ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

29 / 55
コトネVSランス

 この世界に異世界転生して、あたしはコトネとして大切に育てられた。

 

 一流のポケモントレーナーだったパパの職業は国際警察で、日々世界中を旅しながら悪と戦っていた。

 

 ママは美人で優しく、おっとりした性格でいつも微笑んでいた。

 

 パパは家にいないことがしょっちゅうだったけど、とても幸せな幼少期を過ごしていたと思う。

 

 フェアリータイプの使い手だったパパはかわいいポケモンが大好きだった。

 

 あたしが初めて仲間にしたポケモンはパパがくれたマリルだしね。

 

 そんな穏やかで平穏な日々は4年前、突如終わりを迎えた。

 

 パパがカントー地方でロケット団との抗争に巻き込まれ、行方不明になったのだ。

 

 ニュースを聞いたママは泣き崩れ、悲しみに暮れた。

 あたしも大好きだったパパがいなくなった現実を認められなかった。

 

 そしてそれは、今も同じ。

 あたしのパパがロケット団なんかにやられるはずがない。

 きっとどこかで生きている!

 

 あたしのこの旅はパパを探す旅でもあった。

 

 パパと再会して、成長したあたしを見てほしい。

 パパが好きだったマリルも変わらず元気なところを見せてあげたかった。

 

「ごめん、パパ。 

 でも、あたし。 負けられないんだ」

 

「マァリィィ!!」

 

 マリルがランスのネイティオに向かって『アクアジェット』で加速しながら距離を詰める。

 

「無駄だぁ! リフレクター」

 

「マリリー!」

 

 マリルは『アクアブレイク』を叩き込む──しかし、リフレクターは破れない。

 

「はっはっはっあー!! そんな軟弱な技なんざ効かねぇよ!」

 

 

 

「進化キャンセル──解除」

 

「あ?」

 

 あたしの言葉に呼応して、マリルを巨大な水エネルギーが包み込む。

 

「なんだ? 何をするつもりだ」

 

 強い水エネルギーで作られた大きな水の球体が宙に浮かび──弾けた。

 

 パァーン!!

 

 中から現れたのは。

 

「マーリィー!!!」

 

 頭の上の耳がウサギのように伸び、お腹には水玉模様のようなものが浮かび上がっている、マリルの進化系──マリルリ。

 

 高さは0.8メートルと大きくなった。

 

 でも!

 

「マリルリ、可愛い!!」

 

 ぎゅぎゅっとマリルリにハグする。

 

 パパが可愛いポケモン好きだったし、マリルが1番好きだったから進化させなかったけど、心配して損した!

 

 マリルリもマリルに負けないくらい可愛い。

 

「なるほどな。

 進化できないのではなくて、進化させていなかったってことか。 

 舐めやがって。

 だがな! 進化したところでてめぇのポケモン如きで俺のネイティオの鉄壁の壁を崩せると思うな!」

 

「やってみないと分からないでしょ。

 マリルリ! 『アクアブレイク』!!」

 

「だから、何度やっても無駄だぁ!」

 

「それと! 『あわ』!」

 

 『アクアブレイク』は防がれてしまう。

 だけどこれでいい。

 

 マリルリはしっぽの先端の丸い部分から自身の2倍くらいの大きさの空気の泡を発生させる。

 

 これまでの一連の戦いで、『リフレクター』『ひかりのかべ』と『サイコキネシス』などの攻撃技を同時に繰り出せないことは分かっている。

 

「ネイ?」

 

 マリルリが作り出した泡がネイティオを包みこむ。

 

「てめぇ! 何をするつもりだ?」

 

 マリルリの『あわ』はネイティオをリフレクター毎包んで、空気の力で上空に浮かび上がらせる。

 

「確かにアンタのネイティオの『リフレクター』は強力。    でも、その強固さは正面だけなんじゃない?」

 

 マリルリはネイティオの後ろ側に回り込み、飛び跳ねる。

 

「いっけぇええ! 『アクアブレイク』!!」

 

 マリルリの『アクアブレイク』は自分の作った泡を割り、更に『リフレクター』を割ってそのままネイティオの背中に強力な一撃を叩き込む。

 

 リフレクターはネイティオを中心に球体状に作られていたが、やはりあたしの睨んだ通り、正面以外は脆かったようだ。

 

「くそっ! 戻れネイティオ!」

 

 遂に強敵ランスのポケモンを一体倒すことができた。

 

「さ! まだたくさん手持ちはいるんでしょ? 次のポケモンを出しなよ」

 

「俺の手持ちはあと1匹だけだ」

 

「やめなよ、そんな見え透いた嘘」

 

「嘘じゃねぇよ。 この一匹だけで十分すぎる程の戦力があるのさ。

 出てこい……ベトベトン」

 

 ランスが出したポケモンはアローラベトベトンだった。

 だが、問題はそこじゃない。

 

 驚くべきはその大きさだ。

 確か本来のアローラベトベトンの大きさは1.0メートル程度。

 だけど、このベトベトンは5メートルはあるんじゃないかって思うくらいの巨体。

 

 室内にしては広めのホールだけど、このベトベトンで大分床を占拠されている。

 

「おまけにヒドイ臭いね。 そのベトベトンに何をしたの?」

 

「ロケット団の科学力で強化改造を施した改造ベトベトンだ。 悪いがこいつは俺でも完全には制御できねぇ。 精々気をつけな」

 

 さて、どう戦おうか……なんてことを考えていたその時──

 

「ベェエートォオオオ!!」 

 

 ベトベトンの手が伸び、その巨大な掌はあたしを握りつぶそうとする。

 

 突然過ぎて反応ができない。

 

「マリー!」

 

 マリルリがあたしを抱えて、横っ飛びする形でなんとか攻撃を避ける。

 

 あたしがさっきまで立っていた場所はベトベトンの毒でドロドロに溶け始めた。

 

「あ、ありがと! マリルリ」

 

 マリルリのおかげで何とか助かった。(膝は擦りむいたけど)

 

 しかしこいつ……! いきなりトレーナーであるあたしを狙ってきた。

 白目を剥いて、雄叫びを上げるその姿はベトベトンというポケモンというよりも、怪獣に近い。

 

「危ないなぁ! みんな出てきて!」

 

 これはもはや単なるポケモンバトルではない。

 

 見境なく暴れまわるこんな危険な奴が街に解き放たれたら……考えたくもない。

 大きな被害を出す前にあたしがこいつを止めなくては。

 

「さあ、やれ!! ベトベトン! そのチビ共を叩き潰せぇ!!」

 

「ベトベトンには直接触れないように気を付けて!」

 

 ベトベトンの振り下ろした攻撃をポケモンたちは躱し、一斉に四方八方から攻撃を繰り出す。

 

 だが、ダメージが通っているようには見えない。

 

 攻撃のスピードはそこまでじゃないけど、防御面、耐久値がかなり高そうだ。

 しかも攻撃は早く無いとはいえ、当たれば即死レベルの猛毒の必殺技。

 

 戦いを長引かせるほどこっちが不利になりそうだ。

 

 やるしかない。

 

「マグマラシ、モココ! 進化キャンセル──解除!

 トゲチック! ひかりのいしだよ。

 みんな!

 本気の力を見せて!!」

 

 マグマラシはバクフーンに、モココはデンリュウに、トゲチックはトゲキッスに進化する。

 

 あたしは図鑑を起動する。

 

バクフーン

『灼熱の 炎で 周りに 陽炎を つくりだして 姿を 隠す ことが できる。 燃えあがる 爆風は すべてを 焼き尽くす』

 

デンリュウ

『尻尾の先が 光り輝く。光は はるか 遠くまで 届き 迷った者の 道標となる』

 

トゲキッス

『 争いのない 平和な 土地に トゲキッスは 訪れ さまざまな 恵みを 分け与えると 言われる』

 

 最終進化形になったみんな。

 図鑑の説明も随分頼もしくなったなぁっとちょっと感慨深い。

 

「ちっ! 他のやつらも進化できたのか」

 

 マリルだけ進化させないのはなんか可哀想な気がして、進化キャンセルさせていたポケモンたち。

 

 ポケモンたちの全力を魅せてやる!

 

 そして!

 

「ベトベトン! あたしはこっちだよ!!」

 

 あたしは走り出し、ベトベトンの意識をあたしに向ける。

 

「てめぇ! 何をするつもりだぁ?」

 

「グガァ?」

 

 バクフーンたちも突然のことに困惑している。

 

 みんなごめん……

 それとよろしく頼んだよ!

 

 ベトベトンは走り出したあたしを憎悪に満ちた目で睨みつけ、そして攻撃を仕掛けてくる。

 

「みんな!! 今だよ!!」

 

 その背後は隙だらけだ。

 

 バクフーンは『ふんか』

 マリルリは『はらだいこ』からの『アクアブレイク』

 デンリュウは『でんじほう』

 トゲキッスは『エアスラッシュ』

 ヌオーは『じしん』

 

 そして、エーフィはみんなの火力を底上げする『てだすけ』。

 

 レイドバトルさながらの一斉放射。

 

 激しいエネルギーがぶつかり合い、反発し、大爆発を引き起こす。

 

 爆風によってあたしも壁に叩きつけられる。

 

 消化スプリンクラー発動し、周囲は火と水と煙に包まれる。

 

 やがて炎は落ち着き、煙も晴れていく。

 

「ば、バカな! ベトベトン!!」

 

 ランスの言葉が全てを物語っていた。

 

 ベトベトンの瞳は虚空を見つめ、立ったまま気絶していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。