ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
ちょっとオリジナル要素強めで書いていきたいと思います!
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容疑者メイ
マズイことになった。
このままだと殺される。
イッシュ地方、16番道路にある『まよいの森』で私は今逃げ回っていた。
追跡してくるのは白黒の帽子、白のシャツ、黒のインナー、ベージュの長ズボンを身に着けた青年。
私も女だ。
その青年はかなりの美形であるし、
平常時であれば彼に追い回されるなんて、ときめくような素敵なイベントと思えたかもしれないが、残念ながらそのような胸キュンイベントでは断じてない。
青年──Nは殺意を持って私を追いかけていた。
Nのポケモン。
いや、Nのポケモンだけなら別に戦えないことはないし、逃げるだけならそう難しくはないだろう。
伝説のポケモン──レシラム。
こいつが強すぎる。
伝説のポケモンとの戦いはこれが初めてだが、ここまで差があるとは思わなかった。
強さの次元が違う。
私の手持ちのポケモンはみんなひんし状態になってしまった。
ポケモンバトルであれば私の負け、これでおしまい。
だが──
「レシラム。 『ねっぷう』」
熱風どころではない大爆発が発生し、私は吹き飛ばされる。
木の枝を何本も折りながら、突き破り、地面をゴロゴロと回転し、ようやく止まる。
「痛っ!」
全身も当然痛いが、右足首が特に痛い。
挫いたか……。
これ以上歩くことは難しい。
深い森の奥地にまで来てしまったらしく、側には大きな川も流れている。
さて、どうするか。
「やっぱり誤解だと思うんですよね。
私はあなたに殺されるようなことは何もしてませんよ」
「僕だって君みたいな女の子を傷つけるようなことはしたくない。 だけど、君はそれだけのことをしてしまった。 仕方ないよ」
「だから誤解ですって」
「証拠はあるんだ。
僕は君も許すわけにはいかない」
全く、これでは埒が明かない。
さっきからこちらの言い分は全く通らず、
一方的に攻撃をされ続けている。
何かの陰謀に巻き込まれているとしか思えない。
感情の読み取れない冷たい視線を私に向け、Nは冷酷に言い放った。
「ヒオウギシティのメイ。
君がゲーチスを殺したんだから」
****
茶髪でお団子髪のツインテール、白とピンクのサンバイザー、水色と白の五分袖シャツ、黄色のキュロットスカートを着ている美少女。
それがメイこと私のプロフィールだ。
自分で自分を美少女と自称するのは中々にイタいやつだと思われるかもしれないが、これは客観的事実なのだから致し方ない。
なんせ私はポケットモンスターブラック2ホワイト2の主人公であるメイである。
おそらく歴代女の子主人公の中でも人気トップ5には入るだろう。
転生前が高く見積もっても中の下の容姿だった私からすれば文字通り生まれ変わった気分である。
いまの私は可愛いし、ポケモントレーナーとしての才能も生まれながらにしてあるのは自覚していた。
ただ、この世界にメイとして生まれ落ちたとして、原作ゲームのメイとして生きる必要なんてない。
そう考えた私は小さい頃は特に意識して、『メイ』にならないように考えて動いた。
しかし、何か不思議な力が働いているのか、気がついたら私の容姿はあの『メイ』に近づいていくのだ。
何を言っているのか分からないかもしれないが、私もよく分かっていない。
親にプレゼントされる服や外で手に入る服、流行りの髪型……私が抵抗すればするほど、世界そのものが私を『メイ』に近づけようとしてくるのだ。
それはちょっとしたホラーで、私が『メイ』にならない限り、どんどん世界のほうが歪んでいくのである。
放っておいたら法律で女子はみんな『メイ』のコスプレをしようなんてことになりかねない勢いだったので、3年前から私は甘んじて『メイ』の容姿を選んだのである。
ただし、いくら容姿が『メイ』になったところで、その中身は『私』である。
私の生き方は私が決める。
冒険なんてしない。
いつまでも家でゴロゴロ過ごすのである!
そう強く意気込んだのは良かったが、ここでも世界の強い引力のようなものが私を『メイ』と同じ道を辿らせようとしてくるのだ。
10歳の誕生日を迎えた瞬間に、いきなりお母さんが『あんたもそろそろ自立しなさい。 お母さんの知り合いのアララギ博士がポケモンと図鑑をくれるって言ってたからそれもらって旅立ちよ!』
と半ば強制的にポケモンと図鑑を押し付けられ、冒険なんてしたくなかったが、外の世界に放り出されてしまった。
そして10歳の女の子が一人で生きていけるほどこの世界は甘くない。
結局、私はポケモンを鍛えながら、冒険するポケモントレーナーになってしまった。
ポケモントレーナーとしての稼ぎを増やすにはポケモンを強くして、バトルランクを上げるのが一番効率的だ。
ということで強いポケモンを探しながら、ジムを巡るという『メイ』と同じようなことをしている。
運命に逆らいたくて、アララギ博士、ベル、チェレンなどにはなるべく関わらず、BW2のストーリーを意図的になぞらない行動はしてきたつもり。
ただ、プラズマ団残党の動きが活発化してきたり、事態が悪化してきているのは感じていた。
このまま私が何も動かずに事態を静観していたらどうなるのだろう。
おそらく既に新生プラズマ団は伝説のポケモンであるキュレムを捕獲し、そのキュレムの力を動力源にした帆船、プラズマフリゲートも完成しているだろう。
BW2のストーリーを思い出す。
確かプラズマ団はプラズマフリゲートでソウリュウシティを氷漬けにし、占拠し、そこでレシラム・ゼクロムとキュレムを融合させる道具『いでんしのくさび』を奪うはずだ。
その後はNのレシラムかゼクロムを呼び寄せ、キュレムを融合させることで世界を武力で支配する──それがプラズマ団のボス、ゲーチスの企みだったはずだ。
私が何もしなくてもどこかの誰かがプラズマ団を止めてくれるなら、私が行動を起こす必要はない。
だが、仮に誰もプラズマ団を止められなかったとしたらこの世界はゲーチスの手に落ちる。
正直表舞台に出たいとは全く思わない。
だが、この世界が氷漬けにされるのは困る。
寒いのは嫌いだ。
まったくあの女が動いてくれれば私がわざわざ動く必要なんてないのだが。
「仕方ないですね。 やりますか」
そして、私が選んだ行動はゲーチスの暗殺だった。
2年前にNを王としてポケモンの解放を謳い活動していたプラズマ団はたった一人の少女に敗れ、組織は分裂した。
1つは元々Nの志に惹かれ、本気でポケモンの解放を目指す一派(少数派)、そしてもう一つの主流であり、現在の新生プラズマ団が武力行使で世界を支配しようとしているゲーチス派である。
物騒なのは後者であるが、暴れたいだけの馬鹿ばかりの寄せ集めの集団に過ぎないと私は見ており、トップであるゲーチスを暗殺できれば、自然とプラズマ団は消滅すると睨んでいた。
そして、私は計画を行動に移した。
だが、これだけは誓って言える。
確かに私はゲーチスを暗殺しようとした。
ただし、私がゲーチスの元に辿り着いた時。
その時、彼は死んでいた。
そう、何者かに殺されていたのだ。