麻「この国の命も、もう永くは無いかもしれないな」
永「麻生さんまたですかぁ…?縁起でもねェこと言わんで下さいよぉ……」
麻「仕方が無いだろう?あの時、我が国のお偉いさん方が日本の荒廃台地を核実験施設として使用させろと他国に強要された時に、許可しなかったら……今頃日本は放射能で汚染し尽くされてはいない」
永「まあまあ、落ち着いてくだせェや。その件については、少し裏が有るようでさァ……。今からそれを打開出来るかもしれない可能性が有る場所へ行くんでしょう?我々!と言っても僕ら2人だけですがね……」
裏世界の科学者である麻生和原と、情報屋である永松一は、改造クルーザーで海を渡り、ある場所に向かいながらそんな事を話していた。彼等の向かう先は、富士野島。
放射能汚染が唯一確認されていない、無人島である。
──西暦2945年、国の政治は時を重ねる事に腐り果て、日本の台地は核実験場として扱う様に強要された。
その結果、日本の本土の殆どが放射能で汚染され、国民達は防護服で生活させられる事を強いられていた。
緑は枯れ、食物は汚染され、何もかもが破滅の一途を辿ることが決まったような環境だった。
この絶望的な状況を何とかする為に立ち上がったのが、麻生と永松である。
2人はそれぞれ裏社会で生きており、麻生は放射能を一定時間無効化出来る薬液を調合出来る程の天才であり、永松は政治の闇なら腐るほど知っている凄腕の情報屋である。
2人は昔知り合い、それ以降情報の交換や、飲み仲間として過ごして来た。
だが、ある飲みの席で永松が話したある事がキッカケで、麻生はある行動を起こす事となる。
永「そう言えば、あんさんが絶対興味持つ情報があるんだが、聞きたいですかな?」
麻「それが放射線除去か、国家転覆に関する事ならな」
永「あらまァ……全て当てられちまいましたな。その通りでさァ。僕が独自で調べたんですがね、── 富士野島って知ってますかい?」
麻「知らない名前の島だな、その島がどうかしたのか?」
永「その島だけが、何〜故か放射線汚染が確認されて無いらしいんですわ。あ、コレは国家機密でさァ、この情報はあんさん以外に売るとしたら高く付きますわ」
麻「何?本当なのか?その事実というのは」
永「僕は政治の裏側の闇は、全て知っているもんでさぁ、コレもその内の一つに過ぎませんぜ」
麻「何故其れを早く言ってくれなかった?知っていれば今頃……」
永「言ったでしょう?この情報は国家機密だって。まぁ手に入れるには苦労したんでさァ、分かってくださいな」
麻「……ああ、すまない。情報の提示、感謝する。何時も助けられてばかりだ。」
永「あんさんとは長い付き合いでさぁ、何時でも頼ってくださいな」
(2ヶ月後)
麻「そろそろ到着だ。永松、お前の情報を当てにさせてもらうぞ。」
永「了解でさァ、何時でも頼ってくださいな」
麻「これで国家転覆が起これば良いがな……」
2人は目的地である富士野島に上陸し、その砂浜に足を踏み入れた。
目の前にあるのは、大きな森林。
日本の本土では二度と見れないと思っていた物がこの島にあるということは、放射能汚染が無い証拠である。
2人は予め持ってきたバックパックを背負い、その大きな森林に向かって歩き出そうとした時、麻生の頭にある考えが過ぎり、立ち止まった。
永「どうしたんですかい?麻生さん」
麻「少し調査させてくれ。分かっている事だが、ここの島には放射能汚染が確認されていない。その原因がここの大気なのか、はたまた第三者の仕業なのかを確かめたい。」
そう言うと、彼は一度改造クルーザーに戻り、四角い箱を持ち出してきた。
永松はその箱を不思議に思い、麻生に尋ねてみることにした。
永「なんですかい?その箱は。中に何か入ってそうでさァ……」
麻「昔2人の科学者を亡き者にした、『悪魔の核』の小型化に成功した者だ。つまり、デーモン・コアだな。これで調査をする。勿論、細心の注意を払ってな」
デーモン・コア……嘗て2人の科学者、ハリー・ダリアンとルイス・スローティンを死に追いやった、原子爆弾に入れられるはずだったプルトニウムの塊。
それを何処から買い取ったのか、はたまたどの様に製造して小型化に成功したのかは分からないが、永松はかなり驚いていた。
永「僕の知らん間にそんな代物を……あんさんやっぱり凄い科学者ですわな……」
感激する永松を他所に、麻生は箱を地面に置き、バックパックから耐放射能用の防護服を2着取り出し、その1着を永松に渡した。
永「念の為って事で良いですかい?」
麻「嗚呼、万が一に備えてな」
防護服を来た麻生は、しゃがみこんで地面に置いた箱のロックを外し、蓋を開けてデーモン・コアを取り出そうとした。
──瞬間、森林の方向から鳥達が一斉に飛び立ち、空へと逃げていった。
鳥達の鳴き声や羽ばたく音に混じって、何か別の音が微かに聞こえて来た。
永「何や…!?何が起こってるんでさァ!?待てよ…………何か地鳴りの様な音がしますぜ!麻生さん!」
麻「いや……コレは地鳴りじゃない……。足音だ」
永「はあ!?何ですと?!」
ズズン ズズン ズズンとその大きな足音は段々と2人に近付いていく。
音が近づくに連れ、身体が震えるような地響きが断続的に起こり始めた。
その地響きと足音が肌で感じられる程になった時、木々がザワザワと大きな音を立てる。
何か、巨大な生き物が此方に近づいて来ているとしか言いようが無い状況になっている。
永「何か……何か来そうでっせ!?」
麻「嗚呼!早く隠れろ!!」
2人は近くにあった大きな岩の影に突っ走り、それぞれスライディングで滑り込んで隠れた。
森林の奥から巨大な身体をした、
何かが出て来た。
その姿は巨大な肉食恐竜の様な姿で、見た所の大きさは全高6m、身体は灰色、白い顔には、6つの黄色い眼と白い2本の角。
直立二足歩行をしながら、砂浜の周りを地響きを轟かせながら歩いていた。
その異様な姿を見た2人は、息を飲んだ。
永「何や⋯?あのバケモンみたいな、恐竜みたいな奴ァ⋯⋯」
麻「お前も知らないとは、世界は広いと言う事だな」
だが、麻生は此処で重大なミスを犯してしまったことに気づいた。
あの時必死こいて岩陰に隠れようとした時に、ほっぽり出して置いてきてしまったのだろう。
麻「⋯⋯まずい…!デーモンコアを置いて来てしまった……!」
永「マジですかいな……!?」
to be continued