8年後
某国
「・・・・・。」
バーの中で丸椅子に腰かけ、サングラスをした男は封筒に入った紙幣を滑らかに数えていた。
「・・・・・。」
「!?」
男は紙幣を中に戻し、封筒をテーブルにたたきつけた。向かいに座る男はビクッと体を震わせた。
「足りないんだが?」
「い、いますぐ用意できるのはそれしか・・・。」
「・・・そうか。」
男は指でテーブルをコツコツとつつくと、相手の胸倉をつかんだ。
「ひぃ!?」
「じゃあ、それよこせ。」
相手の腰のデッキケースを指さした。
「うぐ、そ、それは・・・!」
「あぁ?」
「ぐ・・・・! くそ・・・!」
来人の睨みにひるんだ相手はデッキケースを投げ渡した。
「わかりゃいいんだよ。」
男はニヤリと笑い、それを受け取った。受け取ったデッキケースを軽くポンポンと投げながら、男は店を出る。
「あ、あの! ありがとう、ございました!」
若い女性が男に向かって頭を下げる。
「ああ、気にするな。俺の仕事をしただけだ。」
「///あ、あの、よ、よろしければ、お礼を・・・。」
「いいよ。もうたっぷりもらってるし。」
「////え、えっと・・・そういうことではなくて・・・その・・・。」
女性は男に近づき、肩にそっと手を添える。
(・・・ああ、そういうことか。)
「////あの、みた・・・」
「悪いが俺彼女いるんだ。」
「!?」
男は早口でそう言うと、急いでその場から離れた。
「ったく・・・またこれだ・・・。」
ピリリリ!
携帯電話が鳴り、男はポケットから携帯電話を取り出した。
「はいもしもし・・・あぁ、クロウか。・・・え? 今から? ・・・おお。わかった、すぐ行く。場所は? ・・・了解。寄るところがあるから、そっち行ったあとでな。」
携帯電話をしまい、パスポートを広げる。
「はあ、忙しいったらないな・・・。」
パスポートの名前に書かれていたのは『未谷 来人』だった。
病院
「次の方、どうぞ。」
医者になったアキは次の患者を呼び込んだ。
「患者じゃないけどな。」
「! 来人!」
肩にかけていた大きなカバンを床に置き、椅子に座る。
「お前が頼んだ荷物、あいつんとこまで送っといたぞ。まあ、俺は出入りできねえから、最後は雑賀さんに頼んだけどな。」
「十分よ。あの人、目を離すとすぐああなんだもの。」
「・・・あの人、ねえ。」
「///う・・・か、からかいに来たの?」
「生憎そんな暇じゃねえんだよ。ほれ。」
手をぴらぴらとさせ、何かを催促する。
「はい。」
アキは机から封筒を取り出し、来人に手渡した。
「まいどどうも。」
ニヤリと笑い、封筒をジャケットの胸ポケットにしまう。
「確認しなくていいの?」
「ああ、お前らはいいよ。それに次がつっかえてるんだ。」
「そう。結構忙しいのね。」
「まあな。」
イタリア
「! 来人! こっちだ!」
喫茶店にいたクロウは来人を手招きして呼ぶ。
「おい、あんまでかい声で呼ぶなよな。」
ぼやきながらそそくさと席に座る。周りの客は来人を見て、ひそひそと話していた。
「ったく、もう何年も経ってるってのに、まだ噂が消えねえ・・・。」
「それはしょうがねえだろ。フォーチュンカップやWRGPはお前の記録が消えてても、記憶から消えねえしな。」
「だとしてもだろ。って、そんなことより、何の用だよ?」
「おっと、そうだったそうだった。」
クロウはカバンから封筒を取り出した。
「? 手紙か? んなもん普通に郵便にでも頼めよ。」
「あんまり知られたくないから頼んでんだよ。ほら、知ってるとは思うけどよ、俺・・・」
「ああ、チームやめてソロリーグに行くって話だろ? ネットニュースに出てたぞ。」
「やっぱ知ってたか。」
「ああなるほど。後任のやつに渡す手紙か。」
「普通に出すといろいろと嗅ぎまわろうとする奴らが出てくんだよ。だから・・・頼む! 金は出すから!」
「・・・言ったな?」
来人は電卓を取り出し、数字を打ち込む。
「・・・ほれ。」
「はあ!? こりゃぼったくりだろ!?」
「あれ買ったから、物入りなんだよ。しょうがねえ。」
「あれ・・・? あぁ、あれか・・・。」
クロウはにやりと笑う。
「つか、お前の仕事のこと、知ってんのか?」
「やばい仕事みたいに言うなよ。今までやってた情報屋と個人の運送業だろうが。」
「だからぼったくりだって言ってんだろうが!」
「あっそ。んじゃあな。」
「え・・・。」
来人はさっさと空港に向かおうとする。
「あ~もう! わかったわかった! あとで払うって!」
「最初からそう言えばいいんだよ。で、誰に届ければいいんだ?」
「へへ、実はな・・・」
空港
「ったく、クロウの奴・・・。」
ぼやきながら、来人は空港のベンチに腰掛ける。
『キング! 来期はクロウ・ホーガン、丸藤亨、二宮亘がリーグへの参戦を表明していますが?』
「んん?」
目の前のテレビの映像がふと目に入った。
『3人とも、自分がチャンプになると言っていますが、何かコメントを!』
『ならば奴らに伝えておけ! 束になってかかろうと、俺に土をつけることは不可能だとな!』
「ふっ・・・相変わらずだな、ジャック。」
イギリス
「・・・あぁ~・・・!」
イギリスに着いた来人は大きく伸びをする。
「さて・・・。」
荷物を乗せ、Dホイールで空港から離れようとする。すると、そこに一人の男がやってくる。
「・・・・・。」
「ん?」
青いDホイールに乗ったその男は軽く手を挙げる。
「・・・へっ、面白い。」
来人はにやりと笑い、腰のデッキケースからデッキを取り出し、セットした。
「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」
大学
「も~・・・龍亞ったら何やってるんだろ・・・。」
ピンクのシャツに白のショートパンツに身を包んだ龍可が迎えに来るはずの龍亞を待っていた。龍可に見惚れているのか、数人の男性は顔を赤くし、ぼーっと龍可を見ている。
「あれ、龍可?」
龍可の友人二人が駆け寄ってくる。
「どうかしたの、龍可?」
「もう講義は終わったけど・・・。」
「あ、うん・・・。ちょっと龍亞を待ってて・・・。」
ピリリリ!
龍可の携帯電話が鳴る。
「あ、龍亞から・・・。まったくも・・・う・・・」
メールの中身を見た龍可の言葉が止まる。
「龍可?」
「何々?」
友人たちが龍可の携帯電話を覗き込んだ。
「・・・今、来人と一緒・・・?」
「ちょ、ちょっと・・・!」
龍可は慌てて携帯電話を隠した。
「来人・・・・・って、もしかして前に言ってた!?」
「う、うん・・・。」
顔を少し赤くし、こくんと頷いた。その時、Dホイールの走行音が近づいてくる。
「・・・あ! あれ、龍可のお兄さんじゃない!?」
「!! 龍亞・・・来人・・・!!」
「! すごい! ライディングデュエルだ!」
龍亞 LP2000 手札1 SPC5
【モンスター】
ライフ・ストリーム・ドラゴン(ATK2900/レベル8)
【魔法・罠】
来人 LP800 手札1 SPC5
【モンスター】
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(ATK2500/レベル7)
【魔法・罠】
ディメンション・ガーディアン(クリアウィング)
「クリアウィングでライフ・ストリーム・ドラゴンを攻撃!」
「え、じ、自爆!?」
来人 LP800→400
「ダメージを受けたとき、OMKガムは手札から特殊召喚できる!」
OMKガム ATK0/レベル1
「そしてこの効果で特殊召喚したとき、シンクロ召喚を行うことができる! レベル7のクリアウィングにレベル1のOMKガムをチューニング! シンクロ召喚! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」
クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ATK3000/レベル8
「うぐ・・・! クリスタルウィング・・・!」
「クリスタルウィングでライフ・ストリーム・ドラゴンを攻撃!」
クリスタルウィング ATK3000→5900
「うわあああ!!」
龍亞 LP2000→0
WINNER 来人
LOSER 龍亞
負けた龍亞のDホイールが停止する。
「くっそ~!!」
「まだまだだな、龍亞。」
二人はDホイールから降り、ヘルメットを取った。
「龍亞! 来人!」
「「・・・か、かっこいい・・・。」」
二人に駆け寄る龍可をよそに、友人二人は来人に見惚れていた。
「さて・・・」
「じゃあ・・・」
二人は懐から手帳を取り出した。
「しっかし、黒星が一つもないとかえって味気ねえってもんだな。」
「うぐ・・・つ、次こそは・・・!」
「何度目だ? そのセリフ。」
デュエルの経過を手帳に書き込んでいく。
「・・・ら、来人・・・。」
「! 龍可、久しぶりだな。」
会話する二人を龍可の友人二人はまじまじと見つめる。
「え、龍可もしかして・・・」
「前言ってた付き合ってる人って・・・」
「「この人!?」」
二人の声がハモると、来人はペコリと頭を下げた。
「おっと、そうだ。龍亞。」
来人は懐からクロウの手紙を龍亞に渡した。
「? 何これ?」
「クロウから。帰ってから読めよ?」
「ったく・・・いつまでも子供扱いなんだから・・・。クロウもなんなんだろ、この手紙・・・。っと、邪魔しちゃ悪いや。じゃあね、来人!」
龍亞は手紙をポケットにしまい、Dホイールに乗り、去っていった。
「ちょ、ちょっと、龍亞!?」
龍可は少し緊張しながら来人を見る。
「・・・!?」
いつの間にか龍可の友人二人が来人に話しかけていた。
「ちょ、ちょっと来人!」
龍可は腕をからめ、来人を引っ張る。
「龍可、久しぶりだな。」
来人は龍可の頭を優しくなでる。
「///う、うん・・・!」
「うおっと・・・。」
龍可が思い切り抱き着き、来人がバランスを崩しそうになる。友人二人はひゅーひゅーと冷やかしている。
「今大丈夫か? 少し付き合ってくれ。」
「あ、だ、大丈夫! これから帰るところだったから・・・。・・・まあ、龍亞が送ってくれる予定だったんだけどね・・・。」
「あいつ手紙に夢中で忘れたな。・・・まあちょうどいいか。」
「え?」
「こっちの話だ。ほら、乗ってけ。」
龍可にヘルメットを渡すと、後ろに乗るよう催促する。
「・・・うん!」
「よし着いたな。」
「・・・ここって・・・。」
二人が向かったのはイギリスの象徴、ビッグベンだった。
「まあ、その・・・大事な話だからな。こういうところじゃないと・・・。」
「・・・大事な、話・・・。」
「・・・聞いてくれるか?」
「・・・はい。」
来人の真剣な表情を見て、龍可はゆっくりと頷いた。
「・・・・・。」
来人は上着のポケットから1個の箱を取り出した。
「・・・今まで、俺は旅をしていて、あまりこうして会うことができてなかった・・・。龍可がどう考えているかわからない。それでも・・・俺は言うよ。さんざん待たせたけじめだ。」
取り出した箱を慎重に開ける。
「・・・!」
箱の中には光り輝く指輪が入っていた。
「・・・あ!」
龍可は入っていた指輪に見覚えがあった。
(第63話)
『どうした?』
『あ、この指輪綺麗だなって。』
「来人・・・これ・・・。」
「あぁ・・・昔これをじっと見てたからこれにしたんだが・・・。」
「・・・・・。」
「・・・結婚してください。龍可。」
「!!」
龍可の目から一筋の涙が流れた。
「!? 龍可・・・!?」
「あ、ご、ごめんね・・・。うれしくて・・・!」
「!!」
龍可は来人からそっと箱を受け取る。
「はい・・・! もちろん・・・!」
指輪をはめ、来人を強く抱きしめた。
「・・・!」
それにこたえるよう、来人も強く抱きしめる。
結ばれた二人の日々はこれからも続いていく・・・・・
最後までご覧いただきありがとうございます。
拙い文で読みづらいこともあったでしょうが・・・たくさん見ていただき、ありがたかったです。