ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
「この世界における女の子主人公は転生者である──この仮説は正しいと私は思っています。
この私、BW2のメイもそうですし、BWのトウコ……彼女も転生者でした」
「俺も言動からほぼ間違いないと思っているのが、SVのアオイとファイアレッド・リーフグリーンのリーフ、確認はしていないが、おそらく金銀のコトネも転生者だった……そう考えている」
驚いた。
これほど多くの転生者とバナナは既に知り合っていたのか。
私も随分異端な存在だと思っていたが、この少年の存在はイレギュラー過ぎる。
「バナナさん。 単刀直入に聞きます。
あなたをこの世界に連れてきたのは誰ですか?
私はアルセウスでした。 他の女の子主人公たちも同様でしょう」
「…………」
「あなたの見た目は名無しの虫取り少年です。
他の転生者とは大きく違う。
それは何故か。 アルセウスの気まぐれか。
それとも別の何かがあなたを連れてきたんですか?」
そして、それは何故なのか?
私が気になっているのはその理由なのだが。
「影の化物……やつのことを俺はそう呼んでいた。 だけど、薄々とは分かっていたし。 今は確信している。
俺をここに連れてきたのは──ギラティナだ」
「反転世界の神ギラティナ……ですか。
なるほど。 あなたのルーツが少し分かりました。
たた、1つ気になることが。
少し前の話に戻りますが、バナナさんは昨日自分には『時間や空間を飛び越えて移動できるチカラがある』そう、おっしゃっていました」
「ああ。 そうだな」
「そのチカラはギラティナというよりも時の神ディアルガ、空間の神パルキアのように思えるのですが、そこのところどうお考えですか?」
「なんか記者会見みたいだな」
と手をペロペロヒメグマ君。
「これは俺の考えというか、ゲームの設定的な話だが、
元々ギラティナもディアルガ、パルキアもアルセウスの分身だったはずだ。
だから、3体の能力には近しいものがあると考えてもおかしいことではない」
「なるほど」
「それに正確に言えば俺の能力はおそらく【やぶれたせかい】を経由することで時間や空間を超越して移動しているんだと考えている」
「バナナさんもギラティナが住むという【やぶれたせかい】に行ける……というわけですか。
あなたは一体何者なんでしょうかね」
「別に大したもんじゃないさ。
ただ、ギラティナは俺に何かをさせようとしている──そんな気はしている。
メイ。 俺からも質問をしてもいいか?」
「ええ、どうぞ」
「各シリーズの女の子主人公は全員転生者……お前も同意してくれたこの説だが、俺というイレギュラーな存在がいるのも事実だ。
ただ本当にイレギュラーの存在は俺だけだと思っているのか?」
「あなた以外にもイレギュラーな転生者がいるんじゃないか?
そうおっしゃるんですね」
「可能性はある。 この世界の登場人物は基本、原作通りの動きをしているが、一部大きく逸脱していた者もいた」
「そいつも異世界転生者だと?」
「ああ」
それが事実だとすると頭がくらくらしてくるな。
その他の転生者は誰が連れてきたのか。
アルセウスかギラティナか。
それとも別の何かか。
私の中の常識がどんどんと崩れていく。
急激に。
「急激に……?」
自分の言葉に疑問が生まれる。
そうだ。
急に変わってきている。
いつかからか。
ここ数ヶ月の話だ。
私がヒオウギシティを旅立ち、しばらくしてこの世界は歪み、世界は変わり始めた。
予定調和だったはずの世界は急激に私の知らないポケットモンスターの物語を紡ぎ始めている。
身体を悪寒が襲う。
私は自分の身体を自分で抱き締める。
「大丈夫か? メイ」
ヒメグマが柔らかい手で私の頭を撫でながら、心配してくれる。
「あ、ありがとうございます。 大丈夫です。
ちょっと怖くなったというか。 私が10年間過ごしてきた世界がこれから崩れていくのかもしれないって思ったんです。 ゲーチスは殺され、既に歴史は変わり始めている。 次に死ぬのは──私かもしれない」
「させねーよ」
ヒメグマが力強く言う。
「ああ。ヒメグマの言うとおりだ。 俺達がさせない。
リーフさんも言っていたんだ。 今なら分かる。
この世界を守るために俺は来たんだ」
背中越しにも伝わるバナナの優しく頼もしい声。
この少年は本気なんだろう。
そのためにここに来たと本当に思っているのだろう。
だが、バナナは気づいているのだろうか。
この世界が明らかにおかしくなってきた時期とバナナが異世界転生してきたのが同時期だということに。
この世界がおかしくなったのはあなたのせいじゃないですか?
そう思ったが口にするのはよしておこう。
****
それからは取り留めのない会話を繰り広げた。
お互い真実を知る者同士。
自然と仲間意識が生まれていたのかもしれない。
バナナはいつの間にか正面を向いて、私とヒメグマと会話をしていたが、私はパニックになることなく、自然と会話ができた。
ホテルの冷蔵庫に入っていたビールをバナナが飲み始め、ヒメグマに勧められ私はペロリと舐めたがそれが不味かった。
「それでそれで、バナナさん29歳は11歳少女たちとイチャコラセッセして本当は嬉しいんですよねぇ⁉
このムッツリスケベ‼」
「おいヒメグマぁ。 何となくこいつは悪酔いするタイプだって分かるだろうが……なんで飲ませた」
「いや、そもそもバナナが見た目10歳のくせにビール飲むのが悪いんだろうが! しかも11歳の女の子の前で」
「ちょっとちょっとぉおおお! 私の為に争わないでくださいよぉおお!」
「うわ……めんどくせ」
頭がふわふわして気持ちィェーィ‼
なんだか何でもできる気がする。
「ばぁななさーん。 私をあんまり子供扱いしないでくださいよぉー。 こう見えても転生前は高校生でしたし、それにこれ! 見てください」
「おい、おまっ!」
私は胸を反らし、自慢の形の良いバストをアピールする。
「11歳にしては結構発育良いと思うんですよねぇ~。
どうです? どうです?」
「やかましい。 俺はお前には興味ないよ」
「あー!! 何ですか! お前にはって!
私以外に興味がある人がいるみたいじゃないですかー。
この浮気者ー」
「俺とお前はどんな関係なんだよ……」
「あのな、メイ。 期待させてしまうのも悪いから俺が言うが、バナナはコトネと両想いなんだよ。
だから、諦めろ」
「はぁー? ヒメグマ! 何言ってんだお前!
いやいや、俺は11歳のクソガキにそんな気持ちにはならん!
しかも、コトネは多分中身も子供だぞ、喋ってた感じ」
「ヘイヘイヘーイ‼
なんですかー! 急に必死になって!
ちょっと嫉妬しちゃうんですけどー! このロリコンめっ!」
顔を赤らめて、必死に抗議する姿にちょろっと苛つく。
「ローリコン! ローリーコン! ローリーコン! あ、そーれ! ローリーコン──あいてっ!」
「調子のんな」
バナナに頭をポカリと殴られる。
「あーーー! 暴力振るいましたねぇっ!!
サイッテーです! この暴力ロリコンオトコー!」
そんな感じで夜通し私たちは馬鹿騒ぎをした。
最低で最高で……楽しかった。
そのままいつの間にか眠りに落ちる。
****
翌日。
私は目覚める。
バナナはすでに起きていて、コーヒーを飲んでいた。
「えっとぉ。 そのぉー」
私は言葉に詰まる。
それはそうだろう。
昨日のあれやこれや。
私は全て覚えていた。
やや気まずい。
「気にするな。 ガキが酔っ払ってオイタをしただけだろう」
「上目線うざっ!」
コンコン
ノック音が狭い部屋に響く。
一瞬のうちに私達は身構える。
何故か?
決まっている。
こんなところ訪れるやつなんて基本いない。
私は警戒しながらドアに近づく。
「はい。 どちら様でしょうか」
「ちょっとお話を伺いのですが」
若い女の声。
「ライモンシティ、ジムリーダーのカミツレです」