遊戯王5D's 苦悩する男   作:yvisi

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第120話 来人とゾーン

数日後

 

病院

 

「それ、本当!?」

 

「る、龍亞! しー・・・!」

 

来人の記憶が戻ったと知り、龍亞は大きな声で驚いた。来人は眠っていたため、龍可はそれを静かに注意する。

 

「記憶が戻った来人は龍可を守ったということは・・・」

 

「どうやら、ジャックとクロウが心配していたことはないみたいね。」

 

そう言って、アキはジト目でジャックとクロウを見る。

 

「「心配?」」」

 

「ま、まあ、なかったんだからいいじゃねえか! な、ジャック!」

 

「そ、そうだな!」

 

クロウはジャックの肩を無駄に強くたたき、ジャックはわざとらしく大きく頷いた。

 

「・・・んだよ、人がいい夢見てるときに。」

 

不機嫌そうに来人が起き上がる。

 

「来人! もう大丈夫なの?」

 

「とっくに元気だよ。俺は。」

 

龍可が来人のそばに駆け寄った。

 

「貴様が集めたのだろう。早く話せ。」

 

ジャックの言う通り、来人は話があると遊星たちを呼び出していた。

 

「まあ、そうなんだがな。牛尾と狭霧も来てたんだが、出てってもらった。・・・最初は、みんなに聞いてほしかったからな。」

 

来人は照れくさそうに頭を掻いた。

 

「まあ、その・・・・・おい、ニヤニヤすんな。」

 

来人の言葉通り、龍亞とクロウがニヤニヤしながら来人を見ていた。

 

「くそ・・・。」

 

「・・・来人の話って・・・」

 

「ゾーンのことか?」

 

「・・・・・ああ。」

 

「確か・・・来人はあの時、ゾーンと一緒にアーククレイドルを止めようとしてたんだよな? それが、来人は助かって・・・」

 

「だから、聞いてほしかったんだ。お前らも当事者だからな。」

 

来人は一呼吸置き、ゾーンと何があったか話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーククレイドル中心部

 

「・・・ここか。」

 

来人とゾーンはアーククレイドルのモーメントにたどり着いていた。

 

「・・・終わらせよう。ゾーン。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・? ゾーン?」

 

「来人・・・あなたも行かなくていいのですか? 仲間のもとへ。」

 

ゾーンの言葉に来人は鼻で笑う。

 

「今更無理だろ。」

 

「ですが、私についてくればあなたは・・・!」

 

「俺はゾーンには十分すぎるくらい世話になったんだ。だから、それだけで・・・。」

 

「来人・・・!」

 

「・・・・。」

 

来人は静かに目を閉じる。

 

(パラドックス・・・アポリア・・・・・・ブルーノ・・・。俺もゾーンも、もうすぐそっちに逝くよ。あの時よりも長い時間を、そっちで過ごそう・・・・!)

 

「・・・・・じゃあな。」

 

「・・・待ってください。」

 

アーククレイドルのモーメントに近づこうとした来人をゾーンは呼び止めた。

 

「なんだよ。今行こうと・・・」

 

「その前に・・・あなたに伝えておきたいことがあります。」

 

「・・・え・・・?」

 

「あなたの・・・名前についてです。」

 

「名前・・・? いいだろ今更。」

 

来人は呆れたように笑う。

 

「来人・・・その名前を考えたのは、私ではありません。」

 

「・・・何、言ってんだ・・・?」

 

来人の声が震え始める。

 

「この名前は、確かゾーンが・・・」

 

「ええ。あなたに任務を与えた際に、私がつけた名です。ですが、この名前を考えたのは、別の人物なのです。」

 

「別・・・アポリアか? パラドックス? それともアンチノミー・・・ブルーノか?」

 

「いいえ。・・・あなたの両親です。」

 

「・・・・両親・・・?」

 

来人は頭の中で両親の顔を思い出そうとするが、一切思い浮かばない。

 

「・・・そんなはずはない。二人とも、俺が子供の頃に・・・」

 

「私達が初めて会った日のことを覚えていますか?」

 

「ああ・・・忘れるはずはない。」

 

「君の服のポケットに入っていたのですよ。両親からメッセージが。」

 

「・・・・・。」

 

知らされた事実に来人は言葉が出なかった。

 

「あなたの名前・・・『来人』の由来は暗い未来を明るく長く照らす人。そうなってほしいと、書かれていました。あなたにも、それを渡しましたが・・・すでに諦めてしまっていたあなたには届かなかった・・・。」

 

「・・・・だったら・・・だったらどうするってんだよ。」

 

「・・・あなたの使命は、まだ終わっていません。」

 

「使命・・・?」

 

「彼らが未来を変えられるか、監視し、見届けること。それがあなたの使命だったはず。」

 

「・・・戻れってのか? 今更そんなことができるわけねぇだろ・・・! どんなツラさげて戻れってんだよ!」

 

来人はゾーンに詰めよった。

 

「・・・もう、いいのです。」

 

「何を・・・」

 

「もう、自分の心を騙す必要はないのです。あなたはあなたの道を進みなさい。私にこれ以上、付き合う必要はありません」

 

「・・・ゾーン・・・!!」

 

ゾーンは来人をDホイールごと巨大な手でつかんだ。

 

「!? ゾーン、待て・・・」

 

「・・・さらばです、未谷来人・・・!」

 

つかんだ来人を出口に向かって投げた。

 

「ゾーン!! ゾーン!!」

 

投げられた来人はゾーンから離れていく。それを見たゾーンはモーメントに向かって突っ込んでいった。

 

「アポリア・・・アンチノミー・・・パラドックス・・・すぐに、私も行きます。彼には、本当の居場所がある。なので・・・ここに、置いていきます。・・・来人、生きなさい・・・強く・・・!」

 

 

 

 

 

 

「・・・ゾーン・・・!!」

 

涙を流しながら、来人はアーククレイドルから出ようとする。しかし、停止したことで、崩れ始め、瓦礫が降り注ぐ。

 

「くそ・・・!」

 

隙間から隙間へとなんとか躱しながら進んでいく。

 

「・・・! あれは・・・!」

 

進んだ先にDホイールが入りそうな外への隙間があった。

 

「・・・・・じゃあな・・・ゾーン・・・ブルーノ・・・アポリア・・・パラドックス・・・。」

 

かつての同士たちに別れを告げ、来人はアーククレイドルから脱出しようとした。しかし・・・

 

「!! やべ・・・!」

 

直前で瓦礫がDホイールに接触した。Dホイールから警告音が鳴る。

 

『システムの損傷を確認。1分後に、フライングモードをオフにします。』

 

「1分!? く・・・っそーー!!」

 

トップスピードまで上げ、なんとかアーククレイドルから脱出した。

 

「・・・!!」

 

脱出し、海の上まで飛び出したが警告通り、Dホイールが飛べなくなる。

 

「うああああ!!」

 

瓦礫の降る音に紛れ、来人はDホイールとともに落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これが、俺の知る全てだ。」

 

「・・・そうか・・・ゾーンが・・・。」

 

来人は静かに頭を下げた。

 

「来人?」

 

「・・・ありがとう・・・未来を変えてくれて・・・!」

 

「お、おい、泣かすんじゃねえよ・・・!」

 

クロウは来人に背を向け、涙を拭く。

 

「いや泣いてくれなく・・・て・・・も・・・」

 

次第に来人は首を傾げた。

 

「なんだ。」

 

「いや、なんかまだ忘れてるような気が・・・。」

 

天井を見上げ、しばらく考える。

 

「・・・まあ、大丈夫だろ。そのうち思い出すよ。」

 

「ら、来人がいいならそれでいいのだけれど・・・。」

 

コンコンコン

 

「ん。」

 

軽く返事をすると、牛尾が入ってくる。

 

「そろそろいいか?」

 

「ああ。言うことは言った。」

 

遊星たちは部屋を出ようとする。

 

「十六夜、お前は残れ。」

 

「・・・わかってるわ。」

 

「・・・アキさん・・・。」

 

「・・・行くぞ。」

 

ジャックに従い、アキ以外は病室を出た。

 

「・・・ディヴァインのことね?」

 

「ああ。野郎、どうやら、ダークシグナーとの戦いが終わったあと、なぜだか、海外で復活してたらしくてな・・・。こっちもいろいろなゴタゴタがあったせいで、奴の不法入国を見逃していたんだ。」

 

「その辺しっかりやっとけよ。」

 

「おう・・・って、お前はお前で喋ることたっぷりあるんだぞ! 忘れたとは言わせねえ!!」

 

牛尾は来人の耳をぐいぐいと引っ張る。

 

「わ、わかってる! わかってるって!」

 

「ったく・・・十六夜、ディヴァインが裁判にかけられたときは、証言頼んだぜ。」

 

「・・・ええ。」

 

アキが静かに頷くと、牛尾は病室をズカズカと出ていった。

 

「・・・まあ、どんな証言しようが、あいつは終わったな。」

 

「そうね・・・でも、何もかも救われるわけじゃない・・・。」

 

「・・・そうだな。俺もどうなるか・・・。」

 

天井を見上げ、ため息をつく。

 

「! そ、そういうつもりじゃ・・・」

 

「わかってるよ。さて、終わったなら出ろよ。もうひと眠りしたいんだ。」

 

「・・・そう。じゃあ、またね。来人。」

 

アキが出ていくと、来人は静かに目を閉じる。

 

「・・・さて、どうなるか・・・。」

 

 

 

 

 

数日後

 

「・・・・・。」

 

回復し、退院した来人は高台に行き、静かに黙祷をささげていた。

 

「・・・・・・・。」

 

それを龍可は後ろで見守っている。

 

「・・・・ん。」

 

「・・・大丈夫? 来人。」

 

「ああ。しばらくはちゃんと来ないとな。墓もないし。」

 

「・・・そっか・・・。」

 

「そろそろ、帰るか。」

 

「うん。」

 

龍可は来人のDホイールのサイドカーに乗り、来人は高台から離れていく。

 

 

 

 

 

 

 

龍亞・龍可の家

 

「悪かったな、付き合わせて。」

 

「ううん、気にしないで。みんな、買い出し行っててまだ時間かかるから。」

 

遊星たちは来人の退院祝いの準備のため、買い出しに出ていた。二人はいつものようにリビングに入った。

 

「・・・・・・。」

 

入った来人はリビングをじっと見る。

 

「・・・? どうかしたの?」

 

「・・・いや、帰ってきたんだなって・・・。しばらく記憶がな・・・く・・・て・・・」

 

「・・・? 来人?」

 

「・・・帰った・・・・・」

 

「?」

 

ぶつぶつとつぶやく来人を見て、龍可は首をかしげる。

 

「えっと・・・らい・・・」

 

「話って何?」

 

「・・・・へ?」

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