ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
地中を信じられない速度で突き進むドリュウズ。
こちらは空から追いかけているというのに付いていくので精一杯だ。
一体どこに向かっているのだろうか。
目的地は定かではないが、この先の終着地点には私の探している何がある──そんな気がしている。
1時間程度は移動しただろうか。
ドリュウズは速度を落とすことなく、突き進んでいく。
周囲にはゴツゴツした岩山が多く見え始める。
この辺りはヒウンシティ周辺か。
そろそろリゾートデザートに差し掛かるなぁとぼんやり考えていたところ、思わず「げげっ!」という変な声が漏れる。
既に凄まじい速度で移動していたドリュウズが砂漠地帯に入るやいなや、速度を更に上げたのだ。
既にトップスピードに近い速度で飛んでおり、また疲労も溜まっているウォーグルでは追いつくのは難しい。
どうすれば良いのか頭を必死にフル回転させて考えていたが、その心配は無用だった。
ドリュウズはとある建築物に近づくと、すぐに速度を落とし、そして動きを止めたのである。
ウォーグルはやや遅れてドリュウズに追い付く。
「ウォーグル、お疲れだったね。
ありがとう」
ソウリュウシティに飛んだかと思えば、次はリゾートデザートまで。
大変な遠距離飛行をさせてしまったウォーグルには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
地上にまで飛び出たドリュウズは真っ直ぐにデザートリゾートに堂々とそびえ立つ、かつての栄光の遺跡──古代の城を見据えていた。
「ここに……バナナがいるって言いたいんですか?」
ドリュウズは頷きはしなかったが、腕を一度突き上げると、何も言わずに来た道をハイスピードで戻っていく。
「ありがとう、ドリュウズ」
この遺跡にバナナがいる保証はない。
しかし、プラズマ団VSポケモンリーグの全面戦争が起ころうとしている今、ただ黙って何もしないのは流石に良心の呵責に苛まれる。
私も何かしなくては。
そう思った自分自身に少し驚く。
あれ、私ってそんなに熱い女だったっけ。
これまでの私は事なかれ主義で、自ら物事の中枢に首を突っ込むような真似は決してしなかった。
頭にバナナやアイリス、そしてトウコの顔が思い浮かぶ。
私も少なからず真っ直ぐで馬鹿な彼らの影響を受けたのかもしれない。
バナナじゃないけど、私も一度死んだ身だ。
第二の人生は少しは他人の為に使ってもいいかもしれない。
『止まれ、小娘。死にたくないなら帰るんだな』
2秒前に思ったことをもう前言撤回したくなった。
バナナなんて忘れて、どこか他の地方に逃げるのが正解だったのかもしれない。
私の頭上にはピンク色、おまけにハート模様を身体に散りばめた人間の女性のような姿の伝説のポケモンが雲に乗って空中を漂っていた。
蛇のような尻尾を首に巻き付け、品定めをするかのように私を見下ろしている。
「ら、ラブトロス……!」
『ほぉ! 私を知っているか。
関心関心。 ならば無駄な争いなど無駄だと言うことも分かるだろう。
私は基本慈悲深いが、愚か者には罰を与えるぞ』
伝説のポケモンがわざわざ私を止めるためにやって来た。
それほどこの先にはやつらにとって都合の悪い男がいるということだろう。
つまり。
……やるしかないか。
私は相棒のジャローダを繰り出す。
『……愚かな。
仕方がない、さらなる絶望を見せてやろう。
アンタ達っ!』
ラブトロスの掛け声で現れたのは3体のポケモンたち。
「4神揃ってお出ましですか……。
そんなにサービスしてもらわなくてもいいんですけどね」
リゾートデザートを一気に覆い尽くす強風と雷と砂嵐。
トルネロス、ボルトロス、ランドロスまでもが現れた。
3体はコピペロスのおっさん形態。
「一応聞いていいですか? あなた達は誰に言われてここにいるんですか?」
『俺達に命令できる奴なんざあ! このイッシュには2体しかいねぇ!!
ゼクロム様に決まってるだろうが』
怒りの感情が激しい雷となって、辺りを雷柱で覆い尽くす。
青い体のボルトロスが目を見開き、叫んだ。
『余計なことを言うな、ボルトロス』
そんなボルトロスを静かに諌めるのが土色で筋肉隆々のランドロス。
『さっさと始末しよう。 こんな小娘』
淡々と無表情で呟いたのが緑色のトルネロス。
「なるほど……。 ゼクロムの差し金ですか。
つまり、トウコがゼクロムに指示を出し、あなた達にこの遺跡に近づく者を始末するように命令した、そういうことですね」
四神を遣わしてまで動きを封じたい人間やポケモンがここにいるということだろう。
「はぁ」
ひどく重たい溜め息をついてしまう。
私には分かっていた。
この4体の強力なポケモンと戦って勝ち目などないに決まっているということを。
でも、何故か戦おうとしている私は全く論理的ではなく、これまでの私であればひどく蔑むであろう愚行を起こそうとしている。
やれやれ、私も馬鹿になってしまったんだな。
そう自嘲したその瞬間。
ズカアアアアン!!
何かが爆発したかのような激しい音が遺跡から響き渡る。
モクモクと高く立ち上る砂埃の中からこちらに向かって歩いてくる2つの影。
「ほらなぁ! やっぱりメイだ! 俺の言った通りだろー?」
「はいはい、別に疑ってなんかいないよ」
仲睦まじい様子で現れた一人と一匹。
何だか随分久し振りにあった気分だ。
「バナナさん……。 本当にここにいたんですね。
遅いですよ」
「ああ、悪かった。 だけど、大丈夫だ。
みっちり修行をしてきた」
そう言うバナナは何だか少し大人っぽく見えた。
私よりも背が高くなっている。
私が訝しげに見ていると、
「ああ。 実はさっきまでこっちの世界だと1日しか経っていなくても、1年が過ぎるっていう不思議空間にいたもんでな」
「どんな精神と時の部屋ですかっ!!」
「ま、俺は2回目だけどなー」
『最後の挨拶はもう終わったか?』
背筋が寒くなるランドロスの低い声。
4神が揃って腕を組み、私達を睨みつけいる。
「4匹か。
修行の成果を見るにはいい相手だ」
そう言ってバナナは3つのモンスターボールを投げる。
勢いよく現れたのは──
「カメックス、バンギラス、ウルガモス??」
私の知らないバナナの手持ちのポケモンたち。
この短時間でカメールがカメックスに進化したと言うのだろうか。
そして。全ポケモンの中でもトップクラスに捕獲が難しいと言われているバンギラスとウルガモス。
3体とも4神に負けず劣らずのオーラを放っている。
『なるほど……。 我々がここに呼ばれた理由が少し分かった』
ランドロスが呟く。
「こっちも4匹、そっちも4匹!
さぁ、やろうぜ!」
ヒメグマがグググッと身を屈め、戦闘態勢。
『図に乗るな。 貴様らの相手など私一人で十分』
私達の前に飛び出したラブトロスが両手を左右に広げる。
大気がラブトロスに吸い込まれていく感覚。
『さあ……この一撃で死んでくれるなよ?』
くらえ。『はるのあらし』
桜並木の中にいるような幻想的で美しいピンク色の嵐。
一瞬で視界を覆い尽くすほどの圧倒的火力。
マズイ……、とてもじゃないけど避けられそうにない。
「ウルガモス! 頼む!」
バナナが言うと、ウルガモスは全身にオレンジ色の光を灯し始める。
「その甲高い声。 そろそろ目障りだ
『煉獄』」
数秒後には何もなかったかのように青い空が広がっている。
ラブトロスとウルガモスの攻撃が相殺し、互いに打ち消したのだ。
ラブトロスとウルガモスが向かい合う。
『神に仇なす虫けらが。 罰を与えてやろう』
「その虫けらに敗れるのだ……貴様は」