ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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VSニビジム③

 先代ニビジムジムリーダーのミキオとの戦い。

 

 2対2のシングルバトル。

 

 俺の先発はゼニガメ。

 対するミキオの繰り出したポケモンは──

 

「いけ、イワーク!」

 

 大きな岩蛇。

 

 言葉にするとそんなもんだが、目の前にいる10メートル近い巨大な生き物を目の前にすると言葉を失う。

 

 ゲームでは攻撃力ポッポと嘲笑されているが、そんなはずがない。

 

 大きさ、重さはそのままパワーに繋がる。

 

 図鑑を起動する。

 

 イワークが 地中を 掘り進むと 地鳴りが 聞こえ 地面が 揺れる。 移動速度は 時速80キロ

 

 この巨大に時速80キロ・・・普通に化け物だ。

 

 イワークの発するプレッシャーにゼニガメもやや怖気づいている。

 

「悪いが少年。そろそろ腹が減ってきてな。すぐに終わらせてもらうよ。

イワーク!」

 

グオオオオオオオオオオオ!

 

 地鳴りのような咆哮を上げると巨体を素早く動かし、長い体を渦巻かせ、円柱のように形作ることで出口を塞ぐ。

 

 ゼニガメは完全に閉じ込められた形だ。

 

「ゼニガメ! 上だ! イワークの体を駆け登って脱出しろ!」

 

「締め付けろ。イワーク」

 

 イワークは体を絞り、内部にいるゼニガメを締め上げる。

 

「あっ!!」

 

 バトルが始まって10数秒の出来事である。

 

 言葉が出ない。

 

 更に10秒くらい経過しただろうか。

 

 イワークがゆっくりと体を解いていくと、そこには動かなくなったゼニガメがいた。

 

「ゼニガメ!」

 

 慌てて駆け寄り様子を見る。

 

 目を回しているだけで生きている。

 良かった!

 ゆっくり休んでもらおう。

 

「判断が遅かったな。巻き付かれた時点で全方位に向け、効果抜群の水技を指示するべきだった。そうすれば流石の親父のイワークも隙が生まれたかもしれない」

 

 タケシの言う通りだ。

 

 イワークの迫力に飲まれ、俺もゼニガメも判断が遅れた。

 

「まだやるかね?」

 

 ミキオが問いかける。

 

 その後には『もうやめておけ』という言葉を続けたいのだろう。

 

「バカ言ってんじゃねーよ。まだ俺がいるだろ」

 

 ヒメグマがバトル場に出る。

 

 全く臆した様子はない。

 大したやつだよ。

 

「バナナ。諦めんなよ。トレーナーが諦めたら終わりだ」

 

 ・・・そうだな。

 全くこれではどちらがトレーナーか分からない。

 

 バトル場ではイワークとヒメグマが向かい合う。

 

 その高さを比較すれば約15倍。

 圧倒的な差である。

 

 だが、ヒメグマは2メートルはあるサイホーンを打ち破っている。

 小さいからと言って負けるようなやつじゃない。

 

 

 先手を打つのはヒメグマ。

 素早い動きで一気にイワークの間合いを詰めるとそのままの勢いでイワークの岩の体を駆け登る。

 

「早い!」

 

 これにはミキオも驚く。

 

「手足がなくちゃあ、自分の体を登ってくるやつに対して何もできねーだろ?!」

 

 あっという間にイワークの眼前までやってきたヒメグマは反撃の隙を与えず、攻撃に転ずる。

 

「うおおおおおおおおお!!!

 

くまくまくまくまくまくまくまくまくまくま!」

 

 ジョジョのオラオララッシュのような猛烈なラッシュ攻撃。

 

 10秒。。20秒と激しいパンチのラッシュを浴びせる。

 

「くま・パンチ!」

 

 最後に渾身のパンチの一撃を放つ。

 

 その反動で後ろに吹き飛び、地面に尻餅をつく。

 

「……どーだ!?」

 

 イワークは少しも動かない。

 

 ヒメグマの攻撃でひんしになり、弁慶よろしく立ったまま戦闘不能になった?

 

 いや、分かっている。

 そんなはずはない。

 

「うむ、満足か?」

 

 ミキオの声が全てを物語っていた。

 そう、イワークに全くダメージは通ってはいなかった。

 

「マジかあ…渾身のパンチだったんだけどなぁ」

 

 拳を痛めたのかヒメグマは左手で右の拳を抑えている。

 

「やれ、イワーク。一撃と仕留めてやれ」

 

 巨大な尾が雪崩のように襲いかかる。

 

 そして──

 

「ヒメグマ! 戦闘不能! よってこの勝負、ジムトレーナーミキオの勝ち!」

 

 審判の高らかな勝利宣言が響いた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 その日の夜。

 ポケモンセンターでポケモンたちを休ませた後、俺はニビシティの外れ、オツキミ山の麓にある森の中にいた。

 

 そのままポケモンセンターに泊まっていっても良かったが、どうしてもそんな気分にはなれなかった。

 

 この場所から離れたかった。

 逃げたかった。

 

 テントを張り、その中でヒメグマとゼニガメと夕飯を食べながら反省会である。

 

「厳しいとは分かっちゃいたが、もしかしたら勝てるかもなぁって気もしてた。だけど、そんなに甘くはねぇな」

 

 ポケモンフードをポリポリ食べながら、いつになくしおらしいヒメグマ。

 

「・・・・・・」

 

 お調子者のゼニガメは無言のこの有様である。

 

 いや、ポケモンたちは悪くない。

 全力を尽くしてくれた。

 

 ただただ、俺の準備不足。

 反省すべきは俺である。

 

 もっとレベルを上げて勝負するべきだった。

 格闘技を習得しておくべきだった。

 今になって色々と反省点が出てくる。

 

 敗因は俺。

 俺が弱かった。

 

 

ソウ オマエガヨワカッタ

 

 

 身の毛がよだつ殺気と瞬間的な恐怖により体が固まる。

 

 この声は・・・!!

 

 「いやぁ〜、マズいなぁ。 ヤバいのが外にいるぞ」

 

 ヒメグマは笑みを浮かべてはいるが、冷や汗をかいている。

 笑うしかない状況ということだろう。

 

モウスコシハヤルトオモッタガ ツマラナイ

 

 誰だ?

 

 いや、俺はこいつを知っている。。

 

「くまぁああああああああ」

 

「でぃやああああああああ」

 

 俺よりも先にそいつの存在に勘づいたヒメグマとゼニガメが俺の背後に攻撃を放つ。

 

 ポケモンたちの攻撃により、俺の小さなテントが半壊し、周囲は外の闇夜に包まれる。

 

「ヒメグマ!手応えあったかな?」

 

「いや、当たった感触はしねーな」

 

 ランタンを手に周囲を観察する。

 それらしき敵は見当たらない。

 

 

キタイハズレ。ツギノニンギンヲサガスカ

 

 

 間違いない。

 この声は俺を殺し、このポケモン世界に引き摺り込んだあの影の化物だ。

 

 まだ、姿を見せない。

 だが、確実に側にいるのが変わらぬ押し潰されそうなプレッシャーによって感じ取れる。

 

「ば、バナナ! なんか影が変だよ」

 

 ゼニガメがランタンで出来た俺の影を指さし叫ぶ。

 

 俺の影は音もなく巨大に広がり、そして10メートルくらいはあろうかという怪物に姿を変えた。

 

「お前は俺を殺したやつだな。どういうことだ? まさかまた俺を殺しにきたなんて冗談は言わないよな?」

 

 全身の体の震えは止まらないが、精一杯虚勢を張り、化物を睨みつける。

 

 

ソウダ オマエハココデシネ

 

 影の化物はアンバランスに長い腕を振り回し、一直線に俺を狙ってくる。

 

 殺意のこもった一撃が襲いかかるが、体は動かない。

 

 あ、死ぬかも。

 

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