ひぐらし鳴きし茜の空   作:夢枕悪

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菅ンダムいぇあ!




『day3』

朝食を終え、一歩、外へ出る。

カフェテリアより温度は高いものの、十分に涼しい。

不快なはずの湿気は、夜の内に冷やされ、まだ冷気を保っている。

小さな風が、移ろう季節の匂いを運ぶ。

のんびり屋の春の植物と気の早い夏の植物の匂いが、冷えた湿気と混じり合った匂い。

夏の朝という短い時間だけ漂う、夏の匂い。

蝉の声も、聞こえる。

気の早い数匹だけの、小さな合唱。

いや、輪唱と言うべきだろうか?

一匹が鳴き止めば、同じようなリズムで別の一匹が。

その一匹が鳴き止めば、また別の一匹が鳴き始める。

どこか郷愁を誘う空気と音。

幼い頃の、長期休暇を思い出す。

面倒な家の手伝いも、やらなければならない宿題も、全て放り出し、駆け回り、跳び回っていた。

持ちきれず、泣く泣く置いてきた玩具達。

そして、その事を忘れ、結局は持ってきた玩具で、満面の笑みを浮かべながら遊んだ。

ずっと、そんな日が続くと思っていた。

アリーナへと向かう道すがら、月歌はそんな幼い頃に思いを馳せる。

ふと、横を向くと、甕野が、どこか緊張した面持ちをしている。

 

「あかねっち?大丈夫?」

「だ、大丈夫なんですけどお!…ホントは、ちょっとだけ、緊張してるんですけどお…」

 

月歌達よりも高い身長が、小さく見える。

実戦に近い訓練が、流石に不安のようだ。

甕野は、腹の辺りで、ぎゅっと何かを握る。

 

「あかねっち、それ、何?」

「これ?うちのお守りぃ♪」

 

にかりと笑い、月歌に見せる。

ころころと変わる表情が、少し可笑しい。

キラキラとデコられた巾着は、手の平サイズの長方形をしている。

甕野が、振って見せるが、音はしない。

 

「中、何が入ってんの?」

「ん〜…づかっちゃんには、見せるなって言われてるけど、先輩達にはいいかな?」

 

言いながら、巾着を開く。

月歌達は、なんとなく周りに見えないよう、甕野を囲う。

 

「じゃーん」

 

出て来たのは、未開封の赤い煙草。

赤のマルボロには、お決まりの自虐的な文句が書かれている。

 

「おいおい、そんなのよく許可出たな」

「絶対に吸わない約束で、づかっちゃんに許可貰ったのお。定期的に、づかっちゃんに見せないといけないんですけどお」

「何で、お守りなんですか?」

 

巾着に仕舞いながら、甕野がこたえる。

 

「うちのママが、これ吸っててね。うちの家、古武術の道場だったんだけど、うちのママが師範」

「へえ」

「で、ママ、めっちゃ強いんだけど、家事とか全然ダメで、うちが全部やってたの」

「じゃあ、その巾着も?」

「そうそう!これも、うちの手作りなんですけどお!でね、ママね、夜は、お酒飲みながら、煙草吸いながら、めっちゃくっついてくんの!」

 

当時を思い出し、少し笑う。

 

「うちも、宿題したり、ご飯作ったり、組手やったりでクタクタなのに!おまけに、めっちゃベタベタ甘えてくんの!ほんっっっっっと酒臭いし、煙草臭い!」

 

甕野が鼻を摘み、大げさに手を振る。

その仕草が可笑しく、月歌達は笑う。

 

「でもね、組手とか型やってる時のママ、めっちゃヤバイの!正拳とか、ひゅっ!ぴたっ!って!」

「自慢のママなのね」

「うん!サイコーにカッコ良くて、可愛いママ!うちの最推し!」

「だから、それ持ってるんだ」

「そうそう!で、ちょっとでもママに近付きたくて、訓練めっちゃ頑張ったの!」

「ママは今、何やってんの?」

「え?もう死んじゃってるよ?」

 

あっけらかんと、甕野が言う。

 

「うちの事、キャンサーから守ってくれて、死んじゃった。あ、気いとか遣わないで欲しいんですけどお!もう乗り越えた?的な?」

 

どこか寂しそうに笑う。

 

「そりゃ、最初は、落ち込んだんですけどお、気にすんなって、大丈夫だからって言った、ママの顔思い出したら、ヘコんでなんかいらんないって!」

「ディスイズサイコー!」

「おい!タマあ!」

「は、はいぃ!」

「うちもそう思う」

「同意すんなら、普通に言え。わざわざ、毎度、毎度ビビらせんな」

「でね、でね、ママみたいにサイコーにカッコよくなるために、頑張ったんですけどお!」

「じゃあ、今日も一歩近付いたね」

「え?」

「だってさあ、今日、デンチョ渡されるでしょ?セラフ使えるようになったら、サイコーにカッコよくなるぜ?」

「マッ゙/″ぁカゞゑωτ″すレナー⊂″ぉ!」

「アガるなー!日本語喋れー!」

「てへぺりんこ♪」「τ∧∧°丶)ω⊇♪」

「てへぺりんこやめろー!」






最近、ツイキャス、ミラティブ、ポコチャにハマってる夢枕悪です。
配信する側ではなく、視聴する側です。

今回のあかねっちのお守りですが、『物語を歌う』をテーマに活動している、ゆっそさんの楽曲『残党』の歌詞の一部を使わせて頂きました。
ゆっそさんもヘブバン民かつKeyヲタなので、快く許可を頂きました。
本当にありがとうございます。
ゆっそさんは、XもYou Tubeもされてますので、よろしければフォロー、チャンネル登録お願いします。

菅ンダムをゲットできてテンション上がってる筆者ですが、昼勤やら夜勤やらが続いて、生活サイクルがガタガタとなっております。
皆様、この連休で、サイクルを乱して、身体を壊さないよう、どうぞご自愛ください。
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