ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
実際に目の当たりにしたポケモン同士の戦闘。
手に汗握る激しい攻防に興奮したものだが、もし自分に対してポケモンが牙を剝いたら。。と考えたらゾッとする。
人とポケモンには戦闘力に大きな差がある。
そんなポケモンが人の指示に従うということに俺は疑問を持っていた。
都市伝説的な話だとモンスターボールには洗脳効果がついていて、それで言うことを聞くようにしているという非人道的なものもあるが、実際はどうなのか。
「そもそもこの地球の生体系の頂点にいる生き物はポケモンじゃと思っている」
「人間よりもポケモンの方が上位の存在だと?」
「ポケモンたちが本気で人間を敵と見なし、一斉に襲ってでも来られたら、人間など簡単に滅ぼされる」
それは同感だ。
「だがポケモンがそれをしないのはポケモンがもつある性質が関連していると言われとる。
ときに君はポケモンバトルが好きか?」
大きく頷く。
「わしらがバトルが好きなように、基本的にポケモンは戦うことが好きなんじゃ。戦って、強くなって、勝利することが大好きな生き物なんじゃな。
もちろん、例外もおるがね。これは大部分のポケモンに当てはまる」
「俺もバトルが好きだぜ!」
ヒメグマがファイティングポーズを取り、元気よく言う。
「そして、ポケモンたちは本能的に知っておるんじゃ。人と一緒にいることでより強くなれるとな。
人とともにトレーニングをしたほうが野生で戦うよりも戦闘の経験値も多く積めるし、人が編み出した技マシンを使用すれば新しい技を習得し、より強くなれる」
ポケモンは人との長い歴史の関わり合いの中で、学習していったということか。
そしてそれが本能に刻まれていっている。
「では、メガシンカやテラスタルというのは一体?」
「おー、よく知っておるの。
ポケモンと人との絆が深まることで限界以上の更なる力を発揮する──そう、それがメガシンカやZ技、ダイマックス、テラスタルといった現象じゃな」
ポケモンは本能的に戦うことが好きで、より強くなることを臨んでいる。
そして、より強くなるためには人間という存在が必要だと理解している彼らは人と一緒にいることを選んだ、そういうことか。
「まぁ、他にも色々説はあるが、こうしてポケモンたちはいつもわしらの側にいてくれるし、わしらの生活もポケモンとともにある。ポケモンがおらん生活などもう考えられん」
この世界に来て数ヶ月だが、急にこの世界からポケモンが消えたなら、全人類は右腕と左足を同時に失うくらいの痛手と悲しみを感じることになるのは間違いない気がする。
実に興味深い話が聞けた。
さて、せっかくあのオーキド博士と会話できるチャンスなのだ。
この機会に聞きたいことをどんどんぶつけてみよう。
「博士。モンスターボールとはどういう道具なのか、改めて教えて頂いてもよろしいでしょうか」
「ポケモンの生物的な特徴としてピンチになると小さくなるというものは流石に知っているじゃろ?」
タマムシ大学のニシノモリ教授がオコリザルの『怒り研究』なるよくわからん研究していたところ、投薬量を誤り、オコリザルを衰弱させ、その結果博士の老眼鏡入れに入るくらい小さくなったというあれか。
いくら朦朧したじいさんとは言え、研究者としてはあるまじきミスだよなと思う。
「そう。ポケモンは元来ピンチになると小さくなる性質をもつ。そこを利用したポケモン捕獲用の道具がモンスターボールじゃ。
モンスターボールがポケモンに当たると特殊な電波でポケモンの小さくなる反応を刺激し、半強制的にポケモンを小さくさせることでボールに閉じ込めることができる」
すごい装置だな。
「ポケモンは小さくなると基本的には戦闘意欲を失い、休眠体制を取る。何故なら小さくなるということは本来瀕死状態になり、生命維持の為の最終手段のため、反射的に行っている行為だからの。小さくさせることによってポケモンを大人しくさせ、捕獲しやすくしとるわけじゃ」
「なるほど。仕組みはよく分かりました。
ですが、その理屈だと捕まえたい放題な気もするのですが」
「そうじゃな。じゃが、実際問題モンスターボールはそんなに万能な道具ではないんじゃ。ポケモンが元気な状態ならモンスターボールから自分の意志の出ることは可能じゃ」
「ほらよーっと」
話を聞いていたヒメグマが勝手にボールに戻り、そして勝手にボールから出てきた。
「どーだ! バナナ! 出ようと思えばいつだってこうやって出られるんだぜ」
「トレーナーの力量が低く、ポケモンが言うことを効かない、逃げ出すということもよく聞く話じゃな。
ポケモンをボールで捕まえることと言うことを聞くようになることは同義ではないのじゃ」
つまりだ。
逃げ出さずに一緒にいてくれるポケモンたちはボールに捕まえられて逃げ出せないのではなく、自分の意志でボールの中にいるということなのか?
だが、なぜ?
「その理由が先ほど紹介説明したポケモンの戦い好きの性質に拠るものだと言われている」
「どういうことです?」
「自分より強いポケモンを使うトレーナーとならポケモンはそのトレーナーと一緒にいたいと思うわけじゃ」
「そのトレーナーとならさらなる高みを目指せるから?」
うむ、と頷く博士。
おー、感心するような呆れるような。
まるでどこかの格ゲーのキャラか戦闘狂の宇宙人のような価値観を持っているというわけだな。
それだけ強さに純粋だからこそ、ポケモンは人と一緒に戦ってくれるということなのだろう。
「ボールの性能というのはこの強制的にポケモンを小さくさせておくエネルギーの差であったり、ボールの中の居心地の良さじゃな。
高性能なボールほどポケモンをボール内に留めておく力が強い。
じゃが、全く弱っていない野生のポケモンの場合は閉じ込めてはおけん。戦う前から圧倒的な力の差を見せつければ弱らせずとも捕獲することはできるがの」
子供の頃からただ知識として知っていたポケモンは弱らせた方が捕まえやすいということの意味が本当の意味で分かった気がする。
「博士。貴重なお話本当にありがとうございました」
オーキド博士。
ゲームやアニメで散々見てきた博士ではあるが、実際にこうやって会話ができて、本当に良かった。
「ポケモンは好戦的な生き物ではあるが、非常に純粋で頼り甲斐のあるパートナーでもある。一方で超常的な戦闘力で時に人の命を奪うこともあり、その力を悪用する人間もいる」
「さて、バナナ。
君はこのヒメグマ、そしてゼニガメたちと一緒にどんな冒険を繰り広げるのか。楽しみにしておるぞ」
俺は博士と握手をして、オーキド研究所を出ていった。
「図鑑もゼニガメもゲット! 上手く行ったな、バナナ」
そうだな。
ポケモントレーナーしての最初の一歩を踏み出せたというところか。
「んで、このあとどーすんの?」
ここでは仮に強いポケモンを運良くモンスターボールで捕獲することができても、トレーナーの実力がないとあっという間に逃げられるシビアな世界観になっております