「・・・・・・ら・・・・いと・・・・・?」
「来人・・・お前、なぜ・・・。」
龍可が呼んだ名前に来人は鼻で笑う。
「来人か・・・その名前で呼びたければ好きに呼べばいい。今の俺には何の価値も意味もない。」
「来人・・・貴様、こんなところで何をしている・・・!?」
「何をしているって・・・・・見ればわかるだろ? ・・・ジャック・アトラス。」
「・・・!?」
ジャックは思わずたじろいだ。いつもは『元キング』呼ばわりしてくる来人がフルネームで呼んだのだ。
「・・・ち、違う・・・ら、来人は、きっとゾーンに操られてるんだ!」
龍亞が震えた声で来人を指さす。
「・・・・・ふっ。そうだよな。そうなるよな。わずかな可能性を考えれば、そんな風に見えるか。」
来人は床に転がったシェリーに近づき、足をゆっくりと上げ、シェリーの頭の上に近づける。
「・・・な、何を・・・。」
「? この女の頭蹴り砕いてやるんだよ。」
「!? お前、何言って・・・!?」
「こうでもしなきゃ、お前らわかんねえだろ?」
上げた足をシェリーに向かって勢いよく振り下ろしていく。
「・・・待て、来人!!」
遊星がすんでのところで来人を止めた。
「・・・わかりゃいいんだよ。」
来人はシェリーを持ち上げ、遊星たちに投げ渡した。
「! シェリー!」
遊星とクロウが受け止める。シェリーがうめき声をあげる。
「うぅ・・・!」
「シェリー! しっかりして!」
シェリーの心配をする遊星たちをよそに、来人は肘掛け椅子に腰掛ける。
「しかし、お前らも人がいいな。一度は裏切ったそいつをよくもまあ・・・。」
「何言ってやがる! ゾーンが唆したんだろうが!」
「クロウ、お前こそ何言ってんだ? 結局のところ、選んだのはそいつだろ? しっかし、この女の決意も結局軽いもんだったな。俺らに尻尾振ったと思えば、今度はお前ら・・・節操がない。」
「来人・・・お前、やはり・・・!」
「・・・・・ああ、そうだ。・・・俺もイリアステルだ。」
腕と足を組み、にやりと笑う。
「貴様・・・俺たちを、裏切るというのか!!」
「裏切る? 違う。俺は最初からイリアステルなんだよ。言うなら・・・表返ったんだ。」
「屁理屈をこねるな!」
「来人・・・あなた、自分が何をしようとしているかわかっているの!?」
「もちろん。モーメントをネオドミノシティごと消滅させ、よりよき未来を得る。それが、俺のやろうとしていることだ。」
「ネオドミノシティの人々を巻き込んでかまわないというのか!? そんな犠牲の上で成り立つ未来なんて、あるはずがない!!」
「・・・・・ふふ・・・・ははは・・・!! 違う違う違う・・・!」
来人は口元を手で隠し、嗤う。やがて笑みが消え、遊星たちを鋭い目で睨む。
「お前らがこの先殺す命を、俺たちは助けるんだよ? 俺たちがやるのは、お前らの尻ぬぐいだ。・・・やっぱり、お前たちに未来を任せるわけにはいかないな。」
「・・・どういう、ことだ・・・。」
「俺の任務だったからな。」
「任務・・・? ゾーンはお前にいったい何を・・・?」
「・・・監視だよ。お前らを監視することだ。」
「か、監視?」
「お前らが本当に未来を変えられるかどうか・・・それを見極めるため、監視していた。本来はある程度距離取って監視する予定だったんだが・・・思いのほか潜り込めそうだったんでな。やりやすかったよ。ずーっと、見てたからなぁ。」
「ずっとだと?」
「ああ・・・モーメントを消すためにいろいろとやってたからな。例えば・・・17年前とかな。」
「・・・!? まさか・・・お前・・・!」
17年の数字に遊星は覚えがあった。
「そう。ルドガー・ゴドウィンがゼロリバースを起こしたあれだ。ヤツをそそのかしたのは、俺だ。」
「・・・!!」
「来人・・・お前がやったのか・・・!?」
「ちげえって。やったのはルドガー・ゴドウィンだろ? 俺はあいつの研究心をちょっと煽ってやっただけだ。」
「・・・てめえ・・・!」
怒りからクロウは拳を力強く握り締める。
「だが結局、未来は変わらなかった。そこで、次はお前たちを監視した。まあ、レクス・ゴドウィンは感づいていたようだがな。」
「ゴドウィンが・・・?」
「ダークシグナーとの戦いも、まあ面倒ながらうまく立ち回った。そうして、仲間と認められればさらに深く入り込むことができるからな。」
「で、でも、ルチアーノは来人に・・・・!」
龍亞は来人とルチアーノが2度にわたってデュエルしたことを思い出す。
「ああ、あれはいろいろと齟齬があっただけだ。ま、ルチアーノに釘刺したから、その後は落ち着いたけどな。」
来人はルチアーノに囁いた言葉を思い出す。
『お前らの神に伝えときな。俺は味方だって。なあ・・・アポリア。』
「・・・そして、見極めた。・・・・・お前たちに、未来を変えることなどできはしないと・・・!!」
「な・・・!?」
「ら、来人!」
来人の前に龍亞が飛び出す。
「・・・なんだ?」
「お、俺・・・初めは無理だって、思ってたんだ・・・! でも、今、俺は遊星やジャック、龍可たちと同じシグナーになれたんだ! だ、だから・・・! みんなが、が、頑張れば・・・」
「だから?」
「え・・・?」
「だからそれがどうした? そんなあいまいな言葉を当てにして、俺らはとっとと未来に帰れってことか?」
「そ、それは・・・。」
「そんなんで変われば、俺らは来ないんだよ。第一、お前が変わったからっていったい何なんだ? それは、お前がそういう側の人間だったっていうだけの話だ。」
「そういう・・・側?」
「この世にいる人間全員が、お前らのように生きていけるわけじゃないんだよ。・・・これを見てみろ。」
来人は指をパチンと鳴らす。すると地上の映像が映し出される。すると、二人組の男が挙動不審に周りを見て、店から出てくる。持っていたカバンには店の商品がパンパンに詰められていた。出てきたところを牛尾と狭霧に追いかけられる。
「浅ましいよなぁ。お前らがこうして戦っている中、ああいう連中がいる。わかるだろ? 多くの人間は・・・お前らとは違う。」
「そんなことはない! どんな人々にも、未来を変える権利はある! お前たちにそれを奪う権利はどこにもない!」
「・・・・なら・・・・」
来人はゆっくりと椅子から立ち上がる。
「それなら、俺を踏み越えていけよ。」
「!?」
「立ち塞がる敵はだれであろうとぶちのめして先に進めばいい。・・・アンチノミーにしたようになぁ!!」
「・・・来人・・・。」
来人のひるませるような覇気を感じ、遊星は二、三歩後ずさる。来人はデュエルディスクを操作する。すると、部屋の壁や天井が一瞬光る。
「俺のライフとこの空間の出入口はリンクした。俺を倒さない限り、お前たちはここから出ることはできない!」
「そんな・・・!」
来人は遊星たちに向かって、腕を伸ばす。
「さあ・・・どうする? チーム5D’s・・・!!」
「ど、どうするって・・・。」
「やるしかねぇ・・・! でもその前に・・・・!!」
クロウは来人の胸倉をつかむ。
「あ?」
「散々俺たちを振り回しやがって!!」
思い切り拳を振りかぶり、来人を殴ろうとする。しかし、簡単に受け止められる。
「そうじゃねえだろ。」
クロウの腹に拳を打ち込んだ。
「うぅ・・・!? が・・・!」
「クロウ!」
「お前らの腕についてるそれはなんだ? お前らデュエリストだろ? ならデュエルで決めるもんじゃねえのか、あ?」
「く・・・!」
「ど、どうしよう・・・龍可・・・・・龍可?」
龍亞が龍可に問いかけると、体を震わせる龍可がいた。
(・・・来人が・・・来人が・・・イリアステル? うそ・・・そんな・・・!)
たたみかけられる多くの事実に困惑を隠せない。その様子をジャック、アキが気にしていた。
「・・・龍可はおそらく戦えん。それに、龍亞も内心・・・。」
「当然よ。二人は来人と過ごした時間が一番長いんだから。」
「遊星もまだ戦えん。ただでさえ、ブルーノと戦ったばかりだぞ。」
「クロウはしばらく動けそうにないし・・・。・・・・・・私がやるわ。」
「!? だが・・・。」
ジャックは目の前に立ちはだかる来人を見る。
「わかっているのか。奴はブルーノ以上に俺たちの手を知り尽くしている・・・! そうなれば・・・。」
「それでも・・・やるしかないわ。」
覚悟を決め、アキは来人の前に立つ。
「最初はお前か、十六夜。」
「!」
(・・・・アキさん・・・!)
「ええ・・・。・・・!」
アキは来人を見てあることに気づいた。今まで左腕に装着していたデュエルディスクを右腕に装着していた。
「ん? ああ、これ? 少しでもあいつらとの共通点を消しておきたくてな。今までずっと右利きでやってたんだよ。・・・・・まあ、何度かボロを出したけど・・・。」
来人はデッキケースからデッキを取り出し、デュエルディスクにセットする。
「まあ、話はこれくらいにするか。時間ねえんだろ?」
「・・・ええ。始めましょう・・・!」
「「デュエル!!」」
こうして、多くの時を過ごした仲間とのデュエルの幕が上がる。