ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
暴れまわるポケモンたちを横目に、
あたしたちは昨日行ったお土産屋の地下にあるロケット団アジト跡に向かう。
ポケモンたちが戦っている。
でもそれは野生の世界での生きるための戦いとも、
トレーナーのポケモンとの力比べのバトルとも違う。
なんの意味もないポケモンたちの戦い。
街の人とポケモンは街を守るためにも戦わなきゃいけないけど、暴れまわっている野生のポケモンたちはただ怪電波のせいで暴走してしまっているだけ。
こんな戦い一刻も早く終わらせなきゃ駄目だ!
ポケモンたちは血を流し、戦っている。
傷つき、動けなくなっているポケモンもいる。
涙を堪えながら、あたしは走った。
****
再びたどり着いたロケット団アジト。
急な階段を駆け下りる。
「これが怪電波装置か」
バナナはゴウンゴウンと不気味な音を発している巨大な機械を調べ始める。
「これを破壊すれば怪電波は止まるのか?」
「ま! 試してみる価値はあるな!」
バナナの言葉にヒメグマが嬉しそうに答える。
「いいか?」
「そうだな。 悩んでいても仕方ない。
頼む」
「任せろっー!
『くま・パンチ』!!」
ヒメグマの強力なパンチが炸裂し、怪電波装置に巨大な大穴を空く。
ガガガガガガガガガガガガっ!!
鈍い音を暫く発した後、機械はピタッと動かなくなった。
「トゲチック! 上の様子を見てきて!」
あたしはトゲチックに外の様子を見てきてもらうように頼む。
これで怪電波が止まるといいんだけれど。
トゲチックが戻ってくるのを待っている間にあたしは壁をペタペタと触り、アジトの中を調べる。
「何やってんだ?」
「何ってコガネまで移動できるワープ装置を探しに来たんでしょ! きっと隠し部屋みたいのがあって、そこにワープ装置があるんだよ!」
「あのなぁ……隠し部屋なんてそう簡単に見つかるわけないだろ」
バナナは腹立つ呆れ顔を見せるが、あたしは確信していた。
こういうワルモノのアジトに隠し部屋があるのはお約束だ。
しばらく壁をペタペタしていると──
「ビンゴ!」
「なんだって?」
「ここの壁の感触が違う。 ヒメグマお願いできる?」
「おうよ。
『くま・パンチ』!!」
ヒメグマが殴った壁は簡単に吹き飛び、そして目の前には人がギリギリすれ違えるくらいの細い通路が現れた。
「おしっ!! 見つけたぞ!! 隠し部屋」
あたしはニンマリと微笑み、バナナにドヤ顔をかます。
「はいはい。 お手柄お手柄。 すごいでちゅねー」
棒読みの真顔。
腹立つなー!
「はぁー! なにその態度?! もっと感謝してくれてもいいんじゃないのぉ!」
「いちいち面倒だなー、こいつら」
ヒメグマが呆れ顔。
***
「これ、ワープ装置だよね」
殺風景な通路には少し大きめのフラフープのような紫色の輪っかだけが地面に埋め込まれていた。
「多分」
どうしよ。
行くしかないか……。
「トゲトゲー」
声がして振り向くとトゲチックが戻ってきた。
トゲチックから外の様子を聞く。
困り顔をしたトゲチックが色々話してくれる。
あたしもなんとなく言わんとすることは分かるけど、ここはヒメグマに通訳をお願いする。
「外にいる野生のポケモンの様子は相変わらず。 血走った目で人間を、ポケモンを襲うことだけを考えて動いているみたいだった──だってよ」
「一度発動した怪電波装置は壊したところで駄目なのか。 それとも他に解除する方法があるのか」
「コガネシティに行って、直接ポケモンたちをもとに戻す方法を奴らに吐かせるしか、やっぱり方法はないみたいだね」
覚悟を決めよう。
「あたしは行く。 これ以上ロケット団の好きなようにはさせない」
「俺も行く。 お前一人じゃ心配だしな」
素直じゃないやつだ。
「それと向こうに無事に着けたあとのことを整理しよう」
バナナとちょっとだけ作戦会議をした。
うまく行くか分からないけど、やるっきゃないよね。
「行くよ」
あたしとバナナ(ヒメグマはバナナの背中にくっついている)はワープ装置?の中に向かい合って入る。
5秒ほど立つと装置がピッ──と短い音を立て反応する。
次の瞬間、これまで感じたことがない不思議な感覚に襲われる。
高いところから深いプールの中に落ちるような。
そんな感じに近い。
視界が真っ暗になり、そして──
「わぁああああああ!」
脳がぐらっと揺れ、立っていられなくなる。
「コトネ!」
目を開いた時にはコンクリートの地面が迫っていたけどバナナが腕を掴んで引っ張ってくれたおかげで顔面から限突せずに済んだ。
「危なかった。 あたしの可愛い顔に傷がつくところだったよ。 良かったね、バナナ」
「お気楽なことを言っているところ悪いんだが、状況はあまりよくないみたいだぞ」
あたしが今いる場所はさっきまでいた狭い通路ではなく、体育館くらいの大きさの大型倉庫で、周りには黒尽くめのロケット団が5名ほどいてあたしたちは囲まれていた。
「なんだ! お前たちは! どこからきた?」
「先手必勝!! でんげきは!!」
あたしはすぐさまモココを出すと、ロケット団目掛けて技を指示する。
ロケット団たちは反応できず、攻撃が直撃して、全員が気絶した。
「おお……人に技を打ってはいけません見たいのって学校で教わらないのか?」
バナナが呆気にとられながら呆けたことを言ってくる。
「なーに甘いこと言ってんだか。 そんなこと躊躇してて女の一人旅ができるわけないでしょ」
この1年間旅をしていて危ない目なんて数え切れないくらいあってきた。
自分の身を守るためにはこのくらいの対応は当然。
ましてや、相手はロケット団なんだから遠慮する必要なんてこれっぽっちもない。
改めてあたしは今いる倉庫を見回した。
床には複数のワープ装置があり、壁には戦闘の道具やロケット団のコスチューム、机やパソコンなども揃っている。
「ここはコガネシティのロケット団アジトってことか」
「その通りだ」
バナナの問いに答えたのは倉庫の隅でパソコンを弄っていた女。
他の団員とは違い、白い服とスカートを着た赤髪の女性。
その辺のザコとは違う強者のオーラのようなものを感じる。
「あんたはロケット団幹部のアテナだな」
バナナが言うと女は目を見開き、驚く。
「私のことを知っているのか」
「一応な」
「ランスから聞いていた通り、面白い少年だな」
「バナナ! 二人がかりでコイツを倒そう!」
「いや。 こいつは俺が抑える。 お前は早くラジオ塔に行ってくれ」
「私が黙って通すと思っているのか?」
「黙って見てろよ、少年少女のちょいと良いシーンだぜ?」
ヒメグマはランスの顔面めがけてパンチを放つが、ランスがいつの間にか出していたラフレシアに攻撃を防がれている。
ランスはおそらくかなりの強敵。
でも時間が経てば経つほど事態が悪化していくのは確か。
行くしかないか……
「じゃあ、行くよ。 死なないでよ」
「お前こそな。
って! おい……」
あたしはバナナをギュッと抱きしめた。
そして振り向かずに出口に向かって走り出す。
あいつがどんな顔していたかは知らない。