ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
黒い怪物の凶刃が迫る。
「バナナ!!」
影の化物の攻撃を庇うべく、ヒメグマが間に入るが、2人とも大きく吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばされた痛み、落下の痛み、そして影に触れられた影響なのか痺れるような、激しい痛みが全身を襲う。
「この野郎ぉお!!」
「まて! ゼニガメ!!」
俺の静止を聞かず、仲間を攻撃された怒りで頭に血が上ったゼニガメが『みずてっぽう』を放つ。
影の化物は翼のような影を大きく広げると、その翼を盾のようにして攻撃を受ける。
更に一瞬のうちに移動するとゼニガメをゴミを払うかのごとく、軽く翼ではじき飛ばした。
その勢いで30メートルほど跳躍し、太い木の幹にぶつかり、そのまま動かなくなってしまった。
俺は急いでボールのレーザーをゼニガメに放ち、ボールに戻す。
そして、次にヒメグマにもボールレーザーを向けるが、ヒメグマはボールに戻らない。
どういうつもりだ?
「おいおい、そりゃあ、こっちの台詞だろ。
バナナこそ俺とゼニガメをボールに戻してどうするつもりだ?」
「・・・そのほうがお前らは安心だろ」
「じゃあ、お前はどうなる? あの化物と誰が戦うんだ?」
ヒメグマとこんなところで言い争っている場合ではない。
このままでは全滅する。
下手したら全員こいつに殺される。
「いいから戻るんだ! ヒメグマ!!」
「いいかバナナ。 危険な時にトレーナーを置いて逃げるようなポケモンはいないんだぜ。
どんな時だって戦うんだ、一緒にな」
駄目だ、ヒメグマ。
これはトレーナー戦ではない。
野生のポケモンとの戦いでもない。
相手は得体のしれない怪物だ。
化物だ!
勝てるはずがない。
ボールの中ならもしかしたら助かるかもしれないんだ!
「よいしょっと!」
ヒメグマはゆっくり立ち上がると、影の怪物を睨みつける。
そして、真っ直ぐに全身全霊の力を込めて突撃していく。
「うおぉおおおおおおおおおおおお!!!」
アワレナ ポケモンダ
影の怪物は更に巨大化し翼を大きく広げる。
闇夜を覆うその悪夢のような姿は恐ろしかったが、神秘的で、神々しさすら感じた。
ヒメグマと影の怪物がぶつかる──その瞬間。
赤い炎の一閃が闇を切り裂いた。
その一撃は影の怪物を包み込み、大炎上を引き起こす。
背後に気配を感じ、振り返る。
そこにいたのは、赤いツバのついたキャップに黒髪の少年と巨大なリザードン。
「・・・レッド?」
「なんだ、僕のこと知ってるの?」
ポケモンをやっていて知らないはずがないだろう。
ポケモンの初代主人公、レッド。
11歳にしてポケモンマフィアであるロケット団を壊滅させ、そのままの勢いでポケモンリーグを制覇したという伝説のトレーナーだ。
「さて、何だろうね。あのポケモンは。
いや、果たしてポケモンなのか」
炎に焼かれていた影の化物だが、体から発せられる影の蒸気のようなものが、ブワっと膨張し、炎を呑み込むことで鎮火して見せる。
「僕のリザードンの炎を呑み込むとは驚きだ。
炎はどこにいってしまったんだろうね」
ヨケイナマネヲスルナ コロサレタイノカ?
「まあ、目の前で人が殺されそうになっているのに助けないやつはいないだろう。
リザードン!」
「グオォオオオ!」
リザードンは翼を羽ばたかせ、高速飛行。
影の化物の頭上に行くと、
尻尾の炎を激しく燃え上がらせる。
そのまま急降下。
尻尾を影の化物に向かって振り下ろすように、宙返りをしながら攻撃を放つ。
炎の刃となった斬撃が影の化物を一刀両断する。
「す、すげぇー」
ヒメグマはその場に尻餅をつき、感嘆の言葉を絞り出すことしかできない。
「『だいもんじ!』」
そして、大技の『だいもんじ』をぶつける。
大文字型の炎の一撃が化物にぶつかり、大爆発を起こす。
だが、なんと影の怪物はすぐさま爆煙すら飲み込み、再生していく。
しばらくすると元の形に戻ってしまった。
技が効いていない?
ナニヲシテモ ムダダ
「そうかな? 僕の目にはダメージは少なからずあるように思えるけど」
・・・・・・
「まだやるのかな。多分、リザードンの最大出力なら君を消し炭にすることもできると思うけど。まぁ、この辺りを焼け野原にするのはあまり気が進まない」
イイダロウ ココハヒイテヤル
影の化物はそう言うと、顔?を俺の方に向ける。
イノチビロイシタナ コゾウ
ツギニアッタトキハ イノチガナイトオモエ
そう言うと闇夜に溶け込むように霧散してしまった。
危なかった。
死ぬところだった。
本当に命拾いした。
「さて、君もポケモンも弱っている。とりあえず僕のテントで応急処置をしよう」
レッドのテントの中でかいふくのくすりなどをもらい、なんとか俺もポケモンたちも動けるようになった。
レッドのおかげで助かったが、
そもそもどうしてこんな場所にいるのだろうか。
「そりゃあ、君に会いに来たにきまってるでしょ」
まさかのまさかの回答であった。
「グリーンやオーキド博士から面白い少年に会ったって話を聞いたからね。 ちょっと様子を見に来たのさ。 まさかあんなものと対面するとは流石に思わなかったけど。
ま、色々君にも聞きたいことはあるけど流石に今日は休みなよ。 明日、ゆっくりと話を聞かせてくれ」
確かに俺はクタクタだった。
もう夜も更け、焚き火を囲っていたが、言葉に甘えて寝袋に入り横にならせてもらう。
疲れていたのだろう。
すぐに俺は眠りについた。
どれだけ眠っていたのだろう。
数時間は寝たと思うが、遠くからの声で段々と覚醒していく。
…………バナナ
……バナナ
…バナナ
「バナナ!!」
ヒメグマの叫び声で目を覚ます。
何事だ?
必死の形相でヒメグマが俺を揺すっていた。
その背後にはレッドもいる。
「どうした?」
「どーしたもこーしたもねーよ! さっきからバナナの体からずっと煙みたいな黒いモヤモヤが出てるんだよ!」
言われて見て、初めての気づく。
確かに体から黒いモヤが絶えず出てくる。
このモヤ?はさっきの化物の影と一緒なのか?
そして、次の瞬間、突然に激しい頭痛に襲われる。
頭が割れるんじゃないかというほどの痛み。
頭痛の痛みに伴うように、体から出てくるモヤはますます激しさを増し──
ドン!
という衝撃波が俺を中心に放たれる。
ヒメグマもレッドも距離を取らずにいられない。
俺は痛みにより、立っていられず四つん這いになっていたが、自分の体の中の何かが弾けるのを感じた。
パリン
足下がガラスのように割れ、地面が崩れる。
底に広がるのは深い深い闇の底。
なすすべ無く闇の中に落ちていく。
「バナナぁあああああああ!!」
ヒメグマが崩れた闇の底に躊躇なく飛び込み、俺の手を掴む。
だが、間に合わない。
俺とヒメグマは闇の渦に飲み込まれいく。
これで第一章完!!
序章が物語のクライマックスのイメージで、そこに至るまでのストーリーをこれから舞台を各地方に移動させて繰り広げていく感じでございます。
各地方につきヒロイン1人、バナナのポケモンは1匹ずつ増える予定です。
(序章のヒロインはヒメグマです)
感想よろしくお願いします