???
「ほぅ・・・なかなかの腕だ。」
蝋燭が灯された部屋の中で、男は猿のアザがある自分の腕をなでる。
「シグナーでない者が、我らの力を退けるか・・・。」
来人の隠れ家
眠そうな顔をしながら、来人は隠れ家に戻った。
「ん、遊星。」
同じタイミングで遊星戻ってきた。服や顔に少し傷がある。
「よぉ、こんな朝っぱらまでどこをほっつき歩いてたんだ?」
「腕にアザのある男とデュエルしていた。」
「マジか。俺も俺も。」
大きく欠伸する。
「!? 五人目のシグナーか!?」
「いや、あいつ、ダークシグナーっつってたんだよ。」
「ダークシグナー?」
「どうやら、向こうさんも動き出したってことだろうな。」
「・・・来人。サテライトと連絡は取れるか?」
「そう言うと思ってたよ。時間かかるかもしれねえから、ちょっと待ってろ。」
数時間後
「・・・・・。」
来人はサテライトと連絡を取るため、ずっとパソコンを操作していた。
「ほら、飲めよ。」
氷室は机にアイスコーヒーを置く。
「ん、サンキュー。」
一口飲んだ後、操作に戻る。
「来人くん、まだ雑賀と連絡取れないのかい?」
「やっぱ、サテライトの電波拾うの厳しなぁ~・・・。」
「・・・サテライトに戻ろうと思う。」
「その方が早そうだな・・・まあ、伝手はなくはないが・・・。」
「行っちゃうの?」
起きてきた龍亞と龍可が心配そうに遊星に尋ねる。
「サテライトに帰っちゃうの? 遊星。」
「俺には確かめなくてはならない真実がある。」
「そんな! サテライトってすごく危険なところなんだろ? そんなところに帰らないでさ、俺たちと一緒にずっとシティにいようよ!」
「シグナー同士は一緒にいなくちゃだめだって言ったの、遊星じゃない!」
「てか、龍亞。人の故郷そんなとこ言うなって・・・。」
遊星は龍亞と龍可の肩を優しくたたく。
「シグナー同士なら、必ずまた会える。」
「遊星・・・。」
ビー! ビー! ビー!
近くでサイレンが鳴り、来人は姿を見せないよう、外の様子を見る。
「・・・ちっ。しつけーなぁ・・・あいつら。」
外では牛尾率いるセキュリティが出入口を固めていた。
「聞こえるか、サテライトのクズ野郎! シティには、てめえにとって安住の地はねえ! いますぐしょっ引きに行ってやるから、首根っこ洗って待ってろぃ!!」
「こんな時に・・・。」
「・・・ちょうどいい。」
「え?」
「・・・なるほど、旅費を出してもらうか。」
遊星の意図を察し、来人はにやりと笑った。そして、遊星はサテライトのため、セキュリティに連行されていった。
数日後
来人、氷室、矢薙は龍亞の勧めで龍亞・龍可の家に場所を移していた。
「はぁ~・・・すごい家だのぉ・・・!」
「両親は出かけてるって言ってたが・・・。」
「うん。パパとママは世界中飛び回ってて、たまにしか帰ってこないの。」
「好きにしてよ。いくらだって部屋は空いてるんだし。」
「まっさか、またここに来るとは思わなかったわ。」
来人はソファに腰かけ、パソコンや機材を準備し始める。その隣に龍可が静かに座る。場所を移したきっかけは、龍可が夢にうなされたことだった。夢の内容は、シグナーの5体の竜が邪神と戦っている光景だった。そこで来人は、気分を変えるため、龍亞と龍可の家に移ることに決めたのだ。
「氷室ちゃん、こっちからシティが一望できるぜ!」
「来人の所より、サテライトからの電波は拾えるかもしれないな。」
「電波悪くてすみませんねぇ。しかし、遊星がダークシグナーと戦ったのは、ほんとうなのか?」
「うん・・・アザが強く光ってたから・・・。」
龍可はアザのある腕を押さえる。
「どのみち向こうから連絡待ちになるな、こりゃ。」
「遊星は勝ったかなぁ。」
「さあ? ま、簡単に負けはしねえだろ。」
「そうだよね! 俺にも何か手伝えることないかな~。・・・あっ、龍可が言ってた夢の話!」
「シグナーの力が龍可ちゃんに古の戦いを見せたのかもしれんなぁ。」
龍亞は自分のデッキから1枚のカードを取り出す。
「その夢に、パワー・ツール・ドラゴンが出てきたって、ほんとなの?」
「え? ・・・ま、まあ・・・似てた・・・かな?」
龍亞の問いに龍可は歯切れ悪く答える。
「いいじゃない、そんなこと。」
「いいもんか! そのドラゴンのカードを持ってるってことはさ、もしかしたら、俺が最後のシグナーだったりするかもしれないじゃん? 俺にも早くアザ浮かんでこないかな~!」
「うっ・・・。」
「・・・本当なのか?」
来人、氷室、矢薙は龍可とこそこそ話す。
「古代の儀式にあんなロボットみたいな竜、出てくるわけないでしょ?」
「そりゃそうだ。」
龍亞の浮かれっぷりに思わずため息をつく。その龍亞は腕をこすって、アザが出てくるか試していた。
「龍亞を喜ばそうと思って、ああ言っちゃったの。」
「「「はぁ~・・・。」」」
「そうだよ! 俺が五人目のシグナーなんだから、もっとしっかりしなくっちゃ!どんなことがあっても、龍可のことを守ってやらなきゃいけないんだ! 俺にみんな、任せときな!」
「「お、おお~・・・!」」
気合の入った龍亞の掛け声に氷室、矢薙は仕方なく合わせた。
(大丈夫か、こんなんで・・・。)
来人は心の中で呆れていた。やがて、来人たちは今後の行動について話し始める。
「邪神たちと戦う赤き竜ってことは、シグナーの人たちは全員仲間ってこと?」
「そういうことになるな。あんちゃんとジャック、それに龍可ちゃんとアキって姉ちゃんか。」
「俺もだって!」
「はいはい。わかったわかった。」
「だが、ありえんな。十六夜アキが仲間ってことは、アルカディアムーブメントも仲間ってことになる。」
「アルカディアムーブメントってなんなの?」
「何度か名前は聞くが、あんまり評判はよくねえな。サイコデュエリスト共を集めて、人体実験してるって噂があるくらいだ。」
来人はパソコンでアルカディアムーブメントの情報を出す。
「サイコデュエリスト・・・。」
「まれにそんな能力を持ったデュエリストが生まれてくると聞いたことがある。」
「どうしてアキさんはそんなところに?」
「さあ? その辺は本人に聞かなきゃわかんねえよ。」
「う~ん・・・・・あ!」
龍亞は何かを思いついた。
「ねえ、俺たちでアキ姉ちゃんに協力してくれるように頼んでみようよ!」
「は?」
「だって、変なことしてるってのは全部ウワサなんでしょ? 最初から疑ってかかる必要ないんじゃない?」
「そ、それはまあ、そうだが・・・。」
「言われてみれば、そんな気もしてくるな。わしら大人は人を疑いすぎているのかもしれん。」
「確かに、俺たちの情報を話したところで損はない。」
「本気かよ・・・。」
「だが、アルカディアムーブメントと連絡取れるのかい?」
「そこは・・・」
氷室は来人の肩をたたく。
「だ~れに向かって言ってんだ? じーさん。・・・5分待ってろ。」
「さっすが情報屋!」
5分後
「・・・よし。ディヴァインとの話し合い成立だ。全員支度しろぃ。」
「「「「!?」」」」
本当に5分で完了した来人に4人は声もなく驚いた。
アルカディアムーブメント
正装した来人たちはディヴァインと面会していた。
「ナイフとフォークは外側からだったかのぅ・・・。」
「確かそう・・・って、飯食いに来たんじゃねえよ。」
「面白い話だですねぇ。そのダークシグナーと呼ばれる連中が、ネオドミノシティを狙っていると。」
「そう! そいつらと戦うためのシグナーなんだ! だから、アキ姉ちゃんに力を貸してほしいんだ! きっと同じアザを持ってるお姉ちゃんなら、遊星を助けられるよ!」
「それで、遊星君からの連絡は?」
「いや、まだだ。」
「ふむ・・・。」
(さて・・・どう来る? ディヴァイン・・・。)
来人は考え込むディヴァインの様子を窺う。
「・・・いいでしょう。我々の力を全面的にお貸ししましょう。」
「本当!?」
ディヴァインの言葉に、龍亞は喜び、氷室、矢薙は呆気にとられた。
「アルカディアムーブメントは純粋にサイコデュエリストの研究を行っているのですが、最近は変な噂をたてられて困っていたところなのです。我々がみなさんのお役に立てるなら、喜んで。」
「・・・・。」
「そうだ。彼女を呼びましょう。失礼。」
軽く頭を下げ、アキを呼びに、ディヴァインは部屋を出た。
「どうよ! 俺の思った通り! あの人悪い人じゃないって!」
「こんなとんとん拍子に話が進むとはのぅ。」
「意外だな。だが、油断しない方がいい。」
「あ~やだやだ。大人は疑り深くって!」
「そうは言ってもお前・・・・・・ん?」
来人は不意に天井の通気口を見る。
(なんか音がしたような・・・。)
「それより、料理まだ? 俺おなかすいちゃった!」
「龍亞! 静かに座って・・・」
「・・・なんか・・・眠く・・・」
「私、も・・・・・。」
激しい眠気に襲われ、龍亞と龍可は眠ってしまう。
「はあ? おいおいお前ら、何して・・・」
「わしもなんだか・・・・・」
「ん・・・な、なんだ・・・?」
氷室、矢薙もいきなり眠ってしまう。
「あ? おい、じーさん! 氷室! くそ、なんだこりゃ。俺以外寝て・・・」
来人はハッとした顔で通気口を見た。
(まさか・・・催眠ガスかなんかか・・・?)
「おい、ちょ、起きろ! 嫌な予感が・・・!」
徐々に部屋に近づく足音が大きくなる。
「やべ・・・くそ!」
来人は急いでテーブルに伏せて、寝たふりを決め込んだ。やがて、部屋に数人の男たち、そしてディヴァインがマスクをつけた状態で入ってきた。
「くくく・・・龍可。この子はいずれ、アルカディアムーブメントのメンバーに加えようと思っていた。飛んで火にいる夏の虫とは、このことだな。」
(くそ、狙いは龍可・・・面倒なことになってきたな・・・。やっぱろくでもないとこはろくでもなかったか。)
来人は動くわけにもいかず、そのまま寝たふりを続けた。