遊戯王5D's 苦悩する男   作:yvisi

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第112話 わかっていた

「・・・・お前、の・・・勝ちだ・・・。る・・・・か・・・」

 

来人は床に崩れるように倒れた。あふれだした来人の心の闇は全てセイヴァー・フェアリー・ドラゴンが吸収した。

 

「来人・・・来人!!」

 

龍可は涙を流しながら、来人のもとに駆け寄った。

 

「来人!」

 

来人の体を何度も揺らすが、目を覚まさない。

 

「・・・!」

 

恐る恐る来人の胸に耳を近づける。すると、龍可の顔が青ざめる。

 

「・・・うそ・・・!」

 

「龍可・・・まさか・・・。」

 

「・・・遊星・・・!」

 

龍可の顔が青ざめたのも無理はない。来人の心臓が止まっていたからだ。

 

「来人・・・!」

 

来人の体を力強く抱きしめた。

 

『龍可。』

 

セイヴァー・フェアリー・ドラゴンが龍可の隣に降り立つ。

 

『来人から吸収した心の闇を浄化して、精霊の癒しの力に変えます。これなら彼をどうにかできるかもしれません。』

 

「ほ、ほんと!?」

 

『では・・・行きます・・・!』

 

セイヴァー・フェアリー・ドラゴンから白い光が降り注ぐ。光を浴びたアキ、ジャック、クロウ、龍亞、シェリーがゆっくりと立ち上がる。

 

「・・・これは・・・。」

 

「・・・! 龍可! 来人!」

 

傷などなかったかのように龍亞は龍可のもとに駆け寄った。

 

「龍亞! 大丈夫なの?」

 

「うん! 体が少し軽く感じるんだ! ・・・来人は?」

 

心配そうに来人の顔を覗き込む。

 

「・・・来人・・・!」

 

「・・・・・。」

 

来人の様子を見るため、ジャックたちが集まってくる。みんなを治したセイヴァー・フェアリー・ドラゴンは消滅した。

 

「・・・・ぅ・・・。」

 

「!! 来人!?」

 

来人はゆっくりと目を開ける。ぼやけた視界で龍可の顔が映る。

 

「・・・る・・・か?」

 

「来人!!」

 

目を覚ました来人を龍可は強く抱き着いた。

 

「・・・・・た・・・。」

 

「え?」

 

「・・・な・・・んで・・・たす・・・けた・・・・・?」

 

弱く絞り出した声で龍可に問いかける。

 

「・・・そんなの・・・決まってるじゃない・・・!」

 

龍可の流した涙が来人の頬に落ちる。

 

「ずっと言ってるよ・・・! 来人を、助けたいって・・・!」

 

「・・・・。」

 

龍可の顔を見ないようにするため、来人は顔を逸らす。

 

「貴様・・・何か話さんか!!」

 

ジャックは苛立ちから来人の胸倉をつかむ。

 

「ちょ、ジャック! 待って待って!」

 

龍亞にしがみつかれ、渋々ジャックは手を放す。

 

「・・・らい」

 

「早く行け・・・。」

 

「・・・でも・・・」

 

「行けぇ!!」

 

デュエルディスクを操作し、出口を作る。そして来人は自分の腕で目元を隠す。

 

「それが・・・お前が俺を倒して・・・決めた道だろ・・・。」

 

「・・・・・!」

 

「・・・行こうぜ、龍可。」

 

クロウが龍可の肩に手を置いた。

 

「・・・・・・うん・・・。」

 

未だに目を合わせない来人を見て、龍可は首を縦に振る。そして、来人の手を強く握った。

 

「・・・私は・・・私は信じてるよ、来人。」

 

「・・・・。」

 

龍可の言葉に来人は何も答えなかった。龍可は涙を拭い、離れていった。

 

「・・・・。」

 

次第にほかの仲間も離れていく。来人はその顔を一切見ない。

 

「・・・来人。」

 

そんな中、遊星が来人に声をかける。

 

「お前も、ブルーノも・・・チーム5D’sの仲間だ。お前がどう思っていてもな。」

 

「・・・・。」

 

「そう伝えてほしいと・・・ブルーノが言っていた。」

 

「・・・・・・。」

 

遊星の言葉でも来人は一切目を合わせない。

 

「・・・じゃあな。来人。」

 

遊星たちはDホイールに乗り、出口に入っていった。

 

「・・・・・。」

 

遊星たちが去り、一人になった部屋で来人は唇をかみしめる。

 

(・・・これで・・・これでいいんだ・・・。)

 

自分に言い聞かせる来人の体が震え始める。

 

(・・・これで・・・・・)

 

息を整えると、意識がやがて夢の中へ落ちていく。広がるのは真っ暗な闇だった。

 

『・・・・だ・・・!』

 

(・・・?)

 

夢の中で誰かの声がする。わずかな意識の中、来人は耳を立てる。

 

『・・・ジャック、てめえいい加減に働け!』

 

『何度も言わせるなクロウ! 俺に見合う仕事がないだけだ!』

 

(・・・!?)

 

何度も聞いたようなやり取りが聞こえる。暗かった視界が晴れ、そこに広がっていたのは、チーム5D’sのガレージだった。

 

(・・・なんで・・・)

 

『来人、そんなとこで何立ってるの?』

 

後ろから龍亞が現れ、階段を下りていく。

 

『来人、行こ?』

 

今度は龍可が現れ、来人の手を取った。

 

(・・・・・・・。)

 

『え・・・ら、来人!?』

 

何かに驚いた龍可が来人の顔を慌てたように見る。

 

「(え・・・?)」

 

何が起こったかわからず、来人は首を傾げる。

 

『来人・・・なんで、泣いてるの?』

 

「(泣いてる・・・?)」

 

龍可に言われ、自分の顔を触る。龍可の言う通り、涙を流していた。

 

(・・・だめだ・・・泣くな・・・! 泣くな・・・!)

 

夢の景色が消え、再び闇の中になる。

 

(あんな夢を・・・俺が見る資格はない・・・!)

 

来人は何度も自分に言い聞かせる。しかし、それとは裏腹に涙は止まらなかった。

 

「・・・・ぅ・・・! く・・・!!」

 

次第に嗚咽も止まらなくなる。

 

(・・・・・違う・・・そうじゃない・・・。本当は・・・本当はわかっていたんだ・・・。・・・あいつらは・・・あいつらなら・・・・。)

 

「・・・・!」

 

誰かが近づいてくる足音がして、来人は体の痛みに耐えながら、ゆっくりと起き上がる。

 

「・・・・お前は・・・・。」

 

「・・・お互いに随分とやられたものだな。」

 

来人のもとに近づいてきたのは龍亞、龍可、ジャックとのデュエルで負け、奈落に落ちていったはずのアポリアだった。

 

「・・・生きていたのか・・・。何しに来た?」

 

「・・・考えていた。」

 

「え?」

 

「私はいったい、何のために絶望の中、生きていたのか。ずっと考えていた。」

 

「・・・何の、ために・・・。」

 

「私はそれを、チーム5D’sとのデュエルを通して、一つの答えを見つけたのだ。」

 

「・・・・。」

 

来人は黙って、アポリアの目を見た。

 

「それは・・・絶望しながらも希望を失っていなかったからだ。私は・・・希望を探し求めていたのだ。だから私は、ここまで生き続けた。」

 

アポリアは来人の肩に手を置いた。

 

「今はあえてこう呼ぼう・・・来人。お前も、そうなのではないか?」

 

「・・・・・・。」

 

アポリアの言葉に来人の体が震え始める。

 

「・・・俺は・・・・・俺は・・・。」

 

「私は、あの少年に希望を見た。デュエルの中で成長し、仲間を、妹を守ろうとするその姿に・・・!」

 

「・・・・そうか・・・・。」

 

来人は涙を流し、穏やかな笑みを見せた。目を閉じると、ある顔が浮かんだ。龍可が優しい笑顔を見せていた。

 

「・・・そうか・・・・・お前もか・・・。」

 

「私は彼らに応えたい・・・。だから・・・・・・ゾーンを倒す・・・!」

 

「!?」

 

まさかの言葉に来人の目が大きく開かれる。

 

「・・・無理だ! 第一、そんな体で戦ってみろ! お前、今度こそ・・・!!」

 

「私は・・・ゾーンに思い出してほしいのだ。希望を抱いて、生きていたことを・・・!」

 

「やめろ・・・・・やめろ、アポリア!! うぅ・・・!」

 

来人の体に痛みが走る。

 

「来人・・・お前はここにいろ。そこで、見ていてくれ。私の戦いを!」

 

「だが・・・どうやって勝つ気だ? お前のデッキじゃ・・・。」

 

「・・・・このカードがある。」

 

アポリアは1枚のカードを取り出した。

 

「・・・アフター・グロー・・・。確かに、そのカードなら可能性はあるが・・・。」

 

「・・・来人。」

 

「?」

 

「・・・じゃあな。」

 

そう言い残し、アポリアはゾーンのもとに向かう。

 

「アポリア・・・・!」

 

アポリアを追おうとするが、体の痛みがそれを許さない。

 

「う・・・・ぐ・・・・!!」

 

だが来人は痛みをおし、立ち上がる。アポリアの戦いを、遊星とゾーンの戦い見るために・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「く・・・!」

 

ゾーンと戦おうとする遊星たちに代わり、アポリアがデュエルをする。しかし、状況は芳しくない。

 

ゾーン LP4000 手札0

【モンスター】

時械神ラツィオン(ATK0/レベル10)

【魔法・罠】

虚無械アイン

 

アポリア LP500 手札6

【モンスター】

【魔法・罠】

 

アポリアは自らの手でデッキを破壊し、来人に見せた《アフター・グロー》の発動に成功した。

 

アフター・グロー

通常魔法

このカード名のカードはデュエル中に1枚しか発動できない。

①:自分の手札・デッキ・墓地及び自分フィールドの表側表示のカードの中から、このカードを含む「アフター・グロー」を全て除外する。その後、除外されている自分のカードの中から「アフター・グロー」1枚を選んでデッキに加える。次の自分ドローフェイズに、通常のドローをしたカードをお互いに確認する。それが「アフター・グロー」だった場合、相手に4000ダメージを与える。

 

次のターン、《アフター・グロー》をドローすれば、アポリアは勝利できる。しかしゾーンはアポリアに召喚したことのない《時械神ラツィオン》を召喚し、アポリアの墓地のカードを全てデッキに戻した。さらにアポリアはドローすれば1000ポイントのダメージを受ける。つまり、《アフター・グロー》以外を引けば、負ける状況だった。

 

「さあ、どうしました? 希望がある限り、奇跡は起きるのではなかったのですか?」

 

「・・・・!」

 

ゾーンの言葉にアポリアは唇をかみしめる。

 

「現実には常にわずかな可能性がある。だからこそ人は、その可能性に賭けようとする。かつての私がそうだったように・・・。しかし、現実は残酷なのです。」

 

「そんなことはない! 希望さえあれば、必ず奇跡は起きる! そしてその希望とは、自らの手でつかみ取るもの! 私はそのことをチーム5D’sから学んだのだ!」

 

アポリアはデッキの上のカードに指をかける。

 

(必ずアフター・グローをドローしてみせる・・・!)

 

「私のターン!!」

 

アポリア 手札6→7

 

アポリアはドローしたカードを確認する。

 

「・・・・!!」

 

ドローしたのは《アフター・グロー》ではなく、《機皇帝グランエル∞》だった。

 

「・・・く・・・!」

 

「どうやら奇跡は起こらなかったようですね。これが現実です。アポリア、あなたは十分に役目を果たしてくれました。あなたがいたからこそ、アーククレイドルをこの世界に出現させることができたのです。あなたの役目は終わりました。・・・安らかに眠りなさい。」

 

「・・・!」

 

(すまない・・・・来人・・・!)

 

「時械神ラツィオンの効果発動。ドローしたとき、1000ポイントのダメージを与える・・・!」

 

時械神ラツィオンの放った炎がアポリアに降り注ぐ。

 

「ぐああああ!!」

 

アポリア LP500→0

 

WINNER ゾーン

LOSER アポリア

 

「ぐ・・・・ゾーン・・・!」

 

「アポリア!」

 

倒れたアポリアのもとに遊星たちが駆け寄った。アポリアは遊星たちに希望を繋げたことを確かめ、遊星のDホイールに飛行機能をつけると力を使い果たし、息絶えた。それを目の当たりにした遊星たちはゾーンに怒りを向ける。

 

「なんでだよ! 何もここまでしなくても! アポリアはお前の仲間だったんだろ!?」

 

「仲間? 何か誤解しているようですね。今のアポリアは私の作った記憶を持ったコピー。彼やアンチノミー、来人は君たちに関わりすぎ、感化されすぎたようです。」

 

「ゾーン! 少なくともブルーノや来人、アポリアはお前のことを真の友だと思っていた! それを単なるコピーだと切り捨てるのか!!」

 

「・・・・・。」

 

(コピー・・・まあ、彼は違いますがね。)

 

「勝負だ! ゾーン!」

 

「いいでしょう。残された時間もあとわずかです。不動遊星、これが最後のデュエルです。」

 

アーククレイドルの天井が開かれ、ゾーンは空に飛ぶ。遊星はジャックたちからシグナーのドラゴンを加え、ゾーンを追う。こうして、未来を賭けたデュエルが始まった。

 

「「デュエル!!」」

 

デュエルは進み、遊星は時械神の強固な破壊耐性を潜り抜け、ゾーンにダメージを与える。ダメージの衝撃でゾーンの隠されていた顔が明らかになる。

 

「不動遊星・・・あなたはこうして、どんなときも人々に希望をもたらしてきたのですね。」

 

「なんのことだ?」

 

「伝わっているのですよ。私が生きた未来の地球にも・・・あなたの英雄伝説が。」

 

「俺の・・・英雄伝説だと? ・・・・・!!?」

 

明らかになったゾーンの顔を見て、遊星たちは驚きを隠せない。

 

「遊星と・・・同じ顔・・・!?」

 

「・・・・!」

 

みんなが驚く中、龍可は何かの気配に気づき、後ろを向いた。そこには倒れ、動かなくなったアポリアに手を合わせている来人の姿があった。傍らには来人のDホイールがあった。

 

「来人!?」

 

「えぇ!?」

 

「来人だと!?」

 

来人の名前を聞き、ジャックは駆け寄り、来人の胸倉を力強くつかむ。

 

「貴様~・・・!! 何をしにきた!!」

 

怒りがこみ上げたジャックは来人の顔を思い切り殴った。

 

「ちょ、ジャック!?」

 

「ジャック、やめて!」

 

龍亞、龍可がジャックと来人に駆け寄る。

 

「だがここで来たのはちょうどいい。答えろ! ゾーンは何者だ!」

 

「・・・・・・ゾーンは・・・未来の世界で、科学者として世界を滅亡から救う方法を探していた。当時、モーメントは激しい暴走を起こしていたからな。」

 

「科学者?」

 

「やがて、ゾーンはそれを止めるにはモーメントの動力源を、人の心を読み取る遊星粒子を、正しい方向に向かわせるしかないと気づいた。」

 

来人は彼らにとって、衝撃の事実を告げる。

 

「だから奴は・・・不動遊星になった。」

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