「るーかー! なんで引き分けにしちゃうんだよー! もーもーもぉー!!」
この後出る気満々だった龍亞は涙目で龍可に抗議していた。
「まあ、あの状況ならむしろよく引き分けにできたもんだ。」
「そうよ。負けるよりいいでしょ。・・・・。」
龍可は龍亞の顔を見ると、右腕を押さえた。
「龍可ちゃん、気分でも悪いのかい?」
「そうだよ、デュエル中もぼーっとしてたし・・・。」
それを見た矢薙と天兵は心配して声をかける。
「え、う、ううん。大丈夫だから。」
「二人とも、俺と来人が送っていこう。」
「ほんとー!? じゃあ、遊星と来人、うちに泊まっていきなよ!」
「エブリバディリッスン!! 白熱した大会第一日目はこれで終了だぁ!! そしてこれが明日の準決勝のマッチメイク!! それでは今日の興奮と感動を明日のデュエルまでトゥービーコンティニュー! グッバイ!!」
第1試合 不動遊星 VS 十六夜アキ
第2試合 未谷来人 VS ボマー
「げっ・・・。」
次の自分の相手に、来人は顔をしかめる。
「二人とも強敵だな。」
「次はライディングでやるからなぁ。あいつ、どんなDホイールで乗ってくるのやら。」
(あのおじさんのDホイール・・・そうだ! もしそれがわかれば、来人が有利になるかも・・・。)
「? 龍亞、どうかしたの?」
「あ~いや、何でもない。あのさ、先帰っててよ。ちょっと用事、思い出したから。」
「用事? 何かあんのか?」
「え~と・・・何の用事だったかなぁ~・・・。それも思い出してくる~!」
そう言い残し、龍亞はどこかへ走って行ってしまう。
治安維持局
「お前の言っていたカードができた。」
イェーガーは1枚のカードをボマーに手渡した。
「ありがとうございます。」
「強力なカードだ。使いこなせば、勝機はあるでしょう。ヒッヒッヒ。」
龍亞・龍可の家
「遅いなぁ・・・龍亞。せっかく龍亞の大好物のハンバーグ、用意してもらったのに。」
遊星はちらっと時計を見る。
「・・・しゃあない。俺と遊星で探してくるから、龍可はここで待ってな。」
「私なら大丈夫。ここに待ってる方が気分悪くなりそう。」
「わかった。だが無理はするな。」
「うん。」
数十分後
来人はサイドカーに龍可を乗せ、龍亞を探して街中を走り回っていた。
「くそ・・・どこまで行ったんだ? 龍亞のヤツ。」
「どうしよう・・・。」
「とりあえず、遊星と合流するか。」
近くの路地で遊星と合流した。
「遊星、いたか?」
「いや。会場から一通り走ってみたが・・・。」
「こっちもいなかったわ。」
「龍可のデュエル中倒れたっつーから、てっきりどっかで思ったんだがな・・・。」
ピピピ!
遊星のDホイールに通信が入る。
「・・・おっ、雑賀さんだ。」
『遊星、今サテライトにあるお前のアジトに着いたところだ。』
(あの人サテライト行ってたのか・・・。)
「! みんなは無事か!?」
遊星の言葉に雑賀は首を横に振った。
『残念だが、ここにはいない。』
「何だと!? 何があった?」
『わからん。ネットワークに侵入しても、彼らがセキュリティに捕まった記録はない。俺は引き続きこちらで彼らの行方を探す。』
「頼む。」
通信の傍受を気にしてか、雑賀は急いで通信を切った。
「遊星の友達もいないの?」
「ああ。」
「そっちもいろいろありそうだな。・・・!」
来人が誰かの気配に気づく。
「誰だ!」
デッキの上のカードを1枚手に取り、気配がした方向に投げつけた。現れた人影はそれをたやすく指ではさんで取った。
「・・・お前は・・・。」
現れたのは、龍亞を肩に担いだボマーだった。
「説明はあとだ。」
取ったカードを来人に投げ返した。
「・・・くそ、引きが良すぎた。」
投げたカードをデッキに戻す。
「けがはしていない。寝ているだけのようだ。」
「寝てるって・・・何してたんだあいつ・・・。」
のんきな寝顔を見せている龍亞に来人はため息をついて呆れる。
来人たちはボマーと寝ている龍亞を連れ、龍亞・龍可の家に戻ってきた。ボマーは寝ている龍亞をベッドに寝かせる。来人、遊星は疲れから寝てしまった龍可をソファで寝かせ、毛布を掛ける。その後、3人はプールのついたベランダに出る。
「んで、なんでお前が龍亞を?」
「あの子が私のガレージで寝ていた。警備システムが作動し、閉じ込められたようだ。おそらく、私のDホイールを偵察しにきたのだろう。」
「そうだったのか・・・。」
「少し疑っちまった。すまん。」
来人はボマーに頭を下げる。
「あの子を責めてはならない。それに気にするな。あの子はお前が好きなんだ。お前のことを思ってやったことだ。あの子たちを見ていると、故郷に残してきた弟と妹を思い出す。」
「へえ、兄妹がいたのか。」
「ああ。あの子たちと同じくらいの歳だ。」
ボマーは故郷を思い出すように、空を見上げる。
「この街の空には、星はないのだな。」
来人と遊星も空を見上げる。確かに、星の一つも見えなかった。
「ところで、来人と言ったな。君は、何のために戦う?」
「何のため、ねえ・・・あまり考えたことはないな。」
「そうか・・・どうやら明日のデュエルは、私の勝ちのようだ。」
「何?」
早い勝利宣言に、来人はボマーを睨む。
「なら、アンタはなんのために戦うんだ?」
「私は、故郷のためだ。私の一族はインカに伝わる星の民に仕えていた末裔なのだ。」
「それじゃあ、お前も赤い竜の話を知っているのか。」
(赤い竜・・・そういえば、スタジアムにそんなが出たとか、どうとかあったな・・・。)
「ああ。長き時を経て、今この地に赤き竜が蘇ろうとしている。ゴドウィン長官はその力を使い、世界をよき方向へ導こうとしている。」
「そんな話、信じていいのか?」
「長官は約束してくれた。私が力を貸せば、故郷の村を復興すると。」
「ボマー、奴を信用するな。」
ゴドウィンに不信感を抱く遊星はボマーに忠告する。
「私は信じている。信じるものを譲ることはできない。それに遊星、お前も明日の心配をした方がいい。」
そう言い残し、ボマーは去っていった。
フォーチュンカップ会場
「い~よいよ大会二日目ーー!!」
MCの掛け声でフォーチュンカップ準決勝が幕を開ける。
「泣いても笑っても、今日のデュエルでキングへの挑戦者が決定するぅ!! 準決勝第一試合は、サテライトの流れ星、不動遊星バーサス、黒薔薇の魔女、十六夜アキだぁ!!」
会場のボルテージが一気に高まった。
「ん? 龍亞君はどうした?」
「来人に話があるんですって。」
来人は控室で、Dホイールとデッキの調整をしていた。
「来人。昨日は、ごめん・・・俺・・・!」
「わかってるよ、お前の考えくらいな。終わったら、ボマーに謝るんだな。俺も一緒に行ってやるから。」
そう言って、来人は龍亞の頭をなでる。
「・・・うん! 約束する! 来人、頑張ってね!」
「ん。」
来人を激励し、龍亞は客席へ戻っていった。来人は軽く手を挙げて答えた。
「まずは、第一試合・・・。どうなることやら。」
幕間短編
『朝食』
龍亞・龍可の家
「あ~よく寝た。」
来人はソファから起き上がり、大きく伸びをする。
「来人、またソファで寝てたの?」
龍可は目をこすりながら部屋から出てくる。
「こっちのほうがよく眠れるんだよ。」
「朝ごはん、用意するね。」
「ん。じゃあ、龍亞叩き起こすか。」
そう言って、龍亞の部屋に入る。
「・・・ふあ~あ・・・。」
眠そうに、ゆっくりと龍亞が出てくる。
「・・・これでよし。」
テーブルに3人分のトーストとホットコーヒーが置かれる。
「ん~・・・じゃあ・・・」
「「「いただきます。」」」
龍亞と龍可はトーストを一口かじる。一方、来人は・・・
「ふぅー・・・ふぅー・・・。」
大きく息を吐いて、コーヒーを冷ます。そして、ゆっくりと口につける。
「・・・あっちぃ・・・!!」
((すごい猫舌・・・。))
以降、龍可は来人にはアイスコーヒーを出すようにした。