ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
「ラジオ塔が……えっと、何?」
寝ぼけ頭でまだ脳みその理解が追いつかない。
「ロケット団がコガネシティのラジオ塔を占拠したんだ! くそっ! こんなに早くと動くとは思わなかった!」
バナナが何やら悔しがっているけど、超能力者でもなければ、こんなの予想できるはずがない。
とりあえずテレビを見よう。
詳しい状況をもう少し知りたい。
「本日! 午前7時にラジオ塔に複数のロケット団と思しき黒尽くめのポケモントレーナーが、コガネシティのランドマークであるラジオ塔に押し入り、早朝出勤をしていた職員らを拘束したものと見られています! その時に職員が外部にSOS信号を発信し、今回の事件が発覚しました!」
女性キャスターが語る後ろではコガネジムトレーナーと見られる人々や警察が慌しく走り回っているのが見える。
「現場にはコガネジム、ジムリーダーのアカネさんにお越し頂いております! お忙しいところ申し訳ございません! 現在はどのような状況なのでしょうか?」
キャスターがマイクを向けた先にはコガネジムなジムリーダーであるアカネさんが映される。
アカネさんはあたしも何回か会ったことがあって、めちゃくちゃ明るくてノリが良い。
話ししているだけでこっちまで笑顔になれるパワフルな人だ。
「ほんまに朝からびっくりしてん。 ウチはまだ寝てたのに叩き起こされてめちゃくちゃけったくそ悪いねん。 せやけど、みなさん安心したってや。 今ラジオ塔はウチらのジムトレーナーが包囲しとります。必ずすぐに事件は解決しよるさかいに、大船に乗った気持ちでいてくださいねー」
こんな大変な事態のはずなのにコッテコッテのコガネ弁で明るく捲し立てるアカネさん。
流石だよね。
「大変そうだけど、アカネさんもいるし平気じゃない?」
「……そうだな。 何事もなく無事に解決すればいいんだが」
ブゥーン!!!
突然、テレビの画面が真っ暗になった。
「え? 何? 壊れた⁉」
そう思った。
でも壊れていなかったことはすぐに分かった。
その理由はテレビ画面の中心に赤いとあるアルファベットが浮かんできたから。
「R……ロケット団!!」
『おはよう……ジョウト地方に住む諸君。
私達はカントー中心で活動していたロケット団という組織の残党だ』
加工された男とも女とも取れる不気味な音声がテレビから発せられる。
「なにこれ! 電波ジャックされてるってこと?」
『今日からこのラジオ塔──否、この大都市コガネシティを我々の本拠地として占拠させて頂くことにした』
「何言ってんだ、こいつ?
おいバナナ。 このテレビぶっ壊していいか?」
「やめてくれ」
ヒメグマの言葉にバナナが冷たくツッコミをいれる。
流石にあたしはテレビを殴ろうとは思わないけど、ヒメグマと同じ気持ちだ。
何言ってるんだ、だよ。
あたし達の気持ちなどお構い無しに、その身勝手な主張は続く。
『各地にいるジムリーダーの諸君。そして、ポケモンリーグに告ぐ。 無駄な戦力をこちらに向けるのは止めた方が良い。 その労力は身近な人やポケモンを助けるために使ったほうが懸命だと忠告しておく』
いよいよ何を言っているのか分からなくなってきた。
こいつは何が言いたい?
何をするつもりだ。
『……サカキ様。 この放送をもし聞いていたら、どうぞコガネまでお越しください。 あなたが合流すればロケット団は完全復活する。 楽しみですね。 共に今度こそ世界を支配しましょう』
その言葉が合図のように電波ジャックが解除され、テレビ中継画面が戻って来る。
『く、アホンダラァ!! こいつらどこから湧いてきたんや? 20人……30人……! 意味がわかれへん! もっとおるな。 どないなっとんねん!!』
テレビの中では地獄絵図が広がっていた。
おびただしい数のロケット団が列をなし、ポケモンを使役し、コガネジムのトレーナーに襲いかかっている。
「何故だ? こんな大人数どこからやってきたんだ!」
バナナも驚いている。
あたしも驚いてはいたけど、同時に1つの可能性が頭の中に浮かび上がっていた。
「あのさ! バナナ、これ──きゃあああ!」
ドッカンという衝撃音とともに地震のように建物が激しく揺れる!
「ヒメグマ!」
「おうよ!」
ヒメグマは素早く客室の窓を蹴破り、外の様子を確認する。
「あー、すげーな。 テレビの中だけじゃない。
こっちもやべーぞ」
揺れが治まったので、あたしとバナナも窓に駆け寄り、外の様子を確かめる。
ポケモンセンターの入口にはなんとイシツブテ、ゴローン、ゴローニャの群れ20匹程度が集結していた。
地震を起こしたのはゴローニャの仕業だろう。
「それとあれを見てみろ!」
ヒメグマの指さした先には黒い爆煙をあげる建物……上空には50匹以上の鳥ポケモンたちが群がっている。
「チョウジジムが襲われている?」
『テレビをご覧の皆さん! 続報が入ってきました! なんとポケモンたちの暴動が起こっているという情報がジョウト地方、各地から届いています! 暴動を起こしているポケモンたちは野生のポケモンであり、人や建物! 特にポケモンジムを集中して攻撃していると見られます!』
テレビのキャスターの言葉が現実感を伴って感じる。
「これはロケット団の怪電波装置の仕業だな。 俺たちも暴れているポケモンたちをなんとかしよう」
「待って、バナナ! 違うよ」
外に飛び出そうとするバナナとヒメグマを引き留める。
「何が違うんだ? このままじゃ、町の人達が危ないだろう」
「違うのは優先順位! 止めるのはポケモンたちの前にロケット団でしょ! あいつらを止めない限り、無駄にポケモンを傷つけるだけだよ」
「そんなことは分かってる! ただ、ここからコガネシティまでは距離があるだろ? 行きたくても行け……いや、そうか。
行けない方がおかしいのか」
バナナも気づいたようだ。
「ん? どゆことだ」
ヒメグマは首を傾げる。
「映像を見る限り、100人以上のロケット団が今コガネに集結している。
おそらくだが、やつらの作戦はロケット団の持つ人的リソースを全てコガネシティに集結させ、コガネシティを武力で掌握し、ロケット団の本拠地を作ること。
そして、その作戦の障害となる他の街からの救援を遅らせるために怪電波装置で野生のポケモンを暴走させ、各ジムを襲わせているんじゃないかってことだ」
「そこまでは分かった」
「だとしたらこういう仮説が生まれる。
今日までロケット団たちはチョウジタウンのアジトのような場所を各地に作り、準備を進めていた。
そして、作戦決行の今日! 奴らは満を持してコガネシティに集結したんだ」
「ってことはアジトにはコガネシティまで行くためのワープ装置みたいのがあるはずってことだな!」
ヒメグマがひらめいたって感じで、手のひらをポンっと叩く。
「正解!」
あたしはヒメグマのふわふわボディを抱きしめる!
あぁ、ふわふわぁ。
幸せぇ!
「よし! 行こう、コガネシティ!!」
あたしは気合を入れて声を上げた。