ひぐらし鳴きし茜の空   作:夢枕悪

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約2年ぶりぃぃぃぃぃぃぃ





day4

何もない空間だった。

いや、何もない空間に『なっていた』。

晴れた日なら、バスケットゴールに陽の光が射し込む。

雨の日なら、優しい雨音が聞こえてくる。

しかし、今、目の前にある光景は、窓明かりもなく、外からの音も無い。

 

「お待ちしていました」

 

突然の少女の声に、身構える。

幼少の頃からの鍛錬に加え、部隊に入ってからの訓練で、気配を感じる感覚が研がれている自信はあった。

しかし―

 

「どうかされましたか?」

 

不思議そうに自分を見る少女は、こちらの意識の枠外から入ってきた。

最初からいたように。

ずっとそこにいたように。

気付いたら、そこにいたのだ。

 

「なぁなみん、今日も可愛いね」

「毎回、ナンパすな。だいたい、今朝の点呼でも会っただろうが」

「こ、これは!」

「嫉妬…やな」

「あらあら」

「まあ」

「その目をやめろぉーーーーー!」

 

いつも通りの先輩達を見て、少し落ち着く。

月歌が、さらに追い打ちをかける。

和泉が、ツッコむ。

國見が、ボケる。

逢川が、國見を褒める?

唐突にカレンちゃんが、現れる。

カレンちゃんに反応して、諜報員も現れる。

いつもの空気が漂いはじめる。

緊張が、解れていく。

過度な力が、抜けていく。

思考の硬直が、柔らぐ。

自然と笑みが、こぼれてくる。

 

「ゥ于もまぜτレまιレヽωτ″すレナー⊂″ぉ!」

「だから、何言ってったか分かんねえんだよぉーーーー!」

「…何をやってるの、あなた達」

 

手塚の鋭い声が貫く。

 

「はっ!後輩との親睦を深めていたであります!!」

 

さっと敬礼し、流れるように、月歌が誤魔化す。

その言葉に手塚は、ふっと息を吐く。

少し笑っているようにも見える。

 

「七瀬さん」

 

一瞬で表情を戻し、少女―七瀬に声をかける。

 

「はい、こちらをどうぞ」

 

七瀬が甕野にデンチョを差し出す。

 

「こ、これがウチの…ぁカゞゑωτ″すレナー⊂″ぉ!」

「日本語しゃべれぇーーーーーーー!」

「あかねっち、そういう時は、こう言うんだぜ?」

「「ギャイアグレイーイボドドドゥドオー!!」」

「何でそこは息ピッタリなんだよ!」

「フゥー!」

「ぁっカゞゑωτ″すレナー⊂″ぉ─!」

「アがるなぁーー!」

「…話を進めても、いいかしら?」

「はっ!大丈夫であります!」

「いつものことだが、おめーのその変わり身の速さはなんなんだ」

「甕野さん、あなたに渡した電子軍人手帳には、あなたのセラフィムコードが入力されているわ。戦闘時には、すぐセラフを呼べるよう、しっかり訓練しておきなさい」

「ッス!!」

「それでは、甕野さん、設定、個人情報からセラフィムコードを確認し、詠唱してください」

「ッス!えーっと…『ママはウチが守る』?」

 

甕野が口にした瞬間、頭上の空間が裂ける。

闇が渦巻き、光が走る。

光の筋が集まり、大きな光となる。

その光の中から、一つの影が降りてくる。

「何かしら、あれ」

「銃でも剣でもあらへんで?」

「マントでもありませんよ?」

「え?なになに?なんのこと言ってんのか、分かんないんですけどお!」

 

影がゆっくりと、甕野の元に降りてくる。

甕野は、手を差し出し、その影を受けとめる。

その手の中には、鈍く光る重厚な手甲があった。

 

「これが、ウチの…?」

「手甲…ガントレットね。甕野さん、嵌めてみてくれるかしら?」

「ッス!」

 

手塚の言葉に従い、装着しようと考えた瞬間、

 

「!?」

 

するり、と溶けるように両手に嵌る。

甕野は、不思議そうに見つめ、握る。

そのまま、腰を落とし、構える。

ゆっくり、ゆっくりと拳を突きだしていく。

ゆっくり、ゆっくり

ゆるゆる、ゆるゆる

するする、するする

ゆっくり、ゆるゆる

するする、ゆっくり

ゆるゆる、するする

ゆっくり、するする

するする、ゆっくり

遅いながらも、滑らかな動きに、全員が目を奪われる。

腕が伸び切り、拳がとまる。

また同じ速度で、拳を戻していく。

拳が戻ると、今度は、ゆるゆると脚が上がる。

ゆるゆる、ゆるゆる

するする、するする…

最高点まで到達すると、またゆるゆると降りていく。

やがて、脚は戻り、元の構えに戻る。

そのまま、すうっと息を吸う。

肺の中を酸素で、いっぱいにする。

いっぱいになった酸素を、ふっ、と吐き出す。

瞬間、

 

 

と、空気が震える。

甕野の拳が、空を打った音だ。

いや、実際には音がした訳ではないが、その場にいた全員が、その衝撃音を聞いた。

 

「何だよ、これ…」

「エラいもんだしてきよったで…」

「でぃすいずびっくいんぱくと!」

「ねえ!今、凄っごい音しなかった?」

「と、鳥肌立っちゃった…」

「すげぇじゃん、あかねっち!」

「や…」

「や?」

「ゃレよ″レヽωτ″すレナー⊂″ぉ!」

「いやいやいやいや、おめーの方がヤベーわ!」

「あかねっち、そういう時は?」

「「≠″ャィ了勹″∠ィ─ィ朮″├″├″├″ゥ├″才─!!」」

「お前ら、何言ってっか分かんねえんだよー!」

「問題なさそうね」

「問題ありありだろ!何だよ、ガントレットって!見たことねえよ!」

「まあ、セラフだし」

「セラフだもんね」

「セラフやからな」

「セラフだもの」

「セラフですから」

「順応早えぇな、お前ら!」

「セラフに関しては、まだ解明されてない部分の方が多いわ。こういったレアケースもゼロではなちわ」

「え?そうなの?」

「おめーもレアケースだからな」

「?」

「不思議そうな顔してんじゃねえよ」

「まあ、そういことだから、あとで樋口さんに見てもらうことになると思うわ」

「珍し過ぎて、解剖されちゃうかもよ〜?」

「新人を脅かしてんじゃねえよ」

「それじゃあ、甕野さん、早速試してみましょうか。七瀬」

「それでは、エミュレーターを起動させます」

「よーし、みんなあ!気合い入れていくぜ!」

「ああ」

「おう!」

「はいです!」

「任せて!」

「ひーひゃっひゃっひゃ!」

「ぁっカゞゑωτ″すレナー⊂″ぉ─!」

「『あたしの伝説はこれから始まる』!」






どうも、社畜系底辺配信者となった夢枕悪です。
約2年ぶりの続きとなりました←
もうやめたんじゃないかと思った皆さん…
ハーメルンよ!私は帰ってきた!!
…と、言っておきます。
また皆さんが忘れた頃に帰ってくるとは思いますが、その時は、生暖かい目で読んであげてください。

それでは、新生活が始まるこの時期、体調に気をつけて、お過ごしください。
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