ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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トキワシティでの暮らし

 謎の怪物に襲われて異世界転生。

 やって来た世界はポケモン世界で容姿は10歳の虫取り少年。

 

 

 俺が置かれている状況はなんとなく理解した。

 

 だが、この先うまくやっていけるのか?

 何をすればいいのか。

 不安は大きい。

 

 思わずヒメグマを抱き抱える。

 温かくてふわふわで柔らかい。

 

 

「やめーいやめーい。

くすぐてぇよ」

 

 

 そんな感じでヒメグマとキャッキャウフフをしていたら、不安も大分薄らいできた。

 

 というのも元々俺はポケモンが好きだ。

 小学生の時にポケモンに触れ、アラサーになるまでずっと原作ゲームはプレイしてきた。

 ポケモンの世界に行きたいと本気で思ったこともある。

 そんな夢にまで見たポケモンの世界に図らずもやってこれたのだ。

  

 不安もあるが、当然ワクワクする気持ちもあった。

 

 

 

***

 

 

 

 

「目を覚まされたんですね! 良かったです」

 

 

 薄ピンクの白衣を着たジョーイさんこと女医さんが病室にやって来た。

 

 しかし、ここからの展開がなんとも地獄。

 

 当然のことだが、ジョーイさんに色々質問されるわけだ。

 

 どうして倒れていたのか。

 どこから来たのか。

 親はどこか。

 出身地は。

 

 さっきテキトウに決めた『バナナ』という名前以外何も答えられない。

 

 正直に答えても良いのだが、確実に電波さん扱いされるに違いないので、言い憚れる。

 

 

「その子はあなたのポケモン?」

 

 

 その質問には少し悩んで答えた。

 

 

「はい。俺のポケモンです」

 

「そう。パートナーポケモンがいるなら安心ね」

 

 

 ジョーイさんがようやく優しく微笑み、傍らのヒメグマもグッと親指を立てる。

 

 ヒメグマホントにイケメン。

 

 詳しい話はまた聞きに来るということになって、ジョーイさんは去っていった。

 

 どう考えても不審人物である俺なんだが、ヒメグマのおかげで何とかなりそうな雰囲気がある。

 

 ポケモンととも過ごすこの世界の人々にとって、ポケモンというパートナーが側にいるというだけで警戒レベルが下がるらしい。

 

 本当にいてくれてよかった。

 

 だけどもまぁ、この先の立ち振る舞いを考えなくちゃいけない。

 

 ちょいと考えたのち、かなりベタな展開で強引突破することにした。

 

 

 それは記憶喪失作戦。

 

 

 何を聞かれても「覚えていません」で押し通す!

 

 まぁ、下手に変なこと言っても信じてもらえんだろうし、仕方ないことではある。

 

 その後の展開としては他の医師やジュンサーさんこと巡査のお姉さんもやってきて色々と話を聞かれたが、基本記憶がないという1点で全て強行突破した。

 その結果、良くも悪くも記憶喪失で記憶もなければ、常識も何もない可哀想なガキとして、憐れみの目を向けられることになり、

 退院後はトキワシティのジム、トキワジムに預けられることになった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 退院して、外を歩いた。

 街にはたくさんのポケモンが当たり前のようにいて、人間と一緒に暮らしている光景を目の当たりにして心底俺は感動した。

 

 ゲームを超えた現実がそこにある。

 

 ポケモン世界は素晴らしい!というのは疑いの余地がない。

 ただ、これまでいた世界とは色々な常識が違うのだということがトキワジムでお世話になり、数日過ごす中で分かってきた。

 

倫理観が違うっていえばいいのだろうか。

 

 まず基本的にポケモントレーナーに年齢の概念はないらしい。

 

 例えば相手が5歳の子だろうが、ポケモンバトルで負けたら賞金を渡す。

 

 俺が100歳の老人に買ってもポケモンバトルに勝ちさえすれば合法的に金を奪うことができるわけである。

 

 色々やばい。

 

 それだけポケモンバトルというのが日常に溶け込んでいる証拠であり、その分強いポケモントレーナーほど憧れの対象になっていく。

 

 ということで未成年だから庇護の対象という概念が特にポケモンバトルが活発な地域ではほぼないのである。

 

 つまり、ポケモン世界に異世界転生!

 

 まだ10歳だし、楽しくポケモンと毎日を過ごしちゃおーなんてことは許されない。

 

 いやいや、悲しいことかな。

 やることはこれまでの現実世界と一緒だ。

 

 仕事である。

 

 働かざる者食うべからず。

 

 ということでこの世界において親もいない俺は仕事をしなくてはいけなくなってしまった。

 

 職業はジムトレーナー。

 

 ジムは、自宅兼職場となる。

 

 現在のジムリーダーはグリーン。

 サカキではないということは時系列で言うと金銀世代なのかなと思うが、異世界なのでその辺は定かではない。

 

 

 ジムトレーナーは毎日ただポケモンバトルに明け暮れているわけではなく、ポケモンとともに町の課題やトラブルに対処する役所的な役割もあるらしい。

 

 俺とヒメグマは大したことはできないが、ヒメグマの嗅覚はずば抜けているので、落とし物探しを主な仕事としてやらせてもらっている。

 

 他には下っ端なのでジムの掃除やら雑務が俺の仕事である。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ヒメグマいいのか? 俺とこんな雑用みたいな仕事をしている生活で」

 

 ミニスカートのリカが落としたおばあちゃんからもらったという大切なハンカチを搜すという仕事中の会話である。

 

 

「別にバナナがやりたいことをやればいいさ。俺はお前のポケモンだからな」

 

 トレーナーの贔屓目なしでこのヒメグマは優秀なポケモンだと思う。

 賢いし、おそらく能力値も高い。

 

 正直俺には勿体ない気もする。

 

 俺がやりたいことも分からない。

 今やっていることも生きる為にやっているだけ。

 

 ポケモンの世界に来て、転生までしても俺の根っ子は変わらないということだろうか。

 

「やりたいことなんて、そのうち見つかるさ。

ここではお前は一人じゃねぇだろう?

俺がいるじゃねぇか」

 

 そう言って地面に鼻をつけてハンカチを搜すヒメグマはめちゃくちゃ格好良かった。

  

 

 

 

***

 

 

 

 仕事がないときは基本ポケモンの育成だ。

 

 これが本当に難しいけど、楽しい。

 

 ポケモンの強さをどう判断するか。

 

 ゲーム内では当然ステータスの数値を確認して判断していた。

 

 あと公式用語ではないが、ポケモンそれぞれに割り当てられた能力である種族値、個体ごとの強さである個体値、伸ばす能力を決める性格、それに努力値などポケモンの強さを決める要素はたくさんあるが、全てデータとして確認できた。

 

 

 しかし、当然強さを数値として見ることは現実には難しい。

 

 強さが数値で確認できない、これが育成の難易度を激ムズにしてる。

 

 一方でレベルという概念自体はこの世界でもあるらしい。

 野生のキャタピーは基本ビジョンには勝てず、捕食の対象だが、トレーナーに育てられたキャタピーなら話は別だ。

 育て方次第でキャタピーはピジョットにすら勝てる。

 

 それだけタイプ相性や個体値の壁を超えるレベルの差がこの世界においては非常に重要なのだ。

 

 ただ今のレベルすら数値では判断できない。

 

 

 そして、レベルを上げるのも大変な作業だ。

 

 ゲームなら経験値アメを上げて、一気にレベル100にすることも可能だが、そんな便利なものはない。

 

 強くなるためには実践訓練とトレーニング、加えての基礎体力作り。

 これに尽きる。

 

 どこのアスリートだって感じだが、相手にしているのはデータじゃなく、生き物だからな。

 

ちなみにヒメグマがリングマに進化するのはレベル30。

 

一体いつになることやら。 

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