翌日 朝
ソラの家
「・・・・・。」
ソラは何か考え込みながらベッドで寝っ転がっていた。
「龍可ちゃんと来人・・・うまく行ってるかな? ・・・ていうか、人のこと心配していおいて自分はこれじゃあ・・・。」
ぶつぶつつぶやきながら、ベッドでゴロゴロと転がる。
ピリリリ!
「ん・・・なんだろ?」
起き上がり、携帯を手に取った。
「・・・・!!」
携帯には翔一からのメールが来ていた。
『少し時間あるか? 手伝ってほしいことがある。時間があれば家に来れないか?』
「・・・行かなくちゃ・・・!」
物凄いスピードで支度を終え、ソラは家を駆け足で出た。
翔一の家
「来れないかとは言ったが、えらい早く来たな。」
「そ、そうかな?」
そう惚けるソラはかなり息を切らしていた。
「・・・というか、オレの家来たの初めてじゃなかったか? よくわかったな。」
「え!? あ、た、たまたま知ってて・・・。」
「・・・そうか。まあ、入ってくれ。」
(嘘です。ちょっといろいろあれして、知ってました。)
「し、失礼しま~す・・・。」
恐る恐るソラは翔一の家の中に入った。
「・・・あれ?」
リビングに通されたソラは一人の人物を見つける。悩んだ様子で頭を抱えた亘だった。
「亘? どうしたの? ていうか、なんで?」
「試験が近いから勉強しようと亘から誘われたまではよかったんだが・・・。」
「・・・・・・。」
「オレだけじゃ手に負えなくてな。」
「・・・あ~・・・。」
亘のノートを見て、ソラはため息をついた。
「・・・・。」
亘は悩んだ様子で未だに言葉を発さない。
「亘のその感じで成績悪いってバグかなにかだよね。」
「それを言わないでくれますか・・・。」
「ごめんごめん。」
(・・・一瞬すごい期待しちゃった・・・。)
ソラはちらっと翔一を見る。
「・・・? どうした?」
「何でもない。それで、どうすればいいの?」
「ああ。まずは・・・・・」
その後、二人は協力して亘に勉強を教えていった。
数時間後
「・・・・ふぅ・・・。」
疲れから亘はテーブルに顔を伏せる。
「あ、ありがとうございます・・・。」
「よく頑張ってるよ? ・・・まあ、それでもそこそこ間違えてるけど・・・。」
「うぐ・・・!」
亘は時計を確認する。時計の針は3時を指していた。
「・・・もうこんな時間ですか。二人とも、ありがとうございます。僕はそろそろ・・・。」
「ああ。またな。」
疲れた様子で亘は部屋を出た。
「・・・はぁ・・・疲れた~・・・。」
ソラはぐいっと体を伸ばす。
「悪かったな、急に呼び出して。」
「ううん。大丈夫。」
「ちょっと待っててくれ、飲み物取ってくる。」
「あ、ありがと・・・。」
翔一は飲み物を取りに、席を立つ。
「・・・・・。」
(・・・・・あれ・・・?)
確認するように周りを見る。
(・・・今・・・二人だけ・・・?)
「麦茶しかなかったんだが、いいか?」
「あ、う、うん・・・! そういえば・・・今日、他に誰かいないの?」
「ん? ああ、父さんと母さんは旅行に行っててな。温泉三昧してくるってウキウキだったな。」
「そ、そうなんだ・・・。」
(ということは今・・・二人きり・・・!!)
翔一に見えないよう、ガッツポーズをする。
ピリリリ!
「ん?」
翔一の携帯にメールが入った。
「・・・ん。」
「?」
翔一は届いたメールを見せた。
「亘だ。・・・え、隣の子だれ?」
亘からのメールは亘本人と一人の女性が写っていた。
「ああ、彼女らしい。」
「へえ・・・・・・・んん?」
突如として出たワードにソラは首を傾げる。
「え、彼女? 亘の!?」
「ああ・・・って、知らなかったか?」
「全然!? ていうか、知ってたの!? ・・・え、もう一回写真見せて?」
「?」
首を傾げながら、翔一はもう一度写真を見せる。
「え、この人・・・決勝で亘とデュエルした人?」
「そうだ。西山っていってたんだったか・・・?」
「そうそう・・・言ってくれればよかったのに・・・。」
「告白されたのが決勝終わった後だったからな。」
「・・・あ。」
決勝の日と聞き、様々な出来事がソラの頭の中で思い出された。
「気を遣わせちゃったか・・・。」
そう言いながら、翔一をちらっと見る。
「・・・・・。」
(・・・今なら・・・。)
「・・・ねえ、翔一。」
「ん?」
「・・・あの・・・私ね・・・?」
「たっだいま~!」
「!?」
どかどかと大荷物を抱えて誰かが入ってくる。
「母さん。父さん。」
「え!?」
「あれ、ソラちゃん。来てたの?」
「あら久しぶりね~ソラちゃん。」
「あ、ど、どど、どうも・・・。」
思わぬ出会いにソラはしどろもどろになる。
「・・・お邪魔だった?」
「? 何が・・・」
「あ、あの、お、お邪魔しました!」
慌てて立ち上がり、部屋を出ようとする。
「ちょっと、ソラちゃん! お土産持ってって! お土産!」
「あ・・・は、はい・・・!」
お土産の饅頭を抱え、ソラは部屋を出た。
「・・・ホントに邪魔だった? 翔一?」
「さっきから何の話なんだ?」
「こりゃあ大変だね、ソラちゃん。」
「?」
夕方
来人の部屋
「・・・よし、これで片付いたな。」
情報屋としての仕事を片付けた来人は軽く伸びをする。
ピピピピ!
「ん?」
来人のパソコンにメールが届き、それを確認した。
「牛尾か。・・・えぇ?」
「え、牛尾さんが?」
「なんか頼みがあるらしくてな。悪いが、夜はちょっと出てくる。」
そう言うと、来人は頭を下げる。
「だ、大丈夫だよ! 十分すぎるくらい楽しかったから!」
「そう・・・? ならいいんだけど・・・。あ、一応龍亞呼び戻しといたから。」
「あ、ありがと・・・。」
夜
レストラン
牛尾、深影は来人の他に遊星、ジャック、クロウを呼んでいた。大きなステーキが振舞われていた。
「怪しい。」
「な、何がだ? 来人?」
クロウは何皿も食べる中、来人、遊星、ジャックは疑いの目で牛尾、狭霧を見ていた。
「来人の言う通りだ。安月給のこいつらが何の裏もなく俺たちにおごるなどありえん。」
「な、何を根拠に・・・!」
「では裏はないのだな。」
「あ、いや、その・・・。」
牛尾の歯切れが悪くなる。
「実はちょっと頼みがあってな・・・。」
「ほら出たよ。」
来人は呆れ気味にため息をつく。
「そんな大げさなことじゃないんです。先日、記憶喪失の人が保護されて、しばらくその人の面倒を見てほしいんです。」
「なぜ、俺たちに?」
「今、ネオドミノシティの施設は観光客やDホイーラーで手がいっぱいなの。しばらくの間でいいんです・・・!」
「俺たちのガレージはホテルじゃない。」
「今の俺たちに他人を養う余裕もねえしな。」
「・・・つか、なんで俺まで呼ばれたんだよ。」
「お前確か、部屋持ってたよな?」
「え? ・・・ああ、あそこな。」
以前、氷室と矢薙に譲った自分の隠れ家のことを思い出す。
「悪いが、あそこは無理だ。こないだ青山って奴が入ったらしくて、もう部屋がないんだよ。あと牛尾、お前この間捜査協力したのに依頼料まだ振り込まれてないぞ。」
「うぐ・・・! い、いったん置いといて・・・なんとか頼む、来人!」
「断る。」
「遊星!」
「断る。」
「お願いです、アトラス様!」
「断る。」
「そこをなんとか! なあ、クロウ!」
「断る。」
四人全員、見事に断った。
「クロウ! 貴様こんなに高級ステーキ平らげといて、断るつもりか!」
「う・・・! それを言われると・・・!」
「てか、その記憶喪失の野郎はどこにいるんだ?」
来人は牛尾たちの言う人物を探すため、周りを見る。
「それが・・・とっくに来てるはずなんだが・・・。」
「来てねえなら、仕方ないってことで。」
食事を終えた来人たちはDホイールを停めてある地下駐車場に移動した。
「いや~危なかったな。変な奴押し付けられるところだったぜ。」
「クロウがステーキばかすか食うからややこしくなったんだろ?」
「だってよ、あんなたけえ店、いつ行けるわかんねーし・・・ん?」
「ほ~ら、いい子ちゃんね~。ここの汚れも拭いてあげるからね~。ほら、きれいになった。」
停めてあったジャックのDホイールを青い髪の青年がぶつぶつ言いながらいじくっていた。
「貴様! 俺のDホイールに何をしている!」
「え? うわあ!!」
青年はジャックに胸倉をつかまれ、地面に投げ倒される。
「俺のDホイールに二度と近づくな! 今度はこんなものではすまさんぞ!」
ジャックは激しい剣幕でDホイールに乗り、走り去っていった。
「すまない、大丈夫か!?」
遊星は投げ倒された男に駆け寄った。
「おいおい、ほっとけって。まあ、あんたも災難だ・・・った・・・」
来人は青年の顔を見て、言葉が止まった。
「・・・? えっと・・・?」
「おい、どうかしたのか!?」
騒ぎを聞きつけて、牛尾と狭霧が駆けつけた。
「ジャックが悪いんじゃないぜ。あいつがホイールオブフォーチュンを盗もうとするから・・・。」
「・・・あー!! お前は・・・!!」
「ブルーノ! 何でこんなところにいるの!」
「あ・・・ご、ごめんなさい! すごいDホイールだったから、つい触りたくなっちゃって・・・!」
ブルーノと呼ばれた青年は痛みのある背中を押さえながら、狭霧に謝る。
「おい、まさか、俺たちに預けようとしてたのは・・・」
「この人なのよ。」
「マジで!? どうすんだよ、遊星!?」
「いや、どうするって・・・」
困惑する遊星たちのもとにジャックのDホイールが戻ってくる。
「ジャック・・・?」
「う、うわぁ!?」
ジャックはDホイールに乗ったまま、ブルーノを無理やり乗せる。
「こいつは一晩借りていく!!」
「お、おい・・・!」
「追うぞ、クロウ! 来人!」
「ああ!」
「・・・・・。」
(・・・まさか、な・・・。)