ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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変態とくま

 お風呂で身体を洗おうとしたら、急に目の前の空間にヒビが入って、パァーンって割れたかと思ったら、中から麦わら帽子の男の子とヒメグマが現れた!

 

 え?

 

 あたし何言ってんの?!

 

 脳みその処理が追いつかず、軽くパニックになっているとどうも向こうも同じような状況らしい。

 

「えっと、えっとぉ……どうなってんだこれ!?」

 

 ヒメグマが手足をバタつかせて、混乱しているけど、それを見てあたしはもっと混乱する。  

 

「ポ、ポケモンが喋ってるぅー?」

 

「う、ううう……」

 

 麦わら帽子の男の子は両膝を付き、何やら呻いてる。

 目も虚ろだ。

 

 お風呂!

 男!

 あたし、裸!

 守ってくれるポケモンもいない!

 相手の様子もおかしい!

 

 襲われる!?

 

 こうなったら取るべき手段は1つ!

 

「きゃああああああああああああああ!」

 

 とりあえず女の子っぽく叫びつつ、

 渾身の右ストレートを男の子の左の頬に叩き込んだ。

 

「ば、バナナァァァ!」

 

 その隙に浴室から出て、タオルを手に取り身体に巻きつけると、バスルームから逃げ出した。

 

 次に床に転がっているモンスターボール6個を全て投げる。

 

「みんなお願い! 迎撃準備!!」

 

 マグマラシ、マリル、モココ、トゲチック、ヌオー、エーフィ!

 

 手持ち6匹を出して、変態がこっちに来たら一斉攻撃してやる!

 

 

「…………」

 

 相手も様子を伺っているのかバスルームから出てこない。

 ただ、扉の向こうのバスルームではさっきの男の子とヒメグマが何やら喋っている声が漏れ聞こえる。

 

 しばらくして向こうから声が聞こえてきた。

 

「えっと、お嬢ちゃん! 正直こっちも状況が掴めてないんだが、俺たちは怪しいものじゃねーんだ!」

 

 ヒメグマの声だ。

 

「どう考えても怪しいでしょ!! いきなりお風呂場に出てくるし、ヒメグマは喋るし!」

 

「それはそうかもだが……。とりあえず出ていくけどこっちに攻撃意思はねぇ! いきなり攻撃ってのだけはやめてくれ」

 

 そう言うとゆっくりと横開きのドアが開き、麦わらの男の子とヒメグマが両手をハンズアップしながらそろりそろりとした動きで警戒しながら出てきた。

 

 あたしは後方に、ポケモンたちは半円となって彼らを囲み、いつでも攻撃できる体制を取る。

 

 少年の姿を観察してみる。

 麦わら帽子に白いランニングシャツ、青の短パンを履いている。

 ルックスは悪くはないけど、別に良くもない。

 どこにでもいそうな虫とり少年だ。

 

「俺の名前はバナナ。多分、別の場所からワープしてきてこの場所に飛ばされてきた──んじゃないかって思ってる……」

 

 随分歯切れが悪い。

 ただ、嘘を言っている感じはしない。

 

「それをあたしに信じろと?」

 

「まあ、そう言われるとキツイんだが……。

そうだ! これを見てくれ」

 

 少年はそう言うとズボンからポケモン図鑑を取り出した。

 

「ポケモン図鑑?!」

 

「そうだ! オーキド博士からもらった。トキワシティジムリーダーのグリーンさんのことも知っている! 怪しいものではない」

 

「うーん」

 

 どう考えるべきか。

 確かに素性ははっきりしてそうだし、何かしらのトラブルに巻き込まれて、ここに飛ばされてきたのかもしれない。

 

 ただこれまでの経験上、そう簡単に人を信用しない方がいいことも分かっている。

 

「トゲチック。どう思う?」

 

 こういう時の判断はトゲチックに聞くのが1番良い。

 人間よりずっと信用できる。

 

「トゲトゲー」

 

 トゲチックは麦わら帽子の男の子の周りを何周か飛び回り、戻って来る。

 

「トゲー」

 

 トゲチックがニッコリと微笑む。

 麦わら帽子の男の子とヒメグマに害がないこと、本当に攻撃意志がないことを教えてくれる。

 

「トゲチックは優しい心の持ち主の前にしか姿を見せないと言われているポケモン。攻撃意思やよからぬことを考えているとすぐに敏感に察知するの」

 

 あたしはしばらく一人と一匹を睨み──

 

「うん。みんなありがとう! ボールに戻って」

 

 ポケモンたちをボールに戻した。

 

「良かったぁ! 誤解は解けたみたいだな」

 

 ヒメグマが露骨に安堵してヘラヘラ笑う。

 

「まだ早いよ! いまは君たちに攻撃意志がないって分かっただけ。

いきなりレディーの部屋に侵入したって事実は変わらないんだからね」

 

「随分とちんちくりんのレディがいたもんだな」

 

 麦わら帽子の男の子、いや、バナナがボソッと言うので睨みつけてやる。

 

「なんか言った?!」

 

「いいえ」

 

「あとさ」

 

「はい?」

 

「そろそろ着替えたいから部屋の隅にでも行っててもらえるかな」

 

 バナナとヒメグマは顔を見合わせるとすぐさま部屋の端っこに行き、壁の方を向いた。

 

 あたしはその間にバスルームで備え付きの赤いルームウェアに着替える。

 

「はい! もういいよー」

 

 バナナとヒメグマと向き合う。

 

「で? もうちょっとキミのこと教えてよ。 あたしはコトネ」

 

「俺はバナナだ」

 

「それはさっき聞いた。 キミ何歳?」

 

「えっと……10歳だな」

 

「あたし、この前11歳になったから、あたしの方が年上ね」

 

「はぁ」

 

 年上のあたしがここは主導権を握らなくちゃね。

 

「とりあえず座ってよ。話が聞きたい」

 

 バナナには部屋の中央のソファーに座ってもらい、あたしはベッドに腰掛ける。

 

「別の場所からワープしてきたって言っていたけどさ。

どこから何をしにここに来たの?」

 

「正直話すが俺も詳しいことは分かってない。 信じてもらえないと思うが、本当のことを話す」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 バナナの話は中々に荒唐無稽だった。

 

 カントー地方のニビシティ周辺で真っ黒の影の怪物に襲われ、殺されそうになったところを伝説のポケモントレーナーであるレッドに助けられて、命拾いをしたが、その夜に激しい頭痛に襲われ、気がついたら自分自身が空間にヒビを発生させ、そこにヒメグマと一緒に落ちていった。

 

 そして、気づいたら何故かここにワープしてしまった。

 

 あはは。

 信じる方がバカみたいな話だよ。

 

「ちなみにここはジョウト地方のチョウジタウンだよ。 ニビシティとは大分距離がある」

 

「チョウジタウン? まさか? マジか……」

 

 うーん、どうも、嘘をついているようには見えない。

 どうせ嘘つくならもっとマシな嘘つくよねぇ。

 

「空間を引き裂くってまるで伝説のポケモンのパルキアみたいだね」

 

「パルキア……」

 

 パルキアの名前を言うとバナナは何か思い当たることがあったのか考え込む表情を作る。

 

 そして、あたしも久しぶりに昔の記憶が少し戻った。

 

 そう、まだあたしが別の女の子だった時のこと。

 車に轢かれ、何もかもあたりが真っ白になって……そう、あたしは出会ったんだ。

 

 ──アルセウスに。

 

「うん、わかったよ」

 

「なにがだ?」

 

「キミが言うこと全部信じるよ」

 

「ええ?!」

 

 バナナとヒメグマが揃って驚く。

 何か似てるね、この2人。

 

「ただ、せっかくこうして出会ったんだしね!

そう! 運命の出会いかも!」

 

 露骨になんだコイツとバナナが訝しむが、知ったことか。

 

「明日、ちょっと一緒にデートしない?」

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