ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
ゼニガメがゴローンに勝利した。
ついにジムバトルで1体相手のポケモンを倒すことができたが、勝負はもう一体倒さないと決まらない。
「まさかゴローンがやられるとはな。悪かったな、少し舐めてたよ」
短パン小僧のキヨシは先程まで浮かべていた薄ら笑いを引っ込める。
ジム内の雰囲気もやや変わった。
観戦モードだったジムトレーナーたちも真剣な眼差しでこちらを見ている。
「だが、勝負は終わってないぜ! いけ! サイホーン!」
キヨシが次に出したのはサイホーン。
しかも、2メートルはあるんじゃないかと思うほどの巨大なサイホーンだ。
図鑑を起動する。
頭は 悪いが 力が 強く 高層ビルも 体当たりで コナゴナに 粉砕する
中々に酷い言われようだが、やはりあのツノとパワーには警戒した方がいいな。
「おーし! オイラはまだまだやるぞー」
ゼニガメは気合十分。タイプ相性は引き続き良い。
このまま戦ってもらうか?
「いーや! そろそろ俺にやらせてくれ」
ヒメグマが伸びをしながら、勝手に戦闘準備を始める。
「いいだろ?バナナ、ゼニガメ」
こういうモードになったときのヒメグマは面倒だ。
言うことを聞かない。
だけど、頼もしくもある。
「わかった。戻れ! ゼニガメ。 ナイスバトルだった!」
ゼニガメをボールに戻し、ヒメグマが場に立つ。
ヒメグマとサイホーンが向かい合うとその体格の違いがより際立つ。
大人と子供というレベルではない。
「全身に細かいキズがたくさん付いてるなぁ。歴戦の猛者? って感じだ。こうやって対面しててもピリピリとしたプレッシャーを感じるよ」
「どうだ? 勝負をしてみないか。お前の全力の突進と俺のパンチがどっちが強いか、な」
「グオォ!!」
ヒメグマの言葉にサイホーンが怒号を上げる。
ふざけるなと言いたいのだろう。
「別にふざけてねーよ。負ける気はしないけどな」
「随分、ペラペラ喋る変なポケモンだな。一応、忠告してやるが、俺のサイホーンはおじいちゃんから譲り受けためちゃくちゃ強いポケモンだ。この前もジム戦でギャラドスをしとめてやったよ」
キヨシが得意げに語る。
「そうか。それはすげーな。だが、お前には俺がギャラドスに見えているのか?」
「あ?」
「やられたのはそのギャラドスであって俺じゃねー」
「このチビが。生意気言いやがって…!
いいだろう。サイホーン! 相手のリクエスト通り、お前のパワーを見せてやれ」
サイホーンはゆったりと助走をつけ、走り出す。
そして、一気に加速!
「くるぞ! ヒメグマ!」
「ああ! 分かってる!」
この状況は想定してきた。
準備はしてきた。
それでもやや年老いたサイホーンのただならぬ プレッシャーは凄まじい。
不安がないわけではない。
だが、ヒメグマならやってくれるはずだ。
列車のような重量感のある塊がヒメグマの眼前に迫る。
ヒメグマはゆっくりと腰を落とし、右半身を後方に向け、迎撃の体制を整えた。
「必殺!クマクマ──」
サイホーンの巨大な角を身体を翻し、寸前のところで回避する。
そして。
「パンチ!!」
ヒメグマの拳はサイホーンの顎に直撃する。
そして、サイホーンの重い巨体がスローモーションのように宙に舞い、そのまま重力に逆らえず激しく音を立て落下した。
「ば、馬鹿な!? 何が起こった?」
動かないサイホーンを見て、動揺するキヨシ。
周囲のジムトレーナーたちもザワザワとして、状況の把握がでにていない。
「悪いな、サイホーン。お前のパワーを倍にしてお返しさせてもらったよ」
これこそが俺とヒメグマが編み出した必殺技、クマクマパンチである。
ゲームの効果のように説明すると、
カウンター×イカサマ×ふいうちって感じの技だろうか。
相手の技の威力を倍にして、先制技としてぶつけるというチート技だ。
強力な技ではあるが、技の成功条件は結構シビアなリスキーな技でもある。
「サイホーン戦闘不能!! よってこの勝負、トキワシティのバナナの勝ち!」
「「よっしゃあああああ!」」
ヒメグマとハイタッチを交わす。
遂に念願であったジムトレーナー戦での1勝である。
ジムトレーナー戦の勝利ということで俺のランクもランクDにアップしたはずだ。
「な、なんでだ。どうして俺が」
まだ、呆然と立ち尽くし、現実が見えていないキヨシ。
その時。
パチパチパチパチ。
乾いた拍手の音が響く。
「素晴らしい戦いだった」
俺とキヨシの戦いを囲っていた人々の波が割れ、一人の男が現れた。
「ようこそ、挑戦者。俺がニビジム、ジムリーダーのタケシだ」
目の前にいる男はアニメで見た女に弱く、料理が得意で、サトシの良い理解者ポジの弱い糸目のお兄さんではなく、筋肉質で、厳しい顔つきをした迫力のある男だった。
「キヨシ。よく戦ったな」
「タケシさん・・・。すみません」
「確かにお前のポケモンの方がレベルは数段上だろう。だが、この挑戦者はジム攻略のためにしっかりと準備をし、作戦をたて、バトルに臨んでいた。単調に攻めていたお前はバナナの思う壺だったはずだ。負けるべくして負けたな」
タケシはそうキヨシに告げると今度は俺に顔を向ける。
「キヨシも未来ある強いトレーナーだったが、キミのほうが一枚上手だったな。サイホーンやゴローンの特徴をよく理解したバトル運びだった。
さて、次のトレーナーは正真正銘、ニビジムのNo.2が相手をしよう」
そう言うと背後からのっそりと巨漢の山男が現れる。
「先代ジムリーダーであり、俺の親父のミキオだ」
親父?
横に大きく、ヒゲモジャの初老の男だが、言われてみれば確かに目元はタケシによく似ている。
先代ジムリーダーということは疑いもなく相当な実力者だ。
勝てるか?
ジムチャレンジは2勝しなければ、ジムリーダーチャレンジ権を得ることはできない。
つまり俺はキヨシに勝ってはいるが、このミキオにも勝利しなければジムリーダーであるタケシと戦うことはできない。
ん?
腰元のモンスターボールからゼニガメが出てくる。
「やってやろうよ、バナナ! オイラは準備万端だぜぃ」
先発はヒメグマかゼニガメか。
今の戦いはミキオも見ていたはず。
そうなると先程のカウンター待ちのくまくまパンチを当てるのは難しいかもしれない。
確かにゼニガメの機動性を活かした戦いをした方が良いかもしれないな。
「分かった。頼んだぞ、ゼニガメ」
「両者 バトル場へ!
ではニビジムチャレンジ2回戦。トキワシティのバナナ対ジムトレーナー ミキオ! バトルスタート!」