来人にメールが届く少し前
「・・・・んん・・・。」
眠っていた龍可の目がゆっくりと開かれる。
(・・・ここ・・・一体・・・?)
「・・・!?」
起き上がろうとするが、バランスを崩し、倒れてしまう。
「んん! んぅ!!」
(な、なんで・・・!)
手足を動かそうにも、縛っている縄に阻まれる。口を塞ぐテープのせいで助けを呼ぶこともできない。
「・・・!」
「・・・・・。」
龍可がもがく中、サングラスをした男がコツコツと足音を響かせながら龍可に近づいてくる。
(この人・・・私を眠らせた・・・!)
「お目覚めかな?」
そう言うと、男はサングラスを外した。
「・・・んんぅ!?」
(こ、この人は・・・!!)
「なんだこれ・・・。」
ピリリリ!
届いたメールの内容に来人が驚く中、電話が鳴る。龍可の番号だった。
「・・・・・。」
警戒しながら、来人は電話に出る。
「・・・もしもし?」
『写真は見てくれたかな?』
明らかに龍可の声ではない人物だった。
「・・・一体誰だ? ・・・龍可に何をした。」
『そう怒らなくても、無事だ。今のところはね。』
「・・・・!」
怒りで携帯電話を持つ手が震える。
『なんなら、声を聞かせてあげよう。』
「!」
電話の向こうで何かを剥がす音が聞こえる。
『・・・来人!』
「! 龍可!」
『来人! 来ちゃだめ! 来たら、あなた・・・んむぅ!!』
『おっとここまでだ。』
男が龍可の口を塞いだようだ。
「・・・何が目的だ。」
『港に使われていない倉庫がある。まずはそこに来ることだ。このことはだれにも言うな。言えば・・・この子の命はない。』
「おい、待て・・・」
男は言い残し、通話を切った。
「・・・・・。」
来人は机のデッキを急いでしまい、部屋を出る。
「あれ、来人。どこか出かけるの?」
事情を知らない龍亞が来人を呼び止める。
「・・・少し散歩してくる。すぐ、戻るよ。」
「うん、わかった。いってらっしゃい!」
龍亞に見送られ、駆け足で家を出た。
港
「・・・ここ・・・か?」
Dホイールから降りた来人は辺りを警戒しながら、倉庫の中に入った。
「どこだ・・・どこにいる・・・?」
薄暗い倉庫で龍可の姿を探す。
「・・・!」
来人の足元で何かがキラッと光った。
「・・・これは・・・。」
落ちていたのは龍可のカード、エンシェント・フェアリー・ドラゴンだった。
「・・・・。」
カードを見て、傷がつかないように自分のデッキにしまう。
「・・・・!」
来人の視線の先では縛られた龍可が柱にもたれかかっていた。
「龍可!」
「・・・! んん!! んんぅ!!」
来人の姿を見た龍可は必死に首を横に振る。
「?」
龍可の意図がわからず、龍可を助けようと近づく。
「おっと、そこまでだ。」
龍可のそばの柱の影からサングラスの男が姿を見せる。男は龍可の後ろにまわり、手で龍可の首をつかみ、鼻をふさぐ。
「ん・・・!」
「やめろ!」
「そこに置いてある足枷をつけろ。」
「足枷・・・? ・・・! あれか・・・!」
来人は近くに置いてあった足枷を広い、自分の左足首につける。
「くくく・・・これで準備は整った・・・!」
男は龍可から離れ、来人の前に立ちはだかる。この時、男が離れる前に龍可に首輪のようなものを着ける。
「・・・お前は、誰なんだ。」
「ん? あぁ、そうか。君は記憶がないんだったな。」
男はサングラスを外し、床に投げ捨てた。
「・・・!」
男の正体は、ダークシグナーとの戦いで地縛神に飲み込まれたディヴァインだった。
(・・・ディヴァイン・・・!)
龍可は自分を誘拐したディヴァインをキッと睨みつける。
「私はね・・・君に人生を狂わされたんだよ。」
「! 俺に・・・?」
夢で見た記憶の中では知らされなかった事実を突きつけられる。
「んん!! んむぅ!!」
(違う! 違うの、来人!!)
「・・・・・。」
否定する龍可の叫びは来人の耳に入らない。
(俺は・・・俺はいったい何を・・・・・・。)
「君には、償いをしてもらわなければならない・・・。簡単な話だ。私とのデュエルで勝てば、君たちを解放しよう。負ければ・・・・・・君には死んでもらおうか。」
「!?」
(来人・・・だめ・・・! これは、ディヴァインの逆恨み・・・! デュエルしちゃだめ・・・!!)
「・・・・・わかった。」
「んん!!」
「それでいいならな。」
「君ならそう言ってくれると思ったよ。」
ディヴァインはデュエルディスクを装着する。来人は一瞬、左腕にデュエルディスクをつけようとするが、すぐにやめ、右腕につける。
「さあ・・・始めよう・・・。」
「「デュエル!!」」
(殺してやる・・・まずはお前を殺してやるぞ・・・!! 未谷来人・・・!!)
ディヴァインの心の中は来人への激しい憎悪に満ちていた。
ディヴァイン LP4000 手札5
来人 LP4000 手札5
「私のターン!」
ディヴァイン 手札5→6
「私はクレボンスを召喚!」
クレボンス ATK1200/レベル2
「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
「・・・・・。」
来人は自分のデッキをじっと見て動かない。
「どうした? 君のターンだ。」
「! ・・・俺のターン!」
来人 手札5→6
(来人・・・!)
「マジックカード、融合を発動! 手札のテッポウリザードとビブリスプを融合! 融合召喚! いでよ、捕食植物キメラフレシア!」
捕食植物キメラフレシア ATK2500/レベル7
「ビブリスプは墓地に送られたとき、デッキからプレデタープランツモンスター1体を手札に加える! これにより、セラセニアントを加える!」
来人 手札3→4
「・・・キメラフレシアのモンスター効果発動! レベル7以下のモンスターをゲームから除外する! クレボンスを除外!」
「ほぉう・・・。」
(どうやら、デュエルに関しては忘れているわけではないな・・・。)
「キメラフレシアでダイレクトアタック!」
「甘い。トラップカード、次元幽閉! 攻撃してきたモンスターを除外する!」
ディヴァインにとびかかったキメラフレシアは黒い穴に吸い込まれてしまう。
「く・・・! カードを1枚伏せて、ターンを終了する!」
ディヴァイン LP4000 手札3
【モンスター】
【魔法・罠】
伏せ1
来人 LP4000 手札3(1枚セラセニアント)
【モンスター】
【魔法・罠】
伏せ1
「私のターン!」
ディヴァイン 手札3→4
「サイコ・コマンダーを召喚!」
サイコ・コマンダー ATK1400/レベル3
「バトル! サイコ・コマンダーでダイレクトアタック!」
「手札のセラセニアントの効果! ダイレクトアタックされるとき、特殊召喚できる!」
捕食植物セラセニアント DEF600/レベル1
「セラセニアントと戦闘を行ったモンスターは破壊される!」
「ならば攻撃を中断。1枚カードを伏せ、ターンエンド!」
「俺のターン!」
来人 手札2→3
「・・・セラセニアントをリリースし、捕食植物パンクシアオーガをアドバンス召喚!」
捕食植物パンクシアオーガ ATK2000/レベル6
「パンクシアオーガでサイコ・コマンダーを攻撃!」
「く・・・!」
ディヴァイン LP4000→3400
(まずは来人がダメージを与えた・・・!)
龍可が喜んだその時だった。龍可につけられた首輪が赤く光った。
「んんぅ!?」
「な・・・!?」
龍可の体に電撃が襲う。
「んん・・・・・。」
龍可はうなだれ、柱に体を預ける。
「どういうことだ! これはいったい・・・!」
「くくく・・・私を信じていたとはおめでたい奴だな。」
「何・・・!?」
ディヴァインは不気味な笑みを見せる。
「私のライフが減れば、彼女に着けている首輪からちょっとした電流が流れるようになっている。私のライフが0になるころには・・・命はないだろうな。」
「!!」
「まあ、安心しろ。お前は私にひたすら嬲られていればいいのだ。そうすれば、彼女は助かるんだ。」
「・・・・・。」
(・・・龍可を無事に助けるには・・・。)
ぐったりとする龍可を見る。
(・・・俺が・・・・俺が死ねばいい・・・?)
「・・・ターン・・・エンド・・・!」
ディヴァイン LP3400 手札2
【モンスター】
【魔法・罠】
伏せ2
来人 LP4000 手札2
【モンスター】
パンクシアオーガ(ATK2000/レベル6)
【魔法・罠】
伏せ1
「私のターン!」
ディヴァイン 手札2→3
「トラップ発動! リビングデッドの呼び声! 墓地のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する! 甦れ! サイコ・コマンダー!」
サイコ・コマンダー ATK1400/レベル3
「レベル3のモンスターが存在することで、手札からサイコトラッカーを特殊召喚する!」
サイコトラッカー ATK1600/レベル3
「さらに速攻魔法、緊急テレポート! デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する! メンタルプロテクターを特殊召喚!」
メンタルプロテクター DEF2200/レベル3
「レベル3のサイコトラッカーとメンタルプロテクターにレベル3のサイコ・コマンダーをチューニング! 燃え上れ! 我が復讐の業火! シンクロ召喚! ハイパーサイコガンナー!!」
ハイパーサイコガンナー ATK3000/レベル9
「ハイパーサイコガンナーでパンクシアオーガを攻撃!」
「うぐ・・・!!」
来人 LP4000→3000
「・・・!!」
来人のつけた足枷から電流が流れる。
「ぐああああ!!」
「ん・・・・んんぅ!!」
(来人!!)
「・・・!!」
来人の頭の中である映像が流れる。自分と龍亞、龍可がデュエルをしており、ダメージを受けた龍亞と龍可が苦しんでいた。
「うぅ・・・!」
痛みに耐えかね、来人は膝を突く。
「おっと、忘れていたよ。お前もダメージを受ければ電流が流れる。それに合わせて、サイコデュエルによるダメージ。果たしてデュエルが終わるまで耐えられるかな?」
「く・・・!」
(・・・今のは・・・。)
「ああ、それと・・・何もせずに終わってくれるなよ? でなければ、二人とも死んでもらう。」
「ぅぐ・・・!!」
痛みに耐えながら、ゆっくりと立ち上がる。
「パンクシアオーガが墓地に送られたとき、相手モンスター全てに捕食カウンターを1つ置く!」
ハイパーサイコガンナー 捕食カウンター0→1 レベル9→1
「ターンエンド!」
「・・・・俺の、ターン!」
来人 手札2→3
「・・・!」
来人がドローしたのは捕食植物サンデウ・キンジーだった。
(サンデウ・キンジーの効果でハイパーサイコガンナーと融合すれば、奴のフィールドはがら空きになって、ダイレクトアタックができる・・・。だが・・・)
さっきのダメージで傷ついた龍可を見る。
(そんなことをすれば・・・俺は・・・また・・・。)
ドローしたカードを持つ来人の手が震え始める。その様子を見て、ディヴァインから笑みがこぼれる。
(まだだ・・・私の復讐はこの程度ではないぞ・・・未谷来人!!)