遊戯王5D's 苦悩する男   作:yvisi

134 / 134
エピローグ

8年後

 

某国

 

「・・・・・。」

 

バーの中で丸椅子に腰かけ、サングラスをした男は封筒に入った紙幣を滑らかに数えていた。

 

「・・・・・。」

 

「!?」

 

男は紙幣を中に戻し、封筒をテーブルにたたきつけた。向かいに座る男はビクッと体を震わせた。

 

「足りないんだが?」

 

「い、いますぐ用意できるのはそれしか・・・。」

 

「・・・そうか。」

 

男は指でテーブルをコツコツとつつくと、相手の胸倉をつかんだ。

 

「ひぃ!?」

 

「じゃあ、それよこせ。」

 

相手の腰のデッキケースを指さした。

 

「うぐ、そ、それは・・・!」

 

「あぁ?」

 

「ぐ・・・・! くそ・・・!」

 

来人の睨みにひるんだ相手はデッキケースを投げ渡した。

 

「わかりゃいいんだよ。」

 

男はニヤリと笑い、それを受け取った。受け取ったデッキケースを軽くポンポンと投げながら、男は店を出る。

 

「あ、あの! ありがとう、ございました!」

 

若い女性が男に向かって頭を下げる。

 

「ああ、気にするな。俺の仕事をしただけだ。」

 

「///あ、あの、よ、よろしければ、お礼を・・・。」

 

「いいよ。もうたっぷりもらってるし。」

 

「////え、えっと・・・そういうことではなくて・・・その・・・。」

 

女性は男に近づき、肩にそっと手を添える。

 

(・・・ああ、そういうことか。)

 

「////あの、みた・・・」

 

「悪いが俺彼女いるんだ。」

 

「!?」

 

男は早口でそう言うと、急いでその場から離れた。

 

「ったく・・・またこれだ・・・。」

 

ピリリリ!

 

携帯電話が鳴り、男はポケットから携帯電話を取り出した。

 

「はいもしもし・・・あぁ、クロウか。・・・え? 今から? ・・・おお。わかった、すぐ行く。場所は? ・・・了解。寄るところがあるから、そっち行ったあとでな。」

 

携帯電話をしまい、パスポートを広げる。

 

「はあ、忙しいったらないな・・・。」

 

パスポートの名前に書かれていたのは『未谷 来人』だった。

 

 

 

 

 

病院

 

「次の方、どうぞ。」

 

医者になったアキは次の患者を呼び込んだ。

 

「患者じゃないけどな。」

 

「! 来人!」

 

肩にかけていた大きなカバンを床に置き、椅子に座る。

 

「お前が頼んだ荷物、あいつんとこまで送っといたぞ。まあ、俺は出入りできねえから、最後は雑賀さんに頼んだけどな。」

 

「十分よ。あの人、目を離すとすぐああなんだもの。」

 

「・・・あの人、ねえ。」

 

「///う・・・か、からかいに来たの?」

 

「生憎そんな暇じゃねえんだよ。ほれ。」

 

手をぴらぴらとさせ、何かを催促する。

 

「はい。」

 

アキは机から封筒を取り出し、来人に手渡した。

 

「まいどどうも。」

 

ニヤリと笑い、封筒をジャケットの胸ポケットにしまう。

 

「確認しなくていいの?」

 

「ああ、お前らはいいよ。それに次がつっかえてるんだ。」

 

「そう。結構忙しいのね。」

 

「まあな。」

 

 

 

 

 

 

 

イタリア

 

「! 来人! こっちだ!」

 

喫茶店にいたクロウは来人を手招きして呼ぶ。

 

「おい、あんまでかい声で呼ぶなよな。」

 

ぼやきながらそそくさと席に座る。周りの客は来人を見て、ひそひそと話していた。

 

「ったく、もう何年も経ってるってのに、まだ噂が消えねえ・・・。」

 

「それはしょうがねえだろ。フォーチュンカップやWRGPはお前の記録が消えてても、記憶から消えねえしな。」

 

「だとしてもだろ。って、そんなことより、何の用だよ?」

 

「おっと、そうだったそうだった。」

 

クロウはカバンから封筒を取り出した。

 

「? 手紙か? んなもん普通に郵便にでも頼めよ。」

 

「あんまり知られたくないから頼んでんだよ。ほら、知ってるとは思うけどよ、俺・・・」

 

「ああ、チームやめてソロリーグに行くって話だろ? ネットニュースに出てたぞ。」

 

「やっぱ知ってたか。」

 

「ああなるほど。後任のやつに渡す手紙か。」

 

「普通に出すといろいろと嗅ぎまわろうとする奴らが出てくんだよ。だから・・・頼む! 金は出すから!」

 

「・・・言ったな?」

 

来人は電卓を取り出し、数字を打ち込む。

 

「・・・ほれ。」

 

「はあ!? こりゃぼったくりだろ!?」

 

「あれ買ったから、物入りなんだよ。しょうがねえ。」

 

「あれ・・・? あぁ、あれか・・・。」

 

クロウはにやりと笑う。

 

「つか、お前の仕事のこと、知ってんのか?」

 

「やばい仕事みたいに言うなよ。今までやってた情報屋と個人の運送業だろうが。」

 

「だからぼったくりだって言ってんだろうが!」

 

「あっそ。んじゃあな。」

 

「え・・・。」

 

来人はさっさと空港に向かおうとする。

 

「あ~もう! わかったわかった! あとで払うって!」

 

「最初からそう言えばいいんだよ。で、誰に届ければいいんだ?」

 

「へへ、実はな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

空港

 

「ったく、クロウの奴・・・。」

 

ぼやきながら、来人は空港のベンチに腰掛ける。

 

『キング! 来期はクロウ・ホーガン、丸藤亨、二宮亘がリーグへの参戦を表明していますが?』

 

「んん?」

 

目の前のテレビの映像がふと目に入った。

 

『3人とも、自分がチャンプになると言っていますが、何かコメントを!』

 

『ならば奴らに伝えておけ! 束になってかかろうと、俺に土をつけることは不可能だとな!』

 

「ふっ・・・相変わらずだな、ジャック。」

 

 

 

 

 

 

 

イギリス

 

「・・・あぁ~・・・!」

 

イギリスに着いた来人は大きく伸びをする。

 

「さて・・・。」

 

荷物を乗せ、Dホイールで空港から離れようとする。すると、そこに一人の男がやってくる。

 

「・・・・・。」

 

「ん?」

 

青いDホイールに乗ったその男は軽く手を挙げる。

 

「・・・へっ、面白い。」

 

来人はにやりと笑い、腰のデッキケースからデッキを取り出し、セットした。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 

 

 

 

大学

 

「も~・・・龍亞ったら何やってるんだろ・・・。」

 

ピンクのシャツに白のショートパンツに身を包んだ龍可が迎えに来るはずの龍亞を待っていた。龍可に見惚れているのか、数人の男性は顔を赤くし、ぼーっと龍可を見ている。

 

「あれ、龍可?」

 

龍可の友人二人が駆け寄ってくる。

 

「どうかしたの、龍可?」

 

「もう講義は終わったけど・・・。」

 

「あ、うん・・・。ちょっと龍亞を待ってて・・・。」

 

ピリリリ!

 

龍可の携帯電話が鳴る。

 

「あ、龍亞から・・・。まったくも・・・う・・・」

 

メールの中身を見た龍可の言葉が止まる。

 

「龍可?」

 

「何々?」

 

友人たちが龍可の携帯電話を覗き込んだ。

 

「・・・今、来人と一緒・・・?」

 

「ちょ、ちょっと・・・!」

 

龍可は慌てて携帯電話を隠した。

 

「来人・・・・・って、もしかして前に言ってた!?」

 

「う、うん・・・。」

 

顔を少し赤くし、こくんと頷いた。その時、Dホイールの走行音が近づいてくる。

 

「・・・あ! あれ、龍可のお兄さんじゃない!?」

 

「!! 龍亞・・・来人・・・!!」

 

「! すごい! ライディングデュエルだ!」

 

龍亞 LP2000 手札1 SPC5

【モンスター】

ライフ・ストリーム・ドラゴン(ATK2900/レベル8)

【魔法・罠】

 

来人 LP800 手札1 SPC5

【モンスター】

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(ATK2500/レベル7)

【魔法・罠】

ディメンション・ガーディアン(クリアウィング)

 

「クリアウィングでライフ・ストリーム・ドラゴンを攻撃!」

 

「え、じ、自爆!?」

 

来人 LP800→400

 

「ダメージを受けたとき、OMKガムは手札から特殊召喚できる!」

 

OMKガム ATK0/レベル1

 

「そしてこの効果で特殊召喚したとき、シンクロ召喚を行うことができる! レベル7のクリアウィングにレベル1のOMKガムをチューニング! シンクロ召喚! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ATK3000/レベル8

 

「うぐ・・・! クリスタルウィング・・・!」

 

「クリスタルウィングでライフ・ストリーム・ドラゴンを攻撃!」

 

クリスタルウィング ATK3000→5900

 

「うわあああ!!」

 

龍亞 LP2000→0

 

WINNER 来人

LOSER 龍亞

 

負けた龍亞のDホイールが停止する。

 

「くっそ~!!」

 

「まだまだだな、龍亞。」

 

二人はDホイールから降り、ヘルメットを取った。

 

「龍亞! 来人!」

 

「「・・・か、かっこいい・・・。」」

 

二人に駆け寄る龍可をよそに、友人二人は来人に見惚れていた。

 

「さて・・・」

 

「じゃあ・・・」

 

二人は懐から手帳を取り出した。

 

「しっかし、黒星が一つもないとかえって味気ねえってもんだな。」

 

「うぐ・・・つ、次こそは・・・!」

 

「何度目だ? そのセリフ。」

 

デュエルの経過を手帳に書き込んでいく。

 

「・・・ら、来人・・・。」

 

「! 龍可、久しぶりだな。」

 

会話する二人を龍可の友人二人はまじまじと見つめる。

 

「え、龍可もしかして・・・」

 

「前言ってた付き合ってる人って・・・」

 

「「この人!?」」

 

二人の声がハモると、来人はペコリと頭を下げた。

 

「おっと、そうだ。龍亞。」

 

来人は懐からクロウの手紙を龍亞に渡した。

 

「? 何これ?」

 

「クロウから。帰ってから読めよ?」

 

「ったく・・・いつまでも子供扱いなんだから・・・。クロウもなんなんだろ、この手紙・・・。っと、邪魔しちゃ悪いや。じゃあね、来人!」

 

龍亞は手紙をポケットにしまい、Dホイールに乗り、去っていった。

 

「ちょ、ちょっと、龍亞!?」

 

龍可は少し緊張しながら来人を見る。

 

「・・・!?」

 

いつの間にか龍可の友人二人が来人に話しかけていた。

 

「ちょ、ちょっと来人!」

 

龍可は腕をからめ、来人を引っ張る。

 

「龍可、久しぶりだな。」

 

来人は龍可の頭を優しくなでる。

 

「///う、うん・・・!」

 

「うおっと・・・。」

 

龍可が思い切り抱き着き、来人がバランスを崩しそうになる。友人二人はひゅーひゅーと冷やかしている。

 

「今大丈夫か? 少し付き合ってくれ。」

 

「あ、だ、大丈夫! これから帰るところだったから・・・。・・・まあ、龍亞が送ってくれる予定だったんだけどね・・・。」

 

「あいつ手紙に夢中で忘れたな。・・・まあちょうどいいか。」

 

「え?」

 

「こっちの話だ。ほら、乗ってけ。」

 

龍可にヘルメットを渡すと、後ろに乗るよう催促する。

 

「・・・うん!」

 

 

 

 

 

「よし着いたな。」

 

「・・・ここって・・・。」

 

二人が向かったのはイギリスの象徴、ビッグベンだった。

 

「まあ、その・・・大事な話だからな。こういうところじゃないと・・・。」

 

「・・・大事な、話・・・。」

 

「・・・聞いてくれるか?」

 

「・・・はい。」

 

来人の真剣な表情を見て、龍可はゆっくりと頷いた。

 

「・・・・・。」

 

来人は上着のポケットから1個の箱を取り出した。

 

「・・・今まで、俺は旅をしていて、あまりこうして会うことができてなかった・・・。龍可がどう考えているかわからない。それでも・・・俺は言うよ。さんざん待たせたけじめだ。」

 

取り出した箱を慎重に開ける。

 

「・・・!」

 

箱の中には光り輝く指輪が入っていた。

 

「・・・あ!」

 

龍可は入っていた指輪に見覚えがあった。

 

 

 

(第63話)

 

『どうした?』

 

『あ、この指輪綺麗だなって。』

 

 

 

「来人・・・これ・・・。」

 

「あぁ・・・昔これをじっと見てたからこれにしたんだが・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・結婚してください。龍可。」

 

「!!」

 

龍可の目から一筋の涙が流れた。

 

「!? 龍可・・・!?」

 

「あ、ご、ごめんね・・・。うれしくて・・・!」

 

「!!」

 

龍可は来人からそっと箱を受け取る。

 

「はい・・・! もちろん・・・!」

 

指輪をはめ、来人を強く抱きしめた。

 

「・・・!」

 

それにこたえるよう、来人も強く抱きしめる。

 

結ばれた二人の日々はこれからも続いていく・・・・・




最後までご覧いただきありがとうございます。
拙い文で読みづらいこともあったでしょうが・・・たくさん見ていただき、ありがたかったです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

遊戯王5D's 〜彷徨う『デュエル屋』〜(作者:GARUS)(原作:遊戯王5D's)

『デュエル屋』▼依頼された日時に依頼された場所で依頼された相手とデュエルをする職業。▼【第一章】 『デュエル屋』編▼気が付けばいつも通りの日常は消え去り、突然現れた目の前の現実を前に流されるように生きる選択をしていた青年は『デュエル屋』になっていた。▼心を閉ざした青年はただただ生きる、何かをあきらめたような目をしながら。▼様々な思惑が蠢く世界は青年に何を与え…


総合評価:2723/評価:7.94/連載:30話/更新日時:2025年01月27日(月) 18:00 小説情報

ネオドミノのテッペンに立ちたくて(作者:ジェム足りない)(原作:遊戯王)

マスターデュエル勢の男が遊戯王5D'sの世界にやってきて……なテンプレ小説。▼こっちはOCG次元の環境デッキ握ってるんだ!もう何も怖くな(エクストラデッキから消滅した世界観的に重要なカードの数々)ア゛ッ!▼すいません!ゲームのカードを(次元の狭間に)落としてしまったのですが!


総合評価:10692/評価:8.63/連載:34話/更新日時:2024年12月15日(日) 16:01 小説情報

魔法科高校の事なかれ主義の規格外(イレギュラー)(作者:嫉妬憤怒強欲)(原作:魔法科高校の劣等生)

魔法、それが伝説や御伽噺の産物では無く現実のものとなってもうすぐ一世紀が経とうとしていた。国立魔法大学付属第一高等学校に進学した有崎シンヤ。徹底した才能主義、残酷なまでの実力主義の学校で平穏な高校生活を望んでいたが、陰謀や策略に否応無く巻き込まれてゆく。 ▼アニメ第二期が始まり、テンション上がって書きました。▼祝TVアニメ『魔法科高校の劣等生』続編制作決定!…


総合評価:6309/評価:8.31/連載:27話/更新日時:2022年08月17日(水) 23:40 小説情報

遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~(作者:haruko)(原作:遊戯王)

初代遊戯王に私が一番好きなカテゴリを利用するオリ主を登場させてみたかったという趣旨の作品です。▼※1 王国ルールを中心に、原作のルールを独自解釈で進めている部分がありますが、広い心で見てもらえるとありがたいです。▼※2 主にオリ主のデュエルでは、OCGのカードを王国ルールに落とし込んでデュエルを進めています。かなりめちゃくちゃになると思いますがいっそtrpg…


総合評価:626/評価:7.08/連載:67話/更新日時:2026年05月30日(土) 18:00 小説情報

暗殺教室 不良児は認められたい(作者:ZWAARD)(原作:暗殺教室)

 乃咲圭一は気力、情熱を失いつつあった。▼ 父に認められたい。そんな希望を抱いて努力した日々は父親とのすれ違いで泡の様に消えてしまった。▼ やる気を無くしてしまった彼は時間が経つほどに堕落し、気が付けば『エンドのE組』へ転落してしまう。▼ そんなある時だった。月の大部分が蒸発する大事件で世界が混乱する中、劣悪な隔離校舎の中で後に人生の師と仰ぐことになる2人と…


総合評価:8791/評価:9.09/連載:225話/更新日時:2026年05月29日(金) 11:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>