ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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広がる世界

「特殊能力っていうのか分からんのだが、条件次第で空間をワープできる能力みたいなものが俺にはあるんだ。

その能力でジョウトからここまでやって来た」

 

「ワープ……ですか」

 

「ん? 信じてないな。

 そりゃ、そうかもしれんが」

 

「いえ、信じていない訳ではなく、 

 どういう能力なのか考えてただけです。

 その能力はあなたが持つ『特性』なのかもしれませんね」

 

「とくせい? ポケモンがもつ特性のことを言っているのか?」

 

「そうです。 正確にはポケモンがもつ特性の上位互換なことが多いです」

 

「おい、ちょっと待ってくれ。 

 お前はこの能力、えっと「特性」について何故詳しいんだ?」

 

 さて、正直に教えてやるべきなのか悩ましい。

 この少年がとぼけたり、嘘をついているようには思えないが……。

 

 一応保険を打っておくか。

 

「今まで『特性』をもつトレーナー、2人と合ったことがあるんです。 その人たちから聞きました。

 もちろんほとんどの人は特性なんてありません。

 特別な人だけです」

 

「特別なひと……ねぇ」

 

 私の言葉にバナナは何かを思案している。

 

 私も全てを理解しているわけではない。

 

 ただ、以前にあった少女。

 そして、私。

 

 その2人に共通する特徴は転生者ということだった。

 

 おそらく転生者のみが特性をもっている。

 

 だがそうなると、このバナナという少年も転生者ということになる。

 

 このモブの虫取り少年が……?

 別にあり得ないことはないだろうが、これまでの経験則からは外れている。

 以前私が出会った転生者、そして私。

 2人に共通していることはポケットモンスターの女の子主人公だということ。

 

 てっきり転生者はポケットモンスターの女の子主人公だけだと思っていたのだが、認識を改めなくてはいけないかもしれない。

 

「バナナさん。 1つお伺いしたいのですが、あなたはもしかして異世界からやってきた──」

  

「見つけたぞ!! プラーズマ!!」

 

「誰だ⁉」

 

 突如発せられた大声に驚いていると、すぐさま私とバナナの前にヒメグマが立ち、戦闘態勢を取ってくれる。

 

 木陰の間から現れたのは黒いタイトなスーツを身を纏い、胸にプラズマ団のエンブレムを身に着けた2人の男女のプラズマ団の下っ端。

 

 まだ追手が探しているのか。

 

「Nさんの言っていた通りだったな! 

 ゲーチス様を殺害した犯人の女がまだこの辺にいる可能性があるって話」

 

「「え!?」」

 

 下っ端野郎の言葉にバナナとヒメグマが顔を見合わせる。

 

「どういうことだ? メイ」

 

「私は殺してなんかいません。

 信じてください」

 

 バナナの問いに対し、真実を答える。

 

 殺してなんかいない、殺そうとしたけど。

 

「おい、ガキンチョ。

 あたしらにはカタキであるそのガキをぶっ殺す権利がある。 

 邪魔をするならあんたも一緒に片付けるけどどうする?」

 

 下っ端の女の言葉を受け、バナナはしばらく沈黙する。

 

 マズイな。

  

 私にはもう戦えるポケモンがいない。

 

 バナナが助けてくれないとなると状況はかなり悪くなる。

 

「そうだな。

 確かに俺はその子とは出会ったばかりで彼女のことは良く分かっていない」

 

「それならとっとと消え──」

 

「だけど。 俺は俺の目的のためにメイを助ける。

 あんたらには悪いけどメイのことは守らせてもらう」

 

「はっ!!

 馬鹿なガキだな。 やれ! ワルビル!」

 

「頼むわよ! ドテッコツ!」

 

 バナナはポケモン図鑑を起動する。

 

『ワルビル、さばくワニポケモン。 メグロコの進化系。暗闇でも 見える 特殊な 両目の おかげで 真夜中でも 迷わず 狩りが できる。』

 

『ドテッコツ、きんこつポケモン。 ドッコラーの進化系。 鍛え上げられた 筋肉の 体は プロレスラーが 束になって 攻撃しても びくとも しない。』

 

「頼むぞ、ヒメグマ」

 

「さーて! イッシュ地方初バトルだな!」

 

 ヒメグマ0.6mに対し、ワルビルは1.0m、ドテッコツは1.2m。

 

 その体格差はかなり大きい。

 大丈夫だろうか。

 

 2人のプラズマ団も戦闘態勢をとったヒメグマを見て、鼻で笑う。

 

「おいおい、そんなチビに何ができる」

 

「勝手に舐めてかかるのは自由だけどよ、俺みたいなチビにやられて後で泣くなよ」

 

「喋るヒメグマ……。 ポケモンが言葉を話すなんて気持ち悪い。 やっちまいなっ! ドテッコツ!」

 

 下っ端女の号令と同時に鉄骨を担いだドテッコツがヒメグマに襲いかかる。

 

 重そうな鉄骨を頭の上で軽々と振り回し、ヒメグマとの距離を詰めると、鉄骨をヒメグマ目掛けて振り下ろす。

 

 ヒメグマはその一撃を躱し、ドテッコツの懐に入ると、素早いジャブを2発ドテッコツの腹に叩き込む。

 

 そして、そのままの勢いで強力な右ストレートをぶち込む。

 

 しかし、これはドテッコツが鉄骨でガードする。

 

「ワルビル援護しろ!!」

 

「む!!」

 

 いつの間にかヒメグマの背後には大きな口を開けたワルビルが攻撃を加えようと出現していた。

 

「オラッ!」

 

 ヒメグマは空中で後ろ蹴りを放ち、ワルビルを吹き飛ばす。

 

「ドテーッコツ!!」

 

 休む間もなく、今度はドテッコツが大声を出しながら、鉄骨を大きく後ろに振り上げる。

 

 そして、振り下ろされた鉄骨の一撃は大地を割るほどのかなりの威力だ。

 砂埃が大きく舞う。

 

「当たりゃあ痛そうだな」

 

 しかし、その一撃をヒメグマは完全に見切っていた。

 

「『くま・パンチ』!!」

 

 地面に鉄骨が埋まり、身動きが取れなくなったドテッコツの顔面にヒメグマの渾身の一撃が炸裂する。

 

 ドテッコツはその一撃で戦闘不能になってしまった。

 

 凄まじい威力だ。

 

「グオォオオ!!」

 

 ワルビルも雄叫びを上げ、ヒメグマに襲いかかるが、その鋭い爪の攻撃を躱すとワルビルの尻尾を掴み、ぐるぐると振り回し、地面に叩きつけた。

 

ワルビル……戦闘不能!

 

1対2にして、堂々の圧勝である。

 

「つ、強ぇ」

 

「ここは退くわよ」

 

「アジトに戻ったら伝えておいてくれー。

 ヒメグマ一匹にボコボコにされたってなぁー」

 

「ちっ! 生物兵器の分際で調子に乗りやがって」

 

 プラズマ団の男が忌々しそうに歯ぎしりをする。

 

「今のうちに粋がってな。

 ゲーチス様がいなくとも我々にはアクロマ様がいる!

 おまけにキュレムも既に我々の手中にある。

 あんた達ガキなんて、ゴミのように潰してやる……近い内にな」

 

 プラズマ団の女はそう吐き捨てると下っ端たちは来た道を戻って行った。

 

「さて、次の追手が来る前にトンズラしなくちゃな」

 

「待ってください」

 

 さっさとこの場から離れたい気持ちは私も一緒だが、

確認しなくてはいけないことがある。

 

「目的がある……そう言っていましたね。

 何故、私を助けたんです? 目的は何ですか」

 

「それは俺が知らないことをお前が知っていると思ったからだ。 この世界のこと、ポケモンのこと」

 

 バナナはここで一呼吸おいて、

 

「俺は異世界から転生してきた転生者だ。

 そして、メイ。 お前もそうなんだろう?」

 

「……!!」

 

 上手いな。

 助けてもらったこの状態で下手なことは言えない。

 この状況では本当のことを言うしかないだろう。

 

「そうです。

 私は別の世界からこのポケモンのいる世界に来ました」

 

 バナナは私の回答に満足したのか、にっこり笑うと私の手を取り歩き出す。

 

「やっぱりそうか! もう少し安全な場所に着いたら色々教えてくれ。 俺はこの世界のこと、転生者のことをもっと知りたいんだ」

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