決着の瞬間、会場は静寂に包まれる。しかし直後に大きな歓声が会場を包み込んだ。
『け、決着ーーー!! 勝ったのは、明莉・アンデルセンさん!! 凄まじい攻防を制して、卒業生、丸藤さんを見事に倒しました!!』
「・・・ふっ、そうか・・・負けた・・・か!?」
亨が驚きの声を上げたのも無理はない。勝った明莉が目からぽろぽろと涙を流していたからだ。
「ふ・・・ふぐっ・・・! ふえぇ・・・!」
手や腕で涙を拭うがおさまる気配はない。脱力し、明莉はその場に座り込んでしまう。
「ちょ・・・え・・・!」
まさかの事態に亨はアタフタしてしまう。亨は片膝を地面に着け、明莉に目線を合わせた。
「お、落ち着け明莉・・・!」
「は、はいぃ・・・! ・・・ひぐ!」
亨に諭されるが、涙は止まらない。
「わ、私・・・ま、丸藤さんと、デュエルして・・・じ、自信をつけられるように・・・な、なったんです・・・! 丸藤さんがいたから、わ、私・・・!」
「・・・そうか。・・・そうか・・・。」
何かに気づいたような笑みを浮かべ、亨は優しく明莉の頭をなでた。
「!? えぇ・・・!?」
「いいデュエルだった。明莉。」
「////・・・ありがとう、ございます・・・! ・・・丸藤さん。」
「ん?」
「卒業・・・おめでとうございます・・・!」
「・・・立てるか?」
「////・・・ち、力が、入らなくて・・・その・・・」
明莉は顔を赤くし、うつむいてしまう。
「・・・わかった。」
頷いた亨は明莉を優しく抱きかかえる。
「////え・・・・・えぇ!?」
客席からは『おぉ~!』という声が多く上がった。ごく一部では嫉妬の声も上がっている。
「////あああの、そこまでしてもらうのは・・・!」
「立てないんだろう?」
「/////そそ、それは、そう・・・なんです、けど・・・」
「よし、行くぞ。」
「/////・・・は、はいぃ・・・。」
明莉は恥ずかしさから手で顔を隠す。亨は明莉の体が揺れないよう、優しく、静かにステージから離れていった。
「・・・! 俺の負けたところ見ていたのか。」
「見るだろ。相手気になってたからな。」
入場口では来人がDホイールとともに待機していた。
「お前のデュエル・・・楽しみにしているぞ。」
「しっかりその目に焼き付けておけよ?」
十分の休憩をはさみ、来人による卒業デュエルが始まろうとしていた。
「は~・・・いきなりすごいデュエルだったなぁ・・・。」
「うん、そうだね。」
(・・・明莉・・・この後本当にするのかな・・・?)
「・・・! 龍亞、龍可、いよいよ始まるわ。」
「「!!」」
『さあ、いきなり壮絶な幕開けとなった卒業デュエル! 例年ならば、ここで終わりですが・・・今年はもう一つデュエルがあります!!』
客席から大きな歓声が上がる。
「いよいよ来人が・・・!」
「来人、誰とデュエルするんだろ・・・?」
「龍可も知らないの?」
「うん・・・昨日も一緒に寝る前に聞いてみたけど、教えてくれなくて・・・」
「・・・・一緒に寝てるのね?」
「・・・あ!?」
龍可は自分の口を押えるが時すでに遅し。
「・・・なんだったら、付き合う前から一緒に・・・」
「龍亞~!!」
涙目で龍亞の肩をポコポコと叩く。
『それでは、登場していただきましょう! 未谷来人さん! お願いします!』
登場を促されると、会場にエンジン音が鳴り響く。やがて入場口から来人がDホイールに乗って現れた。一周した後、Dホイールを停め、降りる。ヘルメットを取ると、亨同様、多くの女子生徒から黄色い歓声が上がる。
「・・・・・。」
とある一名は嫉妬混じりのムスッとした顔をしていた。そんな中、来人は目を閉じ、自らを落ち着けるように大きく深呼吸をした。
『未谷さん! 今回の対戦相手を選んだ理由をお願いします!』
「・・・・・。」
来人は目を開けるが、理由を語ろうとしない。
『・・・? 未谷さん?』
「・・・俺の相手は、亨のように大層な理由があるわけじゃない。俺の・・・懺悔と後悔・・・。最後にそれをあとかたもなく消し去るために、あと腐れなくするために、この男を選んだ。忙しい中、付き合わせて申し訳ないと思っていたが、あいつは快く引き受けてくれた。・・・感謝する。」
静かな言葉とともに、来人は丁寧に頭を下げた。
『ち、力強いお言葉ありがとうございます! ・・・それでは、選ばれたデュエリストを紹介しましょう! お願いします!!』
その瞬間、一台のDホイールが姿を現した。それを見た客席の生徒たちがざわつき始める。なぜならそのDホイールは多くの人が見たことがあったからだ。
『え・・・あの・・・えぇ!?』
放送部の司会も進行がおろそかになるほどの驚きだった。そのDホイールは、WRGPを優勝し、果てにはネオドミノシティを救った英雄のものだった。
「ま、まさか・・・・・!」
「・・・・・。」
やがて、来人の近くで止まり、Dホイールから降りる。ヘルメットを取ると、亨や来人以上の興奮や歓声が会場を覆った。
『み、未谷さんの対戦相手・・・・・・ふ、ふふ不動遊星さんです!!』
司会の緊張の中、紹介された遊星はぎこちなさそうに頭を下げた。
「すっかり人気者だな、遊星。」
「未だにこの反応にはなれないな・・・。・・・!」
遊星に対し、来人は手を差し出す。
「いいデュエルにしよう。」
「・・・ああ!」
二人はがっちりと握手を交わした。
「・・・今は、握手するタイプなんだな。」
「・・・!」
遊星は来人との最初の会話を思い出した。
『・・・握手しないタイプか。んで、確か、保管庫に入るんだったな。』
「・・・ふっ。」
二人はヘルメットをかぶり、Dホイールに乗る。
『い、いよいよ運命の一戦が始まります!』
「「スピードワールド2、セット!」」
『『デュエルモード、オン。』』
会場にカウントが鳴り響く。
「さあ・・・行くぞ不動遊星!!」
「ああ・・・互いに全力を尽くそう!」
スタートのコールが鳴る。
『ライディングデュエル、アクセラレーション!!』
二人のDホイールが一斉に飛び出した。
「・・・・!」
次第に遊星のDホイールが前に出る。
「くそ・・・!」
そのまま遊星が第一コーナーを取った。
『第一コーナーを先取したのは遊星さん! 先攻は遊星さんからです!』
「「デュエル!!」」
遊星 LP4000 手札5 SPC0
来人 LP4000 手札5 SPC0
「俺のターン!」
遊星 手札5→6
「マックス・ウォリアーを攻撃表示で召喚!」
マックス・ウォリアー ATK1800/レベル4
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
「俺のターン!」
遊星 SPC0→1
来人 手札5→6 SPC0→1
「SRバンブー・ホースを召喚!」
SRバンブー・ホース ATK1100/レベル1
「バンブー・ホースを召喚したとき、手札からレベル4以下のスピードロイドモンスター1体を特殊召喚できる! チューナーモンスター、SR赤目のダイスを特殊召喚!」
SR赤目のダイス ATK100/レベル1
「レベル4のバンブー・ホースにレベル1の赤目のダイスをチューニング!天空へ駆けあがる双翼よ、我が敵を地平の彼方へ吹き飛ばせ! シンクロ召喚! いでよ、HSRマッハゴー・イータ!」
HSRマッハゴー・イータ ATK2000/レベル5
「マッハゴー・イータでマックス・ウォリアーを攻撃!」
「く・・・!」
遊星 LP4000→3800
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
遊星 LP3800 手札4 SPC1
【モンスター】
【魔法・罠】
伏せ1
来人 LP4000 手札3 SPC1
【モンスター】
マッハゴー・イータ(ATK2000/レベル5)
【魔法・罠】
伏せ1
『まずは未谷さんが先制! ここからどのような展開になるのでしょうか!!』
「俺のターン!」
遊星 手札4→5 SPC1→2
来人 SPC1→2
「Sp-エンジェル・バトンを発動!」
Sp-エンジェル・バトン(アニメオリジナル)
通常魔法
自分のスピードカウンターが2つ以上ある場合に発動する事ができる。自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。
「スピードカウンターが2つ以上あるとき、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚捨てる!」
遊星 手札4→6→5
「そして、ジャンク・シンクロンを召喚!」
ジャンク・シンクロン ATK1300/レベル3
「ジャンク・シンクロンの効果により、墓地からレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚する! さっき捨てたボルト・ヘッジホッグを特殊召喚!」
ボルト・ヘッジホッグ DEF800/レベル2
「・・・!」
(くそ・・・やられた・・・!)
「・・・さすがですね。」
「? ・・・あ!」
「マッハゴー・イータはリリースすることで、相手モンスターのレベルを1つ上げる効果がある。来人はこれでシンクロ召喚を妨害するつもりだったんだろう。だが、今使ってもシンクロ召喚をされてしまう。」
(ここは効果を使わない方がいいな・・・。)
「レベル2のボルト・ヘッジホッグにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし星が新たな力を呼び起こす! 光さす道となれ! シンクロ召喚! いでよ、ジャンク・ウォリアー!」
ジャンク・ウォリアー ATK2300/レベル5
「ジャンク・ウォリアーでマッハゴー・イータを攻撃! スクラップフィスト!」
ジャンク・ウォリアーの拳がマッハゴー・イータをたたき割った。
「く・・・!」
来人 LP4000→3700
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
「俺のターン!」
遊星 SPC2→3
来人 手札3→4 SPC2→3
「SRダブルヨーヨーを召喚!」
SRダブルヨーヨー ATK1400/レベル4
「このカードが召喚したとき、墓地からレベル3以下のスピードロイド1体を特殊召喚する! 赤目のダイスを特殊召喚!」
赤目のダイス ATK100/レベル1
「赤目のダイスの効果発動! ダブルヨーヨーのレベルを3に変更!」
ダブルヨーヨー レベル4→3
「レベル3となったダブルヨーヨーにレベル1の赤目のダイスをチューニング! 名を捨てた怪盗よ! 暗き闇を切り裂き、敵を討て! シンクロ召喚! いでよ、HSR快刀乱破ズール!」
HSR快刀乱破ズール ATK1300/レベル4
「! このモンスターは・・・!」
「バトル! 快刀乱破ズールでジャンク・ウォリアーを攻撃! 快刀乱破ズールは特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うとき、攻撃力を倍にする!」
ズール ATK1300→2600
「ぐあああ!」
遊星 LP3800→3500
「ターンエンド!」
遊星 LP3500 手札3 SPC3
【モンスター】
【魔法・罠】
伏せ2
来人 LP3700 手札3 SPC3
【モンスター】
ズール(ATK1300/レベル4)
【魔法・罠】
伏せ1
『お互いにシンクロモンスターで削りあっていきます!』
「俺のターン!」
遊星 手札3→4 SPC3→4
来人 SPC3→4
「・・・俺は、スピード・ウォリアーを召喚!」
スピード・ウォリアー ATK900/レベル2
「バトル! スピード・ウォリアーで快刀乱破ズールを攻撃!」
「ちっ・・・!」
「スピード・ウォリアーは召喚したターンのバトルフェイズ、攻撃力を倍にする!」
スピード・ウォリアー ATK900→1800
「行け! スピード・ウォリアー! ソニックエッジ!」
「ぐあああ!」
来人 LP3700→3200
『ここでスピード・ウォリアー! 特殊召喚されたモンスターに強いズールに対抗しました!』
「ターンエンド!」
(ここまで削りあいになるとは思わなかった・・・! ・・・俺は・・・。)
激闘を繰り広げる中、来人の心の中は迷いに満ちていた。