ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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ロケット団の野望

 バナナにロケット団幹部アテナの相手を任せ、コガネシティのアジトを飛び出したあたしは走っていた。

 

 あの女は強い。

 

 おそらくロケット団でも最上位の強さだろう。

 

 あたしとバナナの2人がかりでも勝てるかは怪しい。

 

 でも、あいつは行けと言った。

 

 弱っちいくせにカッコつけるなんてダサいよ。

 

 でもこのもらった時間を無駄にしない!

 

 コガネシティの街中を全速力で走り抜ける。

 町中ではロケット団とジムトレーナーたちが戦いを繰り広げている。

 街の人やポケモン、建物に被害がないように配慮しなくてはいけないジムトレーナーたちは本来の実力を出し切れてはいない。

 実力ではロケット団下っ端なんかには遅れを取らないはずだけど、失うもののない連中の勢いは凄まじい。

 

 やっぱり根本から叩かなくちゃ、この戦いには勝てない。

 

 息を切らして走り、ようやくあたしはラジオ塔にまでたどり着いた。

 

 そしてあたしは堂々と入口に進み、中に入る。

 

 ラジオ塔周囲はたくさんのロケット団に囲まれているのに何故か。

 

 これはここに来るまでのバナナとの会話。

 

 

 

 

「仮にコガネシティまで行けたとしてどうやってラジオ塔に潜入する?」

 

「これは俺の仮説だが、おそらくこの作戦で集結しているロケット団員は全員が顔見知りというわけではないと思う。 

 あれだけの数が一斉に集まる機会なんてそう作れるはずがないからな。

 数はいるが、連携などまともにできているとは思えない。

 そこが付け入る隙になる。

 堂々とロケット団員になりきって潜入するんだ」

 

「つーまーり!

 どこかでやつらの制服をぶん取って変装しちゃおってことね!」

 

 バナナは頷く。

 

「そうだ。 ロケット団になりすますことができれば自然と奴らの中枢部に辿り着くことも難しくないはずだ」

 

 

 回想終わり。

 

 そして運良くワープ先がコガネシティアジトだった為、ロケット団制服を手に入れたあたしはこうやって堂々と正面からラジオ塔に潜入できたというわけだ。

 

 ラジオ塔1階ホールには縛られた職員5名が一箇所に集められており、またロケット団員が30名ほど待機している。

 

 ロケット団員たちは皆10代くらいの若い少年少女たち。

 あたしとそんなに変わらないくらいの10代前半の子もいる。

 

 時間はないけど、ちょっと話を聞いてみよう。

 

「あの! ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「あん?」

 

 う◯こ座りでタバコを加えている金髪のお兄ちゃんがガンを飛ばしてくる。

 

「みんなはどうしてロケット団に入ったの?」

 

 あたしの唐突な問いにロケット団たちは顔を見合わせる。

 

「そりゃ、他に居場所がないからに決まってんだろ」

 

 しばらくして金髪のロケット団はそう言った。

 そして周りにいる連中にも「なぁ!そうだろ」と同意を求める。

 

 彼らはみな頷き、側にいたピンク髪の女は自嘲気味に言った。

 

「ウチの父親はサイテーのクズでさ。 金はねぇし、すぐ知らねー女連れ込むし、殴るしで、毎日が地獄だった。 でも、ロケット団は仲間。 誰も殴らないし、こんなウチを必要だって言ってくれる。

 ありがたいよねぇ」

 

「俺もそんな感じだわ。 家はビンボーだし、頭は悪ぃし、ポケモンの才能はねぇからさー。 この街に俺の居場所なんてどこにもなかった」

 

「でもよ! ランス様は言ってくれたよな!?

 『お前の力が必要だ』と!

『この腐った世界を共にぶち壊そう』ってなぁ!!」

 

 金髪が叫び、同調するように周りのロケット団たちも腕を突き上げ、雄叫びを上げる。

 

「「ロケット団最高っ!!」」

 

 心底楽しそうなバカ騒ぎ。

 

 ホール全体を震わせるような熱狂。

 狂喜乱舞するこいつらの雰囲気にゾッとするような悪寒を覚える。

 

 縛られ、猿ぐつわをさせられているラジオ塔職員が恐怖で震えているのが見える。

 

 多分だけど、この子達一人一人はそんなに悪い子じゃない。

 可哀想な境遇だとも思う。

 

 でも集団になったとき、彼らの小さな悪意は何倍にも何十倍にも膨れ上がらせた邪悪な狂気に変わる。

 

 あたしはバカ騒ぎをしている彼らの元をそっと離れ、階段に向かった。

 

 フロア案内を確認する。

 向かう先は6階、局長室。

 

 捕えられている局長を助け出し、このラジオ塔から発せられている怪電波を早く止めなくちゃ。

 

 長い階段を登りきって遂に6階に辿り着いた。

 

 あたしは扉を開く。

 

 6階はまず大きな受付ホールが広がっていた。

 

 そして、そのホール真ん中には緑髪の男が足を組み、悠々と座っていた。

 

「はぁ。 変装しても無駄そうだね」

 

 あたしはその顔を見て、ため息をつく。

 

 そして黒いロケット団のコスチュームを脱ぎ捨てて、いつもの格好に戻る。

 

「よぉ、クソガキ。 また会えて嬉しいぜ」

 

 そこにはロケット団幹部のランスが待ち構えていた。

 

「黙って通してくれると嬉しいんだけど」

 

「そいつは無理な相談だ。 俺の役割は一階のバカ共の見張りと、万が一ここまで侵入してきた奴がいたときにぶち殺すことだからな」

 

 ランスは頭上に取り付いているモニターを見ている。

 そこには一階の様子が写っていた。

 

「1つ聞いていい?」

 

「あ? なんだよ」

 

「さっき下であんたの下っ端と少し話してきたの。

 正直、可哀想だなって思う部分もあったし、あの子達にとってはロケット団は大切な居場所だってのはよくわかった。

だからこそ聞きたい。 あんたらの目的は何? 何のためにこんなことをしているの?」

 

「目的かぁ。 

 そんなのアイツ等みたいなバカなガキ共を救ってやるために決まっているだろ。 

 いいか。今のポケモンリーグが支配する世の中では必ず社会からつまはじきにされる落ちこぼれが生まれる。

 そいつらには居場所なんてないのさ。

 正規のルートを外れた奴には生きる場所なんざどこにもない!

 そんな落ちこぼれが輝ける! そんな世界を作り出すことこそが俺達ロケット団の存在意義なのさ!!」

 

「そんな建前はいいから本音を言ってよ」

 

「あん?」

 

 あたしは熱く語るランスを冷めた目で見つめる。

 

「チョウジタウンで氷漬けにされた部下を見捨てて逃げた男のそんな言葉を信じるわけ無いでしょ。

あの純粋で……ただバカなだけのあの子達を利用して何がしたいの?」

 

「プッ!!」

 

 あたしの言葉にランスが吹き出して笑う。

そして、こらえきれなくなったのかお腹を抱えてゲラゲラと笑い出す。

 

「ひゃははははははははははははははは!」

 

 甲高い不快な声で大爆笑する。

 

「いやぁー、ほんっとうにサイコーのガキだなお前は!

下にいるバカ共とは大違いだ。 アイツ等もお前みたいに少しでも思慮深けりゃ俺もこんなに苦労しねぇんだがな!」

 

「それが本音……ね」

 

「お前の言うとおりだよ。 

 下っ端のガキ共はみんな馬鹿で弱い! 

 だからこそだ! 

 ちょっと甘いこと言って居場所を作ってやり、それっぽい目標を掲げてやりゃあ、すぐに立派な使い捨ての駒になる! 

 ある程度強いポケモンを支給してやれば、マシな戦力にはなるしなぁ!」

 

 ランスは実に愉快そうに高らかに語る。

 

「あの人は教えてくれたよ! 

 科学力と組織に従順な兵力! 

 この2つが揃えばジョウト全域を支配することも夢じゃないってな! 

 そうなった暁には金も! 女もぉ! 

 何もかもが自由に扱えるようになる!! 

 そんな未来がもうそこにまで来ているのさぁ!!」

 

 恍惚の表情を浮かべ、戯言を語るランスは狂気に満ちていた。

 

「安心したよ。 清々しいほどのクズで」

 

 あたしはモンスターボールを投げ、マリルを繰り出す。

 

「ククク。 そんなチビで俺と戦うつもりか?

やれ。 ネイティオ」

 

 ランスはネイティオ。

 

 ヤナギさんのユキノオーの攻撃すら防いだ強力なポケモン。

 

 流石に意地を張っても仕方ないか。

 

「マリル、本気でいくよ」 

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