ゴドウィンの話を聞いた一行は、それぞれの時間を過ごしていた。ゴドウィンの話ではシグナーの出会いは赤き竜の導きであること。5000年前から続く、シグナーとダークシグナーの戦い。地縛神が人々の魂を生贄に召喚されること。そして、ダークシグナーとなった者はすでに死亡していることだった。友人がダークシグナーになってしまった遊星のショックは計り知れない。
「ん? 龍亞の様子が?」
ゴドウィンの話の後、来人は龍可から相談を持ち掛けられていた。
「うん・・・龍亞、ここに来てから元気がなくて・・・・・ていうか・・・。」
「?」
「落ち着きすぎじゃない?」
龍可の言う通り、来人はソファに寝っ転がっていた。
「シグナーでもなんでもないのに長々話聞いてたんだ。疲れるだろ。」
「そういえば、結局何も言わなかったね。」
「お偉いさんの考えることはわからんよ。・・・と、それより、龍亞だったな。」
ソファから起き上がり、龍亞を探す。
「・・・お、いたいた。」
探していた龍亞は食堂で大量の料理を食べていた。
「元気そうじゃねえか?」
「でも、さっきは・・・」
二人はドアの隙間から龍亞の様子を覗き込む。
「とりあえず、話は聞いとくけど。」
「お願いね。」
「ああ。一応、その辺隠れとけ。」
来人はゆっくりとドアを開ける。
「龍亞、ここにいたか。」
「あ、来人も食べなよ! うまいよ、これ!」
「随分のんきなこって。」
(ほんとに元気なかったのか・・・?)
「どれどれ・・・。」
心の中で呆れながらも来人は合わせるように、料理を取る。
「お、行くねぇ~! 来人!」
「腹が減ってはなんとやら、ってな。ま、俺らはシグナーじゃない。サテライトには完全に・・・」
「・・・俺、行かないよ。サテライトには。」
「・・・ん?」
龍亞のまさかの言葉に、来人の手は止まる。
「行かないって、お前・・・。」
「ほ、ほら、俺ってお調子者じゃん? だから周りの人から『お前は妹を守るヒーローなんだぞ』とか言われてさ、自分でも、その気になっちゃって・・・・バカだよね。けど、ディヴァインに負けたときに思い知らされたんだ。」
次第に龍亞の声のトーンが落ちる。
「・・・・。」
「俺は、ヒーローにはなれないんだって。」
「龍亞・・・。」
龍亞は周りをきょろきょろと見る。
「・・・龍可がいないから、言うけどさ。小さいころ、ちょっとだけ龍可のことが邪魔だなって思ってたんだ。足手まといってさ。龍可がいるから、街のデュエル大会にもキングのサイン会にも行けないって・・・。」
「・・・知ってたよ。」
「!? る、龍可!?」
ドアの向こうで話を聞いていた龍可が部屋に入ってくる。
「私、よく病気してたもんね。そのせいで龍亞も外に出ることができなくて・・・私、いつか謝ろうと思ってたの。ほんと、ごめんね。」
「やめてくれよ! 龍可に謝られたりしたら俺、恥ずかしいよ! 龍可はすごいよ! だってシグナーだもん! 大昔の戦士の生まれ変わりだもん! 俺とは違うよ。・・・本当の足手まといは俺だったんだ。俺なんかついていったら、邪魔になっちゃうよ。」
「・・・・。」
来人は二人の様子を見て、部屋を出る。
「俺こっちで応援してるから! ふれー! ふれー! るーか! ダークシグナーを倒せー! おー!」
「・・・ばか・・・」
龍可の目に涙が溜まる。
「私だって・・・怖いに決まってるじゃない・・・。こんな時に龍亞がついていてくれなくて、どうするの?」
「・・・龍可・・・。」
「ヒーローじゃなくたっていい。今までみたいに私のこと、守ってよ・・・。」
「・・・・。」
来人はドアのそばで静かに聞いていた。そして、部屋から離れる。
「・・・・・・!!」
左の拳で壁を強く殴った。
「・・・・・。」
「来人? 大丈夫? すごい音したけど・・・。」
龍亞が部屋から出てくる。
「・・・いや、虫がいたからな。逃げられちまった。」
来人はにやりと笑う。
「み、皆さん!」
深影が走ってやってくる。
「ん、あんたたしか元キングの・・・なんかあったか?」
「さ、サテライトが大変なことに・・・!」
「?」
来人たちは移動し、モニターにサテライトの様子が映し出される。黒い霧のようなもので覆われており、人の影は全くなかった。
「これがサテライト・・・?」
「いつもこんなに霧が深いの?」
サテライトを見たことがない龍亞と龍可はこれが本来の景色かと思ってしまう。
「いや、こんなはずは・・・。」
故郷を見た遊星は首を横に振る。
「おい、一体なにがあった?」
「詳細は不明ですが、サテライト中心部で、なにか異常が発生したようです。」
「最深部・・・?」
「現在、サテライトのセキュリティとは全く通信が取れません。この映像もいつまでもつか・・・。」
その言葉通り、映像がノイズになり、サテライトの様子が分からなくなる。
「こんなところでぐずぐずしてられん! すぐにサテライトに飛ぶ! ヘリの用意をしろ!」
「は、はい!」
屋上に移動し、来人たちはヘリの到着を待つ。そこにゴドウィンがやってくる。
「サテライトを覆った霧は旧モーメント跡地が発生源のようです。」
「旧モーメント?」
「何なの? それ?」
「やはり運命が導いているのでしょう。旧モーメントの開発者、不動博士の息子。」
「旧モーメントの開発者・・・。」
来人は遊星の顔を見る。
「運命の歯車は大きく旋回し始めています。あなたたちの使命は、ダークシグナーを倒し、旧モーメントを正しい方向へ回転させることなのです。」
ゴドウィンの言葉が終わると、ヘリがゆっくりと降り立った。ヘリからある男が下りてくる。
「牛尾捜査官、ただいま到着いたしました!」
「ご苦労。」
「なんだ、お前か。」
「なんだとはなんだ! お前たちをあの忌々しいごみ溜めまで送り届けるよう、長官から直々に仰せつかったんだ!」
「んじゃあ、よろしくな。牛尾さんよぉ。」
来人は牛尾の肩をポンポンと叩く。
「き、貴様はあの時の~・・・!!」
「さ、皆さん。こちらへどうぞ。」
来人たちはヘリに乗り込もうとする。
「待ってくれ。」
「遊星、どうした?」
「ゴドウィン、1つ約束してほしいことがある。」
「なんですか?」
「俺たちがダークシグナーを倒し、全てをもとに戻すことができたら、シティとサテライトを繋ぐと約束してくれ。」
ゴドウィンはしばらく遊星の目を見る。
「・・・ええ。約束しましょう。」
その言葉に遊星は静かに頷いた。そして、全員ヘリに乗り込んだ。ヘリが飛び立ち、来人はふと外の景色を見る。
「龍亞ー! 龍可ー!」
「あんちゃーん! 龍可ちゃーん! 龍亞くーん! 来人くーん!」
天兵、矢薙、氷室が下で見送っていた。
「がんばれよー!」
「無事に帰ってくるんじゃぞー!」
「死ぬなよ! 来人! 遊星!」
「・・・ふっ。当たり前だろ。」
サテライト上空
天候は悪くなり、時々、雷が鳴る。そこで、17年前に起こったシティとサテライトを分断したゼロリバースの原因が旧モーメントであること。そして開発者である、遊星の父親のことが狭霧から語られる。
「なんでサテライト出身者がそんなでかいプロジェクトに・・・!」
「遊星は元々シティの生まれだ。」
「何だって!? こいつがサテライトのクズ野郎じゃなかったなんて」
「俺はサテライトの出身だ! それがどうした!」
「い、いやぁ・・・。」
ジャックに凄まれ、牛尾はヘリの運転に集中する。次第に雷が強くなる。
「しかし、こりゃひでえな。」
「直撃されたら終わりだ。戻った方がよくないですかね?」
「私達には後戻りは許されません!」
「・・・あそこに着陸してくれ。」
「ああ?」
牛尾は遊星の指示を聞こうとしない。
「早くしな。牛尾。」
「着陸して。」
「・・・ちっ。」
狭霧の言葉で、渋々牛尾は着陸させる。ヘリが着陸すると、一件の家から一人の女性が出てくる。その人は遊星、ジャックの育ての親、マーサだった。
マーサが出迎えると、マーサが面倒を見ている子供たちが駆け寄ってくる。
「サテライトってもっと怖い所だって思ってたのに・・・」
「元気で楽しそうな子がいるんだ。」
「ふん。どうだかな。サテライトは所詮、サテライトよ。」
「相変わらずだな。なんでお前みたいなやつが一緒なんだ?」
「あれ、雑賀さん?」
「おお、来人。久しぶりだな。」
来人と雑賀は握手を交わす。
「いや~雑賀さん、ここにいたんですか!」
「いろいろあってな。お前こそ、なんでここに?」
「こっちでもいろいろあったんですよ。おかげ様でここまで来ることに。」
歓迎された来人たちはマーサの家の中に入った。