遊星たちのガレージ
「へ~、それでもうすぐアカデミア通いってわけか。」
「まあな。少しこっち来るのは難しくなるな。」
遊星・ジャック・クロウはネオドミノシティで開催される第一回ワールド・ライディングデュエル・グランプリ、WRGPへの出場を目指していた。そのため、Dホイールの新たなのエンジンの開発に力を入れていた。
「ふん。貴様の手を借りずとも、俺たちでどうにでもなる。」
来人は、開発に使うパーツを伝手を使い、格安で手に入れていた。
「何言ってんだか。第一、おめえはまともに働いてねえんだろ? 元キングさんよ。」
「ぐぬ・・・!」
「来人。そろそろエンジンのテストをしたい。」
「よし来た。」
来人、遊星はパソコンの前に座り、ジャックはテスト用のDホイールに乗る。
「ジャック、始めるぞ。」
「ああ!」
テスト用エンジンをかけ、徐々に出力を上げる。
「60・・・70・・・今んとこ順調だな。」
「おっしゃ、行けるぜ! そのままレッドゾーンにぶち込め!」
「任せろ! このジャック・アトラスに成し遂げられないことなどない!」
クロウの言葉で、ジャックは一気にエンジンをかける。
ブー! ブー! ブー!
「ん?」
画面が赤く光り、エラー音が鳴る。
「ジャック、アクセルを戻せ!」
「なんだ、聞こえんぞ!」
「いや、だから、アクセ」
ドォーーン・・・!
大きな爆発音とともに周囲が黒い煙に包まれる。
「ゲホ・・・ゴホ・・・! し、死ぬかと思った・・・。」
「みんな、無事か!?」
「な、なんとかな・・・。」
「どうなってるんだ! 遊星! 来人!」
爆発によってテストエンジンが粉々になっていた。
「あーあ、また作り直しだなこりゃ。」
「お前が調子乗って無理するからだ!」
「何を言う! 貴様がアクセル全開にしろと言うから・・・」
「ほぉ~ジャック・アトラス様ともあろうお方が、他人の指示にはいそうですかと素直に従っちまったわけだ。途中であんなおかしい音したら、普通アクセル戻すだろ!」
「なんだと!?」
「やろうってのか!」
「お前ら喧嘩してないで片付け手伝えっての。」
「なんだ、また失敗したのか?」
片付けの最中、牛尾、深影がやってくる。
「四人とも、ちょっと話いいかしら?」
「・・・ん。」
神妙な顔を見て、来人たちは急いで粉々の部品を片付けた。
「相変わらずDホイールの開発やってるのか。」
「ああ。グランプリで勝つには、どうしても新しいエンジンが必要なんだ。」
「そのために、働きながらマシン作りに精を出すとはな。お前たちなら、いくらでもスポンサーがつくだろ。」
「俺もそう言ったんだけどなぁ~・・・。」
「今度の大会は自分たちの力で勝ち取ってこそ、意味があるんだよ。」
「その通りだ。シティとサテライトが一つになり、俺たちもその一員になれた。だが俺たちに何ができるのか、どうやったらこの街に貢献できるのか、それがこの大会に勝つことで見えてくる気がする。だからこそ、自分たちの手で成し遂げたい。」
遊星たちの決意が語られた後、牛尾は夜にハイウェイに現れるゴーストと呼ばれるDホイーラーの調査の協力を提案しに来た。しかし、クロウはマシン作りの忙しさから、すぐに断った。
「・・・さて、そろそろ戻るわ。」
「じゃあな、来人。」
「ん。」
軽く手を振って、来人はガレージを出た。
その夜、牛尾はゴーストと遭遇しデュエルをした。しかし敗北し、遊星たちはゴースト捜索に乗り出した。そしてゴーストが召喚したシンクロモンスターを吸収するモンスター、機皇帝ワイゼルに苦戦を強いられるが、勝利する。ゴーストの正体はセキュリティから盗まれたライディングロイド、取締り用ロボットだった。
「わからねえことばかりだ。メモリーチップくらい残ってればな。」
牛尾は手がかりなしの状況にため息をつく。
「ああ、メモリーチップなら何も残ってなかったぞ。ほれ。」
来人はポケットにあったチップを牛尾に投げ渡した。
「多分、負けたらデータが消えるようになってたんだろ。」
「・・・って、お前、勝手に証拠品を!」
「かてーこと言うなよ。セキュリティの鑑識より、来人の腕の方が確かだぜ。」
「そりゃそうだが・・・。」
「しかし、シンクロモンスターを捕獲するロボットなんて、誰が何のために?」
「わからん。だがはっきりしていることは新たな敵が現れたということだ。」
「ジャックの言う通りだ。そいつがこの街を脅かすなら、俺たちは戦い続ける。」
「・・・・・。」
来人はライディングロイドの写真をじっと見る。
「・・・来人? どうかしたか?」
その様子を見て、クロウが顔を覗き込む。
「ん? いや、別に・・・。」
二日後
デュエルアカデミア
職員室
「・・・・。」
「あの、緊張してます?」
どことなくそわそわした来人を見て、加納が声をかけた。
「いやあ、制服がなんか落ち着かなくて・・・。」
来人は普段の格好ではなく、アカデミアの制服に身を包んでいた。
「しかし、試験でデュエルした加納先生が担任とは・・・。」
「ええ、僕も驚いてますよ。」
加納は穏やかな笑みを浮かべる。
「おっと、そろそろ時間だ。では、教室に行きましょうか。」
「了解です。」
加納の後ろについて来人は教室に向かう。
「では、ここが君のクラスです。」
ドアの上の『1-B』のプレートを指さす。
「僕が紹介したら入ってきてください。」
「あ、わっかりました~。」
来人は軽く返事をする。
その後、加納は教室に入り、来人に教室に入るよう促した。来人はゆっくりとドアを開ける。
「・・・。」
教室内の視線が全て向いていると気づき、来人は小さく会釈をする。それを見て、生徒たち(特に女子生徒)はざわざわし始める。
「今日から転入してきた未谷来人君です。来人君、みんなに軽くでいいから挨拶を。」
「え~・・・今日から転入する未谷来人です。まあ、よろしくお願いします。」
パチパチパチパチと大きな拍手が起きる。
「来人君、席は・・・」
「先生、隣が空いてます。」
一番後ろの窓際の男子生徒が手を挙げた。
「ああ、ありがとう。じゃあ、来人君。」
来人は言われた席に座る。
「よろしく頼む。えっと・・・」
来人の呼び方に言葉が止まる。
「来人でいいよ。みんなそう呼んでるし。」
「そうか。俺は、丸藤亨。よろしく、来人。」
亨は少し頭を下げる。
「ああ、よろしく。」
「亨~こっちにも~。」
来人の右隣の女子生徒が二人に声をかける。
「ん、ああ。今話してきたのは影山ソラ。中等部時代から同じクラスの一人だ。」
「よろしくどうも、ソラ・・・さん。」
「ソラでいいよ。よろしくね、来人君。」
二人を話していると、他の生徒はその様子をじっと見ていた。
「?」
(よくわからんが・・・楽しめそうだな。)
こうして、来人のアカデミア生活が幕を開けた。