ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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ある男の独白

 昔から人を支配することが好きだった。

 

 小学生の頃にクラスの連中を裏で操り、当時担任の女教師の心を壊し、辞めさせてやったことが最初だろうか。

 

 その時にふと気づいたのだ。

 

 私には人を支配し、導く才覚があると。

 

 その後高校、大学と一流の学校を卒業した私はとあるベンチャー企業に就職した。

 

 そこで私は商才と人心掌握術を駆使し、10年ほどでトップまで登り詰める。

 

 社長となった私は会社を急加速で大きくしていった。

 

 どうやったのか。

 やり方は簡単だ。

 

 人を思い通りに動く人形にするのである。

 

『売上をとろう! 業績を上げて給料を上げて幸せになろう! 家族も幸せにしよう!』

 

 簡単に言うとこれが我が社のスローガンである。

 何一つ間違っちゃいない。

 

 正しいゴールのために為される行為はすべてが『正しい』ことになる。

 

 業績のためには全ての時間を会社に捧げる、客を騙し、時には味方を蹴落とすことは当たり前だ。

 

 なぜならばそれは『正しい』ことの為に、必要なことだからだ。

 

 私が作るのは空気だ。

 

 『正しい』ことを為す人間は評価され、称賛される。

 『正しくない』人間は当然に粛清され、集団から取り除かれる穢らわしいゴミとなる。

 

 当たり前のことだ。

 

 人は誰しもが少なからず承認欲求があり、無能扱いされることを拒絶するというちっぽけなプライドを持っている。

 

 

 そこを理解すれば合理的かつ感情的な目標設定やノルマを設定することで、人の逃げ場を奪っていくことは容易だ。

 

『100万円稼いでこい。 あいつはできたから無理ではない。 

 お前ならできるだろ? 

 期待している』

 

 ゴミになりたくない人間は必死に努力をするのだ。

 そう。

 

『正しい』ことの為に。

 

 こうして、作り上げた組織は絶大な力を持つ。

 

 会社は数年で業界最大手にまで登り詰めた。

 

 私は地位も名誉も金も手に入れた。

 

 そこに至るまで何人の社員が壊れて、潰れていったのかは知らない。

 

 壊れた部品は取り替えれば良いし、自分は壊れたくないという恐怖が更に社員たちを成長させる。

 

 私が作った仕組みは完璧だった。

 

 

 そんな絶頂期にいたある夜のこと。

 

 私は仕事からの帰り道に突然何者かに後ろから包丁で刺された。

 

 振り返って見たその顔は全く知らない若い男だった。

 

 やせ細り、頬はこけ、目は虚ろ。

 

 ゴミのような男は私を刺した包丁を握りしめ、壊れた笑顔を携え、震えていた。

 

「こ、これで自由になれるっ! 地獄から抜け出せるんだぁああ!!」

 

 壊れた人形の意味不明な戯言を聞きながら私は息絶えたのだ。

 

 否、息絶えた──はずだった。

 

 しかし、驚くべきことに私は目を覚ますことになる。

 

 全く知らない世界で、知らない男の生まれ変わりとしてだが。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 ポケモンのことは知っていたが、子供遊びのゲームなどやったことのなかった私はこの世界に心底驚いた。

 

 そして、同時にポケモンという怪物の可能性を大いに感じていた。

 

 ポケモンは恐ろしい生物兵器である。

 

 この世界ではポケモンをパートナーとし、一見平和な世界を享受しているように見えるが、そんな仮初の平和はひどく脆く脆弱なものに私には思えた。

 

 こんな恐ろしい怪物たちと人間が、共存できるはずがない。

 ギリギリのバランスでなんとか平和を保っている世界は些細なことで簡単に瓦解する危うさをはらんでいる。

 

 ポケモン世界の現状を分析し、私は一つの計画を立てた。

 

 ポケモンをうまく利用することで人間社会を私が支配する。

 そして、一部のエリートだけがポケモンを完全制御下に置くことで、人間が、私こそが万物の長として君臨する。

 

 それができた暁には個人や会社どころではなく、私がこの世界そのもの支配者となり、この世の王となる。

 

 

 そんな野望を掲げながらポケモンのことを研究し、私は2度目の子供時代を過ごした。

 そして10代中頃には住んでいた家を飛び出した。

 

 向かったのはヤマブキシティのスラム街。

 

 私はこのスラムのならず者たちをすぐにポケモンという武力で壊滅させ、支配下として置いた。

 

 ここを拠点とし、カントー地方を牛耳るのが私の計画だったのである。

 

 しかし、早々とこの計画は破綻することとなる。

 

 より強力な武力によって。

 

 サカキ。

 

 ひと目見たときからその男のカリスマ性に私は圧倒されていた。

 

 私がいかに井の中の蛙だったのかを否応なく分からされたのである。

 

 サカキは私の作り上げた組織をたった一人で壊滅させた。

 

 倒れた私の顔面を踏みつけながらサカキは言った。

 

「私はこれからカントー全域を裏から支配する犯罪組織を作るつもりだ。どうだ? お前も来ないか」

 

 生まれて初めて私が屈服し、忠誠を誓わされた瞬間だった。

 

 こうしてロケット団が生まれ、私はその幹部となった。

 

 ロケット団の飛躍は驚異的なものだった。

 

 この世界にはポケモンリーグの制御化にあることを良しとせず、社会のつまはじきにされた有象無象がごまんといたのだ。

 

 サカキはそうした連中に居場所と目的を与えたのだ。

 

 サカキは自分自身は団員の前には決して姿を見せず、我らが幹部を表に出し、指示を出していた。

 

 自分自身は最強のジムリーダーとして、名を売り、世間からの称賛の声を集めながら、裏では組織を着々と大きくしていった。

 

 私からすればヌルイと言いたいこともあったが、組織は瞬く間にカントー1の犯罪組織に成り上がった。

 

 ポケモンリーグすらも無視できない規模まで拡大したが、その終焉は実に呆気ないものであった。

 

 たった一人のガキに壊滅させられたのである。

 

 レッド。

 

 今でこそ伝説のトレーナーとして知られているが、当時は一介のポケモントレーナーに過ぎなかった。

 

 私も戦いに挑んだが、話にならなかった。

 今でもあの涼し気かつ、退屈そうな表情を思い出すと腸が煮え繰り返そうになる。

 

 そして、レッドはサカキすら打ち破った。

 

 サカキは言った。

 

「俺の計画は完璧だった。たった1つの誤算がレッド──お前という存在だ」

 

 サカキはロケット団の解散を宣言し、消息を絶った。

 その行方は今も私ですら知らない。

 

 サカキという偉大なカリスマを失った組織は脆く、刹那に瓦解してしまった。

 

 だが、私はまだ諦めていなかった。

 サカキの野望、いや、私の野望を叶えるのである!!

 

 幹部に連絡を取り、今回の計画を語った。

 

 そこからは長かった。

 

 だが、3年という長期に渡る準備期間を経て、ようやく、その努力が報われようとしている。

 

 裏社会で珍味として知られているヤドンのしっぽの乱獲など、カントー~ジョウトに至るまでの裏社会の金の流れを掌握し、資金集めに奔走した。

 集めた金で優秀なはぐれ研究員を雇い、怪電波装置など様々な装置や兵器を開発した。

 

 いよいよだ。

 明日から世界は変わる。

 

 ジョウト全土、いや、この世界そのものを支配してやる。

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