ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
◎バナナ視点
メイとライモンシティのホテルで別れ、俺はヒウンシティに向かって旅を続けていた。
メイは無事だろうか。
うまく逃げられていると良いのだが。
「しかし、鳥ポケモンとか空を飛べるポケモンがいねぇと移動は辛いな。 早く飛べるポケモンもなかまにしようぜ」
ヒメグマがブーブー文句を言う。
カメールに掴まっての移動は長い距離は難しい。
50メートルくらいが限界だ。
何事もなくライモンシティを出発できたのは良かったが、その後はただひたすらに徒歩で歩き続けている。
正直、かなり疲れてきた。
ヒメグマの言うことも分かる。
俺にはギラティナの力を一部借りて、何処か別の場所に瞬間移動することはできるが、これはそんなに自由自在な能力というわけでもない。
「確かに空を飛べるポケモンは欲しいな」
「そうだろ!? 快適に空を飛べるポケモンがいいからデカくて、乗り心地が良さそうなポケモンがいいな。
例えばピジョットとかアーマーガアとか、ウォーグルもいいよな」
「いや、違う」
「そうか? そうなるとバナナはやっぱりドラゴンっぽいポケモンに乗りたいんだな?
じゃあ、リザードンとかボーマンダ、チルタリスとかも乗り心地良さそうだな」
「違う。 ウルガモスだ」
「は?」
「物心がついた頃から俺は怪獣が大好きだった。
ゴジラ、ガメラ、モスラ……かっこいよな」
「お、おう。 なんか急に語り始めて気持ち悪ぃがとりあえず聞くぜ」
「自然と好きになるポケモンは分類かいじゅうのポケモンが多かったよ。
だから、カメックスも好きだし、バンギラスも好きだ」
「おい……その流れだとまさか」
「うん。 俺はモスラに乗って飛びたかったんだよなぁ」
「それでウルガモスかよっ!!」
勿論たくさんのポケモンを捕まえたいと思っているが、実はトキワシティにいた頃から俺には作りたい理想のパーティ像があった。
そしてこれには俺自身驚いていたのだが、現時点で捕まえたいポケモン達が2体手元にいる。
それがカメックス(カメール)とバンギラス(ヨーギラス)だ。
そして、残り3体の内の一匹がウルガモスだ。
せっかくイッシュ地方に来たのである。
ここで必ずウルガモスをゲットしておきたい。
「好きなポケモンをゲットし、好きなポケモンで頂点を目指す。
それが男のロマンだ」
「スンバラしぃいいいいいッ!!」
突如背後から甲高い男の奇声が響く。
「誰だっ!!?」
ヒメグマがすぐさま攻撃を仕掛けるが、ヒメグマの拳は鋼の体に防がれる。
歯車が2つ組み合わさり、下部にトゲ付きの歯車という独特の出で立ちをしたポケモン──ギギギアル。
そして、そのギギギアルのトレーナーもポケモンに負けず劣らずの奇妙な男。
金髪で眼鏡をかけており、白衣の下には黒いトップスとボトムスを着用している。
特徴的なのは頭から生えている青色のボリュームのある毛の塊で、まるで触覚のようになっている。
「……アクロマ」
「おやおやぁ~? 僕のことをご存知なんですねぇ。
まあ、僕もあなたのことは知っていますよ。
バナナ君。 ロケット団との戦いは見事でしたねぇ」
コガネシティでの一件は本当に全国区のニュースだったんだな。
テレビでも扱われているのは分かっていたが、ここまで色々な人に知られているとは思わなかった。
「驚かせてしまい、申し訳ございません!
僕に敵意はないのですよ。
ただ、あなたが素敵な持論を語っておられたので、ついつい出しゃばってしまいました」
アクロマの突然の出現は確かに驚くべきことだ。
だが、俺が驚いたのはそれだけが原因ではない。
そもそも俺が探していた男こそが、このアクロマだったのだから。
メイの推理によるとゲーチスが死んだことで大きく変わる可能性があるのがプラズマ団の内部の勢力構造。
その中で有力な登場人物たちがアクロマ、N、七賢人となる。
そして俺はアクロマと、メイはNと接触することで真犯人に近づく情報を得ようとしていたのである。
「いやぁ、僕は感動しましたよ! あなたの男のロマンは素晴らしいっ! 是非とも強力させてください」
「え?」
「ウルガモス。 捕まえたいんでしょ?」
****
さて、随分妙なことになった。
俺とアクロマはイッシュ最大の砂漠地帯、リゾートデザートにある古代の城に辿り着いた。
かつて栄華を誇っていたという古代イッシュ王国。
この遺跡はその王国が滅び、いつしか砂に埋もれてしまった過去の栄光の残骸。
「以前、この古代の城を調査していた時に面白い壁画を見つけましたね」
そう言って振り返ることなく、遺跡の中を突き進むアクロマ。
BW2におけるアクロマと言えば、ゲーチスによって祭り上げられた新生プラズマ団のボスだったはずだ。
『ポケモンの強さを引き出すものは何か』を研究し、その研究欲を満たすためにプラズマ団に所属するというマッドサイエンティスト。
ゲーチスとは互いの目的が合致していた為に協力関係にあっただけで、何らかの行き違いでアクロマがゲーチスを殺害する可能性もあるとは考えていた──のだが、なぜこいつがこんなところをフラフラしているのだろうか。
俺は警戒しつつも、アクロマに着いていく。
「この古代の城は長い間、単なる古びた過去の遺跡という扱いでロクな調査がされていませんでした。
しかし僕達が調査を始めて、この遺跡の真なる秘密が見えてきました」
何もないただっ広い空間に辿り着いた俺たち。
アクロマはモンスターボールからオーベムを出した。
人型の埴輪にも似た宇宙人のようなポケモン。
俺はポケモン図鑑を広げる。
『オーベム。 ブレインポケモン。 リグレーの進化形態。 強い サイコパワーを 持っている。 3色に 光る 指で 相手を 操り 記憶を 書き換えてしまう』
中々怖い説明だな。
「オーベム。 この床を『ねんりき』で透視しなさい」
「ベムベムー」
「おいおい、マジかよ」
ヒメグマが驚きの声を上げるのも無理はない。
オーベムが『ねんりき』で床を透視することで現れたのは地下深くまで続く長い階段だった。
「そうです、地下にまで続く隠し階段です。
そして、この隠し階段を降りるためにはポケモンのサイコエネルギーが必要なのです」
オーベムが更に念力を強めていくと、地下階段の真上の床が直径5メートルほどの長方形で、浮かび上がっていく。
「しばらくはこのまま浮かべておきましょう。
さあ、地下に進みますよ! ワクワクしますね」
アクロマは無警戒にズンズンと階段を降りていく。
少し距離を空けて、俺もその後を追う。
階段を降りた先には狭い洞穴のような空間が広がっている。
俺はその壁を見た瞬間に思わず唾を飲み込み、全身がブルっと震えるのを感じた。
壁一面に広がっているのは古代の壁画。
中央上部には大きな太陽が描かれ、その太陽の真下には灼熱纏う巨大なポケモンが描かれている。
「す、すげぇ迫力だ。 本物の太陽が目の前にあるみてぇだ」
古代のイッシュ人達がどんな思いでこの壁画を描いたのだろう。
恐れや畏怖なのか。
憧れや感謝なのか。
その全てなのだろう。
全ての生き物は太陽と共に生きている。
そして、彼らにとってこのポケモンはまさに太陽の化身だったのだ。
美しくも、獰猛な力強さを感じさせるその描写は人々の崇拝の感情が見て取れる。
「ウルガモス……炎の神か」
「そうです。 古代のイッシュ地方の人々にとってウルガモスは太陽の化身として崇められていたのです」
アクロマはニヤリと微笑むと俺に衝撃の一言を告げた。
「バナナ君。 この壁画のウルガモスが生きていると言ったらどうします?」