「・・・・お前、の・・・勝ちだ・・・。る・・・・か・・・」
来人は床に崩れるように倒れた。あふれだした来人の心の闇は全てセイヴァー・フェアリー・ドラゴンが吸収した。
「来人・・・来人!!」
龍可は涙を流しながら、来人のもとに駆け寄った。
「来人!」
来人の体を何度も揺らすが、目を覚まさない。
「・・・!」
恐る恐る来人の胸に耳を近づける。すると、龍可の顔が青ざめる。
「・・・うそ・・・!」
「龍可・・・まさか・・・。」
「・・・遊星・・・!」
龍可の顔が青ざめたのも無理はない。来人の心臓が止まっていたからだ。
「来人・・・!」
来人の体を力強く抱きしめた。
『龍可。』
セイヴァー・フェアリー・ドラゴンが龍可の隣に降り立つ。
『来人から吸収した心の闇を浄化して、精霊の癒しの力に変えます。これなら彼をどうにかできるかもしれません。』
「ほ、ほんと!?」
『では・・・行きます・・・!』
セイヴァー・フェアリー・ドラゴンから白い光が降り注ぐ。光を浴びたアキ、ジャック、クロウ、龍亞、シェリーがゆっくりと立ち上がる。
「・・・これは・・・。」
「・・・! 龍可! 来人!」
傷などなかったかのように龍亞は龍可のもとに駆け寄った。
「龍亞! 大丈夫なの?」
「うん! 体が少し軽く感じるんだ! ・・・来人は?」
心配そうに来人の顔を覗き込む。
「・・・来人・・・!」
「・・・・・。」
来人の様子を見るため、ジャックたちが集まってくる。みんなを治したセイヴァー・フェアリー・ドラゴンは消滅した。
「・・・・ぅ・・・。」
「!! 来人!?」
来人はゆっくりと目を開ける。ぼやけた視界で龍可の顔が映る。
「・・・る・・・か?」
「来人!!」
目を覚ました来人を龍可は強く抱き着いた。
「・・・・・た・・・。」
「え?」
「・・・な・・・んで・・・たす・・・けた・・・・・?」
弱く絞り出した声で龍可に問いかける。
「・・・そんなの・・・決まってるじゃない・・・!」
龍可の流した涙が来人の頬に落ちる。
「ずっと言ってるよ・・・! 来人を、助けたいって・・・!」
「・・・・。」
龍可の顔を見ないようにするため、来人は顔を逸らす。
「貴様・・・何か話さんか!!」
ジャックは苛立ちから来人の胸倉をつかむ。
「ちょ、ジャック! 待って待って!」
龍亞にしがみつかれ、渋々ジャックは手を放す。
「・・・らい」
「早く行け・・・。」
「・・・でも・・・」
「行けぇ!!」
デュエルディスクを操作し、出口を作る。そして来人は自分の腕で目元を隠す。
「それが・・・お前が俺を倒して・・・決めた道だろ・・・。」
「・・・・・!」
「・・・行こうぜ、龍可。」
クロウが龍可の肩に手を置いた。
「・・・・・・うん・・・。」
未だに目を合わせない来人を見て、龍可は首を縦に振る。そして、来人の手を強く握った。
「・・・私は・・・私は信じてるよ、来人。」
「・・・・。」
龍可の言葉に来人は何も答えなかった。龍可は涙を拭い、離れていった。
「・・・・。」
次第にほかの仲間も離れていく。来人はその顔を一切見ない。
「・・・来人。」
そんな中、遊星が来人に声をかける。
「お前も、ブルーノも・・・チーム5D’sの仲間だ。お前がどう思っていてもな。」
「・・・・。」
「そう伝えてほしいと・・・ブルーノが言っていた。」
「・・・・・・。」
遊星の言葉でも来人は一切目を合わせない。
「・・・じゃあな。来人。」
遊星たちはDホイールに乗り、出口に入っていった。
「・・・・・。」
遊星たちが去り、一人になった部屋で来人は唇をかみしめる。
(・・・これで・・・これでいいんだ・・・。)
自分に言い聞かせる来人の体が震え始める。
(・・・これで・・・・・)
息を整えると、意識がやがて夢の中へ落ちていく。広がるのは真っ暗な闇だった。
『・・・・だ・・・!』
(・・・?)
夢の中で誰かの声がする。わずかな意識の中、来人は耳を立てる。
『・・・ジャック、てめえいい加減に働け!』
『何度も言わせるなクロウ! 俺に見合う仕事がないだけだ!』
(・・・!?)
何度も聞いたようなやり取りが聞こえる。暗かった視界が晴れ、そこに広がっていたのは、チーム5D’sのガレージだった。
(・・・なんで・・・)
『来人、そんなとこで何立ってるの?』
後ろから龍亞が現れ、階段を下りていく。
『来人、行こ?』
今度は龍可が現れ、来人の手を取った。
(・・・・・・・。)
『え・・・ら、来人!?』
何かに驚いた龍可が来人の顔を慌てたように見る。
「(え・・・?)」
何が起こったかわからず、来人は首を傾げる。
『来人・・・なんで、泣いてるの?』
「(泣いてる・・・?)」
龍可に言われ、自分の顔を触る。龍可の言う通り、涙を流していた。
(・・・だめだ・・・泣くな・・・! 泣くな・・・!)
夢の景色が消え、再び闇の中になる。
(あんな夢を・・・俺が見る資格はない・・・!)
来人は何度も自分に言い聞かせる。しかし、それとは裏腹に涙は止まらなかった。
「・・・・ぅ・・・! く・・・!!」
次第に嗚咽も止まらなくなる。
(・・・・・違う・・・そうじゃない・・・。本当は・・・本当はわかっていたんだ・・・。・・・あいつらは・・・あいつらなら・・・・。)
「・・・・!」
誰かが近づいてくる足音がして、来人は体の痛みに耐えながら、ゆっくりと起き上がる。
「・・・・お前は・・・・。」
「・・・お互いに随分とやられたものだな。」
来人のもとに近づいてきたのは龍亞、龍可、ジャックとのデュエルで負け、奈落に落ちていったはずのアポリアだった。
「・・・生きていたのか・・・。何しに来た?」
「・・・考えていた。」
「え?」
「私はいったい、何のために絶望の中、生きていたのか。ずっと考えていた。」
「・・・何の、ために・・・。」
「私はそれを、チーム5D’sとのデュエルを通して、一つの答えを見つけたのだ。」
「・・・・。」
来人は黙って、アポリアの目を見た。
「それは・・・絶望しながらも希望を失っていなかったからだ。私は・・・希望を探し求めていたのだ。だから私は、ここまで生き続けた。」
アポリアは来人の肩に手を置いた。
「今はあえてこう呼ぼう・・・来人。お前も、そうなのではないか?」
「・・・・・・。」
アポリアの言葉に来人の体が震え始める。
「・・・俺は・・・・・俺は・・・。」
「私は、あの少年に希望を見た。デュエルの中で成長し、仲間を、妹を守ろうとするその姿に・・・!」
「・・・・そうか・・・・。」
来人は涙を流し、穏やかな笑みを見せた。目を閉じると、ある顔が浮かんだ。龍可が優しい笑顔を見せていた。
「・・・そうか・・・・・お前もか・・・。」
「私は彼らに応えたい・・・。だから・・・・・・ゾーンを倒す・・・!」
「!?」
まさかの言葉に来人の目が大きく開かれる。
「・・・無理だ! 第一、そんな体で戦ってみろ! お前、今度こそ・・・!!」
「私は・・・ゾーンに思い出してほしいのだ。希望を抱いて、生きていたことを・・・!」
「やめろ・・・・・やめろ、アポリア!! うぅ・・・!」
来人の体に痛みが走る。
「来人・・・お前はここにいろ。そこで、見ていてくれ。私の戦いを!」
「だが・・・どうやって勝つ気だ? お前のデッキじゃ・・・。」
「・・・・このカードがある。」
アポリアは1枚のカードを取り出した。
「・・・アフター・グロー・・・。確かに、そのカードなら可能性はあるが・・・。」
「・・・来人。」
「?」
「・・・じゃあな。」
そう言い残し、アポリアはゾーンのもとに向かう。
「アポリア・・・・!」
アポリアを追おうとするが、体の痛みがそれを許さない。
「う・・・・ぐ・・・・!!」
だが来人は痛みをおし、立ち上がる。アポリアの戦いを、遊星とゾーンの戦い見るために・・・。
「く・・・!」
ゾーンと戦おうとする遊星たちに代わり、アポリアがデュエルをする。しかし、状況は芳しくない。
ゾーン LP4000 手札0
【モンスター】
時械神ラツィオン(ATK0/レベル10)
【魔法・罠】
虚無械アイン
アポリア LP500 手札6
【モンスター】
【魔法・罠】
アポリアは自らの手でデッキを破壊し、来人に見せた《アフター・グロー》の発動に成功した。
アフター・グロー
通常魔法
このカード名のカードはデュエル中に1枚しか発動できない。
①:自分の手札・デッキ・墓地及び自分フィールドの表側表示のカードの中から、このカードを含む「アフター・グロー」を全て除外する。その後、除外されている自分のカードの中から「アフター・グロー」1枚を選んでデッキに加える。次の自分ドローフェイズに、通常のドローをしたカードをお互いに確認する。それが「アフター・グロー」だった場合、相手に4000ダメージを与える。
次のターン、《アフター・グロー》をドローすれば、アポリアは勝利できる。しかしゾーンはアポリアに召喚したことのない《時械神ラツィオン》を召喚し、アポリアの墓地のカードを全てデッキに戻した。さらにアポリアはドローすれば1000ポイントのダメージを受ける。つまり、《アフター・グロー》以外を引けば、負ける状況だった。
「さあ、どうしました? 希望がある限り、奇跡は起きるのではなかったのですか?」
「・・・・!」
ゾーンの言葉にアポリアは唇をかみしめる。
「現実には常にわずかな可能性がある。だからこそ人は、その可能性に賭けようとする。かつての私がそうだったように・・・。しかし、現実は残酷なのです。」
「そんなことはない! 希望さえあれば、必ず奇跡は起きる! そしてその希望とは、自らの手でつかみ取るもの! 私はそのことをチーム5D’sから学んだのだ!」
アポリアはデッキの上のカードに指をかける。
(必ずアフター・グローをドローしてみせる・・・!)
「私のターン!!」
アポリア 手札6→7
アポリアはドローしたカードを確認する。
「・・・・!!」
ドローしたのは《アフター・グロー》ではなく、《機皇帝グランエル∞》だった。
「・・・く・・・!」
「どうやら奇跡は起こらなかったようですね。これが現実です。アポリア、あなたは十分に役目を果たしてくれました。あなたがいたからこそ、アーククレイドルをこの世界に出現させることができたのです。あなたの役目は終わりました。・・・安らかに眠りなさい。」
「・・・!」
(すまない・・・・来人・・・!)
「時械神ラツィオンの効果発動。ドローしたとき、1000ポイントのダメージを与える・・・!」
時械神ラツィオンの放った炎がアポリアに降り注ぐ。
「ぐああああ!!」
アポリア LP500→0
WINNER ゾーン
LOSER アポリア
「ぐ・・・・ゾーン・・・!」
「アポリア!」
倒れたアポリアのもとに遊星たちが駆け寄った。アポリアは遊星たちに希望を繋げたことを確かめ、遊星のDホイールに飛行機能をつけると力を使い果たし、息絶えた。それを目の当たりにした遊星たちはゾーンに怒りを向ける。
「なんでだよ! 何もここまでしなくても! アポリアはお前の仲間だったんだろ!?」
「仲間? 何か誤解しているようですね。今のアポリアは私の作った記憶を持ったコピー。彼やアンチノミー、来人は君たちに関わりすぎ、感化されすぎたようです。」
「ゾーン! 少なくともブルーノや来人、アポリアはお前のことを真の友だと思っていた! それを単なるコピーだと切り捨てるのか!!」
「・・・・・。」
(コピー・・・まあ、彼は違いますがね。)
「勝負だ! ゾーン!」
「いいでしょう。残された時間もあとわずかです。不動遊星、これが最後のデュエルです。」
アーククレイドルの天井が開かれ、ゾーンは空に飛ぶ。遊星はジャックたちからシグナーのドラゴンを加え、ゾーンを追う。こうして、未来を賭けたデュエルが始まった。
「「デュエル!!」」
デュエルは進み、遊星は時械神の強固な破壊耐性を潜り抜け、ゾーンにダメージを与える。ダメージの衝撃でゾーンの隠されていた顔が明らかになる。
「不動遊星・・・あなたはこうして、どんなときも人々に希望をもたらしてきたのですね。」
「なんのことだ?」
「伝わっているのですよ。私が生きた未来の地球にも・・・あなたの英雄伝説が。」
「俺の・・・英雄伝説だと? ・・・・・!!?」
明らかになったゾーンの顔を見て、遊星たちは驚きを隠せない。
「遊星と・・・同じ顔・・・!?」
「・・・・!」
みんなが驚く中、龍可は何かの気配に気づき、後ろを向いた。そこには倒れ、動かなくなったアポリアに手を合わせている来人の姿があった。傍らには来人のDホイールがあった。
「来人!?」
「えぇ!?」
「来人だと!?」
来人の名前を聞き、ジャックは駆け寄り、来人の胸倉を力強くつかむ。
「貴様~・・・!! 何をしにきた!!」
怒りがこみ上げたジャックは来人の顔を思い切り殴った。
「ちょ、ジャック!?」
「ジャック、やめて!」
龍亞、龍可がジャックと来人に駆け寄る。
「だがここで来たのはちょうどいい。答えろ! ゾーンは何者だ!」
「・・・・・・ゾーンは・・・未来の世界で、科学者として世界を滅亡から救う方法を探していた。当時、モーメントは激しい暴走を起こしていたからな。」
「科学者?」
「やがて、ゾーンはそれを止めるにはモーメントの動力源を、人の心を読み取る遊星粒子を、正しい方向に向かわせるしかないと気づいた。」
来人は彼らにとって、衝撃の事実を告げる。
「だから奴は・・・不動遊星になった。」