやるだけあいつらに勝てるビジョンが全く浮かばなくて、より負けのイメージが大きくなっていくんだ。キャプテンの俺がしっかりしなきゃいけない時期なのはわかってる、でも何をしてもあいつらに負けるビジョンしか浮かんでこないんだ。」
「…木吉先輩。木吉先輩は一人で勝とうとしていませんか?全ての責任を一人で背負い込もうとしていませんか?…何のための俺たちなんですか?何のためにポジションや役割があると思うんですか?俺たちは『チーム』なんです!負けたら一人の責任じゃない、勝っても一人のお陰じゃない!それがチームなんです、木吉先輩は抱え込みすぎなんです。少しは頼ってください、そんなに俺たちが頼りないですか...?」
「藍野…。そうだな、お前たちに頼らなさすぎたのかもしれないな!後輩にまで心配かけてすまなかったな!」
「…もう大丈夫ですか?」
「あぁ、狙うぞ日本一。」
「…はいっ!」
何とか本選前に立ち直ってくれた木吉先輩、時間もない中俺たちは全中に向けて最後の練習を行い会場へ向かった。
「試合終了!87-91で上崎中学校の勝ち!礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
グループリーグは計3チームで行われたが、全チームが1勝1敗で並び、俺たちは得失点差の関係で3位となり敗退が決定してしまった。
「おい!きょーすけ!」
「…青峰か。」
帰る準備をしていたところ、結果を聞きつけたのか青峰がやってきた。
「負けたのか?」
「約束を守れなくてすまん、1勝はできたんだけどな。」
「…ッチ!次は高校でだぞ!忘れんなよ!」
「…あぁ。」
そうして青峰は今度、上崎中の井上のところへと足を運んで行った。
こうしてあっけなく終わった全中の翌日。
「…転校すること、どっから聞いたんですか木吉先輩?」
「監督からな、『お前にだけは』って昨日帰り道で言われたよ。」
「だからって空港までくることないのに。昨日の今日ですよ?」
「だからだよ、俺たち3年が全国まで行けたのは間違いなく藍野の力があったからだ。感謝してるよ。」
「…やめてください。結局日本一は愚か、帝光にリベンジ戦すらできなかったんですから。」
「いいや、それでもだ。練習試合終わった後にお前が励ましてくれなかったら俺たちは1勝もできていなかったかもしれない。」
「…わかりました、その感謝受け取っておきます。俺が帰ってきたら高校で会いましょう、味方になるか敵になるかはわかりませんが。」
「あぁ!待ってるからな!」
「はい!それでは失礼します。」
木吉先輩の見送りを受けながら俺はスペインへと旅立った。
正直井上君に負けんやろなって思いながら書いてたけど、どんなに強くても案外あっけなく負けますよ感を出したかったから相手としてはちょうどよかったかも。
ヒロインについて
-
ヒロイン無し
-
桃井 さつき
-
相田 リコ
-
荒木 雅子
-
アレクサンドラ・ガルシア(アレックス)
-
土田の姉
-
水戸部の妹
-
オリキャラ