ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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新生ロケット団のボス

 なんとか勝利してホッとしたのも束の間、あたしは自分のポケモンたちにめっちゃ怒られた。

 

 みんなあたしが無茶したのを本気で怒ってくれている。

 

 別にポケモンたちの強さを疑ったわけじゃない。

 ポケモンと一緒に戦いたかっただけ。

 

 でも申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが同時に生まれた。

 

「そのベトベトンが人間に憎悪を持っているのは見て分かった。 だからあたしが囮になることで隙が生まれると思ったの」

 

「ははっ、イかれてるぜ……てめぇ」

 

 攻撃の衝撃に巻き込まれたのだろう。

 ボロボロになったランスは痛めた腕を抑えている。

 

「確かにコイツは人間に捨てられ、改造され、化物になった哀れなポケモンだ。 

 俺達にとってポケモンは戦いの道具に過ぎない。

 ただの生物兵器だからな、人間を恨んでいるのは当たり前だ」

 

「そんなこと言ってる連中にあたしが負けるはずないでしょ。

 あたしはポケモンのために戦う。

 だからポケモンもあたしの為に本気で戦ってくれる。

 だから──強いんだよ」

 

「はっ!

 偉そうなこといいやがって。

 だが、お前の言うとこは一理ある……かもな」

 

 ランスはあたしの方をしっかりと向いて驚くほど晴れ晴れした笑顔を見せる。

 

「完敗だ。 俺がお前に勝てるはずがなかった」

 

 そう言ってランスはベトベトンのカラダをぐっと押した。

 

「ランス……! あんた!」

 

 ベトベトンはその巨体をグラッと傾かせる。

 そして、ゆっくりと倒れ始める。

 ──ランスに向かって。

 

「なんで忘れていたんだろうな。

 サカキ様は確かに居場所のない馬鹿な若者のために本気で組織を作ろうとしていた。

 俺はそんな想いに惹かれたっつーのに」

 

「逃げてっ!!!!」

 

「コトネ。 あの男には気をつけろ。

 じゃあな」

 

 ズドーン!

 

 大きな地響きと共にベトベトンがランスを巻き込み床に倒れ込んだ。

 

 改造され猛毒のカラダになったベトベトンの下敷きになってしまった。

 

「……馬鹿なやつ」

 

 無事では済まないだろう。

 死んだかもしれない。

 

 あたしはバクフーン以外のポケモンを戻すとやるせない気持ちを抱えながら、奥の部屋に向かった。

 

 ラジオ塔、局長室。

 

 そこにいたのは2人の男性。

 

 1人は縛られた初老の男性。

 後頭部からは血を流している。

 

 おそらく彼がコガネシティラジオ塔の局長だろう。

 

 そして、我が物顔で局長席に座り、組んだ足を机の上に置いた男。

 

 おそらく20代後半くらい。

 青髪の整った顔立ちをした短髪のその男。

 

 服装は白いコスチュームで以前と違ったがあたしは知っていた。

 

「……驚いた。 

 あんたが全ての黒幕だったのね──お兄さん」

 

「また会えて嬉しいですよ、お嬢さん」

 

 その男はチョウジタウンのいかりのみずうみで出会った

イケメンのお兄さんだった。

 

「以前はしっかりと名乗らず失礼しました。 

 私はアポロ。

 旧ロケット団の幹部の1人、そして新生ロケット団のボスです」

 

「あっそ。 

 そんなのどうでもいい。 

 だけどあんたさ。

 こんな事件を引き起こして正気とは思えない。 

 ポケモンリーグの実力者が黙ってないよ」

 

「もちろん、全て計画通りです。

 このラジオ塔を占拠し、ジョウト全土の街にポケモンを暴走させる怪電波を発信する。 

その怪電波はこれまでに部下たちが各街のジムなどに取り付けた無数の受信機が受信することで、野生のポケモンたちはジムやポケモンセンターを襲うことになる。

 インフラ施設が襲われればそれだけ人々はパニックになり、そのパニックを抑えるために人員は割かれます」

 

 なるほど。

 チョウジタウンの怪電波装置を破壊してもポケモンたちの暴動が止まらなかったのは、あくまで大元の怪電波がこのラジオ塔から発せられたものだったからということか。

 

「ポケモンリーグやジムリーダーの救援は2時間遅らせられれば良かったのです。

 あなたは気づいていないでしょうが、今このコガネシティ全域に『ひかりのかべ』『リフレクター』を50倍に増幅したバリアー装置を張り巡らせることに成功しています。     

 もはや、この都市は陸の孤島。 

 出ることも逃げることもできない。 

 ジョウト1の大都市コガネシティの全ての住民が我々ロケット団の人いわば人質! 

 人命と引き換えに物資や強力なポケモンを確保し、更に、勢力を拡大させるのです!

 このコガネから我々はジョウト全域を支配する! 

 それが私の計画です」

 

「長々とどうもありがとう。 素晴らしい計画だけど、あたしみたいな小娘をここまで辿り着かせておいて計画通りなんて、笑っちゃうよね」

 

「……そうですね。 

 あなたの存在は確かにイレギュラーでした。 

 嫌な予感がしたのでチョウジタウンで始末しようとしたのですが」

 

 やっぱりチョウジタウンのアジトにはこいつに誘導させられていたってことか。

 

「私はここでランスやアテナの戦いを観戦させて頂きましたよ。

 素晴らしい戦いでしたね」

 

「バナナは無事なの?」

 

「さあ。 どうでしょうね」

 

 こいつ……。

 まあいい。

 ここでボコボコにして吐かせてやる。

 

「しかし、ランスも情けない。 

 この程度の小娘に敗北するとは。 

 所詮は田舎のヤンキーですね」

 

「あのさ。 

 そろそろその気持ち悪い口調やめてくんないかな。 

 丁寧な言葉遣いだろうが、あんたの腐った内面の匂いが全然隠せていないからさ」

 

 薄ら笑みを消したアポロは立ち上がる。

 そして、醜悪な笑みで顔面を歪めた。

 

「ここまで癇に障るメスガキは初めてだよ」

 

 そう。

 こいつは平然とした顔で相当あたしに腹が立っているのだ。

 その為、チョウジタウンでは気付けなかったこいつの腹の中のドブ臭さが隠しきれず、滲み出てしまっている。

 

「私の完璧な計画を邪魔しおって。 

 お前は生まれてきたことを後悔させてやってから殺してやる」

 

 強い言葉を使わないと泣き出しそうになるくらいの圧倒的な恐怖のプレッシャー。

 あたしを奮い立たせているのはここでロケット団を止めなくてはという使命感だけだ。

 

「バクフーン! 『かえんほうしゃ』! 

 

 アポロの雰囲気に飲まれる前にこちらから仕掛ける!

 

 『かえんほうしゃ』はアポロがいつの間にか繰り出していたポケモンにかき消されてしまう。

 

「ドクロッグ!」

 

「勿論、私のドクロッグも改造個体だ。 

 通常種よりも2倍の体長。 

 そしてパワー、スピード、耐久面。 

 あらゆる面で極限まで高められている」

 

 目の前のドクロッグは筋肉隆々のボディに長い肢体を持ち、両手の甲のトゲはトゲというよりも血のように赤い槍のようだ。

 耳まで裂けた赤い口もこちらの恐怖心を助長する。

 

「さらにこいつも特別にお見せしよう。

 我がロケット団の最終兵器だ」

 

 そう言ってアポロは赤いマスターボールのようなものを放り投げた。

 

 そのボールが床につき、開いたその瞬間──

 

 膨大な雷が部屋中に満ち、バクフーンはその電撃を受け、後方に吹き飛んでしまう。

 

 そのポケモンを中心に発生した雷雲が壁を破壊し、周囲の家具をも黒焦げにしてしまう。

 

「黒い……ライコウ?」

 

 漆黒の雷雲をまといし黒いライコウがそこにはいた。

 

「はっはっはっはぁー! 

 これこそ我がロケット団の科学力を最大限に利用した──究極のポケモン兵器だ!」

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