遊戯王5D's 苦悩する男   作:yvisi

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第101話 仮面の下

アーククレイドル内部

 

「・・・・・。」

 

ゾーンは白いタイルが張られたような部屋で静かに街の成り行きを見ていた。

 

「ゾーン。」

 

「・・・! あなたは・・・。」

 

ゾーンの名を白い鬼の仮面をつけた男が呼んだ。

 

「久しぶりだな、ゾーン。」

 

男はゾーンに抱き着き、体をぺちぺちと叩く。

 

「・・・ちょっと大きくなった?」

 

「何も変わっていませんよ。」

 

「ああそう?」

 

「随分楽しそうだな。」

 

遊星に敗れ、海に落ちたはずのアポリアが部屋に入ってくる。

 

「俺が隙見て拾ってきてやったのに、もうちょっと言い方とかないわけ?」

 

「ぐ・・・!」

 

「二人とも落ち着きなさい。我々にそんなことをしている時間はありません。」

 

揉め始めた二人をゾーンが諫める。

 

「わかってるよ。しかし、よくここまで直したもんだ。」

 

「当然だ。まだここで死ぬわけにはいかん。」

 

「・・・そうだな。アンチノミーもそろそろ来るし・・・いよいよだ。」

 

「二人とも・・・ともに、未来を変えましょう。」

 

「私の友よ。任せておけ。」

 

「「全ては、よりよき未来のために。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

アーククレイドルに入った遊星たちは3つの遊星ギアを止めるため、それぞれ分かれ、ギアに向かっていた。クロウ、アキの前にはシェリーが立ちはだかるが、説得の末、撃破する。そして、龍亞、龍可、ジャックは・・・

 

龍亞 LP3200 手札2

【モンスター】

D・ステープラン(DEF1000/レベル4)

【魔法・罠】

伏せ1

 

龍可 LP100 手札3

【モンスター】

【魔法・罠】

伏せ2

 

ジャック LP100 手札2

【モンスター】

クロック・リゾネーター(DEF600/レベル3/アニメ効果)

【魔法・罠】

伏せ1

 

アポリア LP3200 手札0

【モンスター】

機皇兵ワイゼル・アイン(ATK1800/レベル4)

スキエル・アイン(ATK1200/レベル4)

グランエル・アイン(ATK1600/レベル4)

【魔法・罠】

レベル・カノン ロックオン・レーザー

【フィールド】

機動要塞フォルテシモ

 

龍亞は龍可やジャックをフォローしようとするが、ことごとく裏目に出てしまう。ライフが命に直結しているため、実際のダメージが発生し、二人はボロボロになっていた。

 

(俺のせいだ・・・俺のせいで、龍可とジャックが・・・!)

 

目を閉じた龍亞の頭の中に来人の顔が浮かんだ。

 

(・・・こんな時、来人だったらもっとうまくできたんだろうな・・・。もしここに来るのが俺じゃなくて、来人だったら・・・。)

 

目を開けると、来人の幻が龍亞の前にいてアポリアに対峙していた。

 

『いい気になるなよ、絶望野郎。勝負はこっからだ・・・!』

 

(・・・ダメだ、アポリアを煽ってるとこしか想像できない。・・・ダメだダメだ・・・! こんなんじゃ・・・! 来人がどうしたらじゃなくて、俺がやらなきゃだめなんだ・・・!!)

 

覚悟を決め、アポリアを見る。その後、アポリアは自身のデッキの切り札、《機皇神龍アステリスク》を呼び出す。アポリアは猛攻を仕掛けてくるが、龍亞がこれをなんとか凌いだ。そして龍亞のターン。自らのライフが0になりながら、パワー・ツール・ドラゴンとエンシェント・フェアリー・ドラゴンを自分と龍可のフィールドに特殊召喚した。

 

「うぅ・・・!」

 

しかし龍亞のライフが0になり、精神的にショックを受けた龍可のライフが徐々に減っていく。

 

「龍可・・・! 龍亞!! 龍亞ーー!!」

 

『龍亞・・・。』

 

龍可のエンシェント・フェアリー・ドラゴンが龍亞に近づく。

 

『龍亞・・・あなたの使命はまだ残っています。龍亞、龍可を救えるのはあなただけなのです。』

 

「エンシェント・フェアリー・ドラゴン・・・。」

 

龍亞が召喚していた《D・ライトン》の効果により、ライフが0から100に戻る。そして、龍亞の腕に赤いアザが浮かび上がる。

 

「馬鹿な・・・! こんな小僧が、シグナーになったというのか!?」

 

「・・・!」

 

ジャックは立ち上がった龍亞を見て驚いた。来人の姿が重なって見えたからだ。

 

(来人・・・お前は今ここにはいない・・・。だが、お前の意志は・・・ここにいる!!)

 

「俺はレベル7のパワー・ツール・ドラゴンにレベル1のライトンをチューニング! 世界の未来を守るため、勇気と力がレボリューション! シンクロ召喚! 進化せよ、ライフ・ストリーム・ドラゴン!!」

 

ライフ・ストリーム・ドラゴン(アニメ効果)

シンクロ・チューナー(効果モンスター)

レベル8/地属性/ドラゴン族/ATK2900/DEF2400

チューナー+「パワー・ツール・ドラゴン」

このカードのシンクロ召喚に成功した時、ライフポイント2000未満のプレイヤーのライフポイントを2000にする。このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、効果ダメージは無効となる。1ターンに1度、フィールド上に存在するこのカード以外の全てのシンクロモンスターのレベルを1~12の数値の中で任意の数値にする事ができる。

 

「ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果! ライフポイント2000未満のプレイヤーのライフを2000にする!!」

 

「なんだと!?」

 

龍亞 LP100→2000

龍可 LP100→2000

ジャック LP100→2000

 

「・・・これは・・・。・・・! このドラゴン・・・!」

 

龍可はライフ・ストリーム・ドラゴンを見て、驚いた。以前、夢の中で見たドラゴンがそこにいた。

 

「ああ! 龍亞、それ!」

 

龍可は龍亞の腕のアザを指さす。

 

「俺・・・頑張って頑張ったら、シグナーになっちゃった・・・。へへ、驚きだろ?」

 

「驚かないよ・・・!」

 

「!」

 

「龍亞はいつも、私を守ってくれてたから・・・。自分のことより、私のことをいつも考えてくれてたから・・・。ずっと変わらない。龍亞は私のヒーローだから!」

 

「くだらん! ライフ2000の束の間の休息が、まやかしの希望がなんだという!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・。」

 

仮面の男はアポリアのデュエルを画面を通してみていた。

 

「あ~あ・・・こりゃだめだ・・・。」

 

「・・・。」

 

「一度ああなったあいつらは、もう誰にも止められない。」

 

ゆっくりと首を横に振る。

 

「・・・アポリア・・・!」

 

「ゾーン・・・あんたは太陽ギアに行っておいてくれ。あいつらは・・・俺が止める。」

 

「・・・わかりました。」

 

「任せておけって。・・・全ては、よりよき未来のために・・・。」

 

その時、アポリアのライフは0になり、奈落へ落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・全てを・・・思い出した。私に科せられた使命の全てをな。」

 

遊星とともに行動していたDホイーラーはゆっくりと赤いサングラスに指をかける。

 

「君と戦うべき相手は・・・・・」

 

「!!」

 

「・・・僕だ!!」

 

サングラスを外した。男の正体は、チーム5D’sとして多くの時を過ごしたメカニック、ブルーノだった。

 

「ブルーノ・・・!? お前だったのか!?」

 

「僕の名はアンチノミー。この遊星ギアを、アーククレイドルを守る者。」

 

「ふざけるな! お前は俺たちの仲間、ブルーノ・・・!」

 

「違う! 僕のゾーンの仲間、アンチノミーだ! ここから先に君を通すことはできない!」

 

遊星は仲間であるブルーノ、アンチノミーとのデュエルになる。デュエル開始後、宇宙空間に包まれる。敗者は、ブラックホールへと飲み込まれてしまう。アンチノミーは以前見せたアクセルシンクロだけでなく、シンクロモンスター3体を素材としたデルタアクセルシンクロモンスター、《TG ハルバード・キャノン》を呼び出した。

 

遊星は《TG ハルバード・キャノン》に手も足も出せない状況に追い込まれるが、効果ダメージによるコンボでアンチノミーを撃破する。しかし、ブラックホールが二人を飲み込んだ。

 

「遊星! この世界を救ってくれ!」

 

「何・・・・?」

 

「この世界を救い、ゾーンと・・・彼を救ってやってほしい!」

 

アンチノミーの思いがけない言葉に遊星は驚きを隠せない。

 

「彼・・・仮面の男か! だが何故だ・・・! お前はこの世界を破滅させるために戦っていたんじゃないのか!?」

 

「僕は君たちと過ごしてきた時間の中で、何度となく不可能と思える壁を打ち破る君の姿を見てきた! そして、記憶を取り戻した時、僕は決意したんだ! 遊星の可能性を信じようと!」

 

「俺の可能性を・・・!?」

 

「君なら絶対にできる!」

 

飛び散ったDホイールの破片がアンチノミーの目元を切る。

 

「遊星なら、自分の限界を打ち破ることができる! だから、僕は新たな力へと導くためにこのデュエルを始めたんだ! それがデルタアクセルだ! 遊星、君なら君自身のデルタアクセルを見つけることができる!」

 

「! お前は最初からそれを俺に伝えるために・・・?」

 

「遊星とは違う形で出会いたかった・・・そうすれば、本当の仲間になれたかもしれないのに・・・。」

 

「アンチノミー・・・いや、ブルーノ!! お前は俺たち、チーム5D’sの・・・俺の仲間だ! ブルーノ!」

 

「・・・仲間・・・この僕を仲間だと言ってくれるのか? 遊星。」

 

アンチノミー・・・ブルーノの言葉に遊星は静かに頷く。

 

「仲間・・・か。僕はみんなを励ましながら、みんなと共に戦っている遊星を見ているのが、大好きだった・・・。そこに君の無限の力と、可能性を感じていたから・・・!」

 

「ブルーノ・・・!」

 

「・・・!」

 

ブルーノのDホイールがスピードを落としていく。

 

「ブルーノ! 飛び移れ、早く!」

 

「無駄だよ。」

 

「!!」

 

「ここから抜け出すためには、どちらかが消滅するしかないんだ・・・! 君たちと過ごした時間は、最高に楽しかったよ。」

 

「ブルーノ・・・。」

 

ブルーノはDホイールを遊星のDホイールの後ろにつける。

 

「遊星、君は僕の希望だ! アクセルシンクロは光をも超える! ・・・彼に会ったら、僕と同じ言葉をかけてあげてほしい・・・!」

 

「!!」

 

「行けぇ!! 遊星ーーー!!」

 

ブルーノはスピードを一気に上げ、遊星を脱出させる。しかし、ブルーノはブラックホールに飲み込まれていく。

 

「ブルーノ! ブルーノ!!」

 

「遊星・・・!」

 

Dホイールの爆発に巻き込まれる。

 

「ブルーノーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・! 遊星だ!」

 

「遊星!」

 

太陽ギアに続く扉の前にはジャックたちが集まっていた。最後に来た遊星を迎えるため、みんな手を振った。

 

「みんな、無事だったか?」

 

「ええ。」

 

「遊星、見てよこれ!」

 

龍亞は嬉しそうに右腕にある心臓の形をしたアザを見せる。

 

「そのアザは・・・!」

 

「俺、6番目のシグナーだったんだ! 遊星やジャック、みんなと同じ!」

 

「遊星、おまえにも見せてやりたかったぞ。龍亞のデュエルをな。」

 

「龍亞がいなかったら、遊星ギアは止められなかったんだから!」

 

「い、いや~それはちょっと大げさなんじゃないかな~!」

 

ジャック、龍可に褒められ照れくさそうに頭を掻く。

 

「龍亞、よくやった。」

 

「・・・遊星・・・!」

 

龍亞は自分の右腕をぎゅっとつかむ。

 

(・・・このアザ、来人にも見せたいな。)

 

「・・・! シェリー・・・。」

 

クロウたちとともに来たシェリーに気づく。

 

「私も決めたわ。あなたたちとともに戦うと。」

 

「・・・そうか。わかった。」

 

「・・・? 遊星、サングラスの彼は?」

 

「!」

 

アキの言葉に遊星は顔を下に向ける。遊星は全てを話した。あの男は、ブルーノであり、最期に命を犠牲にして遊星を守ったことを。

 

「・・・許せねえ! ブルーノを遊星ギアの盾に使うなんて!」

 

「シェリー! ゾーンはこの上にいるんだな!?」

 

「ええ。」

 

「行くぞ、遊星! ブルーノの仇を取りに! 仲間を盾になど使われて、このまま黙っていられるか!」

 

「ああ・・・行くぞ! ゾーンのもとに!」

 

遊星たちは扉をくぐり、Dホイールで階段を駆け上がっていく。

 

「いったい何なの? ここ。」

 

「どこまで登るのかしら・・・。」

 

「・・・! 見ろ! あれは・・・。」

 

螺旋階段の中心には巨大なモーメントがあった。遊星にはそれに見覚えがあった。

 

「旧モーメント・・・!」

 

「太陽ギアを動かしているのは、旧モーメントのエネルギーだったのね。」

 

(俺の因縁はまだ終わっていないということか・・・?)

 

「・・・!?」

 

階段を上がっていく遊星たちの前に突如、巨大な白い穴が現れる。

 

「く・・・!」

 

「うわああ!」

 

いきなり出現したその穴を躱すことができず、遊星たちチーム5D’sが穴の中に吸い込まれていく。シェリーを残し、全員が吸い込まれた。

 

「な・・・!? 遊星! みんな!」

 

周りを見て、遊星たちを探す。そんなシェリーの背後にゆっくりと一人の男が近づいてくる。シェリーはその気配に気づき、振り返る。

 

「・・・! あなたは・・・!」

 

「よぉ、裏切り者。」

 

そこにいたのは仮面の男だった。

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「・・・! ここは・・・。」

 

遊星たちが飛ばされたのは白いタイルが敷き詰められたような部屋だった。

 

「なんだ、この部屋は・・・!」

 

「ここは一度来たことがある・・・。シェリー、ブルーノ、来人と一緒に飛ばされたのがこの部屋だった。」

 

「つかどうすんだよ。どこにも出口がねえぞ。」

 

クロウが周りを見るが、吸い込んだ穴はすでに閉じていた。

 

「とりあえず、奥まで行ってみましょう。」

 

遊星たちは部屋の中を進んでいくが、周りに出口はおろか何もなかった。

 

「ど、どうしよう・・・一生出られなかったら・・・。」

 

「き、きっとどこかにあるはずよ・・・。・・・! あれ・・・!」

 

龍可が何かを指さした。そこには白い肘掛け椅子がポツンと置かれていた。遊星たちは一度止まった。

 

「椅子・・・? ・・・!」

 

コツコツと靴音のような音、ズズズ・・・と何かを引きずるような音が聞こえる。

 

「・・・ん、もう来てたか。」

 

現れたのはここまで遊星たちに姿を見せなかった仮面の男だった。

 

「思ったより早かったな・・・意外とこいつに手こずったからか。」

 

「うぅ・・・!」

 

引きずっていたそれを持ち上げる。それは、傷だらけになったシェリーだった。

 

「!? シェリー!!」

 

「てめえ、シェリーを離しやがれ!」

 

「へ~・・・お優しいことで。」

 

男はシェリーを離す。

 

「つか、お前ら俺のこと忘れてたろ? いないものと思ってとは言ったけど・・・本当に忘れてるとは思わなかったわ。」

 

「・・・あなた、一体何者なの?」

 

「・・・あ~・・・・・。」

 

男は左手で自分の仮面をなでる。

 

「まあいいか。もう隠す必要もないし。・・・お前らは、どういう選択をするんだろうな。」

 

「・・・?」

 

男は吐き捨てるように言うと、白いローブを脱ぎ捨てる。そして、首元のチョーカーのようなものを引きちぎった。

 

「これが俺の選んだ道だった・・・。」

 

男の声から機械音が消え、男本来の声が発せられる。引きちぎったチョーカーはボイスチェンジャーだったのだ。

 

「・・・・ぇ・・・・。」

 

男の声を聞いた龍可から一瞬、声が漏れた。

 

「? 龍可?」

 

龍可の様子に戸惑う龍亞をよそに男は仮面に手をかける。ゆっくりと外し、仮面を床に投げ捨てた。男は静かに顔を上げる。

 

「・・・・・な・・・。」

 

「馬鹿な・・・!」

 

「嘘だろ・・・。」

 

「そんな・・・!」

 

「・・・なんで・・・・・。」

 

遊星、ジャック、クロウ、アキ、龍亞から困惑の声が出る。それは当然だった。男の顔を、遊星たちは何度も見ていた。龍可は震える口からなんとか声を絞り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ら・・・・いと・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面の男の正体は、仲間として多くの時を過ごした・・・未谷来人だった。

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