ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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特性 コトネの手

「で。 説明してよ」

 

 ポケモンの回復、ヤナギさんへの事情説明やあたしがロケット団アジト内で見たこと・聞いたことの共有などが終わり、ようやく一息つけた午後21時。

 場所はチョウジタウンのポケモンセンターの宿泊中のあたしの部屋の中だ。

 

 バナナとヒメグマはソファーに腰かけている。

 

「なにを?」

 

「何って全部に決まってるでしょー!

 どうして助けに来たの? 

 どうやっていきなり現れたの?」

 

 とりあえず頭に浮かんだ疑問を投げつけてみる。

 

 バナナは露骨に嫌そうな顔をした後、溜息をついて、渋々話し始めた。

 

「お前をあの場でアジトに行かせないように説得するのは無理だと思った。

 だけど、そのまま見殺しにするのも寝覚めが悪い。 

 だから急いでチョウジジムに行って事情を説明して、ヤナギさんたちにロケット団アジトにまで来てもらったんだ」

 

「ああ、そう……」

 

「あのな、コトネ。

 こう言うときはちゃんと言わなきゃいけないことがあるよな」

 

 ヒメグマがニヤニヤしながら学校の先生みたいなことを言ってくる。

 

 言わなきゃいけないこと──そんなこと分かってるよ。

 

 

「えっと……そのぉ……。

 ごめんなさい」

 

「それと?」

 

「……ありがとう。来てくれて。あんたが来てくれなかったら……多分あたしは死んでた」

 

「だってよ! バナナ」

 

「別にいいよ。

 考えなしに行動して、愚かな失敗をするのが子供ってもんだろ」

 

「はー?! あんただって子供でしょー!!

 人が下手に出たらチョーシに乗りやがってー!!」

 

「あー! もう喧嘩はやめろよ。バナナも余計なことを言うな!」

 

 掴みかかろうとしたあたしをヒメグマが無理やり、バナナから引き剥がす。

 

 いかんいかん。

 また頭に血が登って暴走してしまった。

 

「オホン! ごめん、落ち着いた。

 そんで、もう1個の質問への答えは?」

 

「うーん、なんて言ったらいいんだろうな。

 前にカントー地方にいたはずなのに、不思議な力が発動して、気づいたら空間をすっ飛ばしてジョウトまで来てしまったって話はしたろ」

 

 あたしは頷く。

 

「正確にはジョウト地方チョウジタウンのあたしが入っていたシャワールームの中にいきなり来たんだよね」

 

 あたしの性格は結構ねちっこい。

 しばらくの間はこれをネタにしてイジってやる!

 

「あの現象がまた起きたんだ。

 チョウジジムに行ってヤナギさんに事情を話して、それじゃあ一緒に怪しいみやげ屋に向かおうかと話をしていたその矢先だった。

 また例の頭痛が起きて、──パリンだ」

 

「今回は俺を置いてなー。 寂しかったぜ」

 

 ヒメグマが口を尖らせ文句を言う。

 

「仕方ないだろ。いきなりだったんだし。

 で、気づいたらあの地下アジトにいたってわけだ」

 

「空間を飛び越えてやってきたってことね。ありえねー」

 

 説明を受けながらも俄には信じがたい話だ。

 でも、実際にバナナは封鎖された地下室の入口を破壊することなく、外部から侵入している。

 

「地下室入口のシェルターは確かに外から閉められていたな。俺はあとからみんなを引き連れてアジトに行ったんだけど、そこでみんなで入口を破壊して中に入ったからさ」

 

「ねぇ、バナナ。ちなみにその空間移動って自分の意志でできるの?」

 

「いや、できない。 予兆としては割れるような頭の痛みが先に来て、最高潮の痛みになったら空間が割れる感じだな」

 

「便利なようで全然使えないなぁ」

 

「悪かったな」

 

 まだまだ色々消化不良だけど、流石にちょっと疲れた。

 

 あたしはベッドに腰掛ける。

 

「ロケット団はまた仕掛けてくるぞ」

 

 バナナが物騒なことを言ってくる。

 

「なんでそんなことがわかるの」

 

「……勘」

 

 バナナは少し悩んで、そう呟いた。

 

 はぁ~?って感じだけど、あたしもなんか引っかかるものがある。

 

 こう言うときは大抵前世の記憶。

 

 なんだっけなぁ。

 

 ロケット団が引き起こす事件。

 

 思い出せないないまま、ぼーっと天井を見ていたが、ふと気になる嫌な気配を感じた。

 

 立ち上がり、バナナに近づく。

 

 

「ん? おい! なんだよ、いきなり!」

 

 あたしがバナナの腰に手を触れようとしたら、バナナは顔を真っ赤にして怒鳴った。

 

「あー! ごめんごめん!

 あんたの持っているモンスターボールから変な気配を感じたから」

 

「俺のモンスターボール?

ゼニガメしかいないぞ。あ、いやもう一匹いるといえばいるか」

 

 バナナはモンスターボールを1つ取り出す。

 

 間違いない──それだ。

 

「中にいるのは何?」

 

「ポケモンというかタマゴだよ。グリーンさんにもらったんだけど」

 

 バナナはボールからタマゴを取り出す。

 

 ボールから出てきた黒と緑のタマゴを見て、思わず唾を飲み込む。

 

 特技らしい特技も持っていないけど、1つだけ他の人にはないちょっとした能力があたしにはある。

 

 それがあたしがポケモンのタマゴに触ると何故かポケモンの羽化が早まるというものだ。

 

 ママはこのあたしの能力をこんな風に言ってたな。

 

『まるで『とくせい』ほのおのからだねっ! 

 でも、コトネの場合はコトネのからだ? なんかイヤらしいから〜、コトネの手にしよう』

 

 それ以来あたしもこの能力を人知れずとくせい『コトネの手』って呼んでる。

 

 だから、ポケモンのタマゴを見たら積極的に触るようにこれまでしていた。

 ポケモンの誕生に少しでも関われるなら嬉しいことだしね。

 

 ただ、このタマゴには触っていいものか躊躇させる何かを感じさせられた。 

 生まれさせてもいいものか──あたしには判断がつかない。

 

 恐る恐るタマゴに近づく。

 

「バナナ……正直言うとさ。 このタマゴからはこれまで感じたことない嫌なオーラみたいのを感じるんだよね」 

 

「なんだそりゃ。 あ、いや……でもグリーンさんもちょっと含みのある言い方をしていた気はするな」

 

 結局あたしはそのタマゴに触ってしまった。

 警戒心よりも好奇心が上回った形。

 

 触った瞬間。

 

 周囲が闇に包まれる。

 

 

『小娘……オレを起こしたのはお前か?』

 

 

 全身が一瞬で凍てつくような冷たい声がどこからか響く。

 

 光が一切ないその空間。

 

 一歩でも動いたら首を斬られそうな……そんな緊張感。

 

 そして電気が走るような衝撃に襲われ、あたしは思わず掴んでいたタマゴを放りだしてしまった。

 

 タマゴから手を離した瞬間には視界は元通り。

 ポケモンセンター内の客室に戻っていた。

 

「おおっと!!」

 

 大きく弧を描いたタマゴをヒメグマがキャッチする。

 

「ふー! 危ねえ」

 

「ごめん、ヒメグマ! ありがとう、キャッチしてくれて」

 

「いや、いいってことよ。 

 どうせそのタマゴから何か言われたんだろう?」

 

「タマゴが喋るか」

 

 バナナがそうツッコミを入れるが、あたしは何も言えない。

 

 幻想、幻聴?

 いや、それはない。

 

 そう考えると何かタマゴから干渉を受けたんだ。

 

「ヒメグマはこのタマゴのこと何か知ってるの?」

 

「いや。具体的なことは何もわかんねーよ。

 ただな、一つ次元の上のポケモンかもしれねぇな」

 

 そう言ってニシシと笑う。

 

 もしかしたらあたしはとんでもないことをしてしまったのかもしれない。

 

 

 不安は不安だけど、ま!

 

 あたしのポケモンじゃないし、今は考えないことにしよう!

 

 

 

***

 

 

 

 

 その後はお風呂入ったり、ちょっとのんびりしたあとは普通に寝た。

 

 もちろん、あたしがベッドで、バナナたちはソファーね。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「おい! 起きろ! コトネ。 よだれたらして寝ている場合じゃないぞ! 起きろ!」

 

 気持ちよく夢の世界にいたというのに無粋な男に起こされた。

 

 デリカシーがないな。

 

「テレビ見ろ」

 

「にゃに?」

 

 目をこすりながら、指さされたテレビの画面に顔を向ける。

 

 そこにはニュースキャスターのお姉さんが深刻そうな顔で大きな建物の前で何やら叫んでいた、

 

『事件です! コガネシティのラジオ塔がなんと──ロケット団に占拠されました!!!』

 

 

 

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