ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
ジムバトルは道場破りに近い。
挑戦者のジム挑戦は特にジム側に連絡せず、ジムが空いているなら基本的にいつでも行うことができる。
流れとしては受付後にジムトレーナー2人と連戦で対戦を行う。
その連戦に勝利することで晴れて、ジムリーダーとのバトル挑戦権を得られるのである。
ジムリーダーに勝利すれば勝利の証であるジムバッジと200ポイントのバトルポイントを獲得することができ、ポケモンリーグ出場資格は500ポイントなので、ぐっと目標に近づくことができる。
バトル方式はみせあいなしの3対3のシングルバトル。
ただし、挑戦者の手待ちが2体の場合はジムトレーナー側もそれに合わせる必要がある。
(最低2体)
受付後は控室で待機し、しばらくしたらバトル場に移動することになるが、バトルはジムトレーナーの練習場の一角をそのまま借りる形だ。
ジムリーダー戦は専用スタジアムで別日に観客を入れるので、ジムトレーナー戦はジムリーダー戦のような華やかさはない。
しかも、このニビジムは無骨で屈強な男達が多いジムということもあり、殺気の満ちた視線に包まれている気分だ。
案内されたバトル場に立つとそこは俺と同い年くらいの少年が待っていた。
見た目はゲームの短パン小僧である。
「今回の挑戦者は子供か。あんまり一方的なバトルだとつまらないけど大丈夫か?」
中々に生意気そうなガキだ。
「俺が子供なら君も子供だと思うけどな」
お前もガキだし、更に言うならクソガキと呼んでやってもいいけどな、と本当は言ってやりたかったが、ぐっと我慢する。
俺は大人だからね。
だが、油断はできない。
仮にもトキワシティのジムトレーナーだったから分かるが、ジムトレーナー戦はジム側から見ればジムのプライドとメンツをかけた戦いでもある。
多くの挑戦者にジムリーダーが敗れ、バッジを取られてしまうことはジムそのものの価値を下げることになるし、ジムトレーナーとしてはジムリーダーへの挑戦権を与えること自体が屈辱となる。
そう考えるとまるっきりの素人を代表者として出すのはおかしいことなので、この子供もニビジムの中では実力者だと予想できる。
「バナナ! やってやろうぜ」
ヒメグマも気合十分だ。
俺にとっては初めてのジム戦である。
しっかりとトレーニングは積んだし、このジムへの対策も整えてきた。
やるしかない。
バトル場では短パン小僧と麦わらの虫取り少年が向き合っていて、中々にシュールだが、ここは真剣勝負だ。
「挑戦者 トキワシティのバナナとジムトレーナー キヨシの公式試合を始めます! バトルスタート!!」
「タケシさんに挑戦なんて10000光年はやいんだよ! いけっ! ゴローン!」
「頼むぞ! ゼニガメ!」
「おっしゃああ! オイラやったるぞー」
予想通り、相手は当然の岩タイプ。
タイプ相性は抜群。
こちらが有利だ。
ならばこちらから仕掛ける!
「ゼニガメ! 全力の『みずてっぽう!』」
まずはここで相手の出方を見る。
「おっらあああああああ!!」
大きく息を吸い込み、肺をパンパンにしてからの──全力の水の弾丸!
短パン小僧のキヨシはそれを見て、
「ゴローン! かわせ!」
ゴローンに回避を指示した。
ゴローンは手足を丸め、体をボールのようにして回避する。
キヨシから見て、今のみずてっぽうは避けたほうが良いと判断した。
これが分かったことは重要。
あとは基本的にゼニガメに任せよう。
「ゼニガメ! 作戦通り頼む」
「あいあいさー」
ゼニガメは自身の水エネルギーを空中に放出。
雨雲を発生させる。
技、『あまごい』である。
だが、この技には隙が生まれる。
この隙を相手も見逃さない。
ゴローンは転がりながら、ゼニガメに突進してくる。
ゴローンは普通に歩く機動性は高くないが、このようにころがるという手段を用いることでかなりの高い機動性を得ることができる。
「うぉ!? 早い!」
雨雲を発生させていたゼニガメにゴローンの『たいあたり』が炸裂する。
お腹の甲羅で受けた為、そこまでのダメージではないと思うが、追撃されるのはよくないな。
ゴローンは回転の速度を上げ、更にゼニガメに追い打ちをかける。
回転しながら正確に攻撃できているところはよく鍛えられているというところか。
だが、ゼニガメも機動性では負けていない。
甲羅に閉じこもり、高速回転。
更に、手足の穴から水を放出することで、この回転はより加速する。
ゴローンのころがりと比較すると、視界がかなり悪くなっているし、回転しているため、動きを制御することは困難だが、直線の動きではなく、上下左右と変則的に動くことで相手を翻弄することが可能である。
ゼニガメは回転し、更に牽制の技を繰り出しながらゴローンとの距離をとる。
「くらえ! 『あわ』ー」
シャボン玉のような泡を多数口から出す。
「ゴローン! 構わず追撃しろ!」
『あわ』攻撃をもろともせず、一直線にゼニガメとの距離を詰めてくる。
「うっそ!効果抜群の技なのに!」
あわの壁を突き破り、ゴローンが突進してくる。
「だけどな! お前の動きは真っ直ぐで単調なのが弱点だ!」
そう言うとゼニガメは地面に向かって『みずてっぽう』!
その水の威力を利用し、大ジャンプ。
上空に逃げる。
「ふん。舐められたもんだな。構うな、ゴローン。そのまま追撃!!」
なんとゴローンは地面に少しめり込むと、足を踏ん張り、直角に飛び上がる。
重く、岩石のような体にも関わらず、まるでピンポン玉のような弾力性すら感じる動きだ。
流石はニビジムの精鋭トレーナーということはある。
空中に逃げたつもりだが、逆に空中では身動きがとれない。
だがしかしだ。
「ゴローン!この勝負、オイラの勝ちだぞ」
「???」
「雨雲が完成した」
「しまった!」
キヨシが今頃ゴローンの置かれている状況に気づいたようだが、もう遅い。
「フィールドの天候はあめ! オイラの水技の威力は上がる。
そして、ここは空中! このままだとオイラはキミのたいあたりを直撃するけど──それはキミも一緒だろ?!
渾身の『みずてっぽう』を叩き込む!!」
「やれー! ゼニガメ!!」
ヒメグマの叫びと同時に空中からみずてっぽうを滝のように叩きつける。
ゴローンは避けるすべはない。
「いや! ゴローンそのままゼニガメの攻撃を突き破って突進しろ!!」
キヨシが叫ぶ!
ゼニガメの攻撃とゴローンの攻撃がぶつかり合う。
天候あめによる水技の強化、あわによる牽制による蓄積ダメージ。
「ゼニガメ! 負けるな!!」
俺の声に呼応してゼニガメの技の威力が増す。
そのまま攻撃を押し返し、水流の一撃がゴローンを地面に打ち付ける!
どうだ?
立ち昇る水煙が晴れ、ゴローンが姿を見える。
あれを受けて普通立ち上がるか⁉
「大丈夫だよ、バナナ」
ヒメグマが静かに言った。
ゴローンがゆっくりと倒れ込む。
審判が近寄り、力強く宣言した。
「ゴローン戦闘不能!!」
ゼニガメの勝利が確定した。