数日後
職員室
「・・・え? いいんですか?」
「ええ。かまいませんよ。よっと・・・!」
加納はアカデミアの倉庫にあったガムテープに包まれた段ボールを来人の足元に置く。
来人は交流授業後、おジャマたちのデッキを返そうとした。しかし、おジャマたちがごねまくったため、念のため、デッキをもらえないか確認していた。
「・・・あ、ありがとうございます・・・。」
『よっしゃー!』
『やったー!』
『やっと出られるー!』
(くそが・・・。)
来人の横でおジャマたちは喜びを露にしていた。その様子を見て、来人は心の中で舌打ちした。
学食
「それで、おジャマデッキが来人のものになったわけか。」
来人、亨、亘、翔一は昼食を食べながら、おジャマデッキの顛末について話していた。
「つか、こんなのの話はもういいんだよ。なんか面白い話無いのかよ。」
「こんなのって・・・もらったカードでしょう?」
『そうだそうだ!』
『つれないこと言わないで~。』
『仲良く行こうよ兄貴~。』
「・・・すっこんでろ。」
『『『ひぃ~!』』』
小声で凄まれ、即座におジャマたちは引っ込んだ。
「? 来人、何か言ったか?」
「いや、なんでもねえ。気にすんな。それより翔一。なんか面白い話あるか?」
「オレに聞くな。・・・いや、確かこんな話を聞いたな。」
呆れてため息をつくが、ある話を思い出した。
「あるんですか。」
「たまたま聞いたんだ。神隠しのな。」
「神隠し? なんだ、それは。」
「森の中で何人も行方不明者が出ているらしい。森の化け物の仕業だの何だのって聞いたな。」
「都市伝説のようなものですか。まあ、大概は噂程度でしょう。」
「行方不明ねえ・・・つうか、よくそんな話聞いてたな。」
来人はコップにたっぷり入った水を一口で飲み干す。
「ああ。かなりでかい声で言ってたからな。肝試しにいくとか。確か・・・緑の髪だったような・・・。」
「へえ~・・・・・・・・ん?」
緑の髪と聞き、よく知った顔が来人の頭に浮かんだ。
「・・・・・まさかな。」
放課後
「ふ~・・・一日ってのはなげえよな~・・・。」
授業が終わり、来人はリラックスしてだらける。
「途中寝たりしてたじゃない。」
隣のソラは呆れている。
「・・・ま、ゆっくりもしてられないんだがな。よっこいしょっと。」
伸びをしてゆっくり立ち上がる。
「? 何かあるの?」
「ちょっとDホイールのパーツ見繕ってくる。やっっすいのをな。」
「へぇ~・・・。」
「・・・おい、この質でこの値段はぼったっくってねえか?」
「勘弁してくれって、来人の旦那。これでもだいぶ下げてんだよ・・・。」
「なぁに言ってんだ。まだまだ下げられんだろ?」
来人は意地悪そうに笑う。
「うぐぐ・・・・・・。」
店の男はうなりながら悩み始める。
「・・・・はぁ~・・・なら、この値段なら、どうで?」
電卓の数字を見せる。
「・・・・うん。よし、それで買おう。」
「へい、まいど・・・。」
ピリリリリ!
「・・・ん?」
代金を支払ったところに、来人の携帯が鳴る。
「・・・天兵か。珍しい。・・・はいよ。」
『た、たた大変なんだ!』
「落ち着けって。何かあった?」
『る、龍可が森で迷子になって・・・龍亞も龍可を探すって森へ・・・!』
「やっぱりあいつか・・・。」
僅かに感じていた予感が当たり、来人は右手で顔を覆う。
「・・・すぐ行く。少し待ってろ。」
電話を切り、部品を荷台にしまうと、Dホイールに乗り猛スピードで走り出した。
「ったく、あいつら・・・!」
神隠しの森
「さ~て、どこいるんだ?」
周囲を見ながら、森の中を突き進んでいく。
「・・・お?」
進んでいくと、一件の大きな屋敷が見え、屋敷の前でDホイールを止める。
「・・・ここか? こんなとこに住むとは物好きもいるもんだな。」
屋敷をまじまじと見つめていると、玄関の大きなドアが開かれた。ドアから青い髪の少年が険しい顔をして出てきた。
「ん? なあ、ちょっと聞きたいことが」
「悪霊め! ここから先へは行かせないぞ! 僕とデュエルだ!」
少年は腕につけたデュエルディスクを展開する。
「はぁ? 悪霊? 何の話だ?」
「来人!」
「ん? ・・・あ!」
屋敷から呼ぶ声がしたため、窓を凝視すると部屋の中に龍可の姿があった。
「なんだ、ここにいたのか。」
来人が屋敷に近づこうとすると玄関のドアがいきなり閉じられる。
「行かせないと言ったはずだ。」
「お前の相手する理由はない。さっさとドアを開けろ。」
「・・・・・。」
少年は来人を睨みつける。
「・・・くそ、なんでこうなるんだ。」
Dホイールにセットされたデュエルディスクを接続させる。
「すぐに終わらせてやる。」
「「デュエル!!」」
少年 LP4000 手札5
来人 LP4000 手札5
「僕のターン!」
少年 手札5→6
「永続魔法、サークル・オブ・ライフを発動!」
サークル・オブ・ライフ(アニメオリジナル)
永続魔法
お互いのプレイヤーは自分のターンに魔法カードを発動できない。ターンプレイヤーはメインフェイズ1に手札の魔法カードを1枚捨てることで、この効果をターン終了時まで無効にできる。
二人の足元に黄色の魔法陣が現れる。
「なんだ?」
「このカードがある限り、お互いに手札の魔法カードを捨てなければ、魔法カードを発動できない。」
「ちっ、面倒なカード使いやがる。」
「僕のコンボを見せてやろう。手札から囚われの鏡を墓地に送る。」
少年 手札5→4
「そして更なる永続魔法、サークル・オブ・テラーを発動!」
サークル・オブ・テラー(アニメオリジナル)
永続魔法
お互いのプレイヤーは自分のターンに通常召喚・反転召喚・特殊召喚できない。ターンプレイヤーはメインフェイズ1に手札のモンスター1体を捨てることで、この効果をターン終了時まで無効にできる。
黄色の魔法陣の外周に沿うように赤色の魔法陣が現れる。
「これでモンスターを墓地に送らなければ、互いにモンスターを召喚できない。」
「何・・・?」
来人は手札をじっと見る。
(くそ、面倒な手使いやがって・・・毎ターン手札が減らされる・・・!)
「そして手札のスリーピー・ビューティーを墓地に送る。」
スリーピー・ビューティー(アニメオリジナル)
効果モンスター
レベル1/闇属性/アンデット族/ATK0/DEF0
このカードが墓地に存在する限り、手札のアンデット族モンスターのレベルは1つ下がる。
「これで手札のアンデット族モンスターはレベルが1つ下がる。よってレベル5のホロウ・スピリットはレベル4となり、リリースなしで通常召喚できる!」
ホロウ・スピリット(アニメオリジナル)
効果モンスター
レベル5/闇属性/アンデット族/ATK1200/DEF1000
自分の墓地にアンデット族モンスターが存在する場合、1ターンに1度、相手ライフに800ポイントダメージを与える。このカードが破壊され墓地に送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から「ホロウ・ゴースト」1体を特殊召喚する。
「ホロウ・スピリットの効果! 墓地にアンデット族モンスターがいる場合、相手に800ポイントのダメージを与える!」
「ぐああああ!」
来人 LP4000→3200
「ぐ・・・!」
体への痛みから思わず膝をつく。
「なんだ、この衝撃・・・! こいつ、なにもんだ?」
「僕のターンは終了だ。」
「くそ、俺のターン!」
来人 手札5→6
「・・・俺は電々大公を墓地に送る。」
「おっと、ただモンスターを墓地に送るだけでは意味がない。」
「何?」
「僕がさっき墓地に送った囚われの鏡は同じ種族のモンスターを犠牲にしなければ攻撃できない。ただし、アンデット族と機械族は例外だけどね。」
その言葉に来人はにやりと笑う。
「忠告ありがたいが、問題ねえよ。俺はSRマジックハウンドを召喚!」
SRマジックハウンド ATK800/レベル3
「機械族デッキ・・・!?」
「マジックハウンドの効果! デッキのスピードロイドカード1枚を墓地に送る! 俺は赤目のダイスを墓地に送る。さらにタケトンボーグを特殊召喚!」
SRタケトンボーグ DEF1200/レベル3
「このカードは風属性モンスターがいるとき、特殊召喚できる! そして、自身をリリースすることでスピードロイドチューナー1体をデッキから特殊召喚できる! SRカールターボを特殊召喚!」
SRカールターボ DEF1200/レベル3
「レベル3のマジックハウンドにレベル3のカールターボをチューニング!風を纏う魔剣がここに現れる! シンクロ召喚! 貫け、HSR魔剣ダーマ!」
HSR魔剣ダーマ ATK2200/レベル6
「魔剣ダーマの効果! 墓地のタケトンボーグを除外して、500ポイントのダメージを与える!」
「く!」
少年 LP4000→3500
「ん、この音・・・。」
ダメージを与えたところで、Dホイールの走行音が聞こえる。
「! 遊星! 龍亞!」
音の主はDホイールに乗った遊星と龍亞だった。
「龍亞はともかく・・・遊星、なんでお前まで?」
「天兵から話は聞いた。だが、これはいったい・・・。」
「来人、龍可は!?」
龍亞に聞かれ、来人は目の前の屋敷を指さす。
「あん中だ。だがあいつの聞き分けが悪くてな。」
「また悪霊が現れたか。」
「ここは俺がなんとかする。隙見てお前ら、屋敷ん中入れ。・・・バトル! 魔剣ダーマでホロウ・スピリットを攻撃!」
「ぐあああ!」
少年 LP3500→2500
「!!」
少年がひるんだ隙に遊星が龍亞とともにDホイールで屋敷の中に突入した。
「く・・・!」
少年は遊星を追おうとする。
「お前の相手は俺だ!」
「・・・許さない。」
「あ?」
「僕の大切な妹を・・・クレアを傷つける奴は・・・絶対に許さない!!」
少年の周りを無数の怨霊が取り囲んだ。
「!? お前・・・一体何者だ? あの雰囲気・・・こいつ自身が悪霊ってことか・・・?」
手札のあるカードをじっと見る。
「ホロウ・スピリットの効果発動! このカードが墓地に送られたことで、デッキのホロウ・ゴーストを特殊召喚する!」
ホロウ・ゴースト(アニメオリジナル)
効果モンスター
レベル7/闇属性/アンデット族/ATK2600/DEF0
このカードは通常召喚できない。「ホロウ・スピリット」の効果でのみ特殊召喚できる。カードが墓地に送られる度に、相手ライフに600ポイントダメージを与える。自分の墓地に「ホロウ・スピリット」が存在しない場合、
このカードの攻撃力は0になる。
(だったら・・・!)
「3枚カードを伏せ、ターンエンド!」
少年 LP2500 手札1
【モンスター】
ホロウ・ゴースト(ATK2600/レベル7)
【魔法・罠】
サークル・オブ・テラー
サークル・オブ・ライフ
来人 LP3200 手札0
【モンスター】
魔剣ダーマ(ATK2200/レベル6)
【魔法・罠】
伏せ3
「僕のターン!」
少年 手札1→2
「ホロウ・ゴーストで魔剣ダーマを攻撃!」
「永続トラップ、ディメンション・ガーディアン! 魔剣ダーマは戦闘では破壊されなくなる!」
「だがダメージは受けてもらう!」
「ぐあああ!」
来人 LP3200→2800
「さらにサークル・オブ・ライフとサークル・オブ・テラーの効果により、2枚のカードを墓地に送る! そして、ホロウ・ゴーストの効果により、カードが墓地に送られるたびに600のダメージを与える!」
「うぐ、ぐあああ!」
来人 LP2800→2200→1600
「これで僕は、ターンエンド。」
「く、俺のターン!」
来人 手札0→1
「トラップ発動! 無限泡影! ホロウ・ゴーストの効果をこのターン、無効にする!」
ホロウ・ゴーストの目から光が失われる。
「さらにマジック・ディフレクターを発動! このターン、互いのフィールド魔法、装備魔法、速攻魔法、そして永続魔法の効果は無効になる!」
「な、なんだと!?」
二人の足元にあった魔法陣が消滅する。
「墓地の電々大公の効果発動! このカードを墓地から除外することで、手札、墓地のスピードロイドチューナー1体を特殊召喚できる! 戻れ! 赤目のダイス!」
赤目のダイス ATK100/レベル1
「赤目のダイスの効果! 魔剣ダーマのレベルを4にする!」
魔剣ダーマ レベル6→4
「墓地のカールターボの効果! 墓地のこのカードとマジックハウンドを除外し、風属性モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる!」
魔剣ダーマ ATK2200→3000
赤目のダイス ATK100→900
「く!」
「バトル! 魔剣ダーマでホロウ・ゴーストを攻撃!」
「ぐああ!」
少年 LP2500→2100
「赤目のダイスでダイレクトアタック!」
「く!」
少年 LP2100→1200
「これでとどめだ! トラップカード、緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」
「何!?」
「レベル4となった魔剣ダーマにレベル1の赤目のダイスをチューニング!昔より伝わりし剣劇よ、立ち塞がる敵をその身で切り払え! シンクロ召喚! いでよ、HSRチャンバライダー!」
HSRチャンバライダー ATK2000/レベル5
「チャンバライダーでダイレクトアタック!」
「ぐああああ!!」
少年 LP1200→0
WINNER 来人
LOSER 少年
「ふぅ~・・・。」
来人は一息つき、その場に座り込んだ。
「僕じゃ・・・僕の力じゃ・・・クレアを守り抜くことはできないのか・・・!」
「そんなことない!」
龍可が龍亞、遊星とともに出てくる。
「お、無事だったか。」
「お兄ちゃん・・・!」
金色の髪にリボンをつけた少女が足を動かさず、少年に近づいた。
「・・・本当に幽霊だったのかよ。」
「クレア・・・僕は、お前を守れなかった・・・。」
「・・・・。」
一瞬、来人は険しい顔で少年を見た。
「もう・・・十分守ってもらったわ。」
「・・・ありがとう・・・クレア・・・。」
二人は光に包まれ、ゆっくりと上に上がっていき、姿を消した。
「約束は死んでも守るが俺のモットーなんだが・・・大したもんだ。」
「大丈夫か、来人。」
遊星は座っている来人に手を差し伸べる。
「ん、サンキュ。」
遊星の手を取り、ゆっくりと立ち上がる。
「さて・・・帰るとするか。クタクタだ。」
「ああ、天兵が心配している。」
「「・・・あ、忘れてた。」」
来人、龍亞の声が重なった。
「も~・・・二人とも・・・。」
「あははは!」
その後、神隠しに会った人々は解放され、森の中の屋敷は跡形もなくなくなっていた。