幼馴染「あんたのゴミ箱ティッシュだらけなんだけど風邪でもひいたの?」   作:陽波ゆうい

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最低なコクハク。最高のケッカ

「ど、どうぞ」

「お、お邪魔しまーす」

 

 放課後。律也は自室に由里香を招き入れていた。

 

 テーブルを挟み2人は座る。

 

「……」

「……」

 

 緊張からかお互い無言。

 朝の光景からは想像できないくらい静かだ。

 

(由里香を呼び出したものの……開始早々ティッシュのことに触れてもいいのか……? ここは雑談を挟んでから……)

 

(律也に呼び出されたってことはきっと朝のティッシュのだよね。……いやいや。単にいつもみたいに遊びに誘ったって可能性も……。アタシからティッシュのことを聞いたらまるで)

 

 お互い黙ったまま数秒が経つ。

 ふと、律也が由里香をチラ見。

 

 由里香は律也と目を合わせぬよう、俯いていた。

 

(由里香のやつ、ほんと……可愛いよな)

 

 切れ長の目元に大きな瞳。小ぶりな鼻と口元がバランスよく顔に収まっていて、美少女とはこういうものなんだなと理解させられる。

 

 平凡な容姿の俺とは比べ物にならない。

 釣り合わないと思っていた。

 好きだけど幼馴染の枠を越えることは躊躇った。

 

 だから俺は………

 

「なに? アタシの顔ジロジロ見て」

「あぁいや……なんでもない」

 

 火照った頬を冷ますように、律也はブンブン首を振ってみせる。

 

 そんな律也を今度は由里香がチラ見。

 

(律也って……やっぱりカッコいいわよね)

 

 ツーブロックの黒髪に、整った顔。本人は凡人だと思っているが、アタシたち女子の中ではカッコいい部類に入るし、気さくで明るくて優しくて……密かにモテていた。

 

 だから私は……

 

「え、なに?」

「なんでもないわよ……」

 

 お互いのことを考えているものの、口には出さず。

 

 5分が経過した頃、ようやく律也の口が開いた。

 

「そのさ……今朝のティッシュの件なんだけど」

「……!」

 

 そのワードが出ると由里香もピクっと反応するも、

 

「うん。つ、続けて……」

「ああ……。このままうやむやにして、由里香と気まずくなるのも嫌だしさ、この際ハッキリ話そうと思って」

 

 律也は正座する。そして告げる。

 

「ゴミ箱の大量とティッシュ。あれは立花から聞いたと思うけど、夜中に1人で……っ……。ひ、1人でエッチなことしていたから……です」

「う、うん……」

「あはは、いくら幼馴染だからってひいたよなぁ。……嫌な思いさせてごめん」

 

 律也は苦笑した後、頭を下げる。

 

「あ、謝らなくていいよ! 男の子ならその、あんまり溜まってると身体に悪いとか聞くし……」

「由里香……」

 

(コイツも真矢と同じで理解ある側なのか……!)

 

「ま、まぁ……つまり、朝はびっくりしたけど、そんな気にしてないからっ」

「由里香〜〜! ありがとう! ほんとありがとう! お前が幼馴染でマジでよかった! ティッシュの件は忘れてくれとは言わないが……少しずつ記憶から薄れてくれると嬉しい」

「それって忘れろってことじゃん」

 

 話が一旦途切れる。

 

 ふぅ、良かった……これでこの件は一旦——

 

「……話はまだ終わってないし」

「え?」

 

 安堵の笑みを浮かべた律也だっだが、由里香の言葉で再び顔がこわばる。

 

 由里香は頬を赤らめながらも、確かめたい……と言う。

 

「そ、その、誰でシてたの……?」

「え?」

「だから、誰であんなに大量のティッシュを生み出したの?」

「………」

 

(なんでそこ聞いてくる!?!?)

 

「言わないとダメ……?」

「ダメ」

「……」

 

 律也は再び無言になる。

 

(律也が言いたくないってことは、やっぱり私以外の女の子なんだ。誰? ……まさか真矢? 立花ちゃん?)

 

(なんでそこまで突き止めようとするんな!?)

 

 今度は由里香から口を開く。

 

「ねぇ、教えて律也。じゃないと私……」

 

(気になりすぎて、ちょっと寝込みそう)

 

(ま、まさか……バラすのか! 言わないとバラされるのか!?)

 

「律也……」

「わ、分かった分かった。だから落ち着け……」

 

 律也は覚悟をきめ、恐る恐るスマホを取り出す。

 

「俺が大量のティッシュを生み出したのはこの子です。……すいませんでしたぁぁぁ!!!」

 

 律也は由里香にスマホを渡すとすぐさま土下座。

 

 スマホに映っていたのは……

 

「え、これって……アタシ?」

 

 あの全裸の由里香の姿だった。

  

「立花からイタズラで送られてきたのはいえ、その写真に興奮してしまいやってしまいました。ほんとすまん! 変態って罵しられてもいいと思っております!! なんなら絶交されても——」

「待って!」

 

 焦り、パニックになるり、早口になる律也に待ったをかけたのは由里香。

 

「1人で勘違いしていかないでよ……」

「由里香……?」

「アタシで、その、コーフンして大量のティッシュを生み出したのなら……別に嫌な気はしないから」

 

(それってどういう……)

 

「てか、幼馴染なんだし今更こういうことで恥ずかしがるなんてアタシたちらしくないわよっ」

「いやいや! 恥ずかしがるのベクトルがちげえじゃねーか! てか、普通相手聞いてくるかよっ」

「律也の方こそ、なんで私で大量のティッシュ生み出していたのよっ」

「そりゃ俺は」

「アタシだって」

 

「由里香のことが好きだからだ!」

「律也のことが好きだからよっ!」

 

 2人同時に言う。

 声が重なったものの、しっかりと聞き取れた。

 

「え、由里香……今俺のこと好きって……」

「律也の方こそアタシのこと……」

 

 黙る。しかそ、次は互いに反応が早く。

 

「俺のことが好きだと!?」

「律也が、アタシのことが好き………!?」

 

 お互いに驚き合った。

 

「ふ、ふーん。律也ってアタシのことが好きなんだぁ。なら、付き合ってあげても……いいけど?」

「なんだその雑な交際宣言。でも、まぁお互い好き同士なんだし、付き合いしかないだろ……」

「じ、じゃあ今からアタシたちは恋人……」

「ま、まぁいいんじゃね」

 

 そんな流れで、長年の片想いの割にはあっさり恋人になった。

 

 ふと、由里香が律也のところにきた。

 顔はそっぽを向いているものの、律也のシャツを控えめに握り、

 

「こ、これからは画面越しじゃなくて本物で大量のティッシュ生み出せるから……良かったじゃん」

「っ!?」

 

 思いもよらぬ言葉に律也は顔を赤くし、固まる。

 だが、由里香の肩を掴み。

 

「……律也?」

「本物だけじゃ物足りない。その、次は由里香のカラダで……」

 

 そう言いかけた時、律也の顔に枕が飛んできた。投げたのはもちろん由里香。

 

「やっぱりアンタって変態っ!! エッチなことしか考えてないんだ! バカっ! 変態!」

「それはダメなのかよ! 大体お前から誘ってきたんだろっ!!」

「別にいいけど、準備とムードってものがあるでしょうが!」

「誰も今すぐやるとは言ってないだろうが!」

 

 ぎゃあぎゃあと言い合う。

 いつもの2人だ。

 

「絶対幸せにしなさいよね! この変態っ」

「上等だおらっ!」

 

 今日の2人は今までで一番楽しそうだ。

 

 ゴミ箱に大量とティッシュという、絶望的な朝から恋人になれたのは………お互いを信頼し、長年片想いだった幼馴染だからこそ……かもしれない。

 

 

 

             

 




これにて完結!!
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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