数日後
明莉の家
「・・・・・。」
亨は緊張の面持ちで座っていた。一方、目の前に座る明莉の母、多江がニコニコとした表情で座っている。
「・・・・。」
そして多江の隣にはタブレットが置かれている。そこには青い髪の男性が映っていた。
「/////・・・・。」
明莉は顔を赤くし、緊張からあちこちを見ている。今日この日、亨は明莉との交際に際し、明莉の両親に挨拶に来ていた。
「改めまして・・・えと、その・・・」
「いいのよ、かしこまらなくて。いつか来てくれると思ってましたから。」
「え?」
「むしろ遅いくらいだわ。まさか2年もかかるなんて・・・」
「////お、お母さん!!」
明莉は思わず立ち上がって、多江の言葉を遮った。
「それでそれで? 亨君は明莉のどこを好きになったのかしら?」
「///!?」
「えっと・・・それは・・・。」
亨はちらっと明莉を見る。
「隙見て甘えようとするところ、不意に見せる笑顔がかわいいところ、あと・・・」
「////も、もう大丈夫ですぅ!!」
明莉は亨の体をゆさゆさと揺らして止める。
「あらあら♪ これなら大丈夫そうね。ね、あな・・・」
多江はタブレットを見て言葉を止めた。タブレットに移った男は何かを話しているが、一切声が聞こえていなかった。
「まったくもう・・・。」
多江は携帯でメッセージを送った。
『・・・・え、あ・・・今は聞こえてる?』
音声が聞こえることを確認し、男は手をふりふりとする。
「あ、はい、聞こえてます。」
『ああ、よかった~。・・・明莉?』
「/////な、なに?」
『いい人そうで安心したよ。明莉も幸せそうでよかった。』
「/////お、お父さん・・・!」
湯気が立ちそうなほど顔を赤くし、顔を伏せる。
(・・・トム・アンデルセン・・・。)
明莉の父親、トム・アンデルセンを亨は注意深く見ていた。
(アンデルセンの名でデュエルに興味を持たなかった男・・・というか・・・。)
「日本語、お上手ですね。」
『日本が大好きで覚えちゃって・・・おかげで多江に出会えました!』
「もう、あなたったら~!」
亨、明莉を放って、二人はイチャイチャし始める。
「////うぅ・・・!」
両親を見て、明莉は恥ずかしさのあまり手で顔を隠した。
「・・・まあ、これからよろしく頼む。」
「/////・・・は、はいぃ・・・。」
「・・・明日は大丈夫か?」
「/////! だ、大丈夫です! 久しぶりにお伺いするので、た、楽しみです!」
この翌日には明莉が亨の家に行くことになっていた。
「・・・明日、姉二人とも家にいるが・・・まあ、いろいろ言われても気にしないでくれ。」
「/////? は、はい・・・。」
翌日
「・・・・・。」
明莉は緊張の面持ちで亨の家の前に立っていた。
「・・・・!」
恐る恐る、呼び鈴を鳴らした。
「「いらっしゃ~い!」」
高い声で女性二人が出迎えた。
「俺より先に出るな。夕姉さん、卯衣姉さん。」
「え~? だって私、会うの初めてなのよ?」
茶髪の女性、卯衣はむすっとした顔をする。
「私も久しぶりだったから~♪」
金髪の女性、夕はニコニコとしている。
「・・・あら? 髪伸びた?」
「最初に話すことか?」
「/////あ、その・・・が、願掛け・・・というか・・・。」
顔を赤くし、髪を指先でいじる。その様子を見て、夕、卯衣はニヤニヤしながら亨を見る。
「・・・なんだ?」
「明莉ちゃん、ごめんなさいね? 亨君、だいぶ鈍いでしょ?」
「そうそう。明莉ちゃん好きなの気づいたのだって・・・」
「・・・そういう話はいいから、早く明莉を中に入れろ。」
「「それもそうね。」」
「/////・・・お、お邪魔します・・・。丸藤さん・・・。」
「あら?」
夕は明莉に顔をぐいっと近づける。
「////へ?」
「明莉ちゃん・・・ここには丸藤は3人いるのよ? だ・か・ら?」
「/////!! あ、あぅ・・・え、えっと・・・。」
明莉は亨の顔を何度も見る。
「/////そ、その・・・お、お邪魔します・・・と、とと亨、さん・・・。」
「・・・・・ああ。」
「あれ、亨君。ひょっとして照れてる?」
「・・・うるさい。」
数時間後
「//////・・・・・~!」
「・・・その、すまない・・・。」
夕・卯衣姉妹のみならず、亨の母親もテンションが高く、ずっと明莉は質問攻めにあっていた。なお、亨の父親は緊張で全く話していなかった。
「/////い、いえ・・・た、楽しかった、です・・・!」
「荷物もずいぶん増えて申し訳ない・・・。」
亨は両手に大きなカバンを提げていた。中には夕、卯衣のおさがりの服が大量に詰め込まれている。
「/////そ、そんなこと、ないです! どれも、か、可愛い服でした・・・!」
「ならよかったが・・・。」
「亨君? ちゃんと明莉ちゃんを送ってあげるのよ~?」
「言われるまでもないんだが?」
「//////・・・・!」
亨は荷物を抱え、二人は外に出た。
「/////・・・・・。」
家路につく明莉は亨の顔のあたりを何度も見る。
「? どうした?」
「/////い、いえ、なんでもないです・・・!」
(/////・・・好き、だなぁ・・・。もっと・・・ずっと一緒にいたいなぁ・・・。・・・でも・・・。)
明莉が不安に思うのは当然だった。卒業後、亨はプロデュエリストになり、海外に渡ることになる。いずれ離れ離れになってしまうのは見えていた。
(////・・・さみしいな・・・。)
ピリリリ!
明莉の携帯にメールが入った。しかし考え事をしている明莉は気づかない。
「明莉、鳴ってるぞ。」
「////あ、は、はい・・・!」
慌てて明莉はメールを確認する。確認した明莉の手が震えだした。
「!? 明莉、どうした!?」
「・・・・・ました・・・」
「え?」
「・・・・プロのスカウトから、連絡・・・来ました・・・。」
「プロ?」
亨はメールを覗き込んだ。
「・・・!? 明莉、お前・・・プロに?」
「と、とは言っても、高等部卒業まで、待ってもらうことには、なりますけど・・・。・・・やった・・・!」
「・・・!」
明莉が見せた笑顔に亨の顔が緩んだ。と同時に持っていた荷物で明莉の顔を見せないようにした。
「・・・? あの・・・。」
「・・・その、あまり他にそういう顔を見せるな。」
「////え・・・えぇ・・・!?」
亨の見せた一面に明莉はまた顔を赤くする。
「////・・・・・あ・・・。」
話ながら歩くうちに明莉の家に到着した。
「明莉、これ・・・」
「/////・・・・・!」
荷物を渡そうとした亨の服を引っ張り、明莉は亨にキスをした。
「!?」
「/////こ、これは、あの、その・・・・・お、送っていただいて、ありがとうございましたぁ!!」
荷物を持つと、逃げるように家の中に入っていった。
「・・・・え・・・・。」
亨は余韻でしばらく動けなかった。なお、明莉は一連の場面を多江に見られ、質問攻めになったのは別のお話である。
時は少し遡り・・・
龍亞・龍可の家
「う~ん・・・!」
龍亞はそわそわした様子で龍可の部屋のドアの前を行ったり来たりしていた。
「龍可~! 早く支度しなよ! 約束の時間に遅れちゃうぞ!」
龍亞の言う約束とは、今日、遊星たちチーム5D’sのメンバーが久しぶりに集まり、食事会を行うことになっていることだった。
「もう、待ってよ! 久しぶりにみんなに会うんだから、おしゃれしたっていいでしょ?」
「・・・・・!」
部屋から出てきた龍可を見て、龍亞はたじろいだ。今の龍可はいつもの服装ではなく、ピンクのニット帽・黄色のシャツ・ハートが書かれたTシャツ・緑のショートパンツという恰好だった。
「およ・・・わ、悪くないじゃん!」
「ほんと?」
「お、おお! は、早く! 来人、待ってるよ!」
「うん!」
「来人ー! 来人ー!」
「・・・んん・・・。」
龍亞に呼ばれた来人は寝転がっていたソファからゆっくりと起き上がる。
「あれ、もう時間か。」
大きく欠伸をし、首をコキコキと鳴らす。
「来人、お待たせ。」
「ん・・・・・。」
来人は龍可をじっと見る。
「えっと・・・ど、どうかな?」
「ああ、かわいいな。」
「///あ、ありがと・・・。」
「んじゃ、Dホイール取ってくるわ。」
来人はカーディガンを着ると、リビングを出ていった。
「・・・来人って、結構直球で褒めるよね。」
「///うん・・・。る、龍亞、早く行こう?」
「そうだ・・・・あれ、メール?」
リビングのパネルを見ると、メールが届いていたことに気づいた。
「・・・パパとママだ!」
「本当!?」
二人の顔色はメールを読み進めるうちに暗くなっていく。
「・・・な、なんだよこれ・・・。」
「どうしよう龍亞・・・。」
「まったく、こんな大事なことをメールなんかで・・・! 相変わらずなんだから! もう、電話だ電話! まったく、何考えてんだか!」
数時間後
ガレージ
連絡の取れないジャック以外の面々はバーベキューを堪能していた。クロウはハイウェイパトロールに転職しており、少し遅れて参加している。
「まあ、実感はしてるぜ。俺たちの仕事がネオドミノシティの人々のためにも必要だってな。やりがいもあるぜ。ただよ・・・」
「ただ、なんだ?」
「・・・いや・・・」
「・・・あの・・・」
クロウ、アキが何かを言いたそうにして、言葉を止める。
「・・・そういや、アキと来人はどうするんだ? 卒業したら。」
「あ? 俺?」
「お前らはどこのリーグからだって引く手あまただろうな。」
「ああ、いや俺は・・・」
「なんでみんなそうやって・・・・・」
クロウの何気ない言葉はアキの何かに触れたようだ。苛立ちを見せる。
「? 十六夜?」
「勝手に私の将来を決めつけないでよ!」
「何カリカリしてんだよアキ・・・。」
「してないわよ! クロウがはしゃぎすぎなのよ! さっきからおんなじことばっかり言って! やりがいやりがいって、結局愚痴じゃない!」
「きょ、今日来たんだ! メールが・・・!」
二人の喧嘩を止めるように龍亞が叫んだ。
「メール? ・・・ああ、それで出てくるの遅かったのか。」
「う、うん・・・パパとママから・・・。」
「一緒に暮らそうって・・・。」
「よかったじゃねえかよ! やっぱ家族は一緒じゃなきゃな!」
話を聞き、クロウはうんうんと頷く。
「・・・でも、ネオドミノシティを離れなきゃいけないの・・・。」
「・・・そっか・・・。」
「まだ、決めてないんだけど、どうしようかなって・・・。」
「だって、みんなと一緒にいたいから。ネオドミノシティを離れたくないから・・・・・でも、わからない・・・。」」
龍可はちらっと来人を見る。
「・・・クロウ、アキ。二人も悩んでいるんだろう?」
「「え?」」
「クロウは海外のプロリーグからのオファーを・・・」
「いっ!?」
「アキは医科大学の留学を・・・」
「どうしてそれを・・・!?」
二人は遊星が自身の悩みを知っていたことに驚きを隠せない。
「そして・・・来人は旅に出るんだったな。」
「あ? おい、言うなよ・・・!」
「・・・来人・・・旅って・・・。」
龍可には寝耳に水だったようで、来人を見つめている。
「・・・まあ、どのみちこの街出てかなきゃならないしな。どうせならいろいろ見たくなった・・・というか・・・。」
気まずい空気がガレージに流れる。そこにコツコツと靴音が響いた。
「「ジャック!!」」
「ジャック・・・。」
現れたのは、ここしばらく連絡が取れなくなっていたジャックだった。
「元キング・・・どっかで野垂れ死んだかと思ってたぜ。」
「ったく・・・今までどこ行ってたんだよ?」
「武者修行だ。」
「武者修行!?」
「俺は、ネオドミノシティを離れることに決めた。」
「「「「えぇ!?」」」」
ジャックの突然の宣言に遊星と来人以外は驚いた。
「まあ、お前はなんとなくそうだろうとは思ってたよ。じっとしていられなそうだしな。」
「そういうことではないわ! 世界最強のデュエルリーグ、ライドAからの誘いを受けた。俺は、世界のキングを目指す!」
「キングだぁ!? 今更なんだよそんな! 俺たちの絆はどうなっちまうんだよ!?」
クロウはジャックの胸倉をつかむ。
「そうやっていつまでも絆にしがみつくのか?」
「!!」
ジャックの言葉にクロウは思わず手を離す。
「己の力を世界に向けて試してみたいと思わんのか? 遊星、お前にも当然誘いは来ているだろう?」
「ああ。」
「遊星は・・・どうするの?」
「俺も迷っている。次に何をすべきかと・・・。」
「俺は・・・いや俺たちはチームで極めるものは極めた。ならば次は当然、自分一人の力で世界を切り開くことだ! 俺は試したい! 自分の力を! それを阻むものがあるというのなら、チーム5D’sの絆であろうと、俺は蹴散らしてゆく!!」
ジャックの言葉を全員は静かに聞いていた。
「・・・ジャックよ。それができねえから、俺たちは悩んでんじゃんかよ。」
「・・・・ジャック、俺とデュエルしよう。」
「「「「「!」」」」」
遊星の誘いにジャックはにやりと笑う。
「ほう・・・この俺とデュエルだと?」
「デュエルはいつだって、俺たちを導いてくれた。俺たちが迷っているのなら、その答えはデュエルの中に見つけるしかない。」
「望むところだ! 世界に飛び出す前に、貴様を倒さねばならんからな!」
「・・・デュエルが・・・導く・・・。」
遊星の言葉を聞いた龍亞はこっそり来人に近づく。
「ねえ、来人・・・ちょっと・・・。」
「ん?」
龍亞は来人の耳元で何かを言った。
「・・・面白い。乗った。」
「? 二人とも、何話してたの?」
「「・・・秘密。」」
幕間短編
『猫舌』
ガレージでのバーベキュー中・・・
「ふぅ・・・・ふぅ・・・・!」
冷ました串を来人は恐る恐る食べる。
「・・・・あっつ・・・!」
「相変わらずの猫舌っぷりだな。」
その様子を見ていたクロウは呆れていた。
「つうか、なんでそんな猫舌に?」
「しょうがねえだろ。慣れてねえんだから。」
「慣れ?」
「あっちじゃ熱いもの食ったことないんだよ。基本保存食しか食ってない。」
「・・・・・。」
クロウは焼き終えたものを次々来人の皿にのせる。
「? クロウ?」
「食え・・・もっと食っていいぞ。」
「いや、こんなに置かれても食えな・・・って、何泣いてんだよ。」