ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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襲撃と別れ

「すみません。 どなたかいらっしゃいませんか?」

 

 ライモンシティ、ジムリーダーカミツレ。

 

 私が恐れていた事態が起きてしまった。

 

 まさか本当にジムリーダーが追ってくるとは……。

 

「どうする?」

 

 バナナが小声で問いかけてくる。

 

「おそらくここに私がいるという裏を取った上で来ているんでしょう。

 出るしかないでしょうね」

 

 私は念の為、手持ちのポケモンを1体出しておく。

 

「コジョンド。 危険を察したらお願いします」

 

「おー! コジョンドか。

 格好いいな」

 

 バナナが少年のような笑顔で(実際少年だが)目を輝かすとポケモン図鑑を開く。

 

『コジョンド。 ぶじゅつポケモン、コジョフーの進化系。  目にも 止まらぬ スピードで 繰りだす 蹴りは 巨大な 岩も 木っ端みじんに 砕く』

 

 私はコジョンドと共に警戒しながらドアに近づく。

 

「……はい」

 

「単刀直入に言います。 ヒオウギシティのメイさんですね。 お話を伺いたいので、出てきてもらえませんか?」

 

「嫌だ……そう言ったらどうするんです?」

 

 ゾワッとした悪寒に襲われる。

 

 即座にコジョンドは私を抱え、部屋の中央に高速で身を翻す。

 

 それと同時に部屋の扉が、輝く雷の閃光とともに木っ端微塵に吹き飛び、一人の女とポケモンが優雅に部屋に侵入してくる。

 

 カミナリのような毛先の黒髪にアンテナが付いたヘッドホン、黄色のダウンジャケット、黄色と水色のセパレート式のノースリーブ、赤と青のフラットシューズを着用した高身長でスレンダーな超絶美人。

 自信に溢れたその佇まいから発せられる眩く輝くカミツレのオーラは私には眩しすぎる。

 

 その傍らにはカミツレのように手足の長いシマウマのようなポケモン、ゼブライカ。

 

 扉を破壊したのはこいつの仕業だろう。

 

「ジムリーダーともあろう人が随分乱暴な挨拶ですね」

 

「素直に出てきてくれないから仕方ないじゃない。

 あたしは忙しいんだからさ、早く捕まってほしいの」

 

 これだからクラスの人気者タイプの女は嫌いだ。

 いつだって私のようなはみ出しものを見下し、排除しようとする。

 

「カミツレさん。

 私はゲーチス殺人には関わっていません。

 お帰り頂けますか?」

 

「む・り。

 ごめんね、あたしもこれが仕事なんだ。

 

 

 ──ゼブライカ」

 

 ゼブライカが雷エネルギーを纏い、電光石火の速度で突進してくる。

 

 だが、私のコジョンドも負けてはいない。

 

「へぇ。 結構やるんだね」

 

 コジョンドは腕の長い体毛を鞭のようにしならすことで、音速を超えた一撃を放つ。

 

 コジョンドとゼブライカの攻撃はぶつかり合い、相殺される。

 

「バナナさん! 

 まさかこんなに早くジムリーダーが来るとは思っていませんでしたが……昨日話をした予定通りに作戦決行をお願いします」

 

「……分かった。 先に行く」

 

 バナナはホテルの窓を開け、逃げ出す準備を行う。

 

「うーん、どうしようかな。 重要参考人のメイと一緒にいる以上キミも関係者になるよねぇ。

 このまま逃がすわけにはいかないかな」

 

 バナナに向かって一歩踏み出したゼブライカに対して、コジョンドが連撃の攻撃を叩き込む。

 

 流れる水流のような美しくも強力な鞭の腕と蹴りの連撃の演舞。

 

 何発かはゼブライカにクリティカルヒットを叩き込み、廊下の外にまで吹き飛ばす。

 

「メイ。 

 おそらく最終的には俺たちはまた合流するはずだ。 

 死ぬなよ」

 

 そう言うとバナナはモンスターボールからカメールを出す。

 

「よっしゃあー!! なんかひさしぶりの出番だけど頑張るぞー」

 

 当然のように喋るカメールだが、バナナのポケモンなのだから、いちいち驚かなくなってしまった。

 

 カメールは両足を甲羅の中に入れると、その両足の穴からハイドロポンプをジェット噴射で放出する。

 

 ヒメグマを肩に乗せたバナナはカメールの甲羅を掴むとそのままホテルの窓から飛んでいってしまった。

 

 めちゃくちゃな空の飛び方で流石に少し呆れるな。

 

 さてさて、バナナは無事に逃げ出せたが、ここからが問題だ。

 

「あーあ、逃げられちゃった。 ま、キミさえ捕まえられればいいから別にいいんだけど」

 

「全くふざけた人ですね、あなたは。 上に命令されたからわざわざこんなところまで来たんですか?

 ロクな調査もせずに。

 ジムリーダーのくせにまるで上司の言うことに逆らえない底辺のサラリーマンみたいですね。 

 情けない。 ただの飼い犬じゃないですか」

 

 何だろう。

 おそらく私はいつになくイライラをしている。

 

 この女に腹が立っているのだ。

 

 理由は分からないが、こいつはここで叩きのめしてやりたいというメラメラした怒りが私の中で燃えている。

 

「あらあら、随分イライラしてるのね。 

 ひょっとして彼氏とのイチャイチャ逃避行を邪魔されたから?」

 

「はい?」

 

「え、なに。 図星なの?」

 

 その瞬間にプツンと頭の中の糸が切れる音がした。

 

「こ◯す」

 

 ピシャーン

 

 雷鳴と共に雷光が煌めいた。

 

「コジョッ……‼」

 

 そして、傍らにいたコジョンドがゆっくりと倒れ込む。

 

「コジョンド?」

 

 何が起きたのか、さっぱり分からない。

 

「あのさ。 確かにキミは強いよ。 その辺のトレーナーの比じゃないさ。 

 でもさ。 本気のジムリーダーに勝てると本気で思ってる?」

 

 髪をかき上げ、優雅にそして残酷に言い放つカミツレ。

 

 ゼブライカがゆっくりと再び部屋に入ってくる。

 

 目に見えない程の速度の『スパーク』がコジョンドを貫いたと言うのだろうか。

 

 私はコジョンドをボールに戻し、次の策を頭の中で巡らせる。

 

「ダストダス! お願いします」

 

 次に私が繰り出したのはゴミすてばポケモンのダストダス。

 

 2メートル近い巨体はまるでゴミ袋から飛び出したゴミそのものの集合体。

 

 捨てられたホースやパイプが指や腕のようになった左右非対称の腕を持つ、公害レベルの強力な毒タイプのポケモンだ。

 

 そんな私のダストダスに対して少しも怯むことなく、歩みを進めるゼブライカ。

 

 私はポケモン図鑑を起動する。

 

『ゼブライカ、らいげきポケモン。シママの進化形態。

激しい 気性の 持ち主。荒ぶると たてがみから 雷を 四方八方に 放電する』

 

 おそらく、このゼブライカがカミツレの相棒ポケモンだろう。

 

 このゼブライカさえ倒せれば私にも逃げられる可能性はある……しかし、私の手持ち最速のコジョンドが全く見切ることなく、やられたことで絶望的なレベル差が存在することも分かっている。

 

「やるしか……ないですよね。

 ダストダス、『のしかかり』!」

 

 全身から猛毒を放出するダストダスが放つ、危険な『のしかかり』。

 

 さあ、これをどう受け止める?

 

「ゼブライカ! 『スパーク』‼」

 

 ゼブライカから放出された電気エネルギーが100キロ以上の体重のダストダスをはじき飛ばし、その勢いはホテルの薄い壁を破壊し、隣の部屋にまで及んだ。

 

「キャー‼」

 

 突然、ダストダスが飛び込んできたもんだから、隣の部屋のベッドであんあんしていた女が悲鳴を上げる。

 

 トラウマレベルの思い出になってしまったかなとやや同情しつつ、私はひんしになってしまったダストダスをボールに戻す。

 

 かなり耐久方面が固くなるように鍛え上げたダストダスだったのだが、一撃とは自信がなくなるな。

 

 次に私が繰り出したのはジャローダ。

 

 ツタージャの頃から育て上げた私の最高のパートナーだ。

 

 3メートルを越える体をうねらせ、私を守るようにトグロを巻き、その威風堂々たる眼光でゼブライカとカミツレを射抜く。

 

「……綺麗なポケモン。 素敵ね。

 キミのことを信頼しているのがよく分かる」

 

「いくよ、ジャローダ」

 

 

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